ハイアールルームエアコン huu CSシリーズ JAS-CS404A2 室外機の完全分解レポート 14畳用/200V/2024モデル
1.今回分解機種のご紹介
今回分解調査を行っていくのは、ハイアールのルームエアコン、CSシリーズの室外機、「JAS-CS404A2」です。
適用畳数は主に14畳、定格能力4.0kW、電源電圧200Vのモデルになります。
ハイアールは2024年より日本のルームエアコン市場に参入しましたが、その先陣を切って投入されたモデルになります。
先日公開した室内機の分解調査に引き続き、今回は室外機の分解調査を行っていきます。
室内機の完全分解調査記事は以下リンクよりご覧いただけますので、興味がございましたらぜひご覧ください(全編無料です!)
透明なファン、大胆なプレスライン、大きなメーカーロゴが異国情緒を感じさせます
室内機の記事の内容と重複しますが、ここでざっくりと本機の特徴をご紹介いたします。
本機は自動お掃除機能を持たない、いわゆる「スタンダードモデル(普及機)」にあたります。その中で、本機ならではの特徴として以下の3点が挙げられます。
Wフリーズ洗浄
上部フィルター採用
上下左右自動ルーバー
その他の仕様は他社のスタンダード機とほぼ共通しており、特筆すべき点はみられません。
しかし、熱交換器を凍らせて一気に解凍することで汚れを洗い流す「Wフリーズ洗浄」が、この価格帯のスタンダード機に標準装備されているのは、なかなか珍しいのではないでしょうか。
特に注目したいのは、その名の通り「室内機だけでなく、室外機も洗浄する」という仕様です。国内メーカーで室外機まで凍結洗浄する機能を持つのは、日立の上位機種など一部に限られます。
効果のほどは長期間使用してみないと分からない部分もありますが、動作自体はかなり強力に行われている印象を受けました。
※YouTubeチャンネルでWフリーズ洗浄の動作を公開していますので、ぜひご覧ください!
2.公開スペック
公開されている本機の主なスペックは以下の通りとなっています。
電源:単相200V 50/60Hz
適用畳数:主に14畳
定格冷房能力:4.0kW(0.7〜4.4kW)
定格冷房消費電力:415W(170〜1370W)
冷房時運転音(音響パワー):室内62dB、室外62dB
定格暖房能力:5.0kW(0.7〜6.3kW)
定格暖房消費電力:490W(150〜2545W)
暖房時運転音(音響パワー):室内62dB、室外64dB
通年エネルギー消費効率(APF):4.9
外形寸法:室内 H288 × W798 × D248 mm
室外 H553 × W800 × D285 mm
質量:室内 10.5 kg
室外 30.0 kg
スペックに関して特筆すべき点は特に見受けられません。
中国系メーカーだと、200V機種において最低出力が極端に高く設定されている機種が一部に見受けられますが、本機は最小能力0.7kWと、国内メーカー同等まで能力を絞れるようです。
3.機器外観
今回分解調査を行なっていく、「JAS-CS404A2」の外観を下記に示します。
スペックにも記載の通り、室外機の寸法はH553 × W800 × D285 mmとなっており、質量は30kgです。
200V、4.0kW機としては極めて標準的な寸法であると言えそうです。
質量の30kgは心持ちやや重めでしょうか。
個人的に強度や制振性の観点から、室外機は重い方が良いと思っている節がありますので好印象です。
外観はこれまで日本市場で馴染みのないデザインとなっており、ハイアール自社開発品であると推測します。
また、海外機あるあるなのか分かりませんが、日本メーカーの室外機よりも大胆にプレスが入っている印象を受けます。
加えてプロペラファンは半透明仕様であったり、メーカーロゴの表記が大きかったりと、日本メーカーでは見られない要素が多いです。
ファンガードは螺旋形状となっていますが、よく考えてみるとこれも中国系メーカーで多く見られる気がします。
それでは、いよいよ分解に取り掛かっていきます。
【免責事項】
本記事は分解を推奨するものではありません。
機器内には高電圧部、回転部、鋭利な部分、高温部などが数多く存在し、分解には危険を伴います。
また、製品を分解した場合、メーカーの正規保証は受けられなくなります。本コンテンツによって生じた製品の不具合についても、筆者は責任を負いかねます。
また、情報の正確性には細心の注意を払っておりますが、個人の調査結果であるため、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。製造時期により、内部構造が異なる場合もあります。
4.内部観察
一般的な室外機と同じく、まず最初に天板を外していきます。
ファンステー、熱交換器上部、電装品箱に触れる部分等、接触部にはもれなくスポンジテープが貼られており、振動、騒音に配慮した設計になっていることがうかがえます。
また、本機の外装ビスもプラスチック?ナイロン?製のワッシャーが噛ませてありました。
近年の日本メーカーでは見られないですが、純粋な塗装面、品質への配慮なのか、それともワッシャーを噛ませる分塗装の品質を削っているのか、どちらでしょうか…
いずれにせよ、ネジを締める際、塗装面が保護される形となりますので高評価です。
フロントパネルを外して、本機の全貌を確認します。
この状態で、以下の内容が確認できます。
熱交換器は2列フル実装仕様
圧縮機の吸音材はラバーハイブリッド仕様で圧縮機全面を覆う
制御基板のパワーモジュール系ヒートシンクはかなり大きい
ここからさらに分解を進め、細部を検証していきます。
5.コアパーツレポート
圧縮機と防音機構
本機の心臓部である圧縮機を確認していきます。
圧縮機の周りには騒音対策として、吸音材が設けられているのは各社共通ですが、その吸音材の使用量や仕様についてはメーカーにより差がみられます。
本機の吸音材の構成としては、以下のような二層構造となっていました。
圧縮機とその周辺配管を含め、外側を覆う層
圧縮機のシェルのみを覆う内側の層
また、外側の層+上面の層と、圧縮機のシェルのみ覆う層で吸音材の材質が異なっており、
外側の層+上面の層は、不織布系の素材に防音ラバーを組み合わせた仕様となっており、厚みがかなりあります。
こちらは日本メーカーでも多く採用されている仕様と思われます。
対する圧縮機のシェルのみ覆う層についてはポリエステル系の素材を用いていると思われる黒色のもの。
吸水性が少なく、圧縮機腐食の原因に繋がりづらいことから、近年中国系メーカーを中心に採用が進んでいる印象が強い素材です。
全体として、静音性にはかなり気を使い、コストを割いている印象を受けます。「日本市場の静音性要求」に答えようとする努力が伺えます。
続いて、圧縮機本体の仕様を確認していきます。
本機に搭載される圧縮機は、GMCC製の「KSK103D33UEZ3」です。
型番の「103」が示す通り、排除容積は10.3cc、KSKシリーズですので、シングルロータリーとなります。
4.0kW機、200V仕様であることを考慮すると、やや小容量である印象を受けます。
回転数で能力をカバーしていると思いますが、低温暖房時などにどれほどの粘りを見せてくれるのかは気になるところです。
なお、室内ベンチ台上での検証では、最大回転数は105rpsと思われました。
100V機でもこの手前くらいまでは回る機械があるので、もう少し回転数上がるのかなと思っていましたが…
騒音に関しては、体感一般的か、どちらかと言えば静かな部類であるように感じました。
ふんだんに吸音材が使用されている他、本体の板金も分厚いことが功を奏していそうな印象です。
また、シングルロータリー特有の振動も上手に抑えられている印象を受け、不快なビビり音が発生することはありませんでした。
それにしてもGMCCのシェアは凄まじく、近年エアコンを分解すると、6〜7割くらいの確率でGMCC製のコンプレッサーに当たる印象を受けます。
現状エアコン用圧縮機世界シェアNo.1のメーカーとなりますので、それだけ信頼に値する製品であるのは確かでしょう。
余談ですが、全く同型のコンプレッサーが以前使用していた東芝の「RAS-4011T」にも搭載されていました。
制御基板ユニット
制御基板ユニットは全方向を樹脂ボックスで覆う、近年の中国系メーカーでよく見かける構造です。(コネクタ接続部に関しては金属板金で覆う仕様となっています)
自己消化性のある難燃樹脂を素材として用いていると思われます。
サイズ感としては近年の4.0kW機としては一般的なものと思われますが、ずっしりとした重量感があります。
また、パワーモジュール系のヒートシンクは非常に大型のものが搭載されています。
制御基板ユニットについてはさらに分解し、詳細な仕様を確認しました。
主要実装部品は以下の通りとなります。
マイコン→ルネサス製 RX24T
IPM→確認できず (三菱電機製SLIMDIPの可能性高?)
主回路電解コンデンサ→550SV、680μF×2(YSTブランド)
基板の実装部品については全体的に中国系メーカーのものが多く用いられている印象です。
しかしながら、マイコンには日系の大手空調メーカーがこぞって採用するルネサスの「RX24T」が用いられており、制御の要については日本市場向けの制御品質を重視している印象を受けます。
IPMについてはメーカーを確認できませんでしたが、外観(ヒートスプレッサやピン配置など)やRX24Tマイコンとの組み合わせから、三菱電機製の可能性が高いのではないかと見ています。
また、基板の素材は信頼のガラスエポキシ基板(FR-4)であると考えられます。
はんだ付けの品質も申し分ないように見えますし、大電流が流れる箇所は幅を広げ、銅箔厚を補っている工夫もみられます。
全体的に見て、本機は基幹部の信頼性にかなりコストを振っている印象を受けます。
なお、整流回路に別置きの形で設けられる、リアクターについては、QDYL(Yunlu)ブランドの定格15A-5.2mH品が採用されていました。
Tips:本機の高力率回路について
本機の整流回路部分にあたる素子を確認すると、「ダイオードブロック1個 + IGBT 2個」の構成をとっていることがわかります。
このことから、おそらく本機はインターリーブ方式のアクティブPFC回路となっていると思われます。
動作を観察すると、消費電力が500Wを超えたあたりからPFC回路が動作するようで、高周波のスイッチング音が聞こえ始めます。
それと同時に力率が上昇し、1000W以上の領域では殆ど力率が0.99に張り付く、極めて高力率な制御が行われています。
このクラスにはコストと性能のバランスから、部分スイッチング方式が用いられることが多い印象ですが、ここにアクティブ方式のPFC回路を持ってくるあたりに関しても、ハイアールの気合いを感じます。
四方弁
四方弁は盾安(DunAn)製の「DSF(S)-4C-1105」という型番のものを搭載しています。
挙動を観察すると、四方弁コイルは暖房時通電方式と思われ、コイルにはAC200Vが印加されるようです。
四方弁に関しては現状、三花(SANHUA)と盾安の2強となっている印象が強いですね。。。
電子膨張弁
電子膨張弁についても、盾安製を採用しており、冷媒制御系のパーツは盾安で揃えられています。
また、盾安の電子膨張弁としては珍しく、膨張弁本体の頭がコイルから突き出た形状のものとなっています。
プロペラファン
ファンは海外メーカー製造品の定番となる半透明仕様のもので、翼枚数は3枚となっています。
日本メーカーは耐候性(紫外線対策)の観点からか、プロペラファンには黒色を標準として採用していますが、海外メーカーではもれなく半透明仕様を採用しています。
経年変化に関しても申し分ない性能であると思われますが、10年経過後に製造時の状態からどれほどの変化があるのかには興味があります。
ファンのサイズは「φ427×110(羽のひねり、奥行き)」との記載がハブ上にありました。
能力、筐体サイズ的にもごく一般的なサイズか、若干大きなサイズと言えそうです。
また、素材についてもハブ上に記載があり、「AS-GF20」(アクリロニトリルスチレン+ガラス繊維20%) となっています。
羽の形状は近年の製品としては比較的シンプルなもので、翼後方には日本メーカーでもよく見られるV字型の切り欠きが設けられていますが、そのサイズは非常に小さいものです。
送風効率と静音性をバランスさせた結果でしょうか。
と、ここでファンを外してファンモーターを確認しようとしたのですが、なんとナットを取り外してもファンが外れませんでした…
どうやら緩み止め材(ロックタイトなど)が軸の奥まで入り込んで固着しているようでした。
これはファンモーターが故障した際にはファンごと取り替えるという設計方針であることを示しているのか、それとも組み立て作業者がロックタイトを多めに付けすぎてしまっただけなのか、どちらでしょうかね…
ファンモーター
ファンが外れませんでしたので、ファンの隙間からファンモーターを確認します。
本機のファンモーターには臥龍電気(Wolong Electric)製の定格30W品が搭載されています。
銘板記載の内容から読み取るに、定格電圧DC280V、極数は10極、定格回転数は850rpmと思われます。
また、「AL」の表記から、 軽量、低コストを実現しているアルミ巻線採用モデルであると思われます。
定格出力については、本機が200V、4.0kWモデルであることを考慮すると、やや小さめな容量選定な印象を受けます。
高出力運転時にはオーバードライブ気味で動作させている様子も観察できました。
ここはある種コスト面での割り切りと言える部分かもしれません。(ハイセンスの200V、4.0kW機種についても30W定格のファンモーターを使用していました)
なお、ファンモーターのリード線は3本であり、制御基板側でセンサレス制御を行っていることが分かります。
熱交換器
熱交換器は2列フル実装仕様となっています。
ここは1列で頑張らせるメーカーも多いため、スタンダードモデルながらコストを掛けているなと感じる部分です。
熱交換器の面積自体も可能な範囲で広げているように見受けられます。
用いられている銅管は、測定したところ、一般的な7mm管であると思われます。
熱交換器の厚みは2列合計36mm。1列あたり18mm×2の構成です。
極めて一般的な仕様であると言えるでしょう。
6.総評
ハイアールが日本のルームエアコン市場へ参入するにあたり、その先陣を切った本機の室外機。一通り分解を終えて見えてきたのは、「コストを抑える部分」と「信頼性や基本性能を担保する部分」のメリハリが非常に明確な設計思想です。
特に印象的なのは、「静音性」と「制御品質」へのアプローチです。 スタンダードモデルながら、計746gの吸音材を二層構造で配置し、板金も厚みを持たせてビビリ音を抑える防音設計。さらに、制御の要であるマイコンには国内大手も多用するルネサス製「RX24T」を採用し、このクラスとしては珍しくインターリーブ方式のアクティブPFC回路を組んで力率0.99の効率的な制御を行うなど、基幹部分にはしっかりコストが割かれています。
熱交換器を2列フル実装している点も、基本性能への妥協のなさが窺えます。
一方で、合理化による「割り切り」も随所に見られます。 ファンモーターには軽量・低コストなアルミ巻線の30W品を採用し、高負荷時はオーバードライブ気味に回す仕様としている点や、一部性能に影響しない小部品には明確なコストカットが見られる等、海外メーカーらしい合理的な設計が垣間見えます。
全体として、GMCC製のコンプレッサーや盾安(DunAn)製の冷媒制御パーツといった世界トップクラスの調達力を活かしつつ、日本の市場要求に合わせた巧みなローカライズを施した、非常にバランスの良い一台だと感じました。
10年後の半透明ファンの経年変化や、実際のフィールドでの耐久性も含め、今後のハイアールの動向が非常に楽しみになる分解調査でした。
最後まで記事をご覧いただきありがとうございました!
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