さよなら名機
私が趣味でSDアナログカメラを収集しているのは周知の事実かと思います。
その中でもTOP画像のことSONY DXC-M7は、中々思い入れのある、「憧れの君」だったんですね。
発売は1989年頃。平成元年前後。
それまでのDXC-3000シリーズも中々大人気だったわけですが、解像度の大幅UP(560本→700本)、CCDの高画素化(25万画素→42万画素)、感度の維持(2000lx F5.6)、コンポーネント対応により放送用デッキにも対応する26ピン端子、CCUも新規開発。
まあ、価格もズドンと上がったわけです。
そんな1989年、私が14歳ですので、当然買えっこありません。
このDXC-M7は最近オークションサイトで購入したもの。
数回、ドラマの撮影で使いましたが、だいぶボロボロの満身創痍、各所のベタベタ(加水分解)も進み、貸出しに適さなくなってきたので、いよいよ「退役」してもらいましょう、という感じで今日になりました。
せっかくなのでただ産廃でポイ、ではカメラも浮かばれません。
このカメラがどんなカメラだったか、一人盛り上がりながら、1つ1つパーツをバラし、思い出話に華を咲かせつつ(誰と?)、ドライバーを左にまわし続けます。
(あ、コレ、ネジを外していくっていうことの文学的表現ね)
機材の最後ですが、「部品取り」という儀式があります。
なんか、次にどこかでなんかの役に立ちそうなものを残しておくのです。
これには「まあ言うて、使わずじまいなんだがな」というオチがつきものですが、今回上の写真のようなものをとりあえず残してみました。
左から肩パッド、VFに取付ステー、右は上から5インチVF用アクセサリーシュー、SONYのガチャコンの舟用の金具(これ取るのは定番)、そしてマイクホルダ。
まあ?なんかの役に立つでしょう?
残すもの残したら、あとはネジをひたすら外し、くっついている基板のハーネスも丁寧に外していきます。
なお、廃棄だからって、特段注意することもなく「ベン」と引っこ抜くのでも、ニッパーでバチンと切っちゃうのでもいいのですが、この「基板からハーネスを引っこ抜く」というのも「経験」が物を言う世界ですので、せっかくの実地訓練の機会なので、ドナーのカメラに感謝しつつ、精神統一して力加減に最大限の注意を払って、ポソッと優しく抜きます。
特に古い機材のハーネスを抜く時は1本1本のコード自体が引っこ抜ける事もあり、また基板が歪んでパターンを傷つけちゃったり、力掛けて抜いて勢いで手がどっか別の部品に引っ掛けて血みどろになったり(これは機材の復讐という)、まあいろいろあるので、優しくやりましょう。
アナログ機材は何か不具合がおきた時に修理や調整がしやすいようにユニットが組まれています。場合によっては当たりを付けた基板の差し替えで直せたり、調整もトリマーで簡単にできたり。まあ、今のVEは現場でカメラの側板を外して調整するなんてこと、経験ないでしょうね。
いや、良いことだと思いますけど。
なんか切ない感じもします。
DXC-M7、170万近い金額のカメラでしたね。
映像業界には放送局用機材を扱うプロダクション、その下のグレードの業務用機材を扱うプロダクション、そして一般家庭の民生用機材、だいたいその3グレードに大別されていました。
業務用機材(このDXC-M7もそのクラス)を使っている人は放送機材(ベータカム)などに憧れがあったものです。
いまではもう垣根も取り払われ、デカいカメラは敬遠され、使い方すら知らないカメラマンさんも多いと聞きます。いいとか悪いとかではなく、ただただ昔を知る人間は皆、一抹の寂しさを感じるだけです。
ただ、そんな3つのグレードのあった機材、この頃から下剋上?いやそうでもないけど、垣根がだいぶ取り払われてきました。その先鞭をつけたのがこのDXC-M7とも言えるでしょう。
ほとんど出てくる画は上位機のBVP-7と同じ。
ベータカムとドッカブルにできなかっただけで、DXC-M7を使っていれば、クオリティの保証にもなったような感じ。
ただ、もうそろそろ業務機にも「一体型カメラ」が出回ってきた頃。
DXC-M7とBVW-35やBVU-150をケーブルで繋いでツーピース取材している場合じゃないぞ、となって、このタイプは終焉を迎えるのです。
そう、DXC-537の登場です。
DXC-537が出ると、Hi-8のEVV-9000、S-VHSのBR-S411やAG-7450、少しして出た業務用バージョンのベータカムPRO2000シリーズのPVV-1などとドッカブルが出来るようになり、ワンマン取材が爆発的に増えます。CATVさんやブライダル業者さんは一気に一体型カメラに移行したでしょうね、きっと。
537の話はまたいつかするかもしれません。
さてさて、あらゆるものが外れると、アルミダイキャストのフレームだけになりました。
機械設計って凄いですよね。企画書から青写真ができてきて、イメージ図からフレーム設計を起こすんでしょうけど、基板設計、ソフトウエア設計、熱処理対策、各種インターフェイスへの適合、電源要求、使用時のバランス設計、あらゆることが同時進行で行われ、時に1つ変更があるとガラリと設計を変えなくてはいけないようなこと。
そんな仕事をしているのはどんなエリートなんでしょうね??私には無理です。
ん~、このフレーム、アルミ合金なわけですから、金属買取業者さんでいくらで買い取ってくれるでしょうね!?
さらっと調べたら、アルミ合金 買い取り値 270円/kgくらいの会社がHIT。
ん~実重量で割ると?買い取り値100円くらいかな?
まあ、冗談はともかく。
さあ、残りの大御所、CCDブロックを解体します。
カメラの心臓部ですね!
いまや1億画素なんて怪物が売られていますが、コイツは42万画素(有効画素38万画素)。
解像度を出すため、と言いますか正確には常用解像度における変調度を上げるため、空間画素ずらしという技法でGchのCCDに対し、R/BchのCCDをハーフピッチずらしてフレームに固定する変態技術を使っています。
それにより見かけ上輝度信号(Y)の解像度を上げる事ができ、4~500本当たりの解像時の変調度を従来機の33%~66%程度に上げられるようになったとか。
変調度が上がるメリットで一番大きいのは当時のアナログリニア編集におけるダビング回数が増える事(やりくる、なんていいましたね)に対する画質の耐性が上がる、劣化しにくい、という点がありました。
まあ、凄い事思いつくもんですね。
で、そのCCDブロック、さらに解体していきます。
昔からある3原色の色分解プリズムを用いた、3分解の撮像方式。撮像管時代はこの平べったい部分にズドーンと長い撮像管が3本付いていたのですから、カメラが大型になってしまうはずです。
すごいイノベーションですね。固体撮像素子化の道は!
さて、この3枚のCCD付きの基板、どこでくっついているかわかりますか?
上写真のように1枚のCCDが4箇所のハンダで止まっていました。
このハンダを吸い取りまするに、ポロリ、と基板ごとCCDをが外れます。
この、1枚のCCDの中の1画素ってナノメートルレベルのサイズ。それを色分解プリズムにその1画素の半分の幅の精度でハンダ付けする技術って何なんだ!?
昔の撮像管カメラはレジ合わせという大変な作業がありました。3本の撮像管の位置合わせや特性合わせなど、何十個もの調整項目を触って、3枚の画像の合成画像が正常な絵になるように調整しました。
しかしCCDの3板式(さんばんしき)は違います。もう固定しちゃうので調整が不要です!ブラボー!
そんなナノメートルオーダーのハンダ付けができる職人がSONYには居るのか・・・
ってまさかね。
なんか凄い自動化のマッシーンがあるんでしょうね。いやはや。見たことありませんが。
SONYが画素ずらしのカメラを出した頃、ビクターから同じく有効38万画素の3板式カメラKY-20が発売されました。S‐VHSのBR-S410とドッカブルになったやつですね。デザインは最悪と思いますが、あれはあれでHIT商品でした。
ただ、そのKY-20はまだビクターでは画素ずらしができない、ということでDXC-M7やDXC-537が水平解像度700本を謳う中、530本としか言えなかったカメラです。
いや、760x480くらいの有効画素があるんだから、画素ずらししなくても水平解像度700あるんじゃね?と思われるかもしれませんが、解像度表記が先の「変調度」というものが関係していて、メーカーによって表記における変調度を何%としているか?はわかりませんが、ビクター基準ではある変調度での解像度が530本だった、ということですので、実際に解像度チャートを撮って高精細モニターで見れば、530以上も解像していたと思いますけどね。
プリズムユニットが出てきました。せいぜい分解はここまででしょうか。
DXC-3000ではフィルターディスクユニットはFUJINON製でしたので、SONYさんも気を使って、モデルごとにメーカー変えているのかな?
潜水艦が三菱重工業と川崎重工業で交互に受注して技術を絶やさないようにしている、みたいな話?まさかね?
見えてるプリズムの所、赤と黄色?ですね。
光の三原色は青・黄色・赤・・・・
そ!そんな馬鹿な!
そう、RGB!赤!緑!青!これが加法混色での三原色!
映像やってて知らない人はいない・・・はず?
じゃ、なんでこのプリズムは赤と黄色?(奥の見えないのは青です)
これはプリズムをこの角度で反対側から見ているため、です。
まあ理由は皆さんでも考えてみましょう~~~
じゃ、ホントにRGBに光が分解されるの?ということで実験!
ライトをレンズマウント側から照射!すると・・・
綺麗に光の三原色に別れましたね!
この3色をそれぞれの撮像素子で撮影して、様々なプロセスを経て1本の映像信号にまとまる。浪漫じゃないですか。
こんな実験、最新機材じゃできません!
あなた、動いてるHDC-5500でこれ、できますか?
そうDXC-M7なら出来るんです!
ということで、今日のお遊びは終了!
最初の部品取り以外に、なんか、プリズムとかCCDとか、愛着湧いてきちゃうな。
そうするとまた10年先まで残っているものが生まれるだけなので、涙を飲んでさよならしましょう!
できるだけ細かく分別して、次の何かの原材料に生まれ変わってくれるように・・・3Rですね。
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