第58話

NY-1
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2026/05/12 14:05 更新
回転扉を押すと、懐かしいニューヨークの景色が目に飛び込んできた。
アスファルトから立ち上る熱気と排気ガスが混ざった匂いが鼻をくすぐる。
観光客は気付かないが、ここに住んでいたからこそわかる、独特の空気だ。
街が生きている。眠らない街が目の前に広がっている。
懐かしい感情が蘇ってきて手先が僅かに震える。
思わずその場で足を止めると、言葉を飲み込んだ。
🐥「ヒョン、今緊張してる?」
🐧「ほんの少しだけ。両親が初めて見に来るんだから。でも今はそれ以上に、漸く帰ってきたんだなって」
🐶「久しぶりの故郷だっけ?」
🐧「そうだね、4-5年ぶりかも。両親にはもっと会ってなかったけど」
👑「そんなに長く!?」
🐖🐇「ニューヨークでオフの日を取れてよかったな」
北米公演が始まり、漸く東海岸に降り立った。
メンバーも会社側も、有り難いことに僕に配慮してくれて、ニューヨーク公演の翌日は皆で僕の実家に遊びに行って、そのまま街を案内する時間を貰えた。
母にはずっとアイドルになることを反対されていたから不安はあるが、この機会にしっかり向き合いたい。
🐿「ねえ、ヒョンの実家ってどんな感じ?今まで家族の話はあまり聞いたことがなかったから凄く気になる」
🦊「僕はこの前ご両親の話を聞いたときから、もう驚かないって決めました。実家がセントラルパーク・サウスにある豪邸でも不思議じゃない」
🐧「流石にそれはないよ。僕の実家はアッパー・イースト・サイドだし、ただのマンションだから」
👑「待ってヒョン、それって“あの”アッパー・イースト・サイド!?」
🐺「お邪魔するのはまだ先だけど、皆驚く準備をしていたほうがいいよ。あなたの下の名前のお家、そのエリアのペントハウスだから」
🐧「普通のペントハウスだって」
🐰「普通って言葉の意味わかってる!?」
ハニが発した何気ない疑問により、弟たちが声を張り上げて叫ぶ。
余計なことを言うチャニもだ。
お陰で緊張どころではなくなったが、この展開は違うんじゃないかと頭が痛くなる。
🐥「チャニヒョンはあなたの下の名前ヒョンのご実家に行ったことがあったんだっけ?」
🐿「え、あるの!?それは狡い」
🐺「いや、アメリカは遠いから日本のお家だけ。でも、練習生の頃に写真を見せてもらったんだ。NYの摩天楼が見下ろせる一面の……」
🐧「あー!チャニヒョンうるさい!」
🐶「話だけでお腹いっぱいになりそう。あなたの下の名前ヒョンが料理できなかったのも納得」
🐧「チャンビナよりできるし」
🐖🐇「ヤー!生卵もうまく割れなかったあなたの下の名前に言われたくない」
🐰「いやそこで争わないで」
🐺「はいはい、そろそろ行くよ」
結局は、話をややこしい方向に広げたチャニヒョンに諭されお終いになる。
それでもなんとなく、やけに静かな朝のフライト時間より、気分もよくなっていた。
地元のSTAYに会えることも、初めて両親に来てもらえることも、すべてが楽しみだ。
🐧「This city... doesn’t give me a gentle pushこの街は...優しく背中を押してなんかくれない。— it shoves me, hard.寧ろ、思いっきり突き飛ばしてくる。

🐺「へえ、僕たちとは真逆だ」
🐧「そう、チャンスはあるけど掴める保証はない。みんな自分の人生を全力で生きていて、他人を気にする余裕なんてない。夢を語っても誰も笑わないけど、手は貸してくれない。“Prove it.”証明しろと言われるだけ」
🦊「冷たい街……みたいな?」
🐧「でも、結果を出したときの反応は圧倒的に正直だよ。倒れても立ち上がれる人にだけ、『お前ならやれる』って結果で応えてくれる。NYはそういう、冷たいけど正直な街だ」
だからね、と、一呼吸置く。
メンバー全員を見てから、息を吸い込んだ。

🐧「いつか、いや、近い将来、タイムズスクエアに僕たちが映ればいいなって。僕にとってそれは叶えたい夢というより、やっとこの街に認められたって思えることだろうから」

🐖🐇「よし、じゃあまずはNY公演に全力で挑もう」

頼りになる相棒の言葉に、優しく微笑み返した。

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