「杉並区大改革」で女性議員比率が半数以上に…地方統一選挙で「杉並区」に何が起こっていたのか

実は杉並区は、第五福竜丸の被災を契機に始まった組織的な原水爆禁止署名運動の発祥の地で、教科書問題などをはじめ、数々の社会問題に対する市民運動が行われてきた地域でもある。

そうした歴史に加え、田中前区長時代に「財政再建」名目で学校の統廃合や保育園の民営化、公園の廃止、児童館・高齢者施設の廃止などが進められる中、「これでは生活が成り立たない」「子供たちの遊び場や居場所をどうするのか」と地域の住民も声をあげ始めたのが、住民たちによる杉並区大改革の土台だった。

「’17年の総選挙のときも杉並の市民グループは各野党に野党共闘の実現を求めてきましたが、うまくいきませんでした。そこで’21年の衆議院議員総選挙では、事前に杉並市民グループで具体的な政策も作り各野党に提案。今度こそ野党共闘の実現をと呼びかけたんです」

しかし、杉並区のある東京8区では、吉田晴美氏を野党統一候補とする流れが進む中、れいわ代表の山本太郎氏が突然出馬を表明、それに吉田氏の支持者らが猛反発するというハプニングも起きた。そんな中、最終的に山本太郎氏も出馬を撤回、共産党も立候補を取り下げ、野党候補の一本化が「奇跡的にまとまった」という。

これまでと明らかに違う「風」が吹き始めた…

これまでと明らかに違う風が吹いてきたのは、選挙期間中に開催された集会や街頭宣伝の場に女性作家やライター、著名人が多数駆け付けるなど、女性の姿が一段と目立つようになったこと。

そして山本太郎氏の騒動も受け、「与党対野党共闘」のシンボルとして全国的な注目候補となった吉田氏は石原伸晃氏を破り、約30年間続いてきた「石原王国」に風穴を開けた。投票率も東京8区は61.03%で、都内25の選挙区中トップとなり、前回比も5.61ポイント上昇に。

次の挑戦は、’22年の杉並区長選だ。ただし、相手は区長を3期務めてきて、4期目を狙う現職区長の田中良氏だ。そこで市民グループも、各野党と市民が一緒になって選挙戦に取り組む市民組織を作ったという。

今回の統一地方選挙で、終業後に駅頭に立ち投票を呼びかけた岸本聡子区長(PHOTO:漆原淳俊氏提供)
今回の統一地方選挙で、終業後に駅頭に立ち投票を呼びかけた岸本聡子区長(PHOTO:漆原淳俊氏提供)

「昨年1月30日に『住民思いの杉並区長をつくる会』を立ち上げました。 

リアルの参加者とオンライン参加者約200人による発足集会では、都市計画道路建設や児童館廃止などに反対してきた住民たちからの報告がありましたが、そのほとんどは人前で話すのも、選挙活動に参加するのも初めての女性たちでした。会場の運営や司会役も女性が中心。この女性たちがその後の選挙戦の中心メンバーとなりました。 

会の名称も、初めて集会に来た女性の堤案だったんですよ。我々もいくつか案を準備していましたが、民主的に決めようと会場のみんなの挙手で決まりました。 

『~~市民の会』などの『市民という言葉は偉そうで怖い』とか、『わかりやすい言葉が良い』という意見は、我々の世代では思いつかないことでした」