鳥取ローバーチャレンジ2026のローバー紹介など

•はじめに

はじめましての方ははじめまして.大工大M1のうおみです.

学ロボ24,25,魔改造の夜とかキャチロボとかやってました.現在はTRTというローバー製作団体にて活動しています

キャチの機体


本記事では2026年3月に出場した鳥取ローバーチャレンジのTRTローバーを簡単に紹介します.あくまでメカ担当の僕視点なので制御や回路のお話はほぼゼロです.

TRTではすべてのポジション(メカ,制御,回路,サイエンス,広報)において新メンバーを募集中です.ローバーだけでなく,ドローンに興味がある方でも大歓迎です!

説明会を都度おこなっておりますのでなにとぞなにとぞ https://x.com/TsukubaRover

 

•TRT参加までの経緯

2025年の9月までキャチロボをやってたわけですが,終わったらどうせ暇になるんだろうなと思って,新しい居候先がないかなと探していたわけです.そしたらX(旧Twitter)にTRTメンバー募集のツイートがながれてきました.なにやらURCという火星探査機の世界大会を目指すために,筑波大生が集まって立ち上げた新規チームらしい.

実は火星ローバーの大会の存在は前々から知っており,AやKやNから始まる日本の強豪チームの活躍をたびたび見ていましたし,参加を考えたこともありました.ですが,すでにメンバーも多く世界に出場しているチームに参加しても自分が活躍できるほどの余白はないだろうなと思って見送っていました.一方TRTはできたてほやほやのチームでゼロからのものづくりが楽しめそうですし,少人数チームは自分の性にあっていそうでした.ちょうどキャチロボの反動で移動ロボット欲が高まっていたこともあり,TRT参加を決めました.

 

•開発目標と自分の担当

10月頃にTRT内で顔合わせをしました.URC出場までの足がかりとして,まずは鳥取ローバーチャレンジでの優勝を目標に定めました.鳥取ローバーチャレンジというのは,月面探査をテーマとした月面ローバーの大会です.ですが,メンバーの全員が学ロボや学生ロケットと兼任しており(自分は卒論),種子島や学ロボとは忙しい時期がだだ被りもいいとこです.かつ3月の大会まで半年しかありませんでしたし.そこで,昨年度大会の様子やルールから,優勝に必要な最低限の開発要件を絞って開発リソースを管理することにしました.自分の担当はサイエンス機器以外のメカ設計に決まりました.

 

メカ設計要件の一部

①4輪駆動

m3508の在庫が限られていたため6輪は諦めましたが4輪でも問題ないなと

②独立ステアリング

砂場や強い傾斜での差動4輪駆動では移動精度の担保が難しいと考えたため.特に,車軸延長上線に大きな障害物があった場合,超信地旋回が不可能なのではないかと

➂4+1軸アーム

Yaw1軸,ピッチ2軸,ロール1軸,直道1軸(ハンドの開閉)

ミッションを読んだ感じ,手先のピッチ軸はなくてもなんとかなると予想

5キロの鉄球を持ち上げられることが必須

 

ローバーって必要なメカ要素が意外と少くて助かります

 

・具体的な設計のおはなし

全体像

ローバーの全体像

重量:約30㎏ サイズ:1m×0.7m×0.7m

割と軽めだと思います

 

駆動輪

独ステは学ロボで一度経験したので楽でした.駆動輪はm3508を1:2.7に減速してあります.ギヤ自作は加工時間がもったいなかったので,アリエクでD面カットのピニオンと平歯車を見繕ってきました.しめて1ユニット1300円ほどです,どう考えても買ったほうが楽ですね.

ピニオンと平歯車

ピニオンを3508の軸にはめて,イモネジと軸先端のネジで抜け留めしています.

ホイールはPLA,タイヤはTPUで制作しています.「弾性車輪」や「ローバー」,「ラグ」などの単語で軽く論文を漁りながら製作しました.外周上にラグを備えたTPUタイヤが変形して接触面積を稼ぎ,路面に沿った変形によりタイヤの回転ベクトルの向きが路面に沿うためスリップ率の低減に寄与している[1]とのこと.ラグは路面の砂に対するタイヤのせん断力向上および,フィールド上に配置された岩やレンガへのひっかかりによる走破性向上に役立ちます.

走行系に搭載されているラグの軌道[1]

 

また,ラグの高さは基本的に高い方がスリップ率を抑えてくれる[2]そうですが,TPU製ということもあって高すぎるとラグの根本が折れる可能性が高くなります.だからといって,厚みを増やすと走行時の振動が増えそうで,比較的路面が固そうなURCには不向きかな?とか.

今回は間に合いませんでしたが,十分にせん断力を得られるラグピッチやラグ高さ,ラグの取付角度[3]もちゃんと考えてみようと思います.

 

ステアリング周り

ステアリングには40kgf・cmの中華サーボを使っていました.在庫があった&安い&制御が楽.学ロボと違って加速度1G爆速移動でぶいぶい言わせるような独ステではないので,ステアリングのRPMはサーボ程度で十分です.この記事を読んでステアリングにサーボを使う人がいるかは知りませんが,やるなら180°サーボは稼働可能角度に余裕がないのでおすすめしません.平歯車はPLA製です.いまのところ壊れたことはないです

ステアリング

ステアリングのトルク計算についてですがこれが目論見外れでした.自分が去年書いたステアの記事を参考に「砂地だしTPUタイヤだから旋回トルクなんていらねえだろ^^」くらいに考えていました.ですが,実際はタイヤが砂に埋れた状態から砂を押し分けて旋回する必要があり,まれにトルク負けしている現象が観測されました.

改善ポイントだと思います.

今大会では,ステアリングにサイクロイド減速機を採用しているチームが複数いてひっくり返りました(自分と設計思想が違いすぎた

サイクロイドにm3508突っ込んでる某チームは一体ステアリングに何Nm出してるんだろうか,,,それともあくまで低バックラッシが目的なんでしょうか

 

サスペンション

リンク式のサスペンション(?)を採用しています.正式名称がわからないのですが,ロッカーボギーと呼んで良いのかな?おそらく違う

試作時点ではリンクではなく傘歯車式を採用していましたが,締結箇所がふえてメンテ箇所が増えるのと,万が一でも締結がゆるめばローバーが転倒してゲームオーバーなのでリンク式へ変更しました.それとバックラッシが組付け精度に依存するため,組み立てやメンテの大部分を筑波大側にお願いする都合上,誰が組んでも同じ精度が出る(再現性が高い)設計が理想でした.リンクって楽ですね~脳死で穴にネジ通して固定するだけで再現性のある組付けが誰でもできるので.

没になった傘歯車式

5軸アーム

5軸アーム

前述した通り,Yaw1軸,ピッチ2軸,ロール1軸,直道1軸(ハンドの開閉)の4+1軸アームです

ピッチ軸にはrobstride03と04を使っています.重いモータを根本に配置しリンクさせることで必要トルクを低減しています.というより,重い03を関節に直付けして振り回すなんて嫌すぎます,万が一暴走したら怖すぎる.

アームには3060の角パイプを使用しています.板材で自由度の高い設計をしようかとも思いましたが,金も時間もかかるので却下.角パイなら,ミスミで長さ指定で買えば加工いらずでたった数百円です.穴あけは筑波でやってもらっていました.フライスがなかったので,このような治具を3DPで作ってボール盤で穴を開けていました.ドリルの径が0.5の倍数しかなかったので,Φ3の手加工穴にm3を通すことになりましたが余裕でしたね.精度を懸念していましたが十分そうです.

3DP製の治具



ロールにはrobstride02,ハンドの開閉にはm2006を台形ネジで伝達しています.台形ネジはこのような左右対称のものをアリエクで買いました.1本で両ハンドを開閉できるので便利です.

台形ネジ



ハンドの先端にはTPUで作ったクッションと滑り止めテープを貼っています.クッションは,密度10%とかでジャイロイド,外壁数0でスライスして印刷しています.把持の際にうまいこと変形してくれていたので,挟みすぎによる部品の破損や把持面積アップに寄与していたと思います.

また,鉄球抜け落ち防止のために中央部分を肉抜いています.5キロの球体を面で把持するのはしんどそうだなと思い,鉄球が肉抜き部分にひっかかるようにしています.

ハンド先端

スライサー画面

 

 

大会のようす

①1日目 3/18

3/19に鳥取入りしました.フィールド横のテントで組み立てる予定でしたが,雨が降っており,時間も夕方だったのでホテルで作業することにしました.

筑波で梱包して宅配便やレンタカーで輸送してた段ボールを開けてロボットを組み立てます.が,ここでトラブルが.

破断寸前のロッドエンドベアリング

盛大に曲がってますね.破断寸前です

これなんの部品か分かりますか?

 

そう,アームの2軸目を駆動するリンクに使っているロッドエンドベアリングです.

どうやら輸送中に運悪く姿勢が崩れて,ネジの破断方向にアームの自重がかかり続けていたようです.で,ここが壊れると思ってないからなんと予備がない(言い訳) 

 

代替品を探すため最寄りのホームセンターを調べたところ,なんと車で十数分の範囲にカインズがあるではないですか.カインズへ向かい探し回ったところ,ロッドエンドベアリングはなかったものの,形状が似た丸カンボルトがありました.

丸カンボルトと破断したロッドエンドベアリング

持ってきた3DPで内径調整部品を作って,なんとかことなきを得ました.危なかった,,

 

なんやかんやあったものの,アームの動作試験を除いて組み立てが17時頃に終わったので雨で湿ったフィールドまで輸送しテストランをおこないました.動画は,20°の傾斜のある丘を走行している様子です

 

タイヤがとんでもなく泥まみれになりました

泥まみれのタイヤ


ここまでタイヤのラグに泥が残ると思っていなかった.これじゃホテルに持って帰れない,,全然乾きそうにもない

というわけで,みんなでなかよく歯ブラシで機体をひたすら掃除していましたが,結構大変だったので最終的にホテルのホースを借りて水洗いしました.簡単にTPUタイヤを着脱できる設計にしておいてよかった,,,屋外ロボコンってツライ.ぶっちゃけ大会期間中の記憶の半分を砂の掃除が占めてる.

雨が降ったのが悪い😠(嘘です自然には逆らえないです.来年はエアダスター用意します)

 

②2日目 3/19

練習するために朝早く起きたわけですが,会場についたらまだ会場設営が終わってなかった.スケジュールの遅れは仕方ないですね,昨日はがっつり雨が降っていたし.

結局この日はスケジュールが押して練習用フィールドが使えなかったので,空き地でデバッグしていました.

その後は別会場へ移動して機体検査と,その流れで交流会に出席

 

➂3日目 3/20

大会本番初日

この日の参加ミッションは科学探査と自律移動.

科学探査では序盤の通信トラブルがあったものの,着陸機(下画像右側)の赤ボタン押下,電源プラグ引き抜きに成功するなどそこそこポテンシャルを発揮できました.

下画像に示す赤ボタンを押して緑ランプが光れば得点になるのですが,これが屋外だと輝度が足りなくて見えない😭.機体に随伴していた僕に見えないなら,カメラだけを頼りに操縦している操縦者からはなおさら見えません.随伴者から操縦者に連絡を取ることはできないのでかなり困りました.随伴者が審査員にアピールして確認してもらうとしても,肝心の操縦者からはなかなか判別がつかないのでどうしようかな.もし来年もルールが変わらないとすれば,日光に強いカメラを使う以外に対策しようがないですね.

ボタン押下とランプ点灯

電源プラグ引き抜き

また,科学探査ミッションには前述の20°の丘に登って頂上から写真を撮影するというサブタスクが含まれていおり,個人的な目標だったのですが惜しいところで失敗しました.というのも,機体に取り付けたカメラからでは路面の角度がわかりづらく,機体が今フィールドのどこをどんな姿勢で走っているかわからなかったとのこと.そのため,頂上に向かってまっすぐ移動しているつもりが,次第に経路が斜面下方向に逸脱しました.すると途端に車体が横滑りし,にっちもさっちもいかなくなってしまいました.これは別角度のカメラを増やすか,内界センサで機体角度を監視するしかなさそうです.

 

➃4日目 3/21

大会本番二日目

 

この日の参加ミッションは無人建設からの決勝戦.

決勝は(科学探査×無人建設)と(自律走行)の2部構成です.操縦者が覚醒して高得点の鉄球を死ぬほど運んだ&自律走行が安定して動いてくれたおかげで危なげなく優勝できました.

今大会を通して,試合中やテストラン中にどこかが壊れて急いで修理する羽目になることはありませんでした.シンプルに作っておいて良かったです.

 

今後やりたいこと

開発について

①アーム根本からYaw軸をなくし,直道を追加

②アーム手先にピッチ軸を追加

➂最大10キロのオブジェクトを持ち上げられるように改良

➃URCに必要なサイエンス機器の開発

➄ドローンの開発

 

大会から1か月以上経ったのでそろそろURCに向けて本腰入れたいと思います.

①~➂は設計をほぼ終えてるので早く加工に入りたい感じ.

➃のサイエンスは自分が担当しますがドローンは予定が未だに立ってない.

URCではドローンも用意する必要があります.

ドローン得意な人いませんか,マジで

 

開発以外

①MakerFairTokyoなどへの出展

②資金集め

➂学会でのポスター発表

などなど,せっかくローバー作ったのでいろいろ試してみようと思います

 

 

参考文献

[1]飯塚浩二郎,久保田孝:“孝軟弱地盤走行のための月面探査ローバ用走行系検証”,科学・技術研究 第1巻1号 pp.49-55,2012.

[2]重松尚久,下岡幸司,室達朗:“月面探査ローバーの走行性に関する実験”,平成17年度 建設施工と建設機械シンポジウム 論文集 pp.147-152,2006

[3]重松尚久,室達朗,大知剛:“月面探査ローバーの車輪形状最適化”,平成16年度 建設施工と建設機械シンポジウム 論文集 pp.49-52,2005

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