「SATC」は女性解放の典型例?それとも暗黒時代?〜トランプ×高市会談に"ゾワゾワ"した理由【後編】〜
さて、高市さん(ちなみにSATCの原作者キャンディス・ブシュネルとは約2歳違いの同世代)は、まさにこのタイプの人のように思えます。例えば若き日の自伝でぶっちゃけている性の武勇伝や、赤沢経産大臣に対する「私に恥をかかせるな」という物言いは、昭和や平成初期を知る世代なら「昔はこういう上司がいたよなあ」と懐かしい気持ちになるんじゃないでしょうか。海外の国際会議で他国の男性と妙に距離感が近い、すぐに肩に手を回したりすり寄ったりする姿を「女を使ってる」と言う人もいますが、私には「ホモソの親近感を示すための肩組み」みたいに見えます。 そんな高市さんが「オレ様超高濃度世界最強オッサン(世界で孤立中)」のトランプさん相手にどんな戦略を練ったのか。つまるところそれは、中身がオッサンの高市さんが考える「オッサンの求める女」を演じること——つまり「笑顔でヨシヨシしてくれて、でもオレに決して楯突かない存在」になることだったんじゃないかなあと。 日米首脳会談に行く前に高市さんが言った「したたかな外交」という言葉は、どういう意味だったのかなあと今も考えます。私がイメージする「したたかな外交」は「テーブルの上ではアメリカと握手しながら、テーブルの下ではイラン(でも中国でも)と交渉する。それでいて両方から敵と認定されない、相手のメンツも立つ上手い理屈を用意する」というようなリスクマネジメントです。半導体にレアアースに原油に、足りないものだらけの日本はそうでもしないと国が干上がる状況にあります。でも高市さんの取った戦略は、よくミソジニーとともに発せられるいわゆる「したたかな女」——強い男に「女」を使ってすり寄って、自分だけ美味しい思いをしようとするというような——に、私には見えてしまいます。 思い出すのは、フェイスブック(現Meta)のCOO(当時)、シェリル・サンドバーグさんが2013年に出版したベストセラー『LEAN IN 女性、仕事、リーダーへの意欲』の一節。 (女性が交渉で望みの結果を得る可能性を高めるには)相手に好印象を与えること、他人に気遣いを示すこと、「世間の期待にふさわしく」女性らしくふるまうことだ。(p67) サンドバーグさんを弁護すれば、彼女もまたこうした自身の「実践的戦略」を必ずしも全肯定はしておらず、「偏見に満ちたルールや社会的期待に従いつつ世界を変えようというのは、たしかにひどく矛盾している」(p69)と述べていますが、同時に「いまのところは」これが正解、とも言っています。問題はその「いまのところ」が、同書が出版されて10年以上が過ぎた2026年まで続いちゃっていることです。「辛い時に笑顔でヨシヨシしてくれる女性」や、「こっちがちょっと凄めばご機嫌をとってくる女性」を、いざ真剣な交渉となった時に相手は対等と見てくれるのかなあ。 私がこんな首相だったらいいのにと思うのは、ドイツの元首相のメルケルさん。媚びずおもねらず、冷静で理性的で、適切な距離感で威厳を保ち、軽く扱われることは決してない。せっかくの初の女性首相、そういう存在になってほしいんだけどなあ。 そうそう、ちなみに「SATC」の主人公キャリーの想い人=ミスター・ビッグは、一説には若き日のドナルド・トランプがモデルとも言われています。知ってました?
渥美 志保