「愛するハナ、言い残すことは?」
「ま、待ってよ…ハニー、話し合おう」
「その饒舌な舌を切り落としてあげましょうか?」
「勘弁してください」
結婚した時から絶対にダブルベットで寝ると融通を効かせなかった夫を寝室の奥に追い詰めて、「さあどうやってなぶり殺そうか」と頭の片隅で考える。今二人の愛する息子はすっかり夢の中。この家で起きているのは多分もうすぐ舌を切り落とされる夫と、眉間に青筋が浮かんでいる私だけ。
「ハニー、これには訳があるんだ!説明させてくれ!」
「あんたのその言い訳に何度付き合わされたと思ってるの?今更無駄よ、諦めなさい」
「こ、これは決して!浮気では!ないんだ!」
「じゃああのキャバクラの名刺はどう説明するのよ」
息子二人が寝静まった夜。幾ら結婚して時が経ったからって私と夫は性欲モンスターなので夜の営みだってまだ盛んである。
折角の夜だし、明日はハニも休みなのでどうせならと好物の料理も作って可愛いとは言い難いけどセクシーなランジェリーも身にまとってそれなりにいい雰囲気を作ったはずだ。
なのにこの男は甘ったるい香水の匂いをつけて帰ってきて挙句の果てにはTシャツには口紅、ポケットにはキャバクラの名刺という見事な浮気をしてきた模様だ。
「もういい、ハニ。あんたが浮気する性格なのは知ってるわよ、私に魅力がないってことよね」
「それは!!断じてない!!ハニー、聞いてくれ。これは会社の接待で一緒に飲みに行ったんだよ、その時に貰った名刺で…」
「じゃああの口紅はどう説明するの?」
「そんなの僕に聞かないでくれよぉ…女の子を介抱したときにだと思うんだけど…断じてそういうことは…」
「…私以外の女に触ったの?しかも介抱?」
「あ、あ!!!ち、違う!ハニー!」
この男の人生最大の失敗は私に恋をしたことだと思う。私は自他ともに認める嫉妬の化身なのだ。とことん重くて、とことん愛して欲しい。だからこそ普段はあまり出さないように気をつけているのだが、ハニに近づく女は全員容赦なく牽制しにいきたい。
そもそもあんな男に近づく女もどうかと思うが。
「…わかってるのよ、ハニが女好きなことくらい」
「い、言い方……」
「でもあんたが私を選んだんだから私を一生愛しててよ、見てて欲しいの、私以外見ないで欲しいの」
「勿論だよ、ベイビー。僕には君しか…」
「はあ、またこれだわ」
私は世界で一番美しい女という自覚がある。それなりにモテてきたしモデル顔負けの美貌を持っているから。なのに、リスのような顔で涙を溜めて謝っているこんな男に心酔してるだなんて自分でも馬鹿馬鹿しい。ヒョンジンはそんな自分とハンに呆れてしまいベットにボスンと座り足を組んだ。
正座をしてるハンの顔は泣きそうな顔をしてて目を赤らめている。可愛い、こんなの他の男がしたら殴り殺してる。
「ごめんね?ベイビー、僕には君しかいないよ」
「またそうやって適当に…」
「君は適度に愛を注がないとどこかに行ってしまうだろう?でも、僕からだけだと不安なんだ…だから…」
「んん…くすぐったい、」
ベットに腰かける私にそっと触れて、首筋に唇を寄せられ囁かれてしまうと私はいつも許してしまう。なんとちょろい。
いつの間にかスイッチが入っていたのか『ベイビー…いい?お願い』と情熱的な目で言われて断れるわけがなく『次したらキャンバスをハニの血で染めてあげる』と言い放ち結局その体を許してしまった。
Pixivにて公開している作品です。
タイトルもそのままです。普段は支部とXにいます。どうぞお贔屓に。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。