「京大が守ったのは科学ではなく研究費と教授だった」 失意の告発者が研究不正の対応に望むこと
京都大学の小田裕香子教授による研究不正の疑義を告発した元研究員、A氏へのインタビュー。中編では、A氏がiPS細胞研究所(CiRA)など2部局への相談を経て通報し、その後、研究者としての職を失うまでを追った。
後編では、調査開始後につきまとった不安、さらに調査結果を受けた心境を尋ねた。「大学への信頼が徹底的に破壊されてしまった」と振り返るA氏が、今後の研究不正への対応のあり方に望むこととは――。
須田桃子( 科学ジャーナリスト)
調査中につきまとった不安
――京大は予備調査を経て、2024年3月29日から25年6月18日まで本調査を実施しました。
調査には全面的に協力しました。手持ちの情報はすべて提出し、問い合わせにも全力で回答しました。一方で、ちゃんと調査してくれるのだろうか、という不安は常につきまとっていました。
理由の1つは、部局調査委員会のメンバーに、井垣教授のかつての部下で、小田さんとも親交のある名古屋大学の大澤(志津江)教授が入っていたことです。
すぐに異議申し立てをしたのですが、却下されてしまいました。
調査委員会の構成の問題点については、連載第4回でも詳しく報じている。
ヒアリングでも一部の疑義についてしか聞かれず、このペースで進めていたらいつまでかかるのだろう、と思ったこともたびたびありました。
決定的だったのは、調査中の2025年6月6日付で、小田さんが論文の実験結果の一つを差し替える訂正を行ったことです。
4月28日に共著者全員にメールでの連絡がありました。実験条件の一部が論文に記載された内容と異なっている可能性があるため、再実験を行ったところ同様の結果が得られた――という内容で、詳しい理由や経緯を聞いても返信がありませんでした。
「全て小田さんに有利な方向に?」
不正の調査中に訂正するのはおかしいし、(疑義のあった複数の図の中で)なぜこの図だけなのだろう、と不思議に思いました。調査委員会に連絡しましたが、委員会は訂正を把握しており、特に問題視していないようでした。
小田氏はBの画像すべてを差し替える訂正を行った
(訂正前のOda et al., Sci. Adv.7, eabj6895(2021).より一部引用)
その後、8月下旬に大学から調査結果を受け取り(※京大は翌26年3月末に調査結果の概要を公表した)、不正認定されていたのが訂正された図だったことで、答え合わせができた気分になりました。
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