無知と罪
タンザと戦団の三人はいずれ追加します。
シャウラがいなかったように、チシャさんは追加されません。
あと、トッドとジャマルはエミュが難しいという都合で追加はないです。
普通に書いてるとセシルスばっかり話すので最近はひとり一回は発言するように調整しながら書いてます。
が、やはりセシルスはよく話す。
口から生まれたんですかね?
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『記憶はないものの、レムが持ってた知識と器用さは据え置きか……。こうして追いかける立場になってみると、レムも姉様の妹だな』
『レムの腕力なら、片足嵌めるだけの落とし穴なんて一発で作れんのがネック……生まれ持ったフィジカルの差が強く出てやがる』
『追いかけられて罠を作るうちに、どんどん学習して罠の腕が上がってやがる……クソ、さすが勉強熱心だぜ、レム。今、それ発揮されたくなかったけど』
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「スバルくん……この先は見たくないですが……向き合うことが、レムに出来る、あの人への償いですから」
レムが、その表情を引きしめ、スクリーンに顔を向ける。
今のところ、スバルの首を絞めた以外はまだ暴挙に出ていない。
だが、レムの記憶が正しければ、それ以上のこともレムはしている。
「──ああ、あの時の自分を殴りたいです……」
◇◇◇
「──今のレム女史に大罪司教のことを話したところで、より溝が深まるばかりか……」
ユリウスが、端正な横顔に悔しさを滲ませて低く呟く。
レムに記憶がない以上、スバルが真実を話せないことは仕方がない。
「──全く、いつもトラブルの渦中にいるな、君は」
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『考えろ考えろ考えろ、俺。このまま追いかけてても、いずれはレムもルイがやらかしてることに気付いちまう。そうなったら痕跡が途絶える。そうなる前に……』
『……レムは、俺が追いかけてきてることに気付いてるはず』
『俺の知ってるレムなら……』
『──俺の知ってるレムは、これで終わらない』
『痺れを切らしたら、自分から仕掛けてくる。――そうだろ、レム!』
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「バッスー、そろそろ大きく動いて欲しいんですけどー。僕飽きてきました」
セシルスが退屈そうに長い足を揺らす。位置的に蹴られているフレデリカが可哀想。
「──昴、レムちゃんと仲直り出来るのか……?」
賢一が心配そうに眉を寄せて小さく漏らす。
すると、
「出来ると思いますよバッスーのお父様! バッスーは諦めが悪い上にしつこい人なので!」
「その言い方だけだと褒められてるのか貶されてるのか分からねえが……」
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『どこまでもどこまでも、しつこい人!』
『ま、待て、レム、話を聞いて……』
『くどいです! あの場で私たちを諦めてくれれば、それ以上のことはしないつもりでした。なのに、あなたは私たちを追いかけて……やめてください!』
『そんなシンプルに言われると、すげぇ傷付くんだが……』
『鼻が曲がりそうなんですよ! あなたが近付いてくると、すぐにわかります。それも、さっきの草原のときよりも、それが増して……』
『レム、話を聞いてくれ。お前にとって、俺は相当臭うらしいが……』
『……はい、臭いです』
『懐かしい言い方……! 臭うらしいんだが、そしてそれがよからぬものに感じるってのもわかってるんだが、俺はお前に敵意はないんだ! 臭いのこともあるし、俺の第一印象が悪いのは自覚がある。これでも十八年、自分って存在と付き合ってきてんだ。だから、やり直させてくれ』
『……やり直す?』
『俺が悪かった。何もかも忘れて不安なお前に、一個も説明してやれなかった。全部、俺の事情で、お前の気持ちを汲んでやれてなくて……お前が大事なんだ。守りたいだけなんだ。だから、話を聞いてくれ。俺を拒まないでくれ。――俺に、もう一度チャンスをくれ』
『──それだけ、ですか?』
『……え?』
『あなたが私に弁明するのは、それだけなんですか?』
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「──うーん、なかなか手厳しいなあ。女の子の気持ちも分かるんやけど、気持ち的にあの子に歩み寄ってあげて欲しいってのが本音やね」
別にどちらに肩入れするつもりもないが、スバルの必死さを見ると話を聞いてやって欲しいという気持ちになる。
これは恐らく、本人が自覚すると発揮されることのない類の才だろう。
「女の子の言っとることも正しいからなあ、どっちとも言えんね」
レムの怒り方を見るに、溝は相当なものだ。
簡単には埋まらない。
「──たとえ別の世界でも、僕が協力しとった子なんやったし、頑張って欲しいけどなあ」
スバルが粛清王になった√は、ハリベルが入室した瞬間にそれまでの上映内容と共に頭に流れ込んできた。
「──スーさん……か、あんまりしっくり来ぉへんなあ」
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『あなたが、私たちを追い回したことや、その体からとてつもなく邪悪な臭いを漂わせていることは、もちろん怪しいし、おかしいと思っています。でも、その、どんな理由よりも、あんな小さな女の子を見捨てようとしたことは拭えません。そんな非情で卑劣な相手を、どう信じろと言うんですか』
『──レム!!』
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「──昴! レムちゃん!」
昴を見限ろうとしたレムに、矢が襲いかかる。
「さっきの……まだ諦めてなかったのね」
大木が倒れてくる轟音が響く。
「昴……! どうしよう、矢であんなに木が倒れたりするものなの……!?」
「ええ、それは十分に有り得ます! 僕なら山であろうと斬れますね!」
「そうなの……? この世界の人たちってやっぱり強いのね」
「ええ、僕はその中でも飛び抜けて! 特別に強いです!」
「昴、逃げ切って……!」
「あれ、反応なしですか?」
そんな風に菜穂子に話しかけるセシルスの間にハリベルが軽く割って入り、アベルは頭痛に顔を顰めた。
「──あんな威力は弓矢では出せん」
「そうやろうねえ。セシルスは自分の尺度でものを考えるからあかんよ」
「──頭が痛い」
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『い、いきなり何を――っ』
『黙ってろ、舌噛むぞ!』
『が、ぐ……だ、お、折りやがったな……!』
『当然です! あんないきなり……いったい、何が起きてるんですか!?』
『……話しそびれたけど、森の中に危ない狩人がいるんだよ。鹿狩り目的で誤射したって可能性は、ほぼほぼこれで消えたけどな。……づぁっ』
『危ない狩人……あなたの味方ではないんですか?』
『味方がこんな勢いで援護射撃するか? 大体、何のための援護射撃……うお!?』
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「ゆ、指折って……!? スバル!」
エミリアが、慌てた様子で立ち上がる。
レムはそれを見つめて、一瞬で頭を深く下げる。
「申し訳ありませんエミリア様……! レムが……私が、反射的に行動をとったばかりに!」
「落ち着きなさいレム。確かに指を折ったのは……ええ、少し……そうだけど、落ち着きなさい」
「ラムも落ち着くべきだと思うけーぇれどね?」
流石のレムの行動に、ラムも庇う言葉に迷った。
スバルの行動にも問題はあると思っているが。
「──賑やかですね」
「ええ、本当ですわ」
それを、オットーとフレデリカは少し離れた場所から見つめていた。
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『本来なら、狙撃手は存在がバレた時点で位置を変えるのがセオリーのはずだろ……クソ、舐められてやがる。何にも言い返せねぇが』
『――。これが弓矢の威力? 信じられません。こんなの、普通じゃない』
『ああ! 俺もそう思うよ! きっと、撃たれたら胸にでかい風穴が開くだろうな!』
『おい! 俺に敵意はない! 俺たちがこの森にいるのはたまたまの偶然で……』
『ちょっと待ってください! その、俺たちというのは私とあの女の子も含めているんですか? あなたと一緒にされたくありません!』
『今そんなこと言ってる場合じゃ――どわぁ!?』
『どうやら、話の通じる相手ではないみたいですね……』
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「足の不自由なお姉さんと、ベアトリスちゃんがいないお兄さん……勝ち目は薄いんじゃないかしらあ」
「その通りなのよ。でも、それを何とかするのがスバルかしら」
「いッくら大将でも難しいんじゃねェかとは思うッけどなァ……」
「お兄さんがお姉さんを見捨てることはないだろうしい……難しそうねえ?」
メィリィがレムの方に目をやれば、レムは形のいい眉を吊り上げ、
「──私を見捨てるような人でしたら、スバルくんはこんなに苦労していません」
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『レム、聞いてくれ。俺が飛び出して奴の目を引きつける。その間に、お前は穴の反対をよじ登って避難するんだ』
『は……?』
『相手の矢の威力はやべぇが、遮蔽物なら緑の大自然だけにより取り見取りだ。それでどうにか時間を稼いでみせっから、お前は逃げてくれ。十分時間が稼げたら俺もとんずらする。ただ、逃げたお前と離れ離れにはなりたくねぇから、できれば道しるべは残してくれ。わかりづらいと思うんだが、俺の地元で矢印って記号があるから、それで大体の方角を……』
『──勝手なことを言わないでください』
『レム?』
『全部、何もかも自分一人で決めて……挙句、私に逃げろと言うんですか? 子どもを見捨てようとしたのを理由に、あなたに怒っている私に?』
『それは……でも、俺は』
『言い訳は結構です。時間もありません。でも、私だけに逃げろという指示はお断りします。そもそも、あの子を置いてもいけません』
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「──流石、レムだわ」
相手が大罪司教でなければ、もっと胸を張ってその決断を褒められたのだが。
「──バルスも、レムを逃がそうとしたことだけは褒めてあげる」
◇◇◇
「──英雄幻想極まれりだな」
アベルが、やや顔を顰めて呟く。
「────」
自己犠牲と、どこまでも他人を優先する姿勢。
それを見ていると、どうしても腹の奥に複雑な感情が過ぎる。
「──この空間は気分が悪いな。妙に感傷的になっている」
「閣下どうかしました?」
「──貴様は、その点感傷的とは反対だな」
「もちろん! 花形役者たるこの僕に、そんな姿は似合いません! いえ、もちろん落ち込んだりするのが映える舞台もありますが、今はそういうときではないので!」
「前向きねぇ、セシルスくん」
「もちろんです!」
「──疲れる」
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『使えるもんを全部使う。レム、嫌だろうけど、手を貸してくれ』
『――。それが、あの子を助けるためでしたら』
『レム、手ぇ貸せ! 今のうちに逃げるぞ!』
『――っ、その子は無事ですか?』
『ああ、腹立たしいことにぐっすりだよ! ほら、急げ!』
『──っ、待ってください!』
『いたたたたっ!? なに!?』
『水の音が聞こえます。流れる……川? 痕跡が消せるんじゃありませんか?』
『川があるなら確かに助かる! いったん川を渡っちまえば、簡単には追ってこられないはず……!』
『あっちです』
『──川! ……だ、け、ど?』
『これは、いくら何でも……』
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「──万事休すだね」
ラインハルトが、形のいい眉を顰め、美しい顔立ちに不安感と焦燥を色濃く滲ませる。
レムの聴覚にもスバルの決断にも間違いはなかったが、この状況で崖を飛ぶというのは些か短慮が過ぎる。
「──何とか、するんだろうね。君は」
◇◇◇
「──これはあかんなあ。ナツキくんだけならまだしも、二人も人間抱えては無理やって」
エミリアのように力持ちならまだしも、スバルは平均的な力だ。
かなりきつい。
「──かと言って、見捨てるんもナツキくんらしゅうない。助けるしかないんやろうけど」
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『──私を、置いていってください』
『な、に?』
『置いていってください。私のせいで、余計な回り道をさせました。一刻の猶予もありません。何とか、相手の足止めをしてみますから……』
『ば、馬鹿なこと言うな! お前を置いてくなんて……』
『じゃあ、どうするんですか!? 足の動かない女と子どもを連れて、もう息も切らして膝も震えているあなたが、これ以上どうするって!』
『──いいや、ダメだ。お前を置いてったりしない』
『──っ、そんな強情……』
『強情なのはどっちだ! お前の方こそ、責任を感じてるのはわかるよ! けどな、責任感発揮するとこ間違ってんだよ! 誰が、お前を置いていけるもんか!』
『な……』
『お前がいなくちゃ意味がないんだよ! お前が死ぬぐらいなら、俺が死んだ方がマシなんだ。どうしたらわかってくれんだよ!』
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「──スバル殿、それはいけません。自分が死ぬ方がいいなどと、言わないで欲しい」
スバルの気持ちはわからなくもない。
スバルにとって、レムは大切で、傷ついて欲しくない相手だ。
その相手のために命を張りたいという気持ちも評価したいが、
「──自己犠牲も、過ぎれば相手を害す毒になると、覚えておいて頂きたいですな。スバル殿」
◇◇◇
「もう、痴話喧嘩なんてしてる場合!? いい加減にしてよスバルきゅん!」
フェリスが声を荒らげる。
そして、
「──自罰的なんだから、二人とも! もうちょっとしっかりしてよ!」
そう、スクリーンを睨みつけた。
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『──飛ぶしかない』
『な……ま、待ってください! それこそ無謀です! この状況ですよ!?』
『背中に括りつけた重石と、足が動かないレム、そして指が三本折れてる上に肋骨もちょっと怪しくてくたくたの俺……』
『指のことは……とにかく! そんな状態で無茶です! こんな高さから……飛び込んだ瞬間、意識がなくなって溺れるだけです!』
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「お姉さんの言う通りよお。魔法も使えないのに、無謀にも程があるわあ」
「そうなのよ! ……でも、ここで足踏みしてたって、みんな殺されるだけかしら。なら、スバルのやり方がいちばんマシなのよ」
「──これがマシだなんて、どれだけお兄さんは危機に追い込まれるのかしらあ」
「──どこまでも、かしら。嫌になるのよ」
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『お前の望みは俺が叶える。――俺は、お前の英雄だから。しっかり掴まってろ』
『──死んだら許しません!』
『ぶじ、に……れ、むを……』
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「──意識が落ちたか」
「そういえばバッスーって水の上走れないタイプの人でしたね」
「普通は走れんわ、戯け」
「そうですか?」
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『──ぜえはあうるっせえぞ、てめえ』
『な、なに、が……』
『ああ? てめえ、いつまでふざけて……』
『──まあまあ、落ち着けって! 何もわかんないんだよ! 仕方ないって! それよりほら! 目隠し、外してやろう!』
『ちっ』
『やれやれ、いきなり悪かったな。何がなんだかって気分だと思うが、とりあえず目隠しを外すぞ? 手足の縄は外せないから勘弁な』
『──なんだ、ここ』
『ちょうど、水汲みにいったところで見つかってなぁ。悪いが、お前さんは俺たちの捕虜になったんだよ』
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「──捕虜……? うそ、昴!」
菜穂子が、青い顔で口元を押える。
捕虜という言葉の響きが、胸の奥にその言葉の意味とともに浸透し、どうしようもない不安に駆られる。
「危険、よね。だって、捕虜ってことは、すごく危ないし」
「──むむ? こちらの方……どこかで見たような……どこでしたっけ、うーん、頭がもやもやしててよく思い出せないですね。まあ、思い出せないなら今は思い出さなくてもいいということでしょう! それにしても、バッスーは運が悪いですね! 手のひらに風穴とか開けられないといいんですが」
「──! 昴……!」
「不安を煽るようなことを言うな。そもそもそれは捕虜というより罪人かなにかの扱いであろうが」
「そう言われればそうですね!」