『わざわざ、ルールに『決まりを壊してもいいよ』って断ってるってことは、このルールは壊されることを前提にしてるってこと』
『迂闊に塔からは離れられない! ハンディ戦ばっかで悪いが、付き合ってくれ!』
『~~っ! こんなの、絶対の絶対、あとでひどいんだからあ!』
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「そうですね、権能には、発動範囲が決まっているのでしょうし……」
どこまでも発動できるのなら、あまりに無法すぎる。
「──そうだとしても、難易度が高すぎますが」
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『スバル! ラムの反動がきたかしら』
『お察しの通り、だ……悪い、何とか堪える……っ──ラムが、『暴食』の片割れを片付けてくれたら……』
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「──言われなくても、そのつもりよ」
想像通りと言うべきか、ラムが予想していた通りの苦しみ方だ。
こうなる時間をなるべく少なくするためにラムは早く殺してやろうと思っていたのだが、悪趣味な逃げ方と戦い方をする『暴食』に手間取った。
「──分かっているわ。ええ」
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『クソ! 血が止まらねぇ! ベア子! どうしたらいい!?』
『とにかく! 吐いた血は出し切らせるかしら! 窒息したらマズいのよ!』
『スバル! 躊躇う理由がベティーのためなら、いらないかしら! 理由がベティー以外なら、あとで一緒に謝ってあげるのよ! 一緒に苦しみたいし、一緒に喜びたい……ベティーを仲間外れにしない! それが、ベティーとスバルの契約の条件かしら!』
『愛してるぜ、ベア子』
『ベティーの方が上なのよ』
『──コル・レオニス、セカンドシフト』
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「こんな使い方も……」
エミリアの美しい声が、驚きを混じえて小さく空気を震わせる。
スバルの顔色がマシになり、ベアトリスの顔色が悪くなった。
つまり、
「負担の分配ね。うん、これすごーくいいと思うわ。スバル、私にも使ってくれていいからね」
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『セカンドシフト――負担の分配』
『──スバル』
『ああ』
『……めちゃめちゃしんどいかしら!!』
『ああ、めちゃめちゃしんどいんだ!!』
『ベア子! 頭と体で違うことして!』
『──っ、難しい注文してくれるもんなのよ!!』
『──E・M・M!!』
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「──お兄さんもベアトリスちゃんも、難しいことをするわねえ」
「スバルはいつだって無茶なことばかりするのよ。でも、それを支えてあげるのが契約者であるベティーの仕事……なら、躊躇う理由がないのよ」
そんな風に、なんの躊躇もなく言い放つベアトリスを見て、ユリウスは薄く笑う。
「──全く、よく似ているとも」
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『メィリィの治癒魔法を止めるって選択肢がねぇ……!』
『なら、E・M・Mを切るしかないのよ。タイミングと、その後の対処はスバル任せになっちゃうかしら!』
『おうよ、任せとけ。ベア子、お前はメィリィの治療と、俺が指示したことにすぐさま反応する都合のいい精霊としての心構えを頼む!』
『言い方が! 悪い! のよ!』
『ここで、負け癖発揮してる場合じゃねぇんだ。分の悪い賭けだが……』
『──意地と見栄でどうにかしてみせると? それも、実に君らしい決断だがね』
『――アル・クラウゼリア』
『──故あって、馳せ参じた。危ういところだったようだね』
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「──スバルの呪文、なんだかすごーく楽しい気持ちになるの。どうしてかしら?」
「スバルがエミリア様にかける言葉をそのまま呪文に転用しているからかと」
「そうね、多分そうだわ、ユリウス。ありがと」
エミリアが、白い頬を赤く染めて、満足気に笑う。
「──すごーく恥ずかしいけど、すごーく嬉しいの。おかしいわね」
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『スバル、シャウラ嬢は私が引き受けよう。それ以外は……』
『自力で何とかしろってことだな、了解』
『いや、ベアトリス様と協力して成し遂げてくれ』
『こういう状況の俺の自力って、七割くらいベア子を計算に入れてるから』
『戻ってくれて助かったぜ……』
『君も、己の価値を見つめ直したようで何よりだ』
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「随分と自分を高く見積ったわね。バルスの力は、一割もないわよ」
「随分と辛辣ねえ、ラムお姉さん。まあ、わたしも同じ意見だけどお」
「あら、奇遇ね。けれど、力を見誤って迷惑をかけられたら困るもの。辛辣なくらいがちょうどよ」
「優しいのか優しくないのかよく分からないんだからあ」
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『──スバル! 見るのよ! 空が』
『──雲が、晴れた』
『──やってくれたのか、エミリア』
『おい、シャウラ! シャウラ! なんでなんだ、しっかりしろよ!!』
『──スバル、残念だが』
『助ける、そう決めたんだ。――俺は、あいつを助け出す』
『自覚のない、お師様としての務めと?』
『違う。俺が、あいつのお師様だからじゃない。俺が、あいつに絆されたから、そうするんだ』
『俺はもう、身も心もくたくただ。――だから、さっさと助けられろよ、シャウラ!』
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「──シャウラちゃん、」
なにか大切なことを隠しているのだろうけど、昴への愛だけは本物なのだと、そう思わせる言動をしていた少女。
焦がれるような笑顔と、底なしの献身が、彼女にはあった。
「──このまま終わるなんて、ダメよねぇ」
お師様とやらが望んだ結末でも、知ったことではない。
「──助かって、シャウラちゃん」