帰省のたび繰り返される家政婦扱い
夫の実家に帰省するたび、私は台所に立たされ続けてきた。
義母も義姉も座ったまま、動くのはいつも私だけ。
料理、洗い物、片付け、客用布団の上げ下ろしまで全部任される。
義姉は嫁いだ立場ではないからと一切手を出さず、義母は当然のように指示を飛ばすだけ。
夫は親戚と将棋盤を囲んで談笑するばかりで、私の手元を気にかけることもなかった。
お盆の親族集まりも例外ではない。十人近い親戚の食卓を私が一人で用意し、休む間もなく走り回る。
前日から下ごしらえ、当日は朝五時起きで煮物を仕込み、昼は素麺、夜は天ぷらまで。
汗だくの私を尻目に、リビングではビール片手の笑い声が響いていた。
義母は親戚の前ではにこやかだが、私の前では「もう天ぷらは揚がったの」「お茶のおかわりまだ?」と矢継ぎ早に注文してくる。
台所と居間を往復し続けた三日間、自分の食事すらまともに座って取れず、立ったまま冷めた煮物を一切れ口に入れて空腹をしのぐような有様だった。
お盆の食卓で放たれた無神経な追撃
ようやく座れたのは、料理が一通り並んだあと。
冷めた天ぷらに箸を伸ばしたとき、向かいの叔母が顔を上げた。
「子供はまだなの?」
悪気のない声色だった。だからこそ深く突き刺さった。
結婚して数年、不妊治療も検討していたが、誰にも言っていなかった。台所で走り回ってきた私に最初にかけられる言葉がそれだったのだ。叔母は構わず続けた。
「早くしないと、嫁の役目が果たせないわよ」
義母は止めもせず、夫は黙々と箸を動かしている。怒りより、急に体が冷えていく感覚が強かった。三日間ずっと走り回って、座った瞬間に向けられる言葉がこれか。胸の奥で何かが切れる音がした。
満面の笑みで返した一言
私は箸を置いて、ゆっくり笑った。
「私、家政婦として雇われているだけなので」
座が凍りついた。叔母も義母も口を半開きにしている。
夫が慌てて何か言いかけたが、私はかまわず立ち上がった。手早く着替えを荷物にまとめ、玄関で「お先に失礼します」と一礼して家を出る。
タクシーで駅へ向かい、新幹線でそのまま実家へ。
母は事情を聞くと、ただ「よく言ったね」と笑ってくれた。夫からは夜に何度も着信があったが、私は出なかった。三日ぶりに自分の布団に潜り込み、自分のためだけに沸かしてもらった味噌汁を翌朝ゆっくり啜ったとき、ようやく自分が一人の人間に戻れた気がした。父は何も言わず、ただ私の前にお代わりの椀を置いてくれた。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。