傷だらけの手で、あなたを
最近レイド好きすぎてえぐい
何でだろう……今までスバルくんに害をなしたことのある存在は誰であろうと絶許だったというのに……
それはそうと、最近暇つぶしに大罪司教だけの人生上映会やってみたんですが、ずっと「あのさぁ、死に戻りとかいう権能を持ってるなんてイカサマじゃない? 僕みたいに慎ましやかな生活を送ってる人間の人生も巻き戻してるってことでしょ? それって僕の一度きりの人生の妨害であり、ひいては僕の権利の侵害だと思うんだよね」とか「まともじゃない! まともじゃない! こんなの、おかしいわ! お兄さんは、何もかもがおかしいのよ! もう二度と、私に、私たちに! 関わらないで──!」とか、うるさかったのでボツにしました
そのうち突発的に出すかも?
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『――? お師様が死ねって言うんなら死ぬッスよ?』
『……そう、か』
『お師様、あーしに死んでほしいッスか? うーん、お師様のお願いなら何でも聞いてあげたいんで、あーしとしては全然バッチコーイなんスけど、またずいぶんと変なタイミングで思い切ったッスね? 今、塔の中がわやくちゃしてて……』
『わかってる。わかってる』
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「──シャウラ……」
なんでもないような顔で、彼女は言い切る。スバルのために死ぬことを、彼女は躊躇わないのだ。
それはきっと、愛という言葉以外で形容することの叶わない、柔らかく暖かな思いだ。
「──シャウラ」
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『──シャウラ、お前、でかいサソリに化けるのできたりしないか?』
『化ける、ってーとちょっとニュアンス違うッスけど、できるッスよ~。あー、でも、プリティさに欠けるんであんまし好きくないッス。あーしは、かか様とお師様がデザインしてくれたこの姿が一番だと思ってるんで』
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「このでざいんはフリューゲルさんがしたものだったのね……」
シャウラの格好はエミリアから見てもかなり際どく破廉恥なものだと思う。涼しそうで動きやすそうなのでエミリアも着たい気持ちはあるが、これをフリューゲルがデザインしたのだとすれば、
「──フリューゲルさん、ちょっと……かなり変な人なのね」
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『シャウラ、質問ばっかで悪いんだが、聞きたいことがある。聞いた話だと、このプレアデス監視塔の『試験』にはいくつかルールがあるはずだな?』
『一、『試験』を終えずに去ることを禁ず。二、『試験』の決まりに反することを禁ず。三、書庫への不敬を禁ず。四、塔そのものへの破壊行為を禁ず。――ッス』
『──五つ目は?』
『……ないッス。お師様、聞いてなかったッスか? あーし、四つまでしか言ってなかったはずッス。お師様、数も数えられなくなったッスか? それはダメッスよ~。あーしも数字は得意じゃないッスけど、それぐらい数えられるんスから……』
『シャウラ』
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「──シャウラの気持ちになれば、やるせない話なのよ。永遠と思えるくらいに待って、やっと逢えたのなら……もう少しだけ一緒にいたいと思うのは、仕方のないことなのよ」
ベアトリスが特徴的な紋様の刻まれた瞳を潤ませ、悲痛な表情を浮かべる。
「──フリューゲル、お前は、一体なんなのよ……」
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『NGッス。やだ、話したくないッス。五つ目のルール? そんなの、どうでもいいじゃないッスか。あーしとお師様の蜜月には、何の関係も……』
『関係ないわけあるかよ。俺も、みんなも、この塔の『試験』に挑んでんだ。『試験』のルールがわからなくて大丈夫なんて楽観はできない。だから、シャウラ』
『……嫌ッス』
『シャウラ! お前はお前で、この塔で役割があるはずだ。塔の星番……? それをずっとやってきたんだろ。本当かどうかわからねぇけど、四百年も! だったら――』
『──四日、ッスよ』
『……あ?』
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「────」
オットーが押し黙り、複雑な心境を長い溜息に込める。
シャウラの気持ちは、あまりに切り捨てるには痛みを伴いすぎており、優先するにはあまりにも状況がそれを許さなかった。
「──ナツキさん……」
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『まだ、お師様たちが塔にきて、たったの四日目ッス。そのうち、最初の二日はお師様が寝込んでたから、あーしとお師様が会って、話して、くっつけたのは二日……四百年も待ったのに! たったの二日ッスよ……』
『シャウラ……』
『一瞬で、一目でいいって、思ってたッス。四百年、塔でずっと、お師様を待ってたッス。一目、見られたらそれで満足と思ってたッス。――でも、そんなの嘘だったッス。だって、お師様はあーしの全てなんスもん。お師様の全部で、お師様を想う全部であーしができてるッス。四百年の全部使ったって、お師様に伝えきれないッス。それが、たったの二日で……そんなの、嫌ッス』
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「──嗚呼、そうね。それはあまりにも、短すぎるわ。でも、そうするしかないのよ、シャウラ」
ラムが、端正な顔を少しだけ暗く澱ませる。そして、少しだけ息を吐く。白く長い足を組み、瞳を緩やかに動かす。
そして、
「──許せないわね、世界は……あなたがそうすることを、看過しないのだから」
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『……だから、俺には五つ目のルールを話せない?』
『あーしは、ルールを話したくないッス。NGッス。だって、これを話したら……これを話したら、お師様は『試験』のクリア方法に気付くッス。だから、これを話したら、話しちゃったら……あーしと、お師様の時間が、終わっちゃう』
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「──嫌な話やね。どうしたって、両方は選べんのやから」
スバルは、レムやユリウスのため、決断しなければならなかった。被害者はずっと苦しんでいることを、スバルは理解していたのだから。
だが、
「──シャウラさん、なあ……どうするのが、正解なんやろうか」
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『お師様、嘘ついたあーしを、嫌いになるッスか? 嫌いになって、顔も見たくないって……そう、思うッスか?』
『……嫌いになんか、ならないよ』
『だ、め……ダメッス……お師様! お師様、お師様お師様お師様お師様……!』
『シャウラ!? シャウラ、どうした!? こんな急に……』
『──誰かが、ルールを破ったッス』
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「──悲しすぎるわあ、こんなの。……死ねるかって言われても笑っていたのに……嫌われるのは、嫌なのねえ」
メィリィの記憶にいるシャウラはいつも、笑っていた。あっけらかんとしていて、悩みなんてないような顔をしていた。
スバルを盲信していて、無償の愛を向けていた。理由は、今でも分からないけれど。
「──フリューゲルさんがすごく最低な人だって、そう思うわあ」
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『お師様……! 今なら、まだ間に合うッス……』
『間に合う?』
『今なら、お師様が命じてくれたら、あーしは……あーしは、あーしを殺せるッス。変化したら、間に合わないッス。あーしは、血も涙もないキリングマシーンになって、お師様を殺すッス。だって、こんなにお師様が欲しい……お師様が欲しくて欲しくてたまらない……だから』
『そうなる前に』
『あーしに、死ねって言ってくださいッス。……そうしたら、あーし、お師様のこと』
『シャウラ、五つ目のルールを聞かせてくれ』
『お師様、そんな場合じゃ……』
『それを聞けたら――! それを聞けたら、命じてやる。――安心しろ。お前が化け物になる前に、俺がお前に命じてやる』
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「──スバル……」
ラインハルトが青い双眸を細め、眉を顰める。
シャウラの姿はどんどんと変化していく。美しい姿が、魔獣としての異物に変わっていく。
スバルが感じている恐怖が、スクリーンを通じて耳元まで迫ってくる。
「──苦しまないでくれ、君は……」
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『──五、『試験』の破壊を禁ぜず、ッス。ほら、目の色が変わったッス。――あーしの、好きなお師様に』
『お、師様……早く。あーしが、あーしじゃなくなる前に……言ってください、ッス……死ねって! お師様が言ってくれたら、あーしは……』
『シャウラ』
『お師様……』
『──悪い。さっきのあれは嘘だ』
『え?』
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「だめ! 昴!」
菜穂子が手を伸ばし、叫ぶ。
「飛び降りた……! どうしよう、また……!」
そこまで言って、息を飲む。
「──昴、笑ってる」
不敵な笑み、と言うべきなのだろうか。少なくとも、死が目前まで迫った人間の顔じゃない。
「──昴」
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『──お師様!!』
『――俺は、お前を助けていいんだな』
『──お師様ぁぁぁぁぁあああ!!』
『──シャウラが泣くから、お前には殺されてやらねぇよ。……必ず、助けてやる』
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「──スバル……」
エミリアは宝石のように美しい瞳を見開き、世界にその美しさを焼き付ける。
「──優しい、ね。優しすぎるわ、スバル」
涙が、宝石の輪郭をなぞった。