第110話

料理-1
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2026/06/01 10:00 更新
始まりはチャンビンの発言だった。
「最近は料理をしているのか」という質問からリノヒョンと話していたときに、突然入ってきたチャンビナが「昨日食べたあなたの下の名前の料理が凄く美味しかった」と爆弾を落としたこと。
隠す必要はなかったのだが、タイミングが問題だった。
すぐに向こうの宿舎組が飛んできて僕の手料理が食べたいと騒ぐから、急遽料理をしに行くと約束した。
そしてそれならと、久しぶりにフィリックスとお菓子作りをすることにしたのだ。
🐥「あなたの下の名前ヒョンの料理、楽しみだなぁ」
🐧「とはいえ、まだ僕は料理上手なわけじゃないよ。少し前も焦がしそうになって怒られたし」
🐥「リノヒョンに?」
🐧「偶然こっちの宿舎に来てたみたいで」
それでも、リノヒョンやリクスのお陰で料理には慣れてきたし、レパートリーも増えてきたと思う。
冷蔵庫から取り出して水で洗ったじゃがいもを俎板に乗せる。
以前はぎこちなかったけれど、今ではトントントンと、心地よい音がキッチンに響く。
🐥「なに作るの?」
🐧「見ればわかるよ。僕にとっては懐かしい味。……あ、でも少し前に食べたことあるはず」
🐥「なんだろう。……僕手伝おうか?お菓子作りは二人でしたいし、先に料理を終えたいし。なにがいる?」
🐧「野菜は……玉葱と人参かな。洗ってくれる?」
🐥「もちろん」
暫くして、鍋に油を中火で熱し、玉ねぎを炒める。
甘い匂いに、宿舎の空気が少し変わった気がする。
牛肉を加えてさらに炒めたとき、リクスが目を輝かせた。
🐥「あ、この前NYにあるあなたの下の名前ヒョンのご実家で食べたやつ!えっと……肉じゃが?」
🐧「正解。日本の家庭料理だよ。普通だけど、僕にとってはママが作ってくれた思い出の味なの。家でしか食べられなかったから、特別なものだった」
🐥「ヒョンのお家の味でしょ?そういうの嬉しい。……だってあなたの下の名前ヒョン、以前は壊滅的に料理ができなかったからㅎㅎ」
そう言って、ただ純粋に、悪気はなさそうに笑った。
僕は料理が疎かにならないように気をつけながら、リクスに目を向ける。
🐧「……言うな」
🐥「だって、初めの頃は火災報知器鳴らしてたし」
🐧「一回だけ!」
🐥「二回じゃない?ㅋㅋㅋ」
🐧「違う。片方は煙が凄かっただけ」
真顔で訂正すると、とうとうリクスは耐え切れずに彼は吹き出した。
🐥「わかった、そういうことにしよう。でも本当に、最初は包丁持つだけでも危なかったよね」
🐧「それは認める。……でも、うまくなったでしょ」
僕は少しむっとした顔をしたあと、小さく笑った。
そのときの言い方が、思えば少しだけ子供みたいで。
リクスは優しく頷いてくれた。
🐥「うん。ほんとに」
少し間が空き、鍋からは湯気が立ち上る。
ちょうどそのとき、キッチンの入り口に、もう一人の料理のお手本の人物が顔を覗かせた。
🐰「なんかいい匂いがする」
🐥「リノヒョン、今夜はあなたの下の名前ヒョンが料理を振る舞ってくれるんだよ」
🐰「知ってる、昨日皆で話しただろ」
リノヒョンもまた優しく笑いながら、鍋の火加減を一瞬だけ見る。
なにも触らないずに、少しだけ驚いたような顔をして。
🐰「じゃがいもが少し崩れてるけど、及第点って感じかな。まあ、そのままで大丈夫。……今日はヨンボガに任せて、出来上がるのを楽しみに待ってるよ」
それだけ言って、リノヒョンは冷蔵庫から水だけ取る。
そして去り際、ほんの少し耳を赤くしながら、小さく呟く。
🐰「……ほんと、できるようになったな」
🐧「ありがとう、リノヒョンも。……ヨンボガ、先に味見してみる?」
🐥「え、したい!」
🐧「熱いから気をつけてね」
嬉しさと気恥ずかしさと。
だけど自分でも成長は感じていて。
それを誤魔化すように、少量を小皿によそってリクスに渡した。

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