報われないモノ
ここら辺、スバルくんが叩かれてるのが納得いかなくて「日本男子が戦争バンザイになる方がおかしいでしょ! ちゃんと生まれ育った環境の差を書いてるんだから! 叩かないで😡」になってました
スバルくんは悪くない!!!(盲目)
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『レム……! 馬鹿か、俺は。いや、馬鹿だ俺は……! こんなことしてる場合じゃ……』
『――何を、バタバタと騒いでるんですか』
『れ、む……?』
『――。はい、と答えるのはあまり肯定的ではないです。まだ、私は自分があなたの言うレムという人間だと認めたわけではないので』
『レム、どこもケガしてないか? どこか痛かったら話して……え、なに、その顔』
『……あなたがそれを言うんですか? あと少しで死んでしまうところだったのに。……自覚がないみたいですね。──やっぱり、あなたは信用できません』
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「──あと少しで死んでしまう状態になってでも、スバルくんはレムを助けようとしてくれたのに……信用出来ないだなんて、何を考えているんですか!」
レムが、スバルに冷たく当たる自分に悔しそうに唇を噛む。
「──スバルくんは、レムを見捨ててもおかしくなかったです。こんなこと、自分ですら嫌になるのに」
◇◇◇
「──命を賭けて救った女にこうも悪し様に言われていてはわけないな」
アベルが、平坦な声でそうつぶやく。
快も不快も感じさせない顔で。
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『……顔色が悪いですよ。まだ、寝ていた方がいいと思います』
『心配してくれてありがとな。けど、色々と聞かなきゃいけないことがあるんだ。……聞いておきたいんだけど、ここってシュドラクの誰かの家だよな?』
『正直に聞くけど、あいつは……ルイは?』
『――。苦々しい顔ですね。どうして、あの子を遠ざけるんですか』
『それは説明しづらいし、してもわかってもらえないかもな理由があるんだよ』
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「──スバルがルイを許せないのは当然なのよ。そこについて、スバルに非は一切ないかしら」
ベアトリスだって、手放しであれを許すことなどできるわけがない。
スバルの決めたことであれば、ベアトリスはもちろん味方をするが、そうでなければ、ルイを許す理由などベアトリスにはない。
「──スバルは、優しすぎるのよ。それじゃ、苦労するばっかりかしら」
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『おオ、スバル! どうやラ、無事に目が覚めたようだナ』
『おかげさまで、どうにか生還したよ。ミゼルダさんにも心配かけたみたいだ』
『気にするナ。死ねバ、勇敢な同胞の魂を天に返シ、亡骸は土へ弔うだケ。そうならズ、お前の魂が留まったことは喜ばしイ。すでに相手がいるのが残念ダ。レムとルイ、もう一人くらい増やさぬカ?』
『ミゼルダさん! お言葉が過ぎます。私はこの人のことを、信用も理解もしていません』
『ならバ、私がもらい受けてもいいのカ?』
『ええ、当然です。差し上げます』
『俺の意思が反映されてない!』
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「バッスー人気ですね! 僕的には、ミゼルダさんの方がいいと思いますよ! 懐の深さ的にも!」
「本人の前で失礼な方ですね。レムを器量の小さい女だと言いたいんですか」
「いえ! ただ、バッスーの周りにミゼルダさんみたいな方はいないので、物語的に盛り上がるなーと」
「何この人……怖いんだけど……」
セシルスとレムが半ば喧嘩のようになりながら言葉を交わすのを、フェリスは嫌そうな顔で見届けていた。
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『とりあえず、あんたとサシで話がしたい。――ヴィンセント・アベルクス』
『一度目は朦朧としていたから許すが、俺に同じことを語らせるな。故に、三度目はないと知れ。俺の名を、軽はずみに口にするのは慎むがいい』
『……嫌だと言ったら?』
『相応の罰を与える。貴様に音を上げさせる方法など、いくらでも知っているぞ』
『お前、ムカつく奴だな……』
『ならば、三度目を言わせてみるか?』
『――。いいや、それはやめとく。言い争いにきたんじゃねぇよ。――アベル』
『賢明だ。貴様が引かねば、血を見ることになっていただろうからな』
『は、言ってろ。こう言っちゃなんだが、俺とお前がやり合ったらギリギリのいい勝負になっちまうと思うぜ』
『ならば、貴様の方こそ後ろを見ることだな』
『後ろ……? うえ、あ、あの、レムさん? そのお顔は……』
『いいえ? ただ、死にかけて三日も眠っていたくせに、つまらない意地を張って体を大事にしないみたいでしたから。そのまま、野垂れ死んだらいいんじゃないですか?』
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「──レム、いくら何でも、これは言い過ぎだと思うわ」
「──レムも、そう思います……」
レムの一線を超えた発言に、エミリアが苦言を呈する。
スバルを嫌っているレムが嫌味を言いたかっただけだと言うのも、本気で死ねばいいと思っているわけではないのもわかるし、心配の裏返しなのかもしれないが。
「──あんなに頑張ったスバルが、そんなふうに言われるのは可哀想よ」
記憶をなくしてからのレムは、前よりも健全な精神なのだが、如何せん、スバルへの言葉が目に余ることが多い。
「──やっぱり、私は、スバルの味方をしてあげたいから」
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『――あの、帝国の陣地を攻撃したのは、現実のことか?』
『無論、そうだ。バドハイムの外に展開していた帝国の陣は、シュドラクの力で以てことごとく打ち滅ぼした。貴様の見たものは、幻でも何でもない』
『……話は、わかった。お前が『シュドラクの民』を率いて、帝国の野営地を攻撃した。それで、奴らを追っ払った。そういうことだな』
『ああ。だが、それだけでは足りん。──これは、貴様の功績だ』
『あ?』
『わからぬのか? 俺やシュドラクが無傷で勝利できたのは、相手の陣容を子細に知ることができたからだ。他ならぬ、貴様の口から聞き出してな』
『薬草の副作用だ。『血命の儀』を終え、貴様は瀕死の状態だった。野営地を落とし、女を救い出すまで命をもたせる必要があった。そのために与えた薬の効能が、貴様の頭を朦朧のまま固定した。故に』
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「アベルくん……」
菜穂子が、悲劇を目の当たりにしたかのように、顔を青くして瞳を見開いた。
隣にいたセシルスはそれを覗き込み、
「──でも、バッスーが起きてても同じことになってましたよ! バッスーはあのお嬢さんを助けるって決めてましたし……見捨てるような人じゃないので」
「──それは分かってるの。昴なら、レムちゃんを助けるために、そうしたかもしれない……でも、うん、そうじゃなくて……」
「心持ちの問題、ってことですか?」
「うん、そうかもしれないわ。これは、昴も私も、平和な日本で生きてきたから、受け入れられない問題だと思うの」
「なるほど……カルチャーショックというやつですね!」
「少し違うけど……」
セシルスの言葉を受け流し、菜穂子は俯く。
この真実を受け入れるには、昴の心には余裕が足りない。
それが、心配だった。
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『貴様に説得できたと? 殺す以外の術と持たず、知らないモノたちを説得し、よりよい方法を見つけ出して、人死になく円満に女を救い出すことが可能だったのか?』
『それ、は……』
『教えてやる。――それを、夢物語というのだ』
『……だからって、俺は諦めたくなかった』
『貴様が諦めぬ代わりに、貴様以外の誰かが死ぬ。それは貴様と縁もゆかりもない他人であるかもしれぬ。あるいは、貴様の半身のような誰かかもしれぬ。立ち止まり、愚考に耽るということは、それを許容するということだ』
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「────」
ラムが押し黙り、何か言いたげな口を開かず、固く結ぶ。
アベルの言うことは正しく、ラムの聡明な頭は、それに反論の余地を見出さなかった。
ただ、正しいかどうかと、納得できるかどうかは別の話なのだ。
ラムなら、それに納得できるが、スバルはそうじゃない。
だからこそ、スバルの道のりはこんなにも過酷なのだとも思う。
「──酷な話ね」
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『お前、何様なんだよ。神様にでもなったつもりなのかよ……』
『たわけ。神でも英雄でもない。無論、この世界を見下ろす邪悪な観覧者とも違う。――俺は王だ。王の中の王。民草は、頂に立つそれを皇帝と呼ぶ。――俺が、それだ。――神聖ヴォラキア帝国、七十七代皇帝、それが俺だ。もっとも、今は頂から降ろされ、野に下った身だがな』
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「──こんなに偉そうなんだから、王族なのは予想が着くのよ。寧ろ、王族でもなくてこんなに偉そうなら、それは頭の方がイカれてるやつかしら」
「──貴様、主に似て不敬だな」
「スバルと似ているのは、ベティーにとっては褒め言葉なのよ。あと、ベティーはスバルほど怖いもの知らずじゃないかしら」
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『バドハイムの外に展開した帝国兵の陣は、政敵が俺を始末するために派遣したものたちだ。貴様は正しく、巻き添えを食らったというわけだな』
『だけど……だけど、陣地の人たちはそんな話はしてなかった。あの人たちは、自分たちが森の『シュドラクの民』と交渉するのが目的って言ってたんだ。なのに、真の狙いはお前を捕まえることなんて……』
『言葉を飾るな。攻撃を企てていたと、そう言ったのは貴様自身だ。そして、貴様は自分と女の身を守るため、シュドラクと帝国兵を天秤にかけた』
『ちが……っ』
『違わん。起きた出来事は変えられん。奴らが蘇ることもない。死者は何も語らぬし、生者に何も及ぼせん。貴様は、得体の知れん懊悩を抱える愚かな男だ』
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「──戦争……なら、それを止めるのはすごーく難しいわ。スバルが責任を感じなくても、いいと思うんだけど……」
エミリアが、絞り出すように、そう、口にする。
関係のない人たちのために心を痛めるスバルの優しさがエミリアは好きだが、こればかりは、問題が大きすぎる。
スバルがそれに責任を感じて傷つくなんて、そんなのは、エミリアだって嫌だった。
「──でも、スバルは、傷ついてるもの」
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『何故、他者におもねることばかりを望む』
『おもねるって……俺が?』
『貴様は他者ばかりを見ている。貴様はそうした己を意図的に作り上げてきた。戦士が己の技を鍛えるように、自分自身の心を施しという欺瞞で覆い隠してきた』
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「閣下容赦ないですねー。バッスーじゃなかったらかなり嫌われてますよ」
「それが狙いだ」
「それでもバッスーは閣下を見捨てなかったと……やっぱりバッスーは面白いですね!」
楽しそうに笑うセシルスを、アベルは瞳を細めながら横目に見、
「────」
短く、ため息を着いた。
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『どうして、殺すんだよ……』
『それ以外の術がない。それだけだ』
『……本当に、そうなのか? それ以外の手段を本気で探したのかよ? 相手を殺して、全部の可能性を奪う前に、最後の最後まで』
『――最寄りの町とか村を教えてくれ。俺はそこから、帰る手段を探す』
『道理だな。だが、それも容易い道ではないぞ』
『簡単でも難しくても、必要なら道を歩くんだよ。できれば舗装された道をな』
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「──アベルと離れて、本当にいいの? レムとルイだけで、スバル、すごーく大変だと思うのに」
エミリアが、心配そうに顔色を変えて、静かに呟く。
「それに、トッドのことも……すごーく心配だわ。みんなと一緒にいましょう、スバル」
◇◇◇
「スバル殿……」
ヴィルヘルムが短く言葉を切り、スバルの言葉に悩ましげな表情を浮かべる。
「──それだけでは、いかないのです。戦争というのは、価値観の押し付け合いですからな」
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『まだ、お前に礼を言ってなかった。……手段はともかく、レムを助け出してくれてありがとう。そのことは感謝してる』
『あの娘だけでなく、もう一人も助け出したぞ』
『あれは余計だった。……おかげで、俺の悩みはしばらく据え置きだ。俺は、俺の納得できる方を選ぶ。……複雑だけど、お前はお前で頑張れよ。でも、シュドラクの人たちを……』
『巻き込むな、とでも? どのみち、俺や貴様が介入しなければ森ごと焼かれていたのが奴らの末路だ。これはもう、奴らの戦いでもある』
『俺にはとても無理だ。……お前みたいには一生なれないだろうよ』
『当然だ。貴様にも誰にも、俺の代わりは務まらぬ』
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「──あの人の言い分は甘いです。戦争という事態の前では、楽観的と言わざるを得ない……でも、間違っているとも思いません。傷つく人をひとりでも減らしたいと思う気持ちが、間違っているわけがない」
レムが、そう、凛々しい眼差しのまま、端的に口にする。
「──ただ、スバルくんの身に、何も起きないといいのですが」
◇◇◇
「──やっぱり、ナツキくんはそう思うやろうね。水門都市でもそうやったから」
ただ、あの時のように、スバルの考えを理解し、指示してくれる人間は、その場にいない。
「──なかなかやね」
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『そうカ、残念だが仕方あるまイ。それが同胞の決断ならバ』
『――準備ができました』
『──っ』
『――? どうしたんですか、そんなに驚いて』
『それで、あなたの準備は済んでいるんですか? 別れを惜しむ時間はあったみたいでしたが……』
『ああ、そっちは平気。元々荷物は少ないし、ほとんどレムが持ってくれるしさ』
『……でも、あなたは私ごと持っていくことになるんですよ』
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「にしても、あんなものすぐに作れるんですね! バッスーと、シュドラクの方々の共同作のようですが!」
「手先が器用なんやねえ。僕はああいうん苦手やからすぐに作れんと思うけど」
「スバルくんは要所要所で役立つ能力を取得しています。歩けない私のためにここまでしてくれるなんて、やはりスバルくんは素敵な方です」
「にしてもお嬢さん、一人称とか二人称が混ざっているのはやはり記憶の影響ですか? いえ、僕個人としてはあまり気にならないんですけど、花形役者として、そういった設定は遵守するべきというか、やはり大事なことだと思うんですよ」
「──記憶の影響です」
「やっぱり!」
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『何から何まで世話になって悪いな』
『気にするナ、スバル。お前は『血命の儀』を乗り越エ、己の魂の輝きを示しタ。我らがお前に力を貸すのハ、同胞に対する当然の誉れダ』
『同胞……』
『気に病むナ、スバル』
『ミゼルダさん……』
『我らは戦イ、自らの価値を証明すル。だガ、大事なものを守り抜くことで未来を創ル。一族を守るために必要な考えでもあル。レムとルイを守レ。それガ、私が同胞に期待する誉れダ』
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「──本当に、信じられないほど良い奴なのよ」
「私もそう思うわ、ベアトリスちゃん。最初昴と会った時は、危ない人なのかもって思ってたけど……そうじゃないみたいねぇ」
「かしら」
ベアトリスと菜穂子が、そんなふうに言葉を交わす。
菜穂子の方は、ミゼルダにかなりの信頼を寄せている。
昴に友好的に接してくれているのが、かなり嬉しいのだ。
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『――レム、どっか痛いところないか?』
『大丈夫です。……あなたの方こそ、いけるんですか?』
『一応、適度に鍛えてたからな。まだ体力も完全復活とはいかないけど、いざってときにホーリィたちの手が塞がってるのは避けたいから』
『でハ、同胞たるナツキ・スバルの安寧ト、目的が果たされんことヲ』
『――果たされんことヲ!』
『ありがとう、みんな。どうか元気で! ──いってきます!』
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「──即興にしてはできているほうね。ラムとしては、レムが狭い乗り物に乗るなんて、許容し難いのだけれど」
「平気です、姉様。レムは、スバルくんと一緒ならどんな状況でも耐えられます」
「遠回しに狭いッて言ってんじゃッねェか」
「事実は事実ですから」
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『いや、マジでちょっと舐めてかかってたわ。俺が長男じゃなかったら弱音吐いてた。長男だから耐えられたけど、次男とか末っ子なら無理だったわ』
『意味がわかりません。そもそも、我慢強さに兄弟の有無が関係あるんですか?』
『今のは一種のお約束のボケってやつなんだけど、わりと忍耐力と兄弟の有無の相関性ってあるような気がする。ほら、長男は両親に厳しく育てられて、末っ子は甘やかされるみたいな話ってあるだろ?』
『だろと言われても知りません。一人っ子だった場合は当てはまらないじゃないですか』
『その場合、甘やかされつつ厳しく育てられる羽目になる……まさに、俺が長男にして末っ子という一人っ子の特性に当てはまる男だからな。それに、俺がいない今まさに弟妹が増えてないとも限らない……』
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「確かに、バッスーは我慢強いようで弱いですからね!」
「──私にとって、子供は昴だけよ。もう一度会いたいって、それ以外に考えることなんてなかったから」
「────」
菜穂子の言葉に、賢一が寄り添うように肩に手を添え、セシルスも一瞬口を噤む。
「──最後まで見たら出られるようですし、そうなったら僕の雷光の如き速さでバッスーの元まで連れて行ってあげますよ!」
「──そう、ありがと、セシルスくん」
「いえいえ、バッスーのご両親は特別ですから!」
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『兄弟……私には、いたんでしょうか』
『初めてだな。お前が、俺から記憶のことを聞こうとしたの』
『なんです? 話す気はない、ということですか?』
『俺も、レムの全てを知ってるわけじゃない。でも、今のレムよりはレムについて知ってる。聞きたいことがあるなら、答えられるだけ答えるつもりはある。でも……』
『信じられるかどうかは私次第……』
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「──そうよね。レムがスバルを信じてくれないと、何を言っても、ちっとも前に進まないもの」
「そうですわね。少なくとも、スバル様はラムとレムの関係を覚えていらっしゃるのですから、正しい言葉だと言えますけれど」
「でも、レムお姉さんがそう思うとは限らないものねえ。レムお姉さんはお兄さんを嫌ってるみたいだしい」
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『わからないんです』
『わからないって……自分のことが?』
『あなたのことがです。……あなたが、いったいどういう人なのか、私にはちっともわかりません。感じるものと、見たものが一致しないから』
『……頭ごなしに邪悪の化身扱いされてたのから比べると、大躍進って感じだ』
『今でも、邪悪の化身であることとは紙一重だと思っています。……ただ、薄紙一枚を挟んでもいいと思えるようになっただけで』
『じゃあ、俺とレムの薄氷の関係に薄紙が一枚挿入されたところで……どうする? 何か聞きたいことあるか?』
『……もう少し、考えさせてください』
『――わかった。お前の準備が整うのを待つよ』
『……他人事みたいに言わないでください。あなたの日頃の行動にもかかっていると、そう言えなくもないと思いますから』
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「──また、あの人の優しさを無下にして……レムは、もう少し利口になるべきですね。自分のことながら、不満が募ります」
レムが、眉を顰めて、不満を顔に出す。
「そんなことはないわ。バルスの態度にも問題があると、ラムは思うわよ」
「──九割は、レムが悪いと思います」
◇◇◇
「邪悪の化身……随分と嫌われてしまったね、スバル」
苦く笑い、ラインハルトが眉を下げる。
「スバルはそんなに悪くないと、僕の見立てでは、そう思うのだけれどね」
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『……あー、レム、一個だけいいか?』
『なんですか?』
『お前が聞きたいって思うまで黙っておくって言ったけど、一つだけお漏らしする。お前には、お姉さんがいるんだ。お前の双子の姉で、お前を心底大事に思ってる。……だから、お前はどこにいても、一人ぼっちにはならない』
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「──スバル」
ベアトリスが、深く思案するように、表情を変える。
「スバルだって、ひとりぼっちにはならないのよ。ベティーが、いつだってスバルを思っているから」
「私も。スバルのこと、すごーく大切だから」
「かしら」
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『じゃあ、無事についたからこれでお別れなノー』
『あ……二人は街には?』
『入る意味がないだロ。アタイたちの役目ハ、アンタたちを送り届けることダ』
『そっか。……二人には本当に助けられたよ』
『これは……角、ですか?』
『もしかして、エルギーナの角か?』
『そうなノー。折ったのはスバルだかラ、それはスバルのモノなノー』
『貴重品ダ。そのでかさなラ、高く売れるゾ』
『俺は……』
『――馬鹿なこと考えんじゃねーゾ。守りてーもんを守るために戦えヨ。アタイたちモ、おんなじダ』
『ありがたく、こいつは旅の足しにさせてもらう。二人とも、世話になった!』
『ホーリィさん、クーナさん、道中ありがとうございました。お二人と、『シュドラクの民』の皆さんへの感謝、忘れません』
『じゃあナ、スバル。忘れるなヨ、アンタを見てル』
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「──あ、そっか。これでお別れなのねぇ。なんだか寂しいけど……目的が違うから、仕方ないわよね」
「まあ、バッスーなら上手くやるでしょう! 僕個人としては、嫌な予感が止まらないので、バッスーには今すぐ安全な場所に行って欲しいんですが!」
「嫌な予感……?」
「縁起の悪いことを言わないでください。レムの覚えている限りでは、今のところ、そんなことは……」
「そう、レムちゃんの記憶通りなら安心ね」
「うーん、ならいいんですけど……」
セシルスが、不満というより、違和感を隠しきれないと言いたげに、唇を尖らせる。
レムはそれに、微かに顔を青くした。
追いついちゃった、続編楽しみにしてます!