「have」を「持つ」と訳す人は、英語が一生伸びない
「I have a cold.」を「私は冷たいものを持っています」と訳した人、ちょっと止まってほしい。
その訳し方が出てくる時点で、英語が伸びない理由の9割は説明できる。単語が足りないんじゃない。文法が弱いんじゃない。動詞のイメージが、日本語の訳語に殺されているだけだ。
中学で一番最初に習うはずの「have」で、すでにつまずいている。
これは別に、あなたが悪いんじゃない。日本の英語教育が「have=持つ」と書かせ続けてきた副作用で、ほとんどの大人がここで止まっている。偏差値31だった頃の俺も、もちろん止まっていた。
「have」を「持つ」と訳した瞬間に、英語は読めなくなる
たとえば、こんな文を見てほしい。
I have a cold.
I have a meeting at 3.
Have a good time!
I have two brothers.
We had a great dinner.
これを「持つ」で全部訳そうとすると、頭の中がバグる。
「私は風邪を持っています」「私は3時にミーティングを持っています」「良い時間を持って!」「私は2人の兄弟を持っています」「私たちは素晴らしい夕食を持ちました」。
…完全に翻訳機が壊れた人の喋り方。日本語として誰も使わない。
でも、中学校で「have=持つ」と覚えた以上、頭の中ではこの変換が裏で走り続けている。読むのが遅いのは、語彙が少ないからじゃなくて、毎回この珍翻訳を脳内で起こして、それを慌てて自然な日本語に直しているからだ。
英語を読む速度の前に、変換が一段多い。
動詞は「訳語」じゃなくて「イメージ」で覚える
ここから本題。
英語の動詞は、日本語の訳語と1対1で対応していない。1つの動詞は1つの「イメージ(コアの動き)」を持っていて、そのイメージが文脈に応じて違う日本語訳に化けているだけ。
「have」のコアイメージは、「持つ」じゃない。
「自分の領域の中にある/自分のそばにある」
これだけ。手に持っているとは限らない。所有しているとも限らない。ただ、「自分のテリトリーの中に、それがある」状態。これが have。
このイメージで、さっきの文を全部見直してみる。
I have a cold. → 風邪が、自分の中にある(→ 風邪をひいている)
I have a meeting at 3. → ミーティングが、自分の3時の予定の中にある(→ 3時に会議がある)
Have a good time! → 良い時間を、自分の中に置いてね(→ 楽しんでね)
I have two brothers. → 兄弟2人が、自分の家族の中にいる(→ 兄弟が2人いる)
We had a great dinner. → 素晴らしい夕食が、自分たちの体験の中にあった(→ 美味しい夕食を食べた)
「持つ」じゃなくて、「自分の領域の中にある」。
これだけで、5文すべてがすっと通る。訳語を5個覚える必要がない。イメージ1個でいい。
(このコアイメージの話、もう少し他の動詞でも書いてるので、気になる人はプロフィール覗いてみてください → [プロフィールURL])
話を戻す。
「持つ」と覚えさせた中学英語の罪
俺は別に、中学の先生を悪く言いたいわけじゃない。
ただ、テストで点を取らせるために「have=持つ」と1対1で書かせ続けたのが、結果としてその後10年20年の英語学習を詰ませている、という構造的な話をしている。
中学のテストは、訳語の暗記で乗り切れる。
高校のテストも、まだなんとかなる。
でも、英文を量で読み始めた瞬間に、この「訳語1対1」のやり方は破綻する。
なぜか。
英語の基本動詞(have, get, take, make, give, put, run, come, go…)は、全部1単語で20〜30個の意味を持つからだ。辞書を引くと、訳語が縦にズラーッと並んでいる。あれを全部覚えようとすると、人間の脳は壊れる。
実際、壊れたから俺は偏差値31だった。
「ran」を「走った」だけで覚えていたから、「She ran a company.」が「彼女は会社を走った」になって、フリーズした。「会社の中を走り回ったのかな…?」と、真剣に体育会系の社長を想像した記憶がある。
正解は「彼女は会社を経営していた」。
run のコアイメージは「持続的に動かす」。だから人間が走るし、機械が動くし、会社も経営という形で動かす。1つのイメージが、文脈で訳語を変える。
なんで日本人は「訳語1対1」で覚えるのか
これは英語教育の構造の問題で、責任を個人に押し付ける話じゃない。
学校英語は「テストで点を取らせる」のがゴールだから、採点しやすい答え=1対1の訳語、を採用するしかない。「have=持つ」と書けば◯がもらえる。「自分の領域の中にある状態」と書いたら、たぶん△か×になる。
採点する側の都合で、訳語が固定される。
それを覚えさせられた俺たちは、社会人になっても「訳語の引き出し」で英語を読もうとする。
引き出しが足りないから、英文が読めない。
→ 単語帳を買って引き出しを増やそうとする。
→ それでも読めないから、もっと分厚い単語帳を買う。
→ それでも読めないから、自分には英語の才能がないと結論づける。
俺が偏差値31から学年トップまで持っていけたのは、どこかのタイミングで「引き出しを増やす方向」を諦めて、**「1つの動詞のイメージを深く理解する方向」**に切り替えたからだ。
イメージで覚えると、何が起きるか
3つ起きる。
1. 知らない用法が出てきても、意味が推測できる
「I have your back.」という表現を初めて見たとする。直訳「私はあなたの背中を持つ」では意味不明。
でも、have のコアイメージ「自分の領域の中にある」を当てると、「あなたの背中(背後)が、自分の領域の中にある」=「俺が背中守ってるよ」=「任せろ」というニュアンスが、辞書を引かなくても見える。
実際、「I've got your back.」は「任せろ」「俺がついてる」という意味で日常的に使われる。
イメージ1個で、知らない表現が読める。これが訳語暗記との一番の差。
2. 英文を読むスピードが上がる
訳語を脳内で引き当てる工程が消える。イメージのまま意味を取れるから、日本語に変換する手間がなくなる。「英語を英語のまま理解する」というのは、こういう状態のこと。「英語脳」なんていうご大層なものじゃなくて、ただ訳語の引き出しを開けるのをやめる、というだけの話。
3. ライティング・スピーキングで自然な英語が出る
「会議がある」を英訳しようとして、「会議が…ある…There is a meeting…?」と詰まる人が多い。
have のイメージが入っていれば、「会議が自分の予定の中にある=I have a meeting」と、自然に出てくる。これが、覚えた表現を組み替えて使う「英借文」の入口。
ゼロから英語を組み立てようとするから話せない。have, get, take みたいな基本動詞のイメージを掴むと、英借文の素材が一気に増える。
やることは1つ。基本動詞を10個、イメージで覚え直す
具体的に何をやればいいか。
英語の基本動詞は、ざっくり10〜15個でいい。have, get, take, make, give, put, run, come, go, keep, set, hold, break, turn, look。これだけで、英語の動詞の大半をカバーしている。
この10個を、訳語じゃなくてコアイメージで覚え直す。
動詞 → コアイメージ
have → 自分の領域の中にある
get → 何かを得て、自分のところに引き寄せる
take → 自分から手を伸ばして、取りに行く
make → 何かに手を加えて、別の何かを作る
give → 自分から相手に、何かを渡す
put → あるものを、ある場所に置く
run → 持続的に動かす
come → 話し手のいる方向へ向かう
go → 話し手のいる場所から離れる
keep → ある状態を保ち続ける
これが頭に入ると、文の意味の8割が、辞書なしで取れるようになる。
逆に、ここを飛ばして「TOEIC頻出単語2500」みたいな単語帳を買うと、絶対に詰まる。動詞のイメージが入っていない状態で語彙だけ増やしても、文が組み立てられないから。
順番が、徹底的に大事。
「で、何から始めればいいの」という人へ
ここまで読んでくれた人は、たぶんもう気づいている。
英語が伸びない原因は、語彙でも文法でもなくて、**「中学で習ったはずの単語の理解が、訳語1対1で止まっている」**こと。土台が、ボロボロのまま積み上げているから、上に何を載せても崩れる。
中学英語の穴を埋める。
基本動詞を、イメージで覚え直す。
そのうえで、語彙・発音・文法を整える。
この順番でやれば、3ヶ月で英文を読む速度が変わる。偏差値31の俺で再現できた話だから、今すでに少しでも英語の勉強をしている人なら、もっと早く効くはず。
ただ、「順番」を1人で組むのは、正直しんどい。
何を、どの順番で、どのくらいやればいいか。これを毎週、毎日、自分で考え続けるのは、続かない原因そのものになる。続かないのは意思が弱いんじゃなくて、「次に何をやるか」を毎回ゼロから考えさせる設計になっているからだ。
そこを丸ごとまとめたのが、今回用意したPDF。
ダイジュ式英語メソッド完全版(全123ページ)
中学英語の何を、どの順番で埋め直すか
単語・発音・文法の土台を、3ヶ月でどう作るか
4技能(Reading・Listening・Writing・Speaking)に進む正しいタイミング
聞き流しがなぜダメで、精聴をどうやるか
暗記を「意思」じゃなく「仕組み」で続ける方法
偏差値31の自分が、何をどの順番でやり直して、学年トップまで持っていったか。そのロードマップを全部入れた。
「have」を「持つ」で訳していた自分には、もう戻らなくていい。


コメント