キーボード「FILCO」のダイヤテック、忸怩たる破産~為替デリバティブと需要減、綱渡りの資金繰り~
需要減と安価製品との競合
これにより資金繰りは悪化したものの、本業での利益や債務免除を受けながら対応。コロナ禍での巣ごもりによるキーボード需要の拡大もあり、負債の圧縮は進んだ。 しかし、コロナ禍が明けたことによるキーボード特需の反動や、タブレットの普及、安価キーボードの流入などで2023年頃から業況は大幅に悪化していった。 提携先との取り決めによる最低発注量が足かせとなったことに加え、近年の円安で仕入コストが高騰した。 10億円台を安定的にキープしていた年商は、2024年9月期に4億7,141万円まで落ち込んだ。金融債務の返済も難しくなり、個人から5,000万円を調達して資金繰りを支えた。 それでも2026年に入ると毎月700万円の赤字が発生し、コスト削減だけでは事業継続が困難となった。
資金不足のなかでの清算へ
そして2026年4月22日、事業終了をホームページで発表。ファンの惜しむ声がSNSなどで相次いだ。 法的手続きでは、金融機関をもちろん、取引先や従業員に対する債務を返済できず、債権者が多数に及ぶケースが多い。しかし、ダイヤテックの商取引債権者は判明する限り10名に満たない。また、以下の申立書には以下の記載がある(要約)。 - - - - - - 本会社の経理部長(TSR注:役員ではない、社長親族とみられる)は賃金請求権があるところ、本会社のためにこれを請求を猶予していた。過去3年間の未払い給与(約885万円)が残存しているが、放棄するとのことです。また、退職金も放棄するとのことです。 - - - - - - さらに社長は、業績が傾く要因の一つとなったデリバティブ取引について、以下のように陳述する。 - - - - - - 当時は、各銀行が、同じようにディリバティブ取引を半ば強引に勧誘していたようですが、それに乗った私の責任だと考えています。 - - - - - - ホームページで事業終了を発表する1カ月前の3月20日、ダイヤテックは従業員を整理解雇し、事後処理に不可欠な従業員と業務委託契約を締結して対応にあたった。 ホームページで通販業務などで保有していた個人情報は、「2026年4月22日までに、個人情報保護法および関係法令ならびに社内規程に基づき、適切な方法により安全に破棄・消去した」とアナウンスされている。 また、申立書にはキーボード購入者など個人の一般債権者は確認されない。 ◇ ◇ ◇ 破産申請時の現金はわずか118万円。綱渡りの状況ながら、大きな混乱もなく、破産開始決定を受けたのは、経営陣の責任感が大きい。こうした姿勢が、愛された商品の供給を支えていたのかもしれない。 破産し弁済できない債務者の責任は重い。しかし、最後の処理を丁寧にすることは、債権者に対する言葉にならない「謝罪」にも見える。 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年6月4日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)