『──全員で勝てなきゃ、嘘ってもんだろうが!』
『──ベア子!』
『何か、思いついたかしら!』
『──この旅の、全部の力をここで使うぜ!』
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「……結果がわかっているのに、これを見させられるのは辛いのよ……!」
ベアトリスが唇を噛み、そう声を上げる。
シャウラがどうなるかを、ベアトリスはようやくはっきりと淀むことなく思い出した。
「裸のお姉さんは死んでないけどお……裸のお姉さんは、もう『シャウラ』じゃなくなっちゃったものお」
瞳を伏せて、メィリィは、悲しそうにそう言った。
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『──さそり座の女ってのは、愛情深いってのが通説だからな!!』
『──ここが見せ場だ! やってくれ!!』
『……ホント、人使いが荒いんだからあ。ほおら、みんな、いらっしゃあい。見てるだけなんて、もったいないわあ』
『──ここまでだよ、シャウラ』
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「──シャウラ女史……」
ユリウスが、痛みをこらえるように瞳を伏せる。
そして、ユリウスの耳が拾う。
スピーカーに、スバル以外の心の声が混ざる。
「──シャウラ女史?」
それは、確かめるような声だった。
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『あなたはだあれ? 赤くて怖いサソリさん? それとも……それとも、誰なのかしらあ?』
『シャウラ』
『──シャウラ!』
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「──シャウラちゃん?」
紅蠍は、メィリィの問いに答えぬまま、その風貌に僅かな変化をもたらした。
それはきっと、昴以外の全員が確信した、魂の変化だった。
「──昴……」
スクリーンは、白く染まる。
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『覚えてるッスか、お師様。あーしに、絶対戻ってくるから待ってろって、そう言っていなくなったッスよ』
『覚えてねぇ。つか、知らねぇって言ってるだろ。何べんも言わせるなよ』
『まぁ、仕方ないッス。お師様が忘れっぽいのはあーしに譲られてるッスもん。あーしとお師様は似た者同士ッス』
『ゾッとしねぇ! いや、言語センスが近いのは認めるけども』
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「確かに、言葉の使い方は似とるね。それで言うと、アルくんも似とるけど」
そう口にした時の頭の違和感を無視して、アナスタシアはシャウラとスバルの会話に耳を傾ける。
「──お師様は、酷い人やよ。本当に」
400年も待ちぼうけだなんて、シャウラは本当に健気だとも、思う。
「──絶対戻ってくる……か」
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『愛してるッス、お師様』
『……俺は、お前に愛してるなんて言わないぜ』
『わかってるッス。お師様はいけずだし、照れ屋でシャイッスから。でも、そこも好きッス。ぞっこんッス。オンリーユーッス』
『俺は、お前に、愛してるなんて、言って、やらない……』
『……いいッスよ。お師様が言ってくれない分、あーしが言い続けるッス。そしたらいつか、きっと跳ね返したくなる日がくるッスよ』
『いつかって……気の長ぇ話だな。四百年待つ気かよ』
『そうッスか? 四百年なんて、すぐだったッスよ』
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「シャウラ……」
シャウラは、泣かなかった。
400年も待つなんて、絶対に辛かったに決まってる。
だって、エミリアなら耐えられない。
大切な人に、そんな長い間会えないなんて、あまりにも悲しくて、心がめちゃくちゃになってしまうから。
でも、
「シャウラは、違うのね」
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『四百年なんて、明日の明日みたいなもんだったッス』
『だって──待ってる時間も、愛してたッスもん』
『ねえ、お師様。だから、また、いつか――』
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「明日の明日……それは随分と、言い得て妙だね」
ラインハルトが、白く崩れていく空間の真ん中で、紅蠍だったのだという片鱗を感じさせない、恋する乙女のような顔で微笑むシャウラを見てつぶやく。
「──消える」
その言葉には、いつになく、無機質な色があった。
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『──シャウラ』
『……役目を、果たし終えたかしら』
『だったら……俺たちが……』
『──スバル、わかっているはずだ。その仮定は、彼女への侮辱だと。そして、君がすべきは後悔ではない』
『でも、あーしはお師様が一人いてくれたら十分ッス』
『シャウラ……』
『はいッス、お師様』
『シャウラ……シャウラ……シャウラ……』
『お呼びッスか? お師様』
『シャウラ、シャウラ……』
『も~、あーしってば、お師様に愛されすぎて、困っちまうッス~!』
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「──正しいですね。最優の騎士……でも、今かけるべきは、その言葉では」
そう言いながらも、ここにオットーがいたとして、どんな言葉をかけたのかは分からないが。
「──たらればなんて、言っても仕方がないですね。意味がない」
オットーの呟きを横目に、賢一は哀しそうにスクリーンを見つめる。
「──シャウラちゃんは、このために作られたって……それが、お師様とやらの目的だったってことか」
悲しい。あまりにも。
だが、どうかシャウラの最期が、満たされた思いであって欲しい。
それだけが、シャウラへの救いだから。
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『四百年なんて、明日の明日みたいなもんだったッス』
『だって、待ってる時間も、愛してたッスもん』
『ねえ、お師様。だから、また、いつか――』
『いつかまた、あーしと出会ってほしいッス』
『今度は、お師様があーしを待つ番ッスよ? 追う女より、追われる女ッス』
『――お師様、大事な、大事な、約束ッス』
『今度は、忘れないでくださいッス』
『――お師様、愛してるッス』
『お前は、馬鹿だ』
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「──健気ね」
ラムが、一言だけそう口に出した。
シャウラは、ただ試練のための存在ではない。
塔のための存在ではない。
少なくとも、スバルと、ラムたちにとっては、それ以上の意味があった。
「バルスは気が長くないわ。そこまで従順でも健気でも頑張り屋でもないから。だから──」
ラムは、黒くなったスクリーンを見て、
「──早く、人の姿で逢いに来なさい。シャウラ」