故郷に熱狂を再び、甲子園4強右腕の誓い 今春は無失点で準備万全
■夏に輝く 県岐阜商・柴田蒼亮投手 「すごいこと、したんだな」 バスの窓から見た光景を、きっと忘れない。第107回全国高校野球選手権大会準決勝から、一夜が明けた昨年の8月22日。惜敗した自分たちの帰りを、たくさんの人が学校で待ってくれていた。 【写真】「勇気をもらった」の言葉、ロールモデルは…夏活躍の球児×パラ代表 野球部創部100周年の夏、私学を次々と破る快進撃で4強入りを果たした県岐阜商。その中心にいたのが、2年生エースだった柴田蒼亮だ。 数日後に出身地の土岐市役所を訪れると、準決勝の日にパブリックビューイングが開かれていたことも知った。「感動をありがとう」などと書かれた市民の寄せ書きを渡された。「こんなに応援されていたんだなぁ」 1年秋までは捕手を務めていた。投手への本格転向から1年未満の右腕は、大舞台にも臆することなく打者の内角をぐいぐいと突いた。1、2回戦は連続で完投勝ち。敗れた日大三(西東京)との準決勝も10回を投げて4失点だった。 マウンドでは笑顔を浮かべた。「決まったと思った球が、『あー、それ打たれるんだ』って」「(日大三の4番)田中(諒)君とか、どこに投げても打たれそうで怖かったですけど、それ以上に自分がどれだけ通用するのかという気持ち」。打者との勝負を純粋に楽しんでいた。 全国から強打者が集う甲子園は、持てる以上の力をくれる場所だと感じた。 また来春も投げたい――。喜びの帰郷から23日後、その望みは早々に絶たれた。 秋の岐阜県大会初戦、チームは序盤に5失点した劣勢を覆せなかった。選抜大会出場が絶望的になり、「野球の怖さを知った」と振り返る。自身は三回から救援して無失点だったが、6安打を浴びて味方の反撃を呼び込めなかった。 冬場は自らを厳しく律した。筋力強化に励み、スクワットで挙げられる重量は160キロから190キロになった。速球がシュート回転しないよう、キャッチボールでも1球1球、ボールへの指のかかり具合を突き詰めた。 成果は現れた。チームが東海王者になったこの春、県大会から東海大会を通じて相手に1点も許さなかった。享栄(愛知)との東海大会決勝では、自己最速を更新する149キロを計測した。 「夏の甲子園で5試合もできた。その経験を生かすためにも、甲子園でまた試合がしたい」。長かった冬、力は存分に蓄えた。故郷を熱狂させる躍進をもう一度――。(安藤仙一朗)
朝日新聞社