高市首相よ、覚悟はあるか ── サッチャーは戦った宰相だったホルムズ海峡が封鎖された。日本はどうする。
2026年2月28日、米国とイスラエルがイランを攻撃した。最高指導者ハメネイ師が殺害された。イラン革命防衛隊は報復としてホルムズ海峡の封鎖を宣言し、通過する船舶を「焼き払う」と警告した。日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手3社は通峡を停止した。
ホルムズ海峡は世界の石油輸送の2割、LNG貿易量の2割が通過する要衝である。そして日本は原油輸入の9割超を中東に依存している。代替ルートはほぼ存在しない。
日本の生命線が、今、断たれかけている。
これに対して高市首相は何をしたか。「情報収集を徹底」「外交努力」「動向を注視」。木原官房長官は「存立危機事態に該当するとは判断していない」と述べた。
あの威勢のよさは、どこへ行ったのか。
イランという国の本質を見よ
ここで一つ、はっきりさせておきたいことがある。
イラン・イスラム共和国は、自国民の反政府運動に対して3万人以上を射殺してきた政権である。2022年のマフサ・アミニの死をきっかけとした抗議運動でも市民を大量に殺害した。核開発を進め、ヒズボラやハマスなどのプロキシを通じて地域を不安定化させてきた。
自国民に銃を向ける政権は、根本的に「無道」である。
覇権国の行動に追従することで覇権国の覚えをめでたくする——これは弱小同盟国の古今東西変わらぬ処世術だ。ただし条件がある。「覇権国の行動が無道でない限り」である。
今回、米国は無道な政権に対して行動した。追従すること自体に問題はない。
問題は、追従するなら追従するなりの覚悟と行動が伴わなければならないということだ。
「注視する」は外交ではない
湾岸諸国を見よ。カタールをはじめとする国々は、自国に米軍基地を抱えながらも「イランへの攻撃には使用させない」と早々に宣言した。米国を怒らせない範囲で、自国がイランの報復対象にならないよう立ち回った。
これが弱小同盟国の「知恵ある追従」である。覇権国に追従しつつも、自国の死活的利益に関わる部分では独自の行動余地を確保する。
日本がやっているのは何か。追従の判断すら曖昧にし、「核不拡散が大事」という一般論を述べ、シーレーンが断たれるリスクを丸呑みし、独自の行動余地も確保しない。
これは処世術ですらない。思考停止である。
中国が見ている
ここで視点を東アジアに移す。
米国防総省は、中国軍が2027年までに台湾侵攻を可能にする態勢を着実に構築していると分析している。今は2026年3月——そのタイムラインの真っただ中だ。
そして今、米軍は中東に戦力を集中させている。中国にとって、これ以上の好機はない。米国の注意と軍事リソースが中東に向いている時こそ、台湾に対して動く「窓」が開く。
高市大勝で中国はビビっている。保守的で対中強硬姿勢を明確にする首相が、国民の圧倒的支持を得て誕生した。中国にとって嫌な展開だった。
しかし、その高市首相が危機を前にして「注視する」しか言えないなら、中国は即座に見切りをつける。「高市も結局口だけだった」と。せっかく大勝で築いた抑止効果が、一瞬で消える。
ビビらせている相手に、ビビっている姿を見せるのは、最悪の戦略である。
やるべきことは明確だ
では、高市首相は何をすべきか。段取りは極めてシンプルだ。
第一段階:閣議決定の変更——今日にでもできる
現在、中東に展開する海上自衛隊の護衛艦は、閣議決定により「ホルムズ海峡やペルシャ湾では活動しない」と定められている。この制限を外す。閣議決定一つで変えられる。国会承認すら不要だ。今日にでもできる。
護衛艦の増派は不要である。むしろ増派しないことに意味がある。「東アジア情勢に鑑み、本土防衛の戦力を維持する必要がある」と明言する。これ自体が中国への最大のメッセージになる。「日本は台湾有事を本気で想定している」と。
第二段階:重要影響事態の認定
同盟国アメリカの基地が攻撃を受け、ホルムズ海峡が封鎖されている。重要影響事態を認定する。緊急時には国会の事後承認でよい。これで米軍への後方支援——補給、輸送、医療支援——が可能になる。
第三段階:存立危機事態への格上げ
封鎖の長期化と日本経済への打撃が明白になった段階で、存立危機事態に格上げする。これで集団的自衛権の行使——機雷掃海や船舶護衛——が法的に可能になる。
安保法制の審議で、安倍政権は「ホルムズ海峡の機雷掃海」を存立危機事態の代表例として国民に説明した。安倍元首相が政治生命を賭けて作ったこの法律を使う場面が、まさに今来ている。
これが「show the flag」だ
2001年の同時多発テロの後、米国は同盟国に「show the flag(旗を見せろ)」と求めた。小泉首相はインド洋への海上自衛隊派遣で応えた。
今回は、あの時よりも遥かに切実だ。あの時は日本のシーレーンが直接脅かされていなかった。今は原油の9割が止まりかけている。同盟国を支援する義務と自国の生存利益が完全に一致している。
そして「show the flag」は善意のボランティアではない。取引カードだ。
3月19日の日米首脳会談を前に、重要影響事態を認定して米軍支援に動く。これでトランプに対する交渉ポジションが一変する。
「日本は中東で旗を立てた。ならば関税はどうしてくれるのか」
トランプは商売人だ。対価なしに譲歩はしない。だが対価を出した相手には応える。
手ぶらで首脳会談に臨んで「お願い」するのか、「日本は既に動いた」と言えるのか。その差は天と地ほどある。
さらに踏み込め
旗を立てた上で、さらにパッケージを組む。
イスラエルへの防衛装備移転。迎撃ミサイルの部品や電子装備なら現行の枠組みで検討できる。イスラエル支援はトランプにとって核心的利益だ。そこに日本が加わる意味は、関税交渉の何倍もの重みを持つ。
ウクライナへの武器供与。NATOとの関係強化に直結し、対中包囲網を考えた時に欧州を味方につける戦略的価値がある。
そして補正予算で弾薬増産。武器を供与すれば備蓄が減る。それを補填し、さらに増産する。これは防衛産業基盤の強化であり、雇用創出であり、経済対策であり、中国に対して「日本は継戦能力を高めている」というシグナルでもある。
高市首相自身が「イラン情勢次第で補正予算編成」と発言している。ならばその中身を、この戦略パッケージにすればよい。
サッチャーは戦った
1982年、マーガレット・サッチャーはフォークランド紛争で地球の裏側まで艦隊を送った。
フォークランド諸島は南大西洋の果てにある、羊しかいない島だ。ホルムズ海峡のように国家のエネルギー安保が懸かっていたわけではない。経済的利益はほぼゼロに等しかった。
それでもサッチャーは「英国の主権が侵された」という一点で戦争を決断した。28,000人の兵を送り、艦艇を沈められ、兵士の命を失いながらも、退かなかった。
あの決断がサッチャーを「鉄の女」にした。そしてあの決断があったからこそ、英国は冷戦終結まで国際社会で発言力を保ち続けた。
高市さんは今、サッチャーよりも遥かに条件が揃っている。
法律がある——安倍元首相が政治生命を賭けて成立させた安保法制。護衛艦が既に現地にいる。前例がある——1991年の湾岸戦争後、海部首相はペルシャ湾に掃海艇6隻を送った。閣議決定一つで動かせる。増派すら不要だ。
サッチャーは地球の裏側に28,000人を送った。高市さんは閣議決定の文言を変えるだけでよい。
それすらできないのか。
覚悟を問う
高市さんを大勝させたのは、「この人なら動いてくれる」という国民の期待だ。
保守として威勢のいいことを言い、中国に対して毅然とした姿勢を見せ、国防を強化すると訴えた。だから票を入れた。
ところが実際に危機が来たら「注視する」「外交努力」。これでは前任の石破氏と何が違うのか。いや、石破氏は最初から期待されていなかった分だけまだ良い。高市さんは「やってくれる」と期待させた上で動かない。裏切りの度合いがより深い。
3月19日の日米首脳会談まで、あと2週間余り。そこまでに動けるかどうかが、高市政権の命運を決める。
大勝の貯金は無限ではない。保守層の離反は致命的だ。保守層は「覚悟」で判断する。「口だけだった」と見切られたら、もう戻ってこない。
護衛艦はそこにいる。法律はある。前例はある。足りないのは覚悟だけだ。
高市首相よ、覚悟はあるか。
サッチャーは戦った宰相だった。あなたはどうする。
平岡憲人(清風情報工科学院 専務理事)
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無制限に移民を入れる外患誘致の高市ですよ。 間接侵略で日本は終わり。
無制限は妄想では?入国審査あるし。