決めたから、最期まで
ここ迷いましたが、やっぱりスバルくんの記憶の追体験なので、ちゃんと回数分、流しときました👍🏻
あれ、でもこれ、オルバルトのとこも適用されんのか……?
やばい、大丈夫かな
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『──スバル、さっきの話は確かなのか?』
『ああ、ここまできて疑ってくれんなよ。せっかく、俺がひでぇ目に遭ってまで回収してきた情報だ。これが活かせないと俺が浮かばれねぇ!』
『ああン? なンだ、オメエら。オメエらまできやがって、ずいぶンと熱心じゃねえか。それとも、用があンのはオレじゃなく、こっちの奴の方かよ?』
『レイドと『暴食』が交渉してた、って聞いてたんだが……』
『交渉……これが、かしら? ベティーには、交戦でもまだ手ぬるい表現に思えるのよ』
『ああ、同感だ。これを話し合いとは呼びづらい』
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「──一方的な、暴力……ね」
エミリアが珍しく不快感に近い感情をその美しい横顔ににじませる。
レイドのやり方はあまりにも酷く凄惨なもので、やると決めたら躊躇のないエミリアであっても、不快感を引き出されるのは容易かった。
「──すごーく、酷いと思うわ。こんなやり方は……やっぱり、だめ」
「ベティーもそう思うのよ。そして……この会話も、やはり覚えがないのよ」
「──そう、なの。そう……それは、すごーく……うん、嫌ね」
「かしら」
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『オメエ、面白えこと言ってたな。オレを喰らい尽くして、味わい尽くして、舐り尽くすって言ってたか。――それを、させてやるよ』
『――。ぎひ、かは、あはははッ! なんだそれッ! 何それ何それ、急になんだよッ! どうして急に、そんな気になったのさ、赤毛のお兄さん! それが嫌だからって、僕たちや俺たちをこんだけ振り回してくれたくせにさァ!』
『気が変わったンだよ。――あぁ、そうだそうだ。どうせすぐ、オメエらみてえなのが邪魔するだろうがよ』
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「──本当に、自分勝手ですね。論理がめちゃくちゃだ」
「あの手の方に論理やら常識を説くだけ無駄だと思いましてよ。そういうのが通じない方だから、これだけのことが出来てしまうのでしょうから」
オットーの呟きにフレデリカが冷静にそう返す。ガーフィールもそれに頷き、無言の肯定を示した。
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『そら、試してみろ。オレを食い荒らせるか、このままオレに遊ばれて死ぬか、どっちにしろ、欲しけりゃ動くしかねえ。それが人生ってもンだろ、オメエよ』
『――あァ、ああ、ああッ! わかった、わかったよ、わかったさ、わかったとも、わかったから、わかってるから、わかりたいから、わかっているからこそ! 暴飲ッ! 暴食ッ! アンタの、お望み通りにしてやるさッ! 喰らわずには、いられないッ──レイド・アストレア』
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「──長々と話すんじゃないわ。煩わしい……殺したくなるでしょう?」
ラムが苛立ちを吐息に込めて吐き出す。
白い手のひらが力を込められてより白くなる。皮膚が傷つくギリギリの力だ。
「──どうなるのでしょうね。ラムは、最後の世界しか知らないもの」
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『あァ、すっごいなァ。あんな味が、こんな味が、どんな味がするのか、たくさんたくさんたっくさん想像してたけど……予想以上だったッ!』
『レイドを、喰った……?』
『あァ、見てたろッ!? 喰ったとも! 喰ってやったとも! いいなァ、最高だなァ、これが想像だにしない味わいッ! 『悪食』なんて言われてる僕たちでも、こいつの豊潤な味わいにはなるほどッ! ライの言い分がわからなくも――』
『い、いったい、今度は何を始めたのよ……』
『ま、ま、まー、待って、ひへ、ぎひ、ぎひひッ。おかし、おかしいって、おかしいじゃないかッ! だって、こんなの……オメエ、変だろ? 変なこたねえよ、オメエ。喰うか喰われるか、それが生きるっつーことだろうが』
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「──お兄さん風に言うなら……」
ペトラやガーフィールと話していたスバルの姿が脳裏に過ぎる。
よく分からない言葉を使っていたが、何回も聞けば意味が推測できるものもいくつかはあった。
そして、今は、はっきりと理解できる。
「──受肉……かしらあ」
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『──ああ、やっぱ生の体は違ぇな。肉に血が通ってる感じがしやがる』
『『暴食』が消えて、レイドが……』
『厳密には、喰った相手を再現する『暴食』の権能を逆手に取って、相手の自我を塗り潰した……だよな?』
『難しいこと言ってンじゃねえよ。ンなどうでもいいこと、オレが知るかよ。で、オレが知りもしねえことでえばってンじゃねえ、稚魚が。稚魚? あー、うン? オメエ……ああ? オメエ、これオメエ、あれだな、オメエ。──オメエ、気持ち悪ぃな。そンなンでよく頭おかしくなンねえな。いや、なってやがンのか? なってやがっからそンなンなのかよ。わからねえな。考えたこともねえ』
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「──気持ち悪い、言うとるけど……気付いたん? ナツキくんの……能力に」
「どうなんだろう……分からないわ。それに、こんなの、見ても、信じるのが難しいものなのに……見抜くなんて、無理なんじゃないかって、思う、けど……」
エミリアが迷いながら口にする。
実際、レイドならスバルのことも気づきそうなのが恐ろしいところだ。
「──どっち、なの」
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『なるほどなるほどなるほどだ。オレにゃわからねえが、どうやらこいつらの狙いはオメエみてえじゃねえか。なら、話は早ぇ』
『レイド! あなたの相手は私だ!』
『あン? あなたの相手は私だ、っつったか?』
『く──』
『後ろにお姫様抱えてて、オレとやり合えるわきゃねえだろうが!』
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「お姫様……? ううん、それよりも、ユリウスくんが吹き飛ばされちゃったわ。ベアトリスちゃんも、大丈夫なの?」
菜穂子がレイドの言葉に一瞬首を捻るが、すぐにベアトリスのことだろうと解釈して焦る。ユリウスも割と思いっきり吹き飛ばされてしまっており、心配になる。
「ラムちゃんとエミリアちゃんが合流できてなくて……メィリィちゃんとシャウラちゃんもまだよね。大丈夫かしら……」
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『そら、情けねえ王子様はいなくなったぜ、お姫様』
『王子様とかお姫様って表現には異論あるが……必要な時間は稼いでくれたぜ!』
『あぁン?』
『──ウル・シャマク』
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「あ、お姫様って昴のことだったの……? ベアトリスちゃんのことかと思ってたわ。ううん、それより、ベアトリスちゃんやっぱりすごいのねえ。こんなに魔法が使えるなんて」
「──え、あ、そうなのよ。ベティーは大精霊だから、これくらいは楽勝かしら」
「そうなの? うん、本当にすごいわぁ。頼もしいわね」
菜穂子に話しかけられ、ベアトリスが言葉に詰まる。可愛い。
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『なンだ、空気かこりゃ。空気なンて、どこにでもあるもンでオレが止まるかよ』
『それで、オレに届くかよ、オメエ』
『──あ、ぁ。届くぜ。……これが、カウントワンだ』
■1カウント
・レイドと『暴食』の戦いは止められない。レイドと『暴食』の合一も阻止は困難。
・ユリウスなら、勝機はある。
・――ナツキ・スバルは、勝ち目がない。
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「──カウント・ワン……」
ラインハルトが復唱し、その後に続く言葉に耳を傾ける。
サブスピーカーから響くそれと共に、スクリーンは暗転し、新たな景色が映し出される。
「──届くよ、スバル」
届くまで、スバルは、続けるのだろうから。
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『ハハッ! ハハハッ! やるね、やるなぁ、やるじゃん、やるかも、やってくれる、やってくれたよ、やってくれるからこそッ! 暴飲ッ! 暴食ッ!』
『戯れている暇があるの? ずいぶんと余裕なことね』
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「──覚えがない……またなの? 全く、あと何回その顔を見ればいいのかしらね。いい加減、見飽きてきたわよ。『暴食』」
ラムが吐き捨て、刹那の一瞬、何かを案じるような顔をする。
「──早く終わらせなさい、バルス」
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『──ミーニャ!!』
『え!? どこに……』
『バルス!』
『──さすがに、今のは連続されるとしんどいからサ』
『──いいね、お兄さん。そうやって次にいくのかなァ?』
『死ね、馬鹿』
■2カウント
・エミリアとラムに協力し、ライ・バテンカイトスとの早期決着狙い、失敗。
・『コル・レオニス』で、ラムの負担を引き受けるのはタイミングが肝要。
・――ベアトリスの奇襲は、『暴食』には相性が悪い。
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「──! スバルっ……!」
エミリアが立ち上がり、瞳を揺らす。豊満な胸の前で手を結び、不安が手のひらを伝って心臓を揺らしているような錯覚まで起こしている。
「お願い、スバル……」
何を願っているのか、縋っているのか、それすらも、曖昧になっていく。
「──苦しまないで……」
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『──頑張ってえ、砂蚯蚓ちゃん!』
『五つの障害の大部分が、俺の責任ってのは間違いなさそうだ』
『メィ──』
『──シャウラ』
『お兄さ──っ』
■7カウント
・メィリィと塔の外へ脱出、魔獣を誘き出す効果あり。
・魔獣の狙いはスバル。影や大サソリの狙いも、おそらく同一。
・――ナツキ・スバル単体では、メィリィを守れない。
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「──7……?」
その数字に、疑問を覚えた。
だって、これで三回目ではないか。
「──ぁ……っ」
どくん、と心臓を掴まれるような感覚がした。
瞬間、脳裏に刻まれる。映像には映らなかった、昴の死が。
「──あ、あぁっ……! 待って、そんなっ……!」
世界は、混乱する彼女の心を労わってはくれなかった。
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『……あァ、やってくれるなァ。僕たち相手にここまでやれるなんて大したもんだよ』
『──これだけ不利な状況で、それでも僕たちが戦い続ける意味ってあるかなァ?』
『──あと、もう少しだったのに! あと一歩、もう少しで、レムをあんな目に遭わせた輩を……っ』
『──状況ってもンは、相手のことなンざ考えねえで動き回るもンだぜ。オレがオレの庭を歩くのに、なンで他人を気遣ってやる必要があンだよ』
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「──自分のお庭を歩く時でも、自分勝手なことしていいわけないじゃない。そんなの、すごーくあんまりな言い訳だわ」
エミリアは、自分の庭のようなものである森でも、自分勝手なことはしなかった。はず、だ。
「──ほんとに、レイドはダメな子ね。もう少し人の気持ちを考えなきゃダメじゃない」
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『レイド、お前はなんでベティーたちを……スバルを狙うのよ?』
『『試験』の途中だから、っつーのはわりと後付けだわな。オレの元々の目的でいやぁ、そっちの美人の相手がそうなンだが……』
『だけど、何かしら』
『そいつを直接見て、気が変わったンだよ。気持ち悪いから、削ってやる』
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「気持ち悪い……か。それは随分と、堂々とした言いがかりをつけられたものだ」
面と向かってそんな不条理な理由を言われるとは、この世界はまだまだユリウスの知らない不条理で満ちている。
「──スバル」
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『わざわざ、死に急ぐ必要はねえンだぜ、ガキンちょ』
『生憎と、もう死んだように生きるのはまっぴらごめんなのよ』
『へえ、そうかい。――じゃあ、仕方ねえな』
『ウル・ミーニャ』
『ナツキ・スバルの大精霊、ベアトリス』
『いいぜ。――『棒振り』、レイド・アストレア』
■15カウント
・『暴食』は、目に見えて不利な状況となれば逃走する。
・放置したレイドは、必ず最終的にスバルを殺しにやってくる。
・――もう二度と、自分より先に誰かを死なせない。
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「──は、ぁ──っ!」
エミリアの口から、吐息だけが漏れる。
「ま、って……待って、待って……! こんな……」
頭の中に、刻まれる。隣でベアトリスと、その奥でラムも苦しむような声を小さくあげている。つまりこれは、全員に平等に刻まれているもの。
「15……回も……」
発狂しそうになる。一気に流される死の記憶が、エミリアの心を蝕む。
「スバル──っ!」
肩をつかみ、何とか正気を保つ。それも、あとどれだけ持つかは、知らない。
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『──スバルは、元から何でもできるスーパーマンなんかじゃないのよ。何度でも言うかしら。スバルは、何でもできるスーパーマンなんかじゃないのよ。いつだって目の前のことに必死で、みんなのために傷付いて……痛いのを我慢するのだって得意じゃない、普通の男の子かしら』
『そ、そんなはずねぇよ。そんなはず。だって、そうじゃなきゃ……』
『そうじゃなきゃ?』
『そうじゃなきゃ、こんな……』
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「この会話は、覚えがあるのよ……てんやわんやになったスバルに、ベティーがこう声をかけたかしら」
「──そう、なの。じゃあ、これで……? ──でも、また、あんなふうに……」
エミリアの心中に、少しだけ動揺が走る。
が、
「──ううん。余計なこと考えて落ち込むのはやめにしましょう。スバルは、すごーく頑張ってくれてる。それだけが、本当のことだもの」
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『──スバルは、ここで大人しくしているかしら』
『当然かしら。スバルはずっと、頑張りすぎてるのよ』
『──スバル、足りない部分はベティーたちが埋めるかしら。だから何もかも、自分一人でやろうなんて思わなくていいのよ。だって』
『ベアトリス……』
『だって、それがナツキ・スバル流かしら』
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「ベアトリスちゃん……」
オットーが瞳を見開いて、少しだけ肩の力を抜く。
「──そう、ですね。ベアトリスちゃんの言う通りです」
「なのよ。ベティーはいつでも、スバルの一番の味方かしら」
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『もし、俺の中に、本当にお前がいるなら……出てこいよ……!』
『俺は! 俺じゃ、ダメなんだよ! お前が必要なんだよ、『ナツキ・スバル』!』
『今こそ、お前が必要なんじゃないのかよ……なのに、なんで俺なんだ。臆病で、腰抜けの俺じゃ、みんなを……それなのに』
『……『コル・レオニス』』
『──この、反応は』
『──菜月・昴』
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「──ぁ、っ」
喉が締め上げられるような声を出し、菜穂子は立ち上がる。
どくどくと鼓動が早くなり、息が乱れるのを懸命にこらえ、ただ、目の前の光景を受け入れる。
「──昴、の、死者の書……」
つまり昴は、知ることになる。菜穂子たちが見てきたのと同じものを見て、自分を取り戻すことになる。
「──それは、取り戻さないといけないと思うわ。思うけど……」
「────」
瞑目し、苦痛をこらえるような顔で、彼女は、
「──もう、これ以上……」
みなまで言わず、ただ、願いを口にしたのだった。