東洋経済オンラインとは
ライフ #仲人はミタ-婚活現場からのリアルボイス-

「やることやってるから別によくないですか?」年収900万円彼を"お断り" 婚活で自滅するハイスペ男女の残念パターン

8分で読める
高収入、容姿端麗、話題が豊富…ハイスペ婚活男女が陥りがちな自爆パターンとは(写真:Ushico/PIXTA)

INDEX

過去の武勇伝を、誇らしげに語るタイプがいるが、婚活の現場でも、そうした人たちに遭遇することがある。
本人にとってそれは自慢話なのだろうが、聞かされる側はどうでもいいことが多く、心の中で失笑していることさえある。ことに、結婚を考えている相手との出会いの場合、「こんな非常識な人との結婚はありえない」と、心の中で警戒アラートが作動する。
仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者のリアルな声を交えながら、婚活について考えていく連載。今回は「自分ではよいと思って語っている武勇伝が、相手にどう受け止められているのか」について、3つの事例を見ながら考えていこう。

“自分らしさ”ではなく“非常識”

「人は見た目だけではわからないですね。すごく話が面白かったです」

たつえ(38歳・仮名)はお見合いを終えた直後、少し弾んだ声でそう言い、“交際希望”を伝えてきた。お相手は、ベンチャー企業に勤める会社員で、年収は900万円のかつのり(41歳・仮名)。

なぜ冒頭の言葉が出たかと言えば、ホテルのティーラウンジに現れた彼が、ラフなジーンズスタイルだったからだ。お見合いに出向く男性は、スーツ、あるいはジャケットにスラックスといったきちんとした装いが一般的だ。

格好はホテルのティーラウンジにふさわしくなかったが、案内された席に着いて話を始めてみると、頭の回転が速く、話題も豊富で、1時間のお見合いがあっという間に過ぎた。

2/5 PAGES

その日の服装についても、彼は自信たっぷりにこう語った。

「会社にもスーツなんて着ていかないし、ジーンズで行くのが普通なんです。今日のお見合いも取りつくろった姿じゃなく、普段の自分を見てもらいたかったので」

この気取らなさも彼の魅力なんだろうと、たつえは良い方向に受け取った。ところが、仮交際に入り、初デートでさらに踏み込んで話をしてみると、彼のいう“自然体の自分”に違和感を覚えるようになった。

かつのりが予約してくれたのは、おしゃれなイタリアンレストラン。最初は当たり障りのない会話で話も弾んでいたのだが、途中から彼の“武勇伝”が始まった。

「俺、高校時代から遅刻魔で、ほぼ毎日遅刻してたんですよ」

さらに、以前フリーランスのSEとして働いていた頃の話になると、「常駐先でも遅刻が多くて注意されたんですけど、『やることやってるんだから別によくないですか? それで契約切るならどうぞ』って言ってやりました」。

本人としては、“社会のルールにこびない自由な生き方”をアピールしているつもりだったのだろう。しかし、一般常識とかけ離れている自分を誇らしげに語るかつのりを、たつえは笑顔で受け入れることができなかった。

婚活で、「ありのままの自分を見せたい」という気持ちはわかる。だが、その“ありのまま”が、自分1人の思い込みで周りへの配慮が欠けていると、聞かされている側はだんだん不安になっていく。

婚活では、“常識はずれのことをしている自分をかっこいい”と語るのは、実は最も危険なことなのだ。

「ほめられ話」が止まらない女

たつや(42歳・仮名)は、その日のお見合いを心待ちにしていた。お相手のゆりこ(38歳・仮名)のプロフィール写真が、息をのむほど美しかったからだ。まるでモデルか女優の宣材写真のようだった。

ただ婚活市場では、写真加工は珍しくない。「実際に会ったら別人」というのもよくあることだ。

「実際は、どんな感じの人が来るんだろう」

3/5 PAGES

そう思いながら待っていると、現れたのは、写真とほとんど変わらない美しい女性だった。つやのあるロングヘアに、淡いベージュの上品なワンピース。シンプルなパールのアクセサリー……。

いかにも“婚活で男性受けする”ことを研究し尽くしたようなたたずまいだった。その瞬間、たつやのテンションは一気に上がった。

「これは、ぜひ仮交際に進みたい」

そう思いながら、前のめり気味に会話を始めた。

ところが、話せば話すほど、頭の中に小さな「?」が灯り始めたという。ゆりこの会話には、“自分がいかに周囲から高評価を受けているか”が、絶妙な濃度で混ざり込んでいたのだ。

たとえば、「そのワンピース、とても似合っていますね」と、服装をほめたときのこと。ゆりこは、微笑みながらこう返してきた。

「この服のブランド、昔から大好きなんです。店員さんとも顔なじみで。“なんでも着こなしちゃうから、このお洋服を着たら清楚感が際立ちますよ”って言われて、思わず買っちゃったんです」

「花嫁さんよりも目立っちゃう」

さらに、こんな話も飛び出した。

「もう本当に、1日でも早く結婚したいんです。大学時代の仲良し6人グループで、独身は私ともう1人だけになってしまって」

そこから続く言葉に、たつやは失笑した。

「友達の結婚式に出るときって花嫁さんより目立っちゃいけないから、毎回すごく服選びに気を遣うんですよね。自分の結婚式なら、もう主役なんだから、思い切り華やかなドレスを着られるじゃないですか。今から楽しみで」

悪気はないのだろう。だが、“私は目立ってしまう側の人間”という発言が、会話の端々からにじみ出ていた。

極めつきは料理教室の話だった。

「結婚生活って、やっぱり食事が大事じゃないですか。だから今、料理教室にも通っているんですけど、先生から『包丁使いがすごくきれいで、誰よりも手際がいい』って言われているんですよ」

4/5 PAGES

気づけば会話のほとんどが、「周囲からほめられる私」で構成されていた。たつやは、次第に気持ちが冷えていくのを感じた。お見合い終了後に、交際辞退を出しながら、筆者に言った。

「最初は、“こんなきれいな人とお付き合いできたら夢のようだな”と浮かれ気味だったけれど、話をしていると自慢話が満載で、“なんて承認欲求の強い人なんだろう”と思いました」

婚活では、“自信を持つこと”は大切だ。だが、“自信”と“自己賛美”は似て非なるものでもある。特に、結婚相手を探す場では、“容姿端麗で完璧になんでもできる人”よりも、“一緒にいて心安らげる人”が求められるのだ。

笑えない「昔のヤンチャ話」

しゅんいち(41歳・仮名)は、都内で小さな飲食店を営んでいる。外国に渡り、本場で3年間修業。帰国後は雇われシェフとして経験を重ね、4年前に独立した。プロフィールだけを見れば、かなり魅力的な男性だった。

しゅんいちからお見合いを申し込まれたえみ(35歳・仮名)は、そのプロフィールや自己PRの文章を読んで、かなりの好印象を抱いていた。

お見合い当日現れたしゅんいちは、仕立てのいいスーツを着こなし、少しワイルドな雰囲気。これまでお見合いしてきた一般企業に勤める男性たちとは違った印象で、魅力的だった。

お見合いが始まってからの話も、修業時代の話、食材へのこだわり、店を立ち上げるまでの苦労話など、とても努力家で野心家で興味深かった。

ところが、徐々に会話の方向が変わっていった。

「まあ、ここまでやってこられたのは、負けん気が強かったからでしょうね。俺、昔はかなりヤンチャしてたんですよ」

しゅんいちは、どこか誇らしげに笑った。

「高校時代、勉強は苦手。校則も破りまくっていて、先生と毎日ケンカしてました」

さらに、「若い頃は、気に入らない客と店で言い合いになったこともありますよ。雇われシェフだった頃、上から目線のオーナーにアッタマ来て、厨房で皿投げつけたこともあります」

5/5 PAGES

本人は、“型破りな俺”をプレゼンしているつもりなのだろうが、えみは、「結婚して夫婦げんかになったら、この人は私に皿を投げつけたり、暴力を振るってくるかもしれない」という思いが頭をかすめた。聞いていて、だんだんと怖くなっていった。

決定的だったのは、こんな一言だった。

「真面目な奴って、面白くないじゃないですか。俺、ルールはぶっ壊していくタイプなんですよ」

その瞬間、えみは心の中で「この人には、お断りを出そう」と決めた。若い頃のヤンチャな行動を40歳過ぎの男が誇らしげに話した瞬間、それは“武勇伝”ではなく、“未成熟さの自己申告”になってしまう。

必要なのは武勇伝ではない

婚活の場では、ジーンズでのTPO違反や遅刻自慢は「自由」ではなく、「配慮不足」。周囲からほめられる話のオンパレードは「承認欲求の塊」に映る。

この連載の一覧はこちら

そして不良自慢や破天荒エピソードは「頼もしさ」ではなく「幼さ」や「粗野さ」のサインとして受け取られてしまう。

婚活で大事なのは、過去に破天荒なことをしてきた自分語りでも、承認欲求をさらすことでもない。お見合いした相手が見ているのは、将来をともに歩いていくパートナーとして、日々の生活を協力しあいながら穏やかに過ごせるかどうかなのだ。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象