【家庭菜園】台風対策についてのこと。
家庭菜園を始めて間もない私にとって、最初の試練が早くもやってきた。例年よりだいぶ早くに日本に現れた台風である。プランターのサツマイモはまだ植え付けからさほど時間はたっておらず、庭の苗も根がようやく張り始めた段階。さらにブロック塀の近くに植えたミョウガも、植えてから2週間ほどしか経っていない。この弱い時期に強風と豪雨を浴びせられるのかと思うと、心穏やかではいられない──そう思って慌てて対策を調べ始めたのが昨日のことだ。
ところが調べていくうちに、当初想定していた「台風=壊滅的災害」というイメージは、必ずしも今回の状況に当てはまらないことがわかってきた。本稿では、急ぎの台風対策について調べた内容と、台風の強さの見極め方、そして最終的に取った行動をまとめておく。
まず台風の強さを見極める
そもそも「台風が来る」と聞いただけでパニックになるのは早計だった。台風には強さの段階があり、対策の力の入れ具合もそれに応じて変えるべきだということに、調べてみて初めて気づいた。
気象庁は最大風速で台風の強さを分類しているが、中心気圧でもおおよその見当がつく。900hPa台前半は「猛烈な」クラスで、伊勢湾台風や室戸台風など歴史に名を残す災害級。930〜950hPaは「非常に強い」クラスで深刻な被害が出る領域。950〜970hPaは「強い」クラスで警戒は必要だが対応可能な範囲。970〜990hPaは「並」あるいは弱い部類で、強い雨風はあるものの家屋に深刻な被害が出ることはあまりない。
今回の台風6号を気圧配置図で確認すると、中心気圧は979hPa、進路上で970台前半まで下がる予想となっている。つまり「強い」クラスの下〜「並」クラスの上、日本に上陸する台風としては中程度の強さである。歴史的な大災害を引き起こすクラスではない。
この事実を知った時点で、最初の動揺はかなり和らいだ。「ヤバい台風が来る」という漠然とした不安と、「中程度の台風が来る、対策はそれに見合った規模で十分」という具体的な認識では、行動も心構えもまるで違ってくる。
ただし油断は禁物な理由
とはいえ、中心気圧だけで判断するのは早計だ。中心気圧の数値に表れない要素がいくつかある。
第一に進路と速度である。同じ気圧でも、ゆっくり進む台風のほうが同じ場所に長時間影響を与えるため、総雨量が増えて被害が大きくなる。
第二に地形効果。山岳地帯では地形性降雨で予想を超える豪雨になることがあり、線状降水帯が発生すれば台風本体の強さ以上の災害になりうる。今回も気象庁から線状降水帯の半日前予測が発表されており、地域によっては300mm以上の大雨予測が出ている。風はそこまでではないが、雨は局所的にかなり強いタイプの台風だ。
第三に沿岸部の高潮。満潮と重なれば中規模の台風でも被害が出る。
つまり今回の台風は、「風で家屋やプランターが吹き飛ぶリスクは控えめ、だが豪雨による冠水・浸水のリスクは相応にある」と整理できる。家庭菜園の文脈に翻訳すれば、プランターを室内まで持ち込む必要性は低いが、排水と水はけの確保は重要、ということになる。
プランターの三大リスクと対策
プランター栽培における台風リスクは、整理すると三つに集約される。「飛ばされる」「倒れる」「水浸しになる」の三点だ。
軽量のプランターは強風で簡単に吹き飛ばされ、近隣にも被害を及ぼしかねない。ただし家のプランターは不織布とはいえ30リットル以上の土が入っていて相当重く、今回程度の台風ではちょっとやそっとで飛ばされないとは思う。スタンドや棚に乗せていれば台座ごと倒れて土がぶちまけられる恐れがあるが、これも我が家では該当しない。一方で豪雨で排水が追いつかなければ、根が長時間水に浸かって根腐れを起こす──これが今回の台風では最も警戒すべきリスクである。
対策の基本は避難だが、今回のクラスなら軒下で十分だと判断した。プランター皿が水を溜める構造なら外しておくこと、底の排水穴に詰まりがないか確認することも忘れずに。豪雨型の台風に対しては、避難場所より排水確保のほうが重要だったりする。
庭の苗とミョウガは何もしないという選択
当初は、庭のサツマイモ苗とブロック塀近くのミョウガにも、株元へのマルチングや簡単な水はけ確保をするつもりだった。理想的には支柱と防風ネットで風を遮り、藁や刈り草で泥跳ねを防ぐ──それが教科書通りの対策である。
しかし冷静に状況を整理してみると、いくつかの理由で「何もしない」という結論に至った。
第一に、今回の台風の強さである。中規模の台風で、風による壊滅的被害は想定しにくい。豪雨は厳しいが、地植えなのでプランターのように排水経路を人為的に確保する必要もない。
第二に、当初検討していた新聞紙や段ボールによるマルチングは、台風クラスの豪雨では数時間でふやけて破れ、強風で飛ばされる。古布や刈り草といった代替素材はあいにく手元になく、買いに行く時間もない。中途半端なマルチングは、剥がれて飛んだものが植物に当たって傷をつけるリスクすらある。やるならきちんと、やれないなら何もしない、というのは家庭菜園に限らず作業全般の鉄則だろう。
第三に、サツマイモとミョウガの頑健さである。サツマイモは熱帯〜亜熱帯原産で、台風常襲地帯でも栽培されてきた歴史を持つ。葉が多少ちぎれても、つるが少々折れても、株元と根さえ生きていれば再生する。江戸時代に飢饉対策として日本に広まったのも、痩せ地でも台風後でも安定して収穫できる頑健さがあったからだ。ミョウガも、地下茎が無事なら地上部がボロボロになっても数週間で新しい葉を出してくる「諦めない植物」である。
第四に、ミョウガに関しては立地条件が幸いした。ブロック塀のすぐ脇に植えてあるため、塀が天然の防風壁として機能してくれる。植え付けからまだ2週間でとも、植えた場所そのものが守ってくれる構造になっている。
掘り上げて鉢に移し避難させる、という選択肢も理屈の上ではあり得たが、ミョウガの場合は2週間で多少なりとも出始めた根の活着がリセットされるため、かえって被害を大きくする可能性が高い。サツマイモも同様で、植え付け直後の苗を再び動かすのは植物にとって過剰なストレスになる。
「やらないこともまた対策のうち」というのは、調べていくほど実感する真理だった。
私が取った行動
最終的に決めた対策はきわめてシンプルだ。プランターは軒下に避難させる。プランター皿は外し、底の排水穴の詰まりを確認する。庭のサツマイモ苗とミョウガには何もしない。これだけである。
軒下避難で気をつけるべきは風向きである。風向きが軒下に直接吹き込む向き(今回は南〜東風主体になりそう)に変わるようなら、その時点で室内へ移す。軒下は雨は防げても横なぐりの風は吹き溜まることがある。
これ以上のことは今回は諦める。次の機会には、あらかじめ防風ネット、支柱、マルチング用の刈り草の蓄え、プランター固定用のロープ、古布の備蓄などを揃えておきたい。そうすれば「やらないことが最善」ではなく「きちんとやることが最善」を選べるようになる。
台風通過後にやること
台風が過ぎたら、いくつか確認と手当てが必要になる。
葉に泥が付着していれば、晴れたら早めに優しく水で洗い流す。泥が乾いて気孔を塞ぐと光合成効率が落ち、病気の温床にもなる。明らかに折れた茎や傷んだ葉はハサミで切り取って処分する。傷口を放置すると病原菌の侵入口になる。
土壌が水浸しになっていた場合は、過湿状態が数日続くので追加の水やりは控え、晴れたら表土を軽くほぐして空気を入れる。プランターは底から水が抜けているか確認し、抜けが悪ければ排水穴を竹串で突いて通す。今回は雨の強さからして、この排水確認は特に重要になりそうだ。
ミョウガについては、地下茎が露出していないかだけ確認し、もし土が削れて見えていれば軽く土を寄せて埋め戻せばよい。
教訓──「敵」の正体を知ることの大切さ
今回最も大きな学びは、対策そのものより「相手の強さを見極めること」の重要性だった。
「台風が来る」という言葉だけで思考停止すると、過剰な対策で疲弊するか、逆に何もできずに諦めるかの両極端に振れがちだ。しかし中心気圧、進路、速度、雨量予測といった具体的な指標を見れば、必要な対策の規模は自ずと決まる。今回のような中規模・豪雨型の台風なら、プランターの軒下避難と排水確保で十分対応可能だと判断できる。庭の苗については、植物自身の生命力を信じて何もしない、という選択さえ合理的になる。
これは台風対策に限らず、食糧危機への備えにも、人生のさまざまな不確実性への対処にも共通する姿勢かもしれない。漠然とした「不安」を、具体的な「リスクの量と種類」に分解する。そのうえで、対策の規模を相手に合わせる。完璧を目指さず、最重要のところだけ押さえる。場合によっては「何もしない」のが正解になる。
備えは平時にこそ
それでもなお、「台風が来るとわかってから準備を始めても間に合わないことが多すぎる」というのも今回の実感である。防風ネットも支柱もマルチング材も、平時に揃えておけば数百円〜千円の話なのに、台風直前にホームセンターへ走っても売り切れているか、そもそも買いに行く時間がない。今回庭の苗に「何もしない」を選んだのも、半分は積極的選択だが、もう半分は「適切な道具が手元にないから」という消極的事情でもある。
これは食料備蓄や肥料の備蓄と全く同じ構図である。「いざという時のために」という準備は、いざという時の前にしか間に合わない。当たり前の真理だが、こうして実体験で痛感すると重みが違う。台風シーズン(一般に8〜10月)の前、つまり7月までに最低限の防災備品を揃えておきたい。
結びに──不安と共存する練習
家庭菜園は、不安と付き合う練習でもある。天気予報を見て一喜一憂し、強風が予想されればソワソワし、雨が降れば根腐れを心配する。最初はその不安自体がストレスだったが、今回学んだのは、不安に対しては「相手の正体を具体的に知ること」が最も効く薬だということだ。
「ヤバい台風が来る」と思っていた相手は、調べてみれば中規模の豪雨型台風で、サツマイモとミョウガの生命力を信じれば乗り切れる相手だった。やみくもに対策に走り回るより、まず相手をよく見ること。そのうえで、できる範囲のことをやって、あとは植物に任せる。今回の場合、その「できる範囲」がたまたまプランターの避難だけだった、というだけの話である。
明日の朝、もう一度プランターの位置を確認すれば、それで私の初めての台風対策は完了だ。あとはサツマイモの頑丈さと、ミョウガの地下茎のしぶとさを信じて、文字通り嵐が過ぎるのを待つだけである。


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