経営・戦略

2026.06.04 17:00

背景は高校卒業者数の急減と杜撰な経営、寄付基金を崩し支払い不能をしのぐ米私立大学

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米国の私立大学は、利益を目的とする営利大学と、利益を関係者に分配せず教育に再投資する非営利大学に分かれる。本稿が扱うのは、後者の非営利大学だ。ハーバードやハワード大学などが該当し、全米に900校以上ある。日本の私立大学(学校法人)も同様の構造で、剰余金を理事や関係者個人に分配できず、教育・研究に充てる。米国の私立非営利大学は、この点で日本の学校法人に近い。

米国の非営利大学は、学生の授業料と、寄付を積み立てた「基金(エンダウメント)」の運用益で経営を支える。基金は元本を守り、取り崩しは年5%以下に抑えるのが原則だ。ところが今、この基金を取り崩さなければ運営できない非営利大学が、数百校に上る。

背景にあるのは、高校卒業者数の急減だ。2008年の景気後退期に出生数が落ち込み、その世代が大学進学年齢を迎えている。高額な学費を避け、安価な公立大学に流れる動きも重なる。

同じ非営利大学でも、明暗ははっきり分かれる。アイビーリーグのような難関校が寄付を集めて潤う一方、知名度の低い中堅以下の大学は基金を食いつぶしながら延命している。

寄付を積み立てた約1590億円の基金を持つタルサ大学、職員43人を削減

2016年9月、タルサ大学の経済学教授マシュー・ヘンドリックスと、同大学の職員約3000人に、大学側から不穏なメールが届いた。その内容は、小規模な私立研究大学である同校が、退職年金制度への拠出を停止し、職員43人を削減するというものだった。教育分野を専門に計量経済学を教えていたヘンドリックスは、潤沢な基金を持つはずの大学が、なぜこれほど大がかりに見える措置に踏み切るのか理解できなかった。

当時のタルサ大学の在学生数は、わずか4500人だった。それにもかかわらず、オクラホマ州にある同大学は10億ドル(約1590億円。1ドル=159円換算)を超える基金を持っていた(その多くは、山師的・投機的な独立系石油業者1人からの寄付だった)。この規模の基金があれば、同校の財務基盤は安定しているはずだった。

そこで、終身在職権を持つヘンドリックスは、同大学がどのようにして2600万ドル(約41億3400万円)の赤字を抱えるに至ったのかを調べることにした。壮大な構想を掲げる多くの小規模大学と同じように、タルサ大学の経営陣は2010年の「Embrace The Future(未来を受け入れる)」計画の下で、大胆な拡張路線に乗り出していた。運動部を大学スポーツの最上位カテゴリーである「D-1」に格上げし、フットボールスタジアムを改修したほか、新しい学生寮や7万平方フィート(約6500平方メートル)の舞台芸術センターも建設した。

「教育とは関係のない部門の職員数が、同規模の大学の2倍ほどに膨らんでいた」とヘンドリックスは語る。「学内には20人規模のマーケティングチームがあった。常勤の警備担当者が30人いて、大規模な施設管理チームもいた。図書館にも非常に多くの職員がいて、おそらく20人ほどだった。フードサービスも学内に抱えていたが、一般的にこれは非常にまずいやり方だ」。

80超の学術プログラム廃止を掲げた再建計画の末に、学長辞任

ヘンドリックスは監査済み財務諸表を詳しく調べ、タルサ大学を同じような規模・性格の大学と比較した。2019年4月、タルサ大学の新学長ジェラード・クランシー博士は「True Commitment(真のコミットメント)」と名付けた再建計画を発表した。この計画は、人文学や芸術分野を中心に80以上の学術プログラムを廃止し、STEM分野・医療・ビジネス・法学といった専門職養成分野に重点を移す内容だった。

「考え得る限り最悪の案だった。そもそもこの計画は、どうやって経費削減につながるのかさえ明確にしていなかった。教員を解雇するといった内容も含まれていなかったからだ」とヘンドリックスは語る。

そこでヘンドリックスは、学内でプレゼンテーションを行い、同じような大学と比べてタルサ大学の財政運営がいかに杜撰だったかを明らかにした。地元ラジオ番組にも出演した。大学の最高財務責任者(CFO)はヘンドリックスの分析に強く反論したが、その後、大学側が雇ったコンサルティング会社はヘンドリックスと同じ結論にたどり着いた。

クランシーが大学改革計画を発表してから1年もたたないうちに、同氏と学務担当副学長は不信任を突きつけられた。数カ月後の2020年1月、クランシーは辞任した。タルサ大学ではその後、別の学長も退任し、同校は最近、弁護士のステイシー・リーズが7月1日付で学長に就任すると発表した。チェロキー族の一員であるリーズは、アリゾナ州立大学ロースクールの元学部長でもある。タルサ大学は学生数の維持に苦戦し、恒常的な営業赤字も抱えているため、リーズは厳しい再建課題に向き合うことになる。

次ページ > 2008年の出生減で新入生が13%減り始める

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2026.05.12 14:00

東大が70年ぶりに新学部を設立、2027年開始の全編英語5年一貫教育

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日本の高等教育は、システムそのものの再編を迫る「人口動態の激変」という未曾有の現実に直面している。人口は急速に高齢化し、主な大学進学年齢である18歳の人口は、ピーク時の約半分まで減少した。かつて、国内の学生にほぼ全面的に依存していた機関にとって、その影響は甚大である。

こうした人口動態の変化は、日本で最も権威ある大学、東京大学の世界に向けた戦略的な学生募集への転換を後押ししている。その取り組みと深く結び付く人物が、東京大学の理事・副学長(国際、ダイバーシティ&インクルージョン担当)である林香里だ。

メディアとジャーナリズムの研究者で、東京でロイターの特派員を務めた経歴を持つ林は、現在、同大学のなかで最も対外的な役割を担うリーダーの一人だ。その職務は、従来の国際担当部署の枠をはるかに超える。国境を越えて学生、教員、研究連携の獲得競争が激化するグローバルな高等教育の舞台において、東京大学をどう位置付けるか。その責任を担っている。

「日本の人口動態を考えると、大学はもはや国内の学生だけを考えているわけにはいかない」と林は語る。「研究とイノベーションにおいてグローバルな競争力を維持したいのであれば、世界中の優秀な学生が、日本を学びとキャリア構築の場として選びたくなるような環境を整える必要がある」

課題は構造的である。日本の高等教育制度は歴史的に、高校から大学へと直結する国内中心の進路を軸に組織されてきた。卒業後は、日本の大企業が新卒を一括で採用する長年の制度を通じ、「日本型雇用」へシームレスに移行する。かつてそのモデルは急速な経済成長を支えたが、いまやグローバルな知識経済と高齢化という現実とは、かみ合いにくくなっている。

人口が減少するなか、日本の大学は、最終的に研究エコシステムと労働力に貢献し得る国際人材を呼び込むための潜在的な拠点として、ますます注目されている。林によれば、その転換には学術面と文化面の双方での変化が必要だ。英語で学位を取得できるプログラムの拡充や、留学生にとってより分かりやすい、柔軟な学修経路の整備などが含まれる。

「目標は単に留学生の数を増やすことではない」と林は言う。「日本人学生と留学生が学びの初期段階から交流し、真にグローバルな視点を育める学習環境をつくることだ」

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2026.03.07 15:00

日本への留学生が40万人突破 政府目標を8年前倒して達成

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日本の留学生数が2025年に40万人を突破し、政府目標を当初の期限である2033年より8年早く達成した。この節目は、長期的な人口減少に対応しながら高等教育の国際化を進める日本の取り組みにおいて、重要な一歩となる。

出入国在留管理庁によると、2025年6月時点で留学生数は43万5200人に達し、前年比8.2%増となった。この成長は、過去最高となる18万人の新規入国者によって牽引された。この拡大は、2023年に発表された国家戦略の一環であり、2033年までに日本人学生50万人を毎年海外に送り出すことも目指している。

これら2つの目標は、国際的な人材を呼び込むと同時に、国内学生の海外経験を増やすという、日本の教育システムのグローバル化に向けた一体的な取り組みを反映している。

急速な高齢化が国際化を後押し

人口減少はこの戦略の中心的な推進要因である。日本の人口は急速に高齢化しており、18歳人口は大幅に減少している。多くの大学、特に大都市圏以外の私立大学は、高校卒業者数の減少に伴い、継続的な入学者確保の圧力に直面している。米国や英国といった従来の英語圏の留学先では、留学生が授業料収入の増加や研究能力の支援を通じて、同様の財政的圧力を緩和する役割を長年果たしてきた。

日本の拡大は労働市場の動向とも一致する。外国人雇用者数は2025年に過去最高の250万人に達した。勢いを維持するため、政府は最近、条件を満たす機関の入学定員制限を緩和する特別枠組みを導入した。この制度のもと、東北大学、筑波大学、広島大学は、所定の基準を満たすことで留学生の受け入れ拡大が認められる。

主要英語圏諸国では留学生が減少

数十年にわたり、米国、英国、カナダ、オーストラリアといった主要な英語圏の留学先は、数百万人の留学生を引きつけてきた。しかし近年、入国管理政策の厳格化により新たな障壁が生じている。米国は留学生のソーシャルメディア活動に対する審査を拡大し、英国は大学院留学生の大半について帯同家族を制限、カナダは入学者数に上限を設け、オーストラリアはビザ手数料を大幅に引き上げた。

卒業後の就労権も不透明になっている。英国は学士・修士課程修了者の大半について滞在期間を2年から18カ月に短縮する計画であり、米国のOPT(Optional Practical Training)プログラムも継続的な政治的な議論の対象となっている。

対照的に、日本は欧米諸国と比べて大幅に安い授業料と、若者の間での日本のポップカルチャー人気を追い風に留学生を引きつけている。

新首相、移民に対する国民感情に対応

同時に、外国人労働者の急増は、日本国内で社会統合や国民感情に関する議論を引き起こしている。高市早苗首相率いる政権は、移民受け入れ水準に対する懸念の高まりを認識し、永住権取得に必要な期間を2倍にするなど、不満に対処するための施策を発表した。この動きは、経済的な開放性と国内の政治的圧力のバランスを取ろうとする努力を反映している。

中国と日本の間の政治的緊張も高等教育に影響を及ぼしている。昨年末、中国教育部は日本への留学を検討する中国人学生に対し、慎重な判断を求める海外留学警告を発出した。この勧告は、台湾に対する中国の軍事行動が日本の関与を引き起こす可能性があるという高市首相の発言を受けたものである。中国人学生は日本の全留学生の約半数を占めており、持続的な減少が起きれば、この分野に課題をもたらすことになる。

forbes.com 原文

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