治療・予防

脳内の老廃物を排出
~グリンパティックシステム(順天堂大医学部付属順天堂医院 鎌形康司教授)~

 近年、脳内の老廃物を排出する「グリンパティックシステム」と呼ばれる仕組みが注目されている。アルツハイマー型認知症などではこの機能が低下することが報告されている。順天堂大医学部付属順天堂医院(東京都文京区)放射線科の鎌形康司教授に聞いた。

グリンパティックシステム

グリンパティックシステム

 ◇脳画像データで判明

 アルツハイマー型認知症をはじめとする認知症では、脳内の老廃物であるアミロイドベータなどのタンパク質が蓄積し、神経細胞に障害を与えると考えられている。

 「体内ではリンパ管が老廃物の回収に一部関わりますが、脳の実質にはリンパ管がないため、脳の老廃物排出は長く謎とされてきました」と鎌形教授は話す。

 順天堂大などの研究グループは2022年、健常者とアルツハイマー型認知症患者のMRIデータを比較。患者では脳内のアミロイドベータの沈着とグリンパティックシステムの機能低下が関連していると報告した。

 グリンパティックシステムは、主に睡眠中に脳脊髄液が動脈周囲の隙間(血管周囲腔=くう=)から脳実質に入り、細胞間の脳間質液と混ざり合いながら老廃物を洗い流し、静脈周囲の経路から排出する仕組みを指す。

 順天堂大などでは研究を進め、グリンパティックシステムの機能低下がアミロイドベータ沈着の原因となる可能性を、昨年報告した。

 ◇生活習慣改善が鍵

 機能低下を防ぐにはどうすればよいのか。グリンパティックシステムは睡眠中に働くため、質の良い睡眠が重要だ。「睡眠に加え、高血圧、飲酒、糖尿病、喫煙、うつ病、運動不足などさまざまな要因がグリンパティックシステムに影響すると考えられています」

 さらに順天堂大などの研究で、同システムの障害は、アルツハイマー型認知症などの前段階である軽度認知障害(MCI)や、症状が出ていないプレクリニカル期より早い段階から始まっている可能性も示された。「生活習慣を整え、特に良質な睡眠を確保することが大切です」と、鎌形教授はアドバイスしている。

 今後、解明が進めば、グリンパティックシステムの機能低下を早期に把握し、要因の特定やアルツハイマー型認知症の新薬開発につながる可能性もあるという。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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