ロシアが中国との経済関係を強化した理由
廣瀬: ところで、中国ではまもなく、3期目になる習近平政権が発足しますよね。
近藤: そうです。3月5日から、年に一度の国会にあたる全国人民代表大会が始まり、おそらく3月15日頃に、習近平氏が国家主席に3選されます。
私は10年前、習近平氏が初めて国家主席に選出された時、北京で見ていたんですが、3月14日午前に選出され、午後に最初に行った「仕事」が、プーチン大統領に電話をかけて、国家主席就任を報告することでした。そして翌週の22日には、もうモスクワに飛んでいた。それほど習主席は、プーチン大統領に憧れていました。
以後、これまで10年の習近平外交を一言で言い表せば、「プーチンべったり外交」です。これまでオンラインも含めて、42回もプーチン大統領と会談している。これは、故・安倍晋三元首相の27回の1.5倍以上です。
廣瀬: これは近藤さんとの共著で詳述しましたが、習近平主席との初会談の時、プーチン大統領はこの中国の新たなリーダーを、それほど強く意識していなかったんですね。クレムリン宮殿で時代がかった歓迎式典を開き、「タヴァーリシ!」(同志)と呼んだら、それだけで習近平新主席は感激してしまった(笑)。
近藤: おっしゃる通り、10年前の初めてのモスクワ訪問は、習近平主席にとって「感激の旅」でした。崇拝する毛沢東主席が、1949年に新中国を建国すると、真っ先にヨシフ・スターリン書記長が君臨するモスクワを訪問したことになぞらえていたと思います。「タヴァーリシ」は、当時のスターリン・毛沢東時代に使われていた用語で、習近平主席が知っている唯一のロシア語のようです。
10年前の初訪問の際には、他にも、プーチン大統領から額縁に入れた写真を渡され、そこには1959年にモスクワを訪問した父親(習仲勲副首相)の姿が映っていた。これまた感激で、その父親の写真は、いまでも「中南海」の習近平総書記の執務室に飾ってあります。
さらにおそるおそる、「長期政権の秘訣を教えてほしい」と問うたら、1歳年上のプーチン大統領が、まるで兄貴のように説いた。
「それは二つの機関――軍隊とエネルギー産業を握ることだ。この二つさえ掌握していれば、決してライバルは現れない」
これでまた感激で、習新主席はプーチン大統領に、「これから毎年、5回会談してほしい」とお願いました。プーチン大統領が承諾して、またまた感激です。
廣瀬: プーチン大統領は外交巧者ですからね。中国の新主席を、「愛(う)いやつ」と思い、うまく利用していこうと考えたのでしょう。
翌2014年2月にソチで行った冬季オリンピックの開会式に習近平主席を招待したのも、そうした一環でした。ソチ冬季オリンピックの直後に、ウクライナのクリミア半島に侵攻したわけですが、侵攻によって欧米から制裁を受けることを見越して、中国との経済関係を強化しようとしたのです。