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ランダム波振動試験とは?基礎知識・PSD/Grms・規格・実施手順まで完全ガイド

 ランダム波振動試験は、輸送や稼働時に発生する不規則な振動を再現し、製品の耐久性や信頼性の確認に使われる試験です。

本記事では、条件設定に欠かせない PSDやGrms値の基礎 から、JIS/IEC規格の使い分け、手戻りを防ぐ実施手順までを整理しました。実環境に即した評価方法を構築したい方の参考になれば幸いです。

ランダム波振動試験とは?基本概念と目的

ランダム波振動試験は、周波数や振幅が一定ではない振動を与え、製品が受けるダメージ(ゆるみ・断線・はんだクラック等)の起点になり得る現象を早期に捉えるために行います。評価結果を設計へ戻すことで、市場での不具合リスク低減につながります。

ランダム波振動とサイン波振動の違い

振動試験には、主にランダム波振動とサイン波振動の2つの方法があります。それぞれ目的と特徴が異なるため、評価したい内容に合わせて使い分けることが重要です。

ランダム波振動:複数の周波数成分を同時に含む不規則な振動を再現し、実使用時に近い状態で総合的に評価しやすい方法です。
サイン波振動:単一周波数(または周波数を変化させる掃引)で規則的に振動させ、共振点や弱点周波数を狙って評価しやすい方法です。


ランダム波振動の特徴

ランダム波振動は「どの周波数帯に、どれだけのエネルギーが分布しているか」をPSDで表し、その条件に基づいて試験を行います。輸送環境や稼働時の揺れなど、現実の振動の複雑さを反映しやすい点が特長です。

サイン波振動(正弦波)の特徴

サイン波は共振点の特定や、特定周波数に対する応答確認に向いています。設計の弱点を周波数軸で把握したい場合に、試験計画へ組み込みやすい手法です。

振動試験全般の基礎知識については「振動試験の基礎知識 〜製品の信頼性を確保するために必要な試験とは〜」で詳しく解説しています。
サイン波振動試験の詳細については、「正弦波振動試験とは?共振点探査の方法と実践活用法を解説」をご覧ください。

ランダム波振動/サイン波で実現したい条件に合わせた、振動試験装置の仕様検討や自動化のご相談はこちらから。

 

ランダム波振動試験の適用事例

ランダム波振動試験は、自動車、航空宇宙、電子機器、産業機械、精密機器など幅広い分野で使われます。特に「輸送・稼働でランダム要素が強い」製品では、実環境に近い評価として有効です。
業界や製品によって、重視する周波数帯や試験時間、合否判定の考え方が変わります。評価対象の「どの不具合を潰したいか」を起点に条件を決めると、試験の意味が明確になります。



業界 主な適用製品 試験目的と効果
自動車業界 車載ECU、センサー、バッテリー、他部品 車両の走行中に発生する道路の振動に対する耐久性を確認し、安全性と信頼性を保証。
航空宇宙業界 宇宙船、衛星、搭載機器 打ち上げ時や軌道上での激しい振動に耐えられることを保証し、ミッションの成功に不可欠な信頼性を確保。
電子機器業界 スマートフォン、PC、医療機器、サーバー 日常的な使用による振動や衝撃を再現し、製品の耐久性を評価することで、顧客に安心を提供。
産業機械 建設機械の制御装置、ロボット部品 稼働中の機械振動に耐え、故障なく動作し続けることを保証し、製品の信頼性を向上。
精密機器 光学機器、測定器など 微細な振動による性能への影響を評価し、製品の精度を保証。

想定している試験条件(周波数帯/時間/Grms/軸数など)に合わせて、振動試験装置(固定方法・計測を含む)の仕様検討や自動化をご相談いただけます。

ランダム波振動試験を理解する上で知っておきたい「PSD」と「Grms値」を解説

ランダム波振動試験において、PSD(パワースペクトル密度)とGrms(加速度実効値)は、振動の強度とエネルギー分布を示す重要な指標となります。それぞれ詳しくみていきましょう。

PSD(パワースペクトル密度)

PSDは「周波数ごとの振動エネルギーの分布」を表す指標です。どの周波数帯に負荷が集中しているかを読み取れるため、弱点の見立てや条件設計に直結します。

PSDグラフの読み方

  • 横軸 (周波数 Hz): 振動の速さを表します。数値が小さいほどゆっくりとした揺れ、大きいほど速く細かな揺れを示します。
  • 縦軸 (Power Spectral Density):  (Power Spectral Density): 各周波数における振動のエネルギーの密度を表します。数値が大きいほど、その周波数帯に多くの振動エネルギーが集中していることを意味します。
  • 低周波域(例:10Hz以下): 製品全体をゆっくりと大きく揺らす振動。大型構造物や筐体全体に影響を与え、自動車や船舶の振動環境に相当します。
  • 中周波域(例:10Hz〜200Hz): 部品の共振周波数と重なりやすい振動。この帯域のエネルギーが高いと、機械部品や電子部品の破損、疲労破壊、取り付け部の緩みなどを引き起こすリスクが高まります。
  • 高周波域(例:200Hz以上): 微細な部品に影響を与える、速く細かい振動。基板上のチップ、はんだ付け部、精密部品などの信頼性を評価する際に重要となります。

 
低・中・高周波それぞれで支配的になりやすい現象が異なるため、「製品のどの部位に効きやすい帯域か」を意識して読むと、設計側へのフィードバックがしやすくなります。

Grms(実効加速度値):振動の強さを数値化

Grmsは、ランダム波振動の強さ(厳しさ)を1つの数値で表すための指標です。PSDグラフで見ると、(指定した周波数帯域で)曲線の下側を足し上げた量が大きいほど、Grmsも大きくなります。条件の比較や管理でよく使われます。製品の耐久性を数値で比較する基準となり、長期信頼性の評価と製品の市場競争力向上に重要な役割を果たします。

  • Grms値が小さい → 穏やかな振動
  • Grms値が大きい → 激しい振動

 

実際の製品開発での活用法

設計段階ではPSDから弱点になりそうな帯域を見立て、試験ではGrmsと試験時間で「どの程度の厳しさを、どのくらい与えるか」を決めます。品質保証では、条件の妥当性と結果の再現性が重要になります。

ランダム波振動試験の規格と基準

ランダム波振動試験では、用途に応じて国内外の規格を参照しながら条件・手順・判定を組み立てます。代表例として、JIS Z 0232、IEC 60068-2-64が挙げられます。

主要規格の比較:JIS Z 0232とIEC 60068-2-64

規格名 主な適用分野 特徴と目的
JIS Z 0232 包装貨物の輸送振動試験 日本国内での試験基準として広く利用され、地域特有の振動環境を考慮。
IEC 60068-2-64 電子部品や機器の耐久性評価 グローバルな市場での製品評価に適用され、国際的な基準として信頼性を保証。

JIS Z 0232は主に包装貨物の輸送振動を想定した考え方が中心で、IEC 60068-2-64は環境試験としてより広い製品分野で参照されます。対象製品と市場要件に合わせて、どの枠組みを優先するかを決めることが大切です。

参照規格や社内基準に合わせた、振動試験・加振試験のオーダーメイド装置の制作はこちらからご相談ください。

ランダム波振動試験の実施手順

ランダム波振動試験は、大まかに「計画→装置・計測→分析→設計反映」の流れで進みます。精度の高い結果を得るためには、最初の計画で条件と目的が整理できているかが重要です。

試験計画の立案

評価対象、参照規格、PSD/Grms、試験時間、軸数、合否基準などを決定し、「何を合格とするか」を明確化します。

試験機材の選定

試験対象(製品・部品)の質量・サイズ、必要な周波数範囲、要求加速度、制御精度などを踏まえて、装置・コントローラ・センサを選びます。装置の能力と試験条件が合っていないと、狙った条件で試験できません。

試験データの分析と設計反映

試験で得られたデータは、製品の弱点を具体的に示し、設計改善の検討材料になります。試験後は、加速度波形やPSDデータを確認して共振周波数を特定し、必要に応じて疲労損傷の観点から寿命・耐久性の見立ても行います。

こうした分析結果を設計へフィードバックすることで、評価の目的に沿った改善判断がしやすくなります。

 

ランダム波振動試験の活用事例

ここからは、ランダム波振動試験の具体的な活用事例を紹介します。

製品開発における役割

開発段階で実環境に近い負荷を与え、弱点を早期に把握できると、量産後の手戻りや不具合対応のリスク低減につながります。あわせて、次のような目的でも活用できます。

  • CAE結果の確認:コンピュータによるシミュレーション(CAE)の結果を試験で照合し、モデルの妥当性を確認します。
  • 設計改善の優先順位付け:試験で判明した弱点部位を特定し、その情報を設計にフィードバックします。


品質管理における役割

品質管理では、評価条件の再現性と判定の一貫性が重要です。

品質管理にランダム波振動試験を導入することで、製品の品質を継続的に監視し、顧客満足度の向上につなげられます。特に、物流や包装技術の分野では、輸送シミュレーションとして活用され、輸送中の破損リスクを低減します。


ランダム波振動試験の課題と解決策

ランダム波振動試験を内製する場合、試験結果のバラツキやコストの問題に直面することがあります。

試験条件の標準化による精度向上

取り付け方法、治具、条件設定が属人化すると、結果がぶれやすくなります。再現性を上げるには、手順・治具・条件表を揃えて「同じやり方で同じ試験ができる」状態に近づけることが重要です。

過剰な試験を避けてコスト削減

厳しすぎる条件はコストだけでなく、評価の意味を曖昧にすることがあります。製品仕様と目的に合わせて、必要十分な条件に寄せると、試験回数や時間の最適化につながります。

外部委託の注意点

委託時は、試験条件(PSD/Grms・時間・軸数)、固定方法、必要データ、報告書の体裁を事前に揃えておくと、条件の食い違いを避けやすくなります。

また内製試験で注意しているポイントを、仕様書やチェックリストの形で明確に伝えることが不可欠です。さらに、必要なデータ形式や報告書の内容を事前に合意し、可能であれば試験前の打ち合わせや立会いを行うことで、トラブルや追加コストを未然に防ぐことができます。

振動試験の成功をTMCシステムがサポート

振動試験は、狙った条件で「振動を与える」「正しく固定する」「必要なデータを取る」までがつながって初めて、設計や品質判断に使える情報になります。

TMCシステムでは、振動試験の実施に必要となる装置まわり(加振・固定具(治具)・計測/データ取得)を、運用も見据えて整理し、振動試験装置の設計・製作や試験の自動化に向けた検討・設計に対応しています。

振動試験装置の仕様検討(条件・固定方法・計測)や自動化のご相談は、お問い合わせフォームからご連絡ください。

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