ドル円相場、激動の1年-止まらぬ円安、押し込まれる日本の防衛ライン
為替市場で円はこの1年、断続的な売り圧力にさらされてきた。政府・日本銀行は円安阻止に向けて大規模な円買い介入に踏み切ったものの、その効果はすでに薄れつつある。米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを進めても円安が止まらない異例の状況が続く中、市場では日本の通貨当局が再び介入に動くことへの警戒感が強まっている。
政府は為替介入の有無を公式には認めていないが、関係者によると、介入は4月30日に実施された。日銀の当座預金残高を基にした推計では、介入は5月初旬まで続き、投入額は最大で10兆円規模に達した可能性がある。
円安の土台にあるのは、日米の大きな金利差だ。日本では低金利政策が続く一方、米国では依然として比較的高い利回りが得られるため、投資資金がドルに流れやすい状況が続いている。FRBはこの1年で利下げを進めたが、日銀はインフレ圧力が残る中でも利上げに慎重姿勢を維持しており、日米金利差の縮小は限定的にとどまっている。
もっとも、円相場を揺さぶったのは金融政策だけではない。2025年春以降、トランプ米大統領による相次ぐ関税措置への警戒感から世界経済の先行き不安が強まり、円は対ドルで長期的な下落基調をたどった。その後、日本国内では政治情勢も不安定化。石破茂政権の求心力低下に加え、高市早苗首相の就任後には大型財政支出や国債増発への思惑が広がり、株高と円安・国債安が同時に進む「高市トレード」が市場で意識された。
さらに、今年に入ってからの中東情勢の悪化も円安要因となった。エネルギー輸入への依存度が高い日本経済の脆弱性が改めて意識され、円には一段の下押し圧力がかかっている。
市場の焦点は現在、円安が再び加速した場合に、日本当局が追加介入に踏み切るかどうか、そして日銀が追加利上げに動けるかへ移りつつある。以下は、この1年の円相場を動かした主な出来事だ。
過去1年間の円相場の変動要因:
日銀、金利据え置き-国債買い入れ縮小を緩和
超長期国債の値動きが荒くなったことを受け、日銀は国債買い入れの減額ペースを緩める方針を示す
与党、参院で過半数割れ
石破茂首相率いる与党連立が参院で過半数を失い、政権運営への不安から日本株や国債が売られる。
日銀、政策金利を据え置き
日銀は関税政策の影響や景気見通しを見極めるため、政策金利を0.5%で維持した。
自民党内で「石破離れ」拡大
自民党内で石破氏への退陣圧力が強まり、政局不安が広がる。
石破首相、退任を表明
石破氏が退任を表明し、後継候補や今後の政策運営を巡る不透明感が市場で意識される。
FRBは利下げ、日銀は据え置き
FRBが利下げに踏み切る一方、日銀は現状維持を決定。市場では円を支える材料不足との見方が広がる。
高市早苗氏、自民党総裁選で勝利
高市氏の勝利を受け、市場では財政支出拡大への警戒感が強まる。
FRB追加利下げ
FRBの利下げにもかかわらず、日本の財政不安が重荷となり、円の下支え効果は限られた。
FRB、3会合連続で利下げ
米国の金融緩和が続く中でも、日本では財政懸念が根強く残った。
日銀が追加利上げ
日銀は政策金利を0.75%へ引き上げたが、追加利上げに慎重な姿勢が意識され、円安が続く。
国債市場急落、日銀は据え置き
高市首相による衆院解散と消費減税検討を受け、国債市場が急変動。日銀は金利据え置きを決める。
FRBが「レートチェック」
ニューヨーク連銀による円相場の聞き取り調査を受け、市場では介入観測が強まり円が急反発。
高市自民、選挙で大勝
自民党が安定多数を確保し、政治の安定期待から一時円と国債が買い戻される。
日銀、再び据え置き
日銀が現状維持を決め、円安基調が続いた。
日銀、政策据え置き-反対意見3人に
日銀は中東情勢への警戒から据え置きを決定。一方で3人の審議委員は追加利上げを主張。
日本通貨当局が為替介入
ドル円が160円を突破したことを受け、政府・日銀が円買い介入を実施。市場では連休中の追加介入観測も広がる。
財務相、円安けん制
片山財務相は「断固たる措置を取るときは取る」と改めて市場をけん制した。
日銀による追加利上げは次回の6月会合との見方が多いが、それまでなお時間がある。中東情勢を巡る不透明感も続く中、市場では円安圧力が再び強まることへの警戒がくすぶっている。