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もしも夢が覚めなければ/Novel by 春風

もしも夢が覚めなければ

5,819 character(s)11 mins

フリーレンの森の幻影のやつみたいにスバルの前に両親の姿をした敵が来たらスバルはちゃんと殺せるのでしょうか。

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『最初の死因は、寝てる間の衰弱死ってことかぁ……』
『鎖の音が、な……』
『襲撃者がいた……ってことだろな。俺を衰弱死させた奴と同一人物かはわからねぇけど、少なくとも同じ陣営の奴だろうし』
『俺が載るぐらいなら、全員載ってんだろうよ。……たぶん、盗品蔵と同じでエミリアたんの王選絡みだろうから』

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「……昴、昴……」
菜穂子が肩の震えを無理やり止めようと腕を強く掴む。
「鎖の音……」
それは、まるで死を宣告するかのように軽やかに舞い、残酷に昴の命を削り取って行った。
「エミリアちゃんはそんな怖い人に狙われてるの……?」
あれが昴を狙ったものなのかエミリアを狙ったものなのか判断がつかない。
が、
「ちゃんと話した方がいいんじゃないかしら……?」

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『対象を衰弱させて、眠ったように殺す魔法……とかってあるか?』
『あるかないかでいえば、あるのよ』
『魔法というより、呪いの方に近いかしら。魔術師より呪術師の方が得意とする術法にそんなものが多いのよ。陰険な呪い師らしいやり方かしら』

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「やっぱり、呪いなのか?」
賢一が僅かに青い顔で首を捻る。
「……だめだ、まるで活路が」
ない、とは口にしなかった。
が、もはやそれは誰が見てもわかった。
相手も分からず、発動条件もしれぬ以上、昴が死を避けることの難しさが段違いである。
「……やっぱり安全な場所に逃げるべきじゃないか?昴……」

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『そぉんなわけで、私はエミリア様のパトロンってこと。よって君が得た徽章盗難の情報を隠蔽するためなら、相応の対価は支払わせてもらうよぉ?』
『それじゃ、ロズっち。二、三日でいいから屋敷に泊めてくれ。そのあとは別の場所に行くから、ちょっぴり路銀を融通してくれると助かる』
『ふぅむ、ちょっぴりというと……家が二、三軒建つぐらいかな?』
『そんな裏の意味は込めてねぇって。純粋に、十日間ぐらい宿に泊ったり飯食ったりするのに苦労しないぐらいでいい。あとは勝手に生きてくから』
『エミリア様の言う通り、それはそれは……欲のない話だよぉ?』
『いいんだよ。そんなだいそれたことしてねぇし……』

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「屋敷から……」
「……確かに、エミリアちゃんが狙われてるなら出ていくのが一番いいかもしれないわ」
昴個人を狙ったものならもうどうしようもないのだが。
「……それに、やっぱり危ないことからは離れて生きていて欲しいわ。昴のことを誰も守ってなんてくれないんだから……」
庇護してくれる人がいない世界なのだから、危険からは逃げるべきだ。
昴はお人好しで騙されやすい子だから、尚更。

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『その見るからに筋張った筋肉質な体と、鋭いっていうより純粋に悪い目つきと、繊細さと程遠い精神性で文学青年。ひょっとしてその文学青年というのは、お客様の頭の中にしか存在しないのではないでしょうか』
『そこまで言うか!?確かに菜月さん家の昴くんは、見た目だけはすごいスポーツマンなのにひきこもりなのねってご近所でも有名だったけど!』

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「……そんな事もあったわねぇ」
菜穂子が僅かに上をむく。
それを昴に伝えに行くたびに嫌そうな顔をされた。
「また、今日こんなことがあった、ってそんなどうでもいいお話がしたいわ、昴」
特別な話などいらない。
普通の、他愛ない話がしたいのだ。
それは、おそらく叶わないが。

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『えーっと、それでは短い間ですが、お世話になりました』
『ホントに大丈夫?馬車ならロズワールに頼んで、ここまで呼びつけてもらったりすればいいのに』
『いやいやいや、大丈夫だって。ゆっくり、のんびりやってくからさ。これ以上の迷惑はかけらんねぇよ、実際』
『……たぶんスバルはしっかりしてるから、心配はしなくていいんだろうけど』

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「そこそこの金持たせてもらったみたいだし、道中で倒れるとかはなさそうだな」
「……でも、やっぱり人の多い場所に行かないと危ないと思うわ。この国はすごく治安が悪いみたいだし、ひとりだと不安ね」
「そうだなぁ……できれば警察……衛兵か。衛兵がいる……王都で宿借りれたらいいだろうけどなぁ」
「そうね……昴……」

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『エミリアたんの部屋がある、西側がよく見える。なにか異変があれば、すぐにわかるだろ』
『あとは、事が起きるのを待ち構える』
『敵が俺の叫びでビビって逃げてくれる慎重派だと助かるな』
『あとはロープ切断用のちっさいナイフ……ロープ切断だけで済めばいいけど』
『なんの手段も用意できないよりマシだろ……そもそも、次に対抗手段を用意するための今回だから、な』
『言ったはずだぜ、ナツキ・スバル。繰り返したとき、みんながそれを忘れていても……お前は、それを覚えてる』

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「昴……!」
菜穂子の瞳が忙しなく揺れる。
「どうして……?それじゃダメなの!昴が犠牲にならないといけないなんて……そんなのおかしいじゃない!逃げて!エミリアちゃんたちのことは……見捨ててでも!」
昴の命の方が大事だと、そう吐き捨てるのが酷いとは理解している。
それでも、昴が何度も死んでいることが、周りからの庇護がないことの証明である。
そんな状況で人助けなど、到底看過できない。

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『――――ッ!』
鼓膜に音が届く。
木々を粉砕する音が。
『緊急、脱出……!』
『見た!はぁ……ああ!見たぞ!』
モーニングスターが振り回されるのを。

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「あれ、は……」
殺傷能力を持たせたそれを見て、昴の体を削り取ったのはあれなのだと悟る。
「どうして……昴を狙うの?こんな、酷いやり方で……」
あんな重いものを振り回すのだから、男だろうか。
「……あの、髪の長い……男の人」
あの人かな、と思考が巡る。

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『さあ姿を見せろ、クソ野郎!その面を見るのに、一週間かけたぞコラァ!』
『――仕方ありませんね』
『何も気付かれないまま、終わっていただけるのが一番でしたのに』
『嘘だろ……レム』

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「……えっ」
菜穂子が目を見開く。
賢一がかすかに動揺した後に額を押え、歯の奥で感情を噛み殺す。
「どうして……?だって、あんなに」
笑いかけてくれていたのに。
笑顔の裏で、おぞましいほどの嫌悪を隠していたのか。
「気持ち、悪いっ……!」
菜穂子の中でレムへの嫌悪と憎悪が産まれるまで、おそらくそう時間はかからないだろう。

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『抵抗されなければ、楽に終わりにして差し上げますけど』
『どうしてこんなことを……って、ありきたりな台詞言っていいか?』
『そう難しいことでは。疑わしきは罰せよ。メイドとしての心得です』

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「疑わしき、って……」
菜穂子は、頭蓋を殴り付けるようなその言葉に、肩を震わせる。
「そんなの、理由にならないじゃない……!そんな、そんな理由でっ……!」
菜穂子が肩を震わせるのを見て、賢一が瞳をかすかに揺らす。
最も、その額には青筋が浮かんでいたが。
「昴……!」
怒りが、空間を支配していく。

​───────​───────​─────

『ああ、そういうことか。――そんなに、俺が信用できなかったのか』
『はい』
『ざまぁねぇよ、俺。うまくやってたなんて、勘違いしやがって』
『……姉様は』
『聞きたくねぇよ!――食らえ!』
レムを突き飛ばし、逃げる。

​───────​───────​─────

「昴……」
菜穂子が耳を塞ぎ、瞳から光を失う。
「……お母さんね、期待してたの。昴が異世界にいるって知って……例えそうでもいいから、幸せに生きていて欲しくて……なのに、こうなの?そんなの……酷いじゃない……!」
椅子を殴り、菜穂子は涙ながらに叫ぶ。
「返してっ……!そんなふうに傷つけたりするなら、私たちに昴を返してよ!」
それは、心の底からの。

​───────​───────​─────

『──あ?』
風の刃が、スバルの右足を吹き飛ばしていた。
『ぁああああが!あ、足がぁぁっ!!』
地面を引っ掻き、もはや声にすらならない悲鳴を吐き出す。
痛みが神経を針で突き刺し、鑢で削るような感覚。
それに、スバルは死を、感じた。

​───────​───────​─────

「────っ!?いやぁっ!昴!昴ぅっ!」
昴が、命を軽く扱われる。
その事実に、菜穂子は耐え難い苦しみを感じて、頭を抱えた。
「う、ぇ……っ、ぐ、」
刹那、吐き気が喉元から迫り来る。
慌てて立ち上がり、よろよろと部屋の隅へ行く。
「う、ぅ……っ、すばるっ……!」
涙が、吐瀉物と共に床へ滲んでいく。
それすらも、直ぐに消えて。
「いやっ……!昴、昴をっ……!」
頭の中で思考が乱雑する。
もう、何が何なのかすら分からないが。
「……昴」
賢一は、脱力して椅子に体重をかけていた。
もう、もう全てを終わりにしたいと思うほどに。
「……どうして、昴が」

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『ああ、やっと追いつけました』
『痛いでしょう、苦しいでしょう。少し、待っていてください』
『水のマナよ、この者に癒しを』
『せっかく生き延びたのにあっさり死なれては、聞き出すことも聞き出せませんから』

レムが、スバルに質問を投げる。
そして、スバルが返答する度に、望みと違ったのか鎖でスバルの体を打ちつける。
意識が飛びそうになる度、治癒魔法をかけられる。
癒しと、暴力の繰り返し。

​───────​───────​─────

「どうしてっ……!?もうやめて!昴が、昴が何をしたの!?貴方に……!」
涙がこぼれ、肩が揺れる。
そうして、菜穂子の中にじわじわとレムへの怒りと、到底許すことの出来ない類のものがどろどろと溜まっていく。
「……絶対に、許さない……!昴をこんなに苦しめて……!もう二度と……昴に近づかないで!」
対面しなくてよかったと思う。
もしも出会っていたら、昴が望まない形で挨拶をしただろうから。

「……ふざけやがって……!」
じわりと汗が滲むように、怒りが脳から分泌される。
こんなに怒ったことなど、人生でそうない。
「昴が……っ、どうして、昴じゃなくても良かっただろ……!?」

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『――あなたは、魔女教の関係者ですか?』
『答えてください。あなたは、『魔女に魅入られた者』でしょう?』
『……魔女、に?』
『とぼけないでください!』
『知ら、ねぇよ……そもそも、うちは代々……無宗教……』
『まだとぼける。――そんなに魔女の臭いを漂わせて、無関係だなんて白々しいにも程がありますよ』
『姉様も他の誰も気付かなくても、レムだけはその臭いに気付きます!その悪臭に、咎人の残り香に、嫌悪と唾棄を抱きます』
『姉様とあなたが会話しているのを覗いているときも、レムは不安と怒りでどうにかなってしまいそうでした。姉様があんな目に遭った元凶が、その関係者が……のうのうと、レムと姉様の大事な場所に……』
『ロズワール様が歓待しろと仰るから、レムも様子を見ていました。……でも、もう監視する時間すら苦痛でならない。姉様が世話をするのを装って、あなたと親しげに振舞っているだけと知っていても!』

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「......魔女、教って……何の話をしてるの……!?そんなの、昴には関係ない!」
頭がグラグラと揺らぐ。頭に血が上って、めまいと吐き気がする。菜穂子が耳を塞いで蹲り、賢一が信じられないと言いたげな顔でスクリーンを見つめる。
「何の話をして……魔女……?」
覚えの無い恨み言で殺されるなどと、到底許せるものでは無い。
「……何なんだ、一体……」

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『読み書き……簡単なやつだけど、できるようになったんだ。童話、読めたんだぜ。お前たちのおかげで……』
『なにを……言っているんですか?』
『お前たちが、俺にくれたものの、話だよ……』
『そんなこと、記憶にありません』
『――なんで、覚えてねぇんだよ!!』
『どうして、みんなでよってたかって俺を置いていくんだよ……!俺がなにしたっつーんだよ……!俺になにをしろって言うんだよ……!』
『なにがいけねぇんだよ……なにが悪かったんだよ。……お前ら、どうしてそんなに俺が憎いんだよ……?』
『俺は……お前らのこと、だい』
喉が、抉られた。
『――姉様は、優しすぎます』

​───────​───────​─────

「……ぁ、昴、昴っ……!」
昴がずっと抱えていたであろう言葉に、菜穂子の心はぐちゃぐちゃに痛む。
「何もしてない、何もしなくていい……!昴は悪くないの!昴はいけなくなんてないの!全部、全部っ……!あの子が……!」
菜穂子は、それを昴が望まないこともわかってしまった。
でも、もう止められなかった。
「昴……どうして……昴が傷つかなきゃいけないの?昴が何をしたの?昴は何をしたら……この地獄から解放して貰えるの?」

「……優しすぎる……?何が、何……」
賢一は、絶望の底とはここなのだと思った。
そして、もう昴の心は壊れてしまうと分かってしまった。
「……罪と罰はセットってもんじゃねぇのかよ……罰だけ与えられても、困るぜ」
そう、口に出すことが精一杯であった。

Comments

  • 勇者部顧問

    スバルの本心と悲鳴は本編では泣かなかったのに、親視点が発生することで、あの悲痛の叫びがとんでもなく涙腺にくる マジで泣いた

    February 10, 2025
  • あーる

    …恐ろしい事に気付いてしまったかもしれない試練の時のスバル君見せたくないな〜やばいな〜でも曇れそして病め あとレムへの感情殺したのとレムセラピーと別室行きの塩レムでごっちゃになるんだろうなぁやばいなぁ見たい見せろ

    December 15, 2024
  • アラレ

    他の人も言ってるけど上映会の人たちに別室の様子見せたい。 上映会側も別室も地獄になりそう。

    December 15, 2024
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