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『劇場版モノノ怪』についての追加の説明とお詫び
『劇場版モノノ怪』の裏方としての発信は、これで最後にしようと思います。これを追加で出すのは、一部間違って伝わったところの説明と、更にお詫びしたい人たちがいるからです。長文ですが、後半に本題があるので、最後まで読んでいただけますと幸いです。一人でも多くの方に劇場で作品を観ていただけることを願っております。
6 月 5 日金曜の朝、『説明とお詫び』という文書と引退表明的な発信をした後、網羅的に X の反響を見て回りました。今回自分がした再起用の決断が本当に最良の道だったのか、ということの確認は『説明とお詫び』の反響をもってしかできないからです。
 この 2 日で一生分の 『いいね』 をした気がします。「見てますよ、届いてますよ」の意図で 多くの『いいね』 を付けさせてもらったのですが、可能な限りすべての反響をしっかり読ませていただいています。肯定的な意見にだけ『いいね』を付けていると見られることのマイナスもご指摘もいただいたので、今後は少し控えようと思いました。
 これは今起きていることの縮図だと感じました。普段だったら、「何でそんな風に受け取るんだろう」と考えていたと思います。今回のことを受けて、そこまで配慮しなくてはならないことを学びました。より言葉を丁寧に使うならば「ねばならない」という言葉は、義務的で窮屈さを誰かに強いられているようにも感じ取れるので、広く配慮する目線を持つ必要性を学んだと言い換えます。普段から自分は言葉に対して比較的自由スタイルで、「どうせそんなに細かいことは伝わらない」という出たとこ勝負感のある使い方をしていたと思います。仕事人としては落第点だったと思います。今回のように 「もやもやさせてしまっている人」や 「受け入れ難い状況に追いやってしまった人」を生んでしまっている状況において、それではだめだと反省しました。ましてや今回『説明とお詫び』を出したのは そういう方々のために出したつもりです。本当に一人でも多くの人に作品を観てもらいたいし、楽しんでもらいたいし、そうでなくなってしまった方々のもやもやを晴らしたいと思っています。対立を煽る意図や、切り捨てる意図は持ちようもありません。
 先にふたつのポストを消したことに触れておきます。ひとつ目は、事実と異なる話が発信され、拡散されかけていたので弁護士経由で警告を入れつつ、事実と異なる発信が一旦消されたのでこちらも消しました。本当ならこんなポストは誰にも見せたくないのです。この件は両者で捺印した約束があり、双方ともにそれを順守していくのみです。この件には何ひとつ後ろ暗い要素はありません。
 もうひとつは、まさに自分の配慮のスコープから見えていなかったこと、言葉使いの雑さを象徴した件です。6 月 5 日金曜の朝に『説明とお詫び』を出したのですが、もっと前から文書の準備に入っておりました。ある程度文案が固まり、近々に出せることが見えたタイミングで、下の画像にある発信をしました。(今回検索してとある方のポストからスクシさせてもらいました)  説明を求めていらっしゃる方々に対して「もう少しで説明文を出しますよ」ということを伝えたい意図だったのですが、「ご批判を頂戴している方々」という記述は、お客様を切り捨てる発言になっていたと思います。「失望させてしまったお客様」「不安感・不信感を抱かせてしまったお客様」というような表現にするべきでした。
 さらにもうひとつ、想像力が足りていなかったことへのお詫びがあります。『説明とお詫び』の文書の中で使った「離の薬売りの登場を望まない方々」という表現があまりに雑でした。きちんと「声の登場を望まない」を場合分けするか、「望まない」ではなく「かつては望んでいてくださった気持ち」に配慮した言い方をすべきでした。これらの表現で不快に思われた方、作品を楽しんでいただく気持ちを削いでしまった方にお詫びをするとともに、何とかその気持ちを戻していただけないかと願っております
ここからが本題です。『説明とお詫び』『引退』などが混ざってネットニュースになったことで、きちんと伝わらなかったかもしれないと感じている点を説明させていただきます。
 今回起きたことを短くまとめると「公式が降板させたのに告知なく再登板させた」となるのだろうと思います。「告知なく」の部分については、まさに謝罪した点で、失点が明確な分しっかり伝わったと感じています。情報を事前に出さなかったことと、「ネタバレ禁止」施策によって生じた問題について改めてお詫びいたします。
 「告知なく」の部分を除いたと仮定した上での話ではありますが、再起用についての謝罪はしておりません。わざわざ「謝罪はしていない」と、この点を粒立てることは開き直っているような誤解を与え、マイナスもあることを理解しております。しかし謝罪することは製作者が作品を否定することになってしまうし、作品に対する誇りは捨てていません。
 再起用をポジティブに感じられないお客様がいらっしゃるのはよく理解していたつもりです。その上での『決断』だったのです。最大限の努力と配慮をした上での話ですが、どの『決断』をしたとしても、すべての方の支持を得ることは難しかったと思っています。
 例の報道があり、大きな混乱の最中、他作品の動向とかの様子を見ることもなく降板を発表しました。降板の発表の際の「作品性の観点」というコメントは、キャラクターと演じる声優さんの私生活を混ぜた視点ではなく、お客様に集中して作品を楽しんでもらう環境が崩れたということを意味していました。制作中止もあり得るくらいのインパクトでした。内部からもそういう声は上がっていましたが、自分と監督を中心に声優交代してでも続けることを『決断』しました。今回いただいたご意見の中には、「この時点で中止しておくべきだった」というものもありました。その考え方自体は否定しませんが、自分自身も監督も、作品を作り続けることを断念したくなかったし、劇場版の発表をしたときのお客さんの熱量に答えたかったのです。発表したときには想定しないことが起きたわけですが、その中の最善を探し、作り続けるに足る作品にしようと決意しました。
 降板と制作継続の先、再起用の必要性があったのか、という点については、引きで見ればかなり矛盾があることと思います。「降板させたのに再登板させた」ことの一貫性のなさについてのご指摘は全くもって正しいと考えています。それでも再起用を自分が決めた理由は、声優さんの禊が終わったと考えたとかそんな話では全くないです。マイナスも想定していたため、安易な人気取りのはずもないです。『説明とお詫び』に記載した描き分けが見えたことがきっかけですが、クラウドファンディングを含め『劇場版モノノ怪』を最も喜んでくれたはずのお客様がそのまま置いて行かれてしまっているような感覚を持っていて、その状況を何とかポジティブに転じたいと考えたからです。置いて行かれたと感じていたお客様のすべてが再起用をポジティブに感じることはできないであろうことも理解していました。しかし「諦めるよりは制作を続ける方が喜んでもらえる人が多いはずだ」「このまま離の薬売りが登場しないよりは登場を喜んでもらえる人の方が多いはずだ」「再登場するのに声がなければ、大好きなキャラがいなくなってしまったと感じる人が多いはずだ」など、全て想像することしかできないものの、一人でも喜んでもらえる人が多いと思われる選択肢を取りたいと思っていました。それが我々の大義であり、ビジネスでもあります。すべてのお客様が納得してくれることはないことを前提とした『決断』でした。
 その想像が正しかったかどうかを確かめるために、 X でずっと反響を見ていました。結局それに答えを出すことは難しかったです。キャラクターが好きな人、声優さんが好きな人、混ざってひとつだった好きが、分離され、別の混ざり方をしています。喜びの声を多数いただいてはいますが、そうではない気持ちの方の声を減らせたのかどうか、そこに答えはありませんでした。
 この再起用を『決断』した時点で、責任を取って引退することを決めていました。このタイミングで対外的に発表することは全く考えていませんでしたが、むしろ内部に対して必要だと考えていました。この『決断』は、『劇場版モノノ怪』がツインエンジン一社出資であり、自社のグループ制作であり、中村監督との関係値があったからできたことではありました。 でも同時に、関わっている全員が納得する結論ではなかったと思います。再起用は自分がした『決断』であり後悔していません。批判も覚悟の上のというよりは、最大公約数を取るための『決断』でした。しかし今回の『決断』のプロセスは、未来のあるツインエンジンのグループとそのメンバーにとって良くないと考え引退を決意しました。
 『説明とお詫び』の文書も、更にこの長文も、『モノノ怪』を愛してくれている方に、全力で愛してくださいと言うために書いています。本当だったら愛したいと思ってくれていたはずの方に、できればもう一度愛してくださいと言うために書いています。
 自画自賛のようで恐縮ですが『劇場版モノノ怪』は、全三章素晴らしい出来栄えとなっております。この作品だから、この作品を作れる、作りたい人たちが集まっていたから、様々な困難をおしてでも世に出したいと思いました。
 自分自身は作品に対してほとんど貢献していません。作品は、監督はじめクリエイターの皆様、この重い作品を作り上げた制作マン、素晴らしい芝居をしてくれたキャストの皆様、関わってくれた全てのスタッフの皆様のものです。そしてすべてはお客様に喜んでもらうためです。お客様のため、という表現がきれいごとに聞こえるかもしれません。なぜなら一人一人はそれぞれの思いで参加していて、今回の『決断』を一緒にしたわけではないからです。ただ、作品を世に出すことの最大の大義が、お客様に喜んでもらえることであることは、ものづくりに関わる人たちの共通項だと思います。
 自分自身も最終章を何度も見る中で、第一章からはられていた伏線の回収や、キャラクターたちの苦悩と開放、つながった壮大なドラマ、そして合成の誤謬という、遠く感じていたテーマを近くに実感できるようになりました。神谷さんが演じる坤の薬売りとその結末に心底震えています。正直、こんな作品をもう一度はできないと思ったのも引退を決めた理由の一つです。
 今後は、ツインエンジングループに育て来ている若い人たちをバックアップして、経営面など、より高いステージでの修練を積みたいと考えています。引退について心配の声を頂戴しております。本来今回のようなことがなければ外部に向かって発信する種類のものではなく、社内の役割の変化の話でしかありません。社内の自分の役割はきちんと変えていくつもりですが、作品への悪影響は一切出さないつもりです。『モノノ怪』が今後どうなるかは、少し前から引退を決めていた自分の意志ではなく、若い人たちの意思に引き継がれます。『劇場版モノノ怪』に参加してくれている方の中には、テレビシリーズの視聴者や中村監督作品が好きだったという方が大勢います。今回の学びを自分とチームが活かしながら、新たな作品、新たなうねりを作っていけるよう、自分も最大限バックアップしていきたいと思います。

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