巡る記憶、触れる心
めんどくさいオタクなので最近書いてる途中に「こんなこと言うか……?」「なんかちょっとオタクに都合が良すぎない?」と全捨てしてるので大変
あと、人生上映会のイラストバズってましたね……おめでとう……
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『――お前、今、俺に何をしたんだ』
『……お兄さん、まさか、私たちのこと覚えてるの? ──え、どうして、死んだときの『記憶』があるの? ううん、それだけじゃない。それだけじゃないよ、お兄さん。死んだ『記憶』があるのはもちろんおかしい。十分変サ。だけど、おかしい。だって……だって、私たちが食べた『記憶』の中には、お兄さんを殺した『記憶』なんてないのに、お兄さんには殺された『記憶』がある!』
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「──大罪司教……ルイ・アルネブ」
スバルの記憶を喰らい、彼女は恍惚な表情で混乱の声を上げる。
ラインハルトはそれを見て、少しだけ顔をしかめるが、すぐに元に戻す。
「──スバル」
金髪の少女の言葉は、何故か分からないが、ラインハルトの不快感と、その他小さな感情を引き起こした。
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『なんなの、これは!? どういうことなの、これって!? 『記憶』は、妄想とは違うんだよ!? 『魂』に付着した澱は、自分の好き勝手に捻じ曲げられない! だから! これはお兄さんが見た世界だッ! これは、お兄さんが味わった歴史だ! これは、お兄さんだけが知ってる、お兄さんの物語だッ! お兄さん、もしかしてあたしたちと同じ? 大罪司教なんじゃないの?』
『────』
『私たちは直接会ったことないけどサ、ペテルギウスが言ってたよ! 因子は届いてるはずだって。大罪の座は埋まってるから、いずれ全員揃うんだって! その、空いてた席ってお兄さんの……俺の席なんじゃないのか?』
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「──確かに、そうやね。記憶だけは変わらん……にしても、大罪司教と一緒にされるなんてナツキくんが不憫やわ」
彼の、常軌を逸した権能は、正直、アナスタシアの警戒心を引きずり出している。スバルが人類の味方側にいるから許されているだけであり、大罪司教に彼が成り果てれば──止められるのは、ラインハルトくらいだろう。
「──さすがに高く見積もりすぎやろか。でも、手段選ばんかったらそんくらい行くやろ」
彼がそうなった世界も、あったようだが。
「──あくまで、可能性や。今のナツキくんは、そんなことせぇへんって分かっとるけど」
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『うわあ、すごい! 本当に死んでる! 無惨に死んでるわ、お兄さん! 何回も、為す術なく死んでるわ、お兄さん! こんなことってあるのね、お兄さん!』
『──『死に戻り』』
『──欲しい』
『──『死に戻り』だ』
『私たちは、最高の人生を生きられる――!』
『どうすればいい? どうすれば奪える? お兄さんの『死に戻り』が権能なら、ただ食べるだけじゃ奪えない。『記憶』と『名前』にくっついてくるモノとは違う。魔女因子はオド・ラグナの対だもん! 簡単には手放されない! だから……』
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「──どうして、そうなるのかしらあ。わたしは、お兄さんの権能なんて絶対に嫌だわあ。だって、死なないと発動しないなんて、あまりにも不便だし、痛いと心がすり減るものお」
ルイ・アルネブは、理解していない。
『死』とは、人間を殺す手段だ。
そしてそれは、肉体に限った話ではない。『死』は、精神をも殺しにかかる。
「──お兄さんは、まともじゃないのよお」
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『お兄さん、殺したペテルギウスの権能、使えてる……?』
『私たちは、自分の人生を生きられるんだッ!!』
『──っ! 勝手なことを! 『死に戻り』なんていいものじゃない? 持ってる人間に持たざる人間の気持ちはわからないッ!』
『──あたしたちが、なればいいんだよ。私たちが、お兄さんになればいいんだ。あたしたちがお兄さんになって、『暴食』の権能に喰らわせれば……魔女因子を統合できる。ストックできるから、お兄さんなら』
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「──そんなわけない」
フェリスが、口に出したことも気が付かないくらい自然に、そう零す。
「──『死に戻り』なんて、命への冒涜だよ。他人を救うために死ぬのも最低。でも……」
ルイ・アルネブへの怒りが、フェリスの細い体を巡る。
「──自分のために、その権能を使うのは……それよりもっと、」
スバルは、傲慢だ。他人のために死ぬなんて間違っている。
だが、ルイ・アルネブはその百倍間違っている。
「──気持ち、悪い……」
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『お兄さんの『記憶』でビックリしたんだけど、アルネブって星座のうさぎ座なんだってね? それに、大兎を滅ぼしたのもお兄さんたちなんて驚いた。でも、だったらあまりサプライズにはならない? どうして私たちが増えたのか、それとも可愛いルイちゃんが増えてお兄さん大歓喜? ないか。ないね。お兄さん、ちっちゃい子に欲情しないタイプなんだ。ふーん、そう?』
『――■■、■■する』
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「べらべらと戯言を……」
フレデリカが顔を顰め、白い手のひらに力を込める。
「──最後の言葉、よく聞き取れませんでしたわ」
スピーカーからノイズが混じり、邪魔をした。
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『どうだ。お前が見たがってたものは見られたかよ。――ルイ・アルネブ』
『ぇ?』
『お前の見たがってたものは見られたか?』
『──ぁ』
『ぃ、やあああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁああぁああぁぁぁぁ――ッ!!』
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「──!?」
びり、と鼓膜を突くような悲鳴が空間を揺らした。
あまりにもうるさくて、反射的にエミリアは長い耳を白い掌で覆い、
「──な、に?」
そう、スクリーンを凝視していた。
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『死にたくない! あたしたちは、死にたくない! 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! 嫌だ! 嫌だぁッ!! あんなの……あんなの、耐えられるわけない! あんな苦しみ! 喪失感! 耐えられるはずがない! 無理! 無理無理! 絶対に無理! 嫌だぁ! あんなこと、耐えられるのは人間じゃない! 化け物! 化け物よぉッ! ──人間の心は、自分が死ぬことになんか耐えられないのぉッ!!』
『──だから、俺はお前が俺を喰おうとしたとき、言ったんだよ。……絶対、後悔するってな』
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「────」
その言葉に、エミリアの体は動きを止める。
──当たり前だ、当たり前だった。
スバルの『死』は、権能を発動させる。でも、『死』は、あくまで『死』なのだ。その後に何があっても、『死』であるという事実は変わらない。
なのに、
「──スバル……」
彼は、エミリアやレム、ベアトリス、他にもみんなを救いたいという気持ちで、それを乗り越えている。
「──スバル」
最近は少しだけ命を大切にしてくれている気がするけれど、それでも、エミリアたちに比べてスバルの中でスバルの命は軽すぎる。
「────」
──もし、エミリアが、もっと……
「──スバル……っ」
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『──ああ、俺はすげぇよな、ナツキ・スバル。なんだ。案外、大したもんじゃねぇか、俺。メィリィのことも、シャウラのことも、任せて、任された。ラムもユリウスも、無理してやがる。あの二人がそれなんて、よっぽどじゃねぇか。ベアトリスとエキドナにも、まさかの迷惑かけ通しか。ったく、俺って奴は……』
『──E・M・T』
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「──スバル殿、あなたは……いや、それが、あなたという人間の根幹か……」
ヴィルヘルムがそう口にする。
スバルの危うさ、精神状態。それが、スバルをスバルとして構成する部分に密接に絡みついている。ならば、それを否定するのも、無粋というものであろうか。
「──しかし、それでも私は、スバル殿、あなたに、命を投げ捨てて欲しくはない」
凝り固まる考えを治すのは、容易ではない。
周りを頼ろうと思っても、頼れる状況でなければ頼れない。
だからこそ、
「──あなたの、支えに」
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『おい』
『ひっ!』
『……ビビりすぎだろ。──ルイ・アルネブ、お前の負けだ。お前も俺の一部だったんなら知ってるかもしれないけどさ。お前らの……大罪司教が名乗ってる冠は、七つの大罪ってやつと共通してる。で、中二病御用達のロマンワードな『七つの大罪』だが、それと近いもんに『七元徳』ってのがあるんだよ。だけど、お前らは……お前は、それを侵した。ルイ・アルネブ、お前の負けだ。だから、それを認めて何もかも解放しろ』
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「七元徳……」
サブスピーカーから聞こえるスバルの心の声が説明をしてくれている。
「七つの大罪が、『傲慢』『嫉妬』『憤怒』『暴食』『怠惰』『色欲』『強欲』。そして七元徳が『思慮』『勇気』『節制』『正義』『信仰』『希望』『愛』……うん。確かに、欠かしてはいけないものだね」
それを失った時点で、ルイ・アルネブは、許される道をも失った。
「──僕は、どうたろうね」
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『私たちは、やろうと思えば何でもできるって言ってたな。だったら……だったら、お前が今まで喰ってきた人たちを全部解放しろ。そうすれば……』
『……そうすれば、なに?』
『お前が喰った、大勢の人たちを解放しろ。『名前』が戻れば、もう死んじまった人たちの名誉だって回復できる。生きてる人たちなら、家族と再会だってできるんだ。お前がそれをしてくれれば、俺はお前を……』
『──見逃すって? そんなことないね! あるわけない!』
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「────」
メィリィはルイの言葉に少し目を開く。
「──あるわけない?」
メィリィの言葉に重なるように、後方でラインハルトの声が聞こえる。
「──何故、」
「──ルイ・アルネブ」
名を呼んだのは、ユリウスだった。彼もまた、不理解を示すように顔を顰めていた。
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『お兄さんはあたしたちを見逃さない! お兄さんは、自分の敵を撃滅する! 最後の最後まで絶対に打ち砕く! 完膚なきまでに! けちょんけちょんに! パーフェクトゲームでクローズする! それができる! だったらやらないわけない! やらない意味ない!』
『食べたものを返せ? 絶対に嫌! だって、これがあたしたちの生命線じゃん! これがなくなったら、お兄さんは私たちを殺せる! 逆だよ逆、全然逆! 私たちは、殺されないために、お兄さんにこれを返しちゃダメなの!』
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「──お兄さんの権能なら、できないことはないでしょうけどお……お兄さんなら、しないわあ」
メィリィがそう唇から吐息混じりに漏らす。
「──逆、か……生命線と言うには、あまりに細すぎる気がするけれどね」
ラインハルトが、端正な顔に手を当ててそう口にする。
「──哀れですわね」
フレデリカが、ほんの少しの怒りをにじませて、そう言った。
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『──俺は、お前を救わない。可哀想とも思わない』
『もう、一秒だってお兄さんと同じところにいたくない! 生理的に無理! 生命的に無理! 運命的に無理なの! だからサ、消えてよ! お兄さんを食べるのは、お兄ちゃんと兄様と! どっちでも好きな方がすればいい! あたしたちは御免だ!』
『お前の兄弟が、お前の最後の頼みの綱なら、わかった。――その綱をぶった斬って、俺はお前に償わせる。覚えておけ、ルイ・アルネブ。嫌なことも辛いことも、お前自身で抱えろ。――『記憶』から、逃げるな』
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「──大将……?」
ガーフィールが、ほんの少し、綺麗な色をしたその瞳を見開く。
ガーフィールは、スバルの真剣な顔と、怒っている時の顔を知っていた。
だが、これは、いつもよりもずっと、怒りよりも重い感情が強く──
「────」
ルイの感情が空間に伝染しているせいかもしれないが──ただ、少し、恐ろしいと、感じた。
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『──ライ・バテンカイトス!!』
『あ……』
『危ないから待って! えっと、私のこと、その、わからないかもしれないけど、あっちが敵! ここは私に任せて! 私のこと、わからないかもしれないけど!』
『──大丈夫だよ、エミリアたん』
『──俺の名前はナツキ・スバル。エミリアたんの、一の騎士!』
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「────!」
嬉しそうに、エミリアは頬を赤らめて微笑む。
「──スバル」
もう一度、その優しい声で名前を呼んで欲しい。その声さえ聞ければ、エミリアはいくらでも頑張れる。どんな悪者が相手でも、どれだけたくさん魔法を出さないといけなくても。
だから、
「──早く、スバルに会いたい」
そう、エミリアが囁く。
「──昴、その呼び方変だなぁってお母さん思ってたんだけど……」
エミリアの嬉しそうな横顔を見つめ、菜穂子は微笑む。
「──そうじゃ、なかったみたいだね」