僕はその日、JYPの代表でプロデューサーのパク・ジニョン氏に呼び出された。
案件は間違いなく事務所の新しい企画の話だろう。
この前は「まだ3RACHAにしか伝えられていない」と話したのだが、今では一人を除き全員を誘えていた。
PD「チャニ、久しぶり」
🐺「はい、この前以来ですね」
企画を伝えられたのもこの部屋だった。
「誰でも、チャニの好きなように選んでいい」と言われ、すぐに頭には何人もの候補が浮かんだ。
もちろんその中にはあなたの下の名前もいた。
ずっと男同士のような距離で接していたが、彼女は女の子だったと意識して不安になった。
しかし、『誰でもいい』と言った代表の言葉を信じて候補に加えた。
絶対にだめなのであれば、『男の中から選べ』と最初に言っておくべきだったろう。
PD「それで、進捗具合を聞いても?」
🐺「はい、候補者は前回企画書を提出したときから変更してません。ただ、まだ一人だけ交渉中で……」
PD「交渉中?もうあまり時間はないよ」
🐺「はい。絶対に間に合わせます」
PD「因みにその一人って、誰?」
🐺「……あなたの名字 あなたの下の名前です」
PD「あなたの下の名前、か。その子……」
「ヨジャなんだし、やめたほうがいい。誘うのは諦めてくれ」
そう言われたらなんて返せばいいだろうかと、胸がドクドクと嫌な音を立てていた。
代表は心臓に悪い空白の時間をたっぷり取ってから、徐ろに口を開く。
PD「あとで私からも声をかけてあげよう」
🐺「え……宜しいんですか?」
PD「あなたの下の名前の実力は間違いないよ。それは月末評価を見ただけでわかる。あの子を練習生として埋もれさせたままにしておくのはもったいなさすぎる」
🐺「それならなんで……」
「デビューできていないんですか」と言いかけて、慌てて口を閉じる。
しかし代表は続きの言葉を見透かしたかのように苦笑した。
PD「あの子の磨き抜かれた表現力、誰をも惹き付ける魅せ方、力強いダンスに歌声。彼女は特殊だよ。これまでのヨジャグループには、残念ながらあなたの下の名前の実力をさらに伸ばせるようなものがなかった」
🐺「あなたの下の名前だから、反対されなかったんですね」
PD「チャニとあなたの下の名前は、互いに互いを知りすぎている。……今までの罪滅ぼしというわけではないが、あなたの下の名前が迷っている理由が『性別』だけなら……私が解決しよう」
🐺「ありがとうございます!」
PD「うまくいけば全員で凄いところまで目指せるよ。……チャニ、期待してる」
再びお礼を言ってからメンバーと軽く打ち合わせし、あなたの下の名前をいつもの言葉で口説きに行く。
「私が解決する」という代表の言葉の本当の意味を知ったのは、これからさらに数日後のことだ。
そのときは、自分たちを待ち受けるサバイバル番組の厳しさも、流した汗や涙のことも、まだ何も知らなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。