『──これより上映されるのは、ナツキ・スバルが死者の書を読み、『ナツキ・スバル』を取り戻そうとする世界の話です』
スクリーンが動き出し、とある光景を映す。
『──なぁ、君は俺の名前を知ってるか?』
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「──スバルくん!」
レムが、その声に顔を上げる。
聞き慣れた声、欲していた声。
それに顔を上げたが──
「──スバルくん?」
スクリーンに映っていたのは、レムの知っているスバルとは、どこか違った。
「死者の書とは……ぅ、」
ズキンと頭が痛み、大兎に食い殺されるスバル、レグルスと対峙するスバル、監視塔で記憶をなくし疑心暗鬼に陥るスバルなど、レムが見ていない範囲の映像が、レムの脳内に流れ込んだ。
「──なんですか、これは……!」
この空間の守り人がレムの知らない記憶を流してきたのだろうか。
「──死者の書とは、死人の記憶を見る書物……なら、あの人は……」
「おや、随分と暗い顔をされますね。僕もバッスーがこんな目に遭っていたとは驚きですが……バッスーのような方が、なんの犠牲もなしに苦難を乗り越えてきたなんて少し都合のいい考え方だと思われませんか? 僕は、バッスーの自己犠牲と覚悟に敬意を表しますがね」
「──あなたには分からないと思います。これは、レムの気持ちですからね」
「おや、それは失礼しました。まあ、バッスーは悲しまれることの方が嫌がるとだけ言っておきますよ」
「────」
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『──なぁ、君は俺の名前を知ってるか?』
『い、いいえ……』
『──そうか』
『ねえ、スバル。そろそろ、お昼の時間にしない?』
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「──私……?」
エミリアやベアトリス、メィリィなどが、スバルに声をかけている。
それだけを見れば、決して悪い光景などではなくて、でも──
「──何か変よ」
エミリアの姿をしただけの、お人形を見ている気分だ。
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『相変わらず、スバルとユリウスはすごーく仲良しね』
『あのさ、エミリアたん。いつも言ってるけど、それはさぁ……』
『それは?』
『それは……』
『────』
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「──なるほどなるほど、イマジナリーフレンドというやつですね? バッスーから聞いたことがあります! ですが、このバッスーは随分と……前向きな破滅と言いますか、なんとも……うーん、僕はいつものバッスーが好きですね!」
「お前は本当によく喋るやつなのよ……」
セシルスがひとりで永遠に話しているのを、ベアトリスは迷惑そうな顔で見る。
菜穂子は隣で騒ぐセシルスを優しい顔で見つめていた。
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『──お師様~! ざざーっと先まで見てきたッスよ~! すちゃっとシャウラご帰還ッス! お師様、褒めて抱きしめて愛してくださいッス!』
『────』
『あ、あれ? ど、どうしたッスか、お師様? もしかして、あーし、またなんかやっちゃったッスか?』
『……いや、何でもない。気にすんな。お前が悪いわけじゃねぇし』
『そうッスか? じゃ、気にしないッス! あ、それよりお師様、ご飯の準備中なんて嬉しいッス! あーし、お腹ペコペコだったんスよ~』
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「──この子が生きとるってことは……考えとうないけど、やっぱし分岐点はあそこやね」
アナスタシアが己の考えと答え合わせをする。
そして、アナスタシアの顔が暗くなるのを見るに、予想は的中したようだ。
「ナツキくん、随分とけったいな姿になってもうたなあ」
白髪を見て、アナスタシアは悲しそうに笑う。
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『──お師様、お師様、次はどこにいくんスか?』
『そうだな……』
『スバルはもうちょっと、シャウラに優しくしてあげた方がいいと思うの。こんなに一生懸命なのに、可哀想じゃない』
『……エミリアたんはそう言うけど、それって結構残酷なことだぜ? 俺がエミリアたんのことをどう思ってたか知ってるくせに』
『ん……そう、かな。そうかも。ごめんね。もちろん、私だって寂しいけど、でも、いつまでもくよくよしてたらダメだと思うの。だって』
『だって?』
『だって、私はもう――』
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「──スバル」
エミリアの言葉の先を聞きたくなかったのか、スバルの黒瞳がきょろ、と行き場を失ったように迷う。
だが、スバルが『それ』の言葉を遮ることは出来ないのだろう。
だが、竜車の音は、『それ』の言葉を遮ることが出来た。
「──悲しいことだな、それは」
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『──もしや、ナツキ・スバルさんではありませんか?』
『おや、もしかしてお忘れですか? 僕です、レギン・スーウェン……兄の、オットー・スーウェンがお世話になっています。以前、一度、村でお会いしましたよ』
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「──昴」
賢一が、明らかにおかしい昴の様子に、かすかに顔をしかめる。
「シャウラちゃんがいるってことは、塔は攻略してないんだよな……」
◇◇◇
「──レギン?」
オットーが、嫌な予感に声をふるわせる。
「──ナツキさん」
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『お前、兄貴と喋り方そっくりだな』
『え?』
『お前がこんだけいい奴なんだ。お前の兄貴も、いい奴なんだろうよ』
『──シャウラ』
『はい、どうしたッスか、お師様』
『苦しめるな』
『ごめんな』
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「──は、」
オットーが、その双眸を大きく見開き、言葉を失う。
そして、
「──何故、」
取り乱すよりも先に、混乱と不理解が押し寄せた。
「ナツキさん! 何故、あなたが──」
◇◇◇
「──やっぱり、わたしの知らないお兄さんなのねえ」
「だって……」
「──わたしの知ってるお兄さんなら、こんなことしないものお」
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『何回見ても見事なもんだな』
『お師様、大丈夫ッスか?』
『……ああ、大丈夫、大丈夫だ。それより、次の本は見つかったか?』
『あーっと、まだ探し中ッス。絵合わせみたいで捜すの大変なんスよ~。こういうちまちました作業、あーし向きじゃないッスもん……』
『向き不向きがあるのはわかってるが、頼むぜ、シャウラ。お前しか、力を貸してくれる奴がいねぇんだ』
『お師様にはあーしだけ……って言ってくれたらいいッス』
『……今、俺が頼れるのはお前だけだ』
『むふー、今はそれで満足してあげるッス』
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「──昴……」
菜穂子が、蒸発したレギンの頭部を見て、苦しそうな顔をする。
「どうして……?」
そんな、悲しみに昏れる菜穂子を見て、隣からセシルスが口を挟む。
「バッスーのお母様。記憶を見るに、このシャウラというお嬢さんは死んだ──ならば、この世界は今のバッスーとは違う、並行世界と見るべきです。その上で、我が子の蛮行に心を痛めるというのも、バッスーの親御さんらしくはありますが」
「セシルスくん、私もね、分かっているのよ。正しい世界は、さっきまでので──これは、間違ったifの世界……それでも、昴にこんな決断をさせてしまったことが、悲しいの」
「ふむ……それもまた、考え方のひとつですね。僕も、バッスーが猟奇殺人を繰り返してしまうのは悲しいですから」
「猟奇殺人……」
「セシルス、ナツキ・スバルの母親に無用な負担をかけるな」
「えー、負担かけてないですよー」
「我が子を『猟奇殺人を繰り返している』と形容されて傷つかない親がどこにいる……いないこともないであろうが、あのナツキ・スバルの母親だぞ。考えろ」
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『……あと、二十三人か』
『その人たちの本を読んだら、スバルのやりたいことは叶うの?』
『エミリアたん……もちろん、そうだ。俺が……俺が何もかも忘れたせいで、みんなにとんでもない迷惑をかけちまった。それを挽回するには、この手しかない』
『挽回なんて、そんなこと考えなくても……』
『──それじゃダメなんだよ! お願いだから、そんなこと言わないでくれ。俺は、何としても『ナツキ・スバル』を取り戻してみせる。それから……』
『……それから?』
『それから、もう一回、君たちに会うんだ。……会って、やり直すんだ』
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「──やり、直す?」
ユリウスが、顔を顰める。
だが、スバルの言ったことは、言葉の通りだ。
大勢の人間を殺し、『ナツキ・スバル』を取り戻すことで、間違えた過去をやり直そうとしている。
だが──
「──君が戻れるのは、君が死を回避できる範囲、ではなかったか?」
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『……あんたの中には、どのぐらい『ナツキ・スバル』が眠ってるんだ?』
『客観的な、断片的な情報でいい。それを搔き集めて、完成形に近付ける……』
『……お前なら、全部、何とかしてくれるはずなんだ』
『──俺を救ってくれ』
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「──全部どうにか……か。自分への期待もここまでくれば盲信に近いな。それも、他者の評価と自己評価の乖離のせいか……自己評価の方が尚悪いな」
アベルがそう呆れたように息を吐く。
セシルスのようにスバルの死や凶行を割り切れるほどアベルは非情ではないため、その吐息の奥に、隠しきれない感情が見え隠れしていたが。
「──くだらぬ」
スバルが聞いたなら「強がりやがって」と言われそうな言葉を、吐く。
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『さすが、対魔獣決戦用の都市……罠の効果は抜群だな』
『なるほど、見事なものじゃーぁないか。これで、君を知る人間の多くが一挙に片付いた。……自分探しが捗る、そう思っていいだろーぉね』
『それで? 次はどうするつもりなーぁんだい、スバルくん』
『決まってるだろ、手筈通りにいく。――最初に、一番厄介な奴から攻めるのが上策だ』
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「──悪夢ね」
ラムが、レムの手を握って小さくつぶやく。
「スバルくん……」
レムが、泣きそうな声で俯く。
「──レムを泣かせて。仕方のないバルスだわ」
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『──ガーフィール』
『──大将?』
『一番肝心なところで割り切れない。――やっぱり、身内の目は的確だな』
『──誰だ、てめェ』
『──はい、どーん!』
『な』
『悪くなかったッスけど、あーしのお師様への愛の方が、百枚上手だったッスね』
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「ふむ……バッスーらしくない答えですね。やはり、見れば見るほどこのバッスーはバッスーであってバッスーでないと言うべきでしょうか」
つまらなそうに、セシルスが唇をとがらせる。
◇◇◇
「──昴!」
覆しようのない惨劇が、スクリーンいっぱいに映し出される。
「──あぁ、クソ……」
頭を抱えて唸る。
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『……ずいぶん、見違えましたね、ナツキさん』
『その目はどうしたのか、聞いても?』
『目……ああ、左目か。ちょっと霞んで見えるけど、どってことねぇよ。ただ、最初にショッキングなことがあったとき、頭をぶつけすぎたみたいでな。髪の毛も、別に何かしたわけじゃなく、勝手にこうなってた。笑えるだろ』
『──オットー、お前だよ』
『……は?』
『お前を確実に殺すために仕組んだ手口だ。他の死人は、まぁ、おまけだな』
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「──過大評価に、頭が痛みますよ」
スバルほどではないが、オットーも相当に高く評価されている。
オットー自身も、自分をそこそこ有用だと認識してはいるが。
「──おまけで死んだ人たちは、恨みますよ」
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『ちゃんと相談したんだ』
『──全会一致だ。もし、ガーフィールがこの列に加わってても、きっと同じことを言っただろうよ』
『──俺は、お前を過小評価しない。俺は、俺以外の誰も過小評価しない。お前らは、すごい奴らだ。だから、手は抜かないで殺してやる』
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「怖い評価の仕方やねえ」
ハリベルが、煙管をふかしながらそう口にする。
「──ああ。スバルがこんなふうに思うところを、見たくはなかった」
ラインハルトが、ハリベルの言葉に重ねるようにつぶやく。
それは、いつもよりもずっと、本音だった。
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『やっとこ終わったッス。や~、しぶとかったしぶとかったッス。まさか、お腹の中身をあんだけぶっ飛ばされて動けるとか、不死身なのかと思ったッスよ』
『道理で時間かかったと思った。……ちゃんと終わらせたか?』
『頭まで潰したんでたぶん。人間って、お師様以外は頭潰したら死ぬッスよね?』
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「──頭潰されて生きてるなんて、そんなのあまりに気持ち悪いでしょ」
フェリスが吐き捨てる。
今のスバルは、いつものスバルよりもずっと嫌いだ。
「──命を、踏みにじってる」
◇◇◇
「──スバルくん……」
何故、と思う。
だが、あまりにも理由が理解出来てしまって、奥歯がぎり、と鳴る。
「スバルくん!」
どうしようもないやるせなさで、腹の奥が気持ち悪い。
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『まさか、人生最大の高評価を得たのが裏目に出るとは、最悪の気分ですよ』
『人生最大の評価? そりゃお前、勘違いってもんだろ。お前はずっと、陣営の全員から最高評価だったぜ、オットー!』
『──くたばれ、偽物』
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「──お兄さん」
メィリィが、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「なかなかに強烈なパンチライン……なるほど、これは確かに最高評価をいただけそうな感じですね!」
「──それはどうも」
セシルスの言葉に、オットーが少し声を低くする。
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『スバル、これは君がしたことなのか? ……オットーや、ガーフィールを』
『相談……君を誑かしたのが、その隣の彼女なのか?』
『──残念だが、君の蛮行はここで止めよう。それが僕にできる、君への友情の証だ』
『一緒に結婚式に殴り込みかけた仲だってのに、悲しいこと言ってくれるぜ。言わせたのは俺なんだが、そりゃもう、エミリアたんは喜んでてなぁ……』
『スバル、もうやめてくれ。――もう、やめてくれ』
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「──スバル……」
ラインハルトの人生に、後悔は多い。
そして、悲しい顔をしたことも多かった。
だが、スクリーンに映るこの顔は、悲しい瞬間にランキングをつけた時、間違いなく上位に食い込むほど、悲しそうな顔をしていた。
「──すまない」
ラインハルトがいても、状況の好転は見込めなかっただろう。
あの場は、あの人選だからこそ最善だった。
だとしても、だが。
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『シャウラ、引くぞ。――今日はここまでだ』
『はーいッス』
『──お前はお前が思ってるほど、超人でもなけりゃ、万能でもないよ。……必ず、お前も殺してやるからな、ラインハルト』
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「──ああ、そうだね。僕は、僕が思うよりずっと万能じゃない」
スバルが言った、言葉が頭を反響する。
『頼ってばっかでホントに悪ぃ。お前が強いってことに頼りすぎな局面だけど……お前の足りない部分はどうにか補うから、期待しててくれよ』
「────」
言葉の本質は変わらない。
ただ、あまりに何もかもが違う。
それが、彼が『ナツキ・スバル』であるということと、彼はもうスバルではないということを物語っており、ラインハルトは、悲しかった。
「──スバル……」
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『ナツキくん、忘れてへんね? ウチらがちゃぁんと協力したら、ナツキくんが元通りになったときに……』
『――ああ、覚えてるよ。俺が、『ナツキ・スバル』を取り戻して、全部、ちゃんと挽回できる時間まで遡ったら、そのときは……ようやく、俺が殺した全部の人に、贖罪するタイミングが作れるんだ』
『……お前は、ラインハルトを殺して、それから最後に殺してやる。お前が、『ナツキ・スバル』じゃない俺が、最後に殺すのはお前にしてやる。それだけは、約束してやる』
『あ、あは、あははっ! お師様、お師様、ホントッスか? あーしが最後? あーしがお師様の最後の女ッスか?』
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「──贖罪」
エミリアが、紫紺の瞳を揺らがせ、耐え難いと言いたげに口元を抑える。
「──スバル」
破綻だ。
スバルは、それを自覚していた。
自分が精神的におかしくなっていることを、スバルは分かっている。
だからきっと、スバルはもう、元には戻らない。
「スバルぅ……っ」
泣いて、顔を上げれば、スクリーンが暗転し──
『──ただいまより、第七幕を、放映します』
非情な声が、告げた。