企業に職場の熱中症対策が義務付けられてから6月1日で1年となる。気象庁は今夏の気温が全国的に平年より高くなると予測しており、従業員の命と健康を守る暑さ対策が急務だ。特に屋外で働く人のリスクは高く、各企業は体温を冷やせる避難場所の設置を進めている。対策にはコストもかかるため、企業規模にかかわらず取り組める環境整備が課題となる。
職場の熱中症対策を義務化した改正労働安全衛生規則は、昨年6月1日に施行。体調の異変を早期に発見する仕組みづくりなどが目的で、熱中症による死傷者の減少につなげる狙いがある。
対象は、気温と湿度のほか、地面や建物から出る「輻射(ふくしゃ)熱」も反映した暑さ指数(WBGT)が28度以上で作業する場合、または気温31度以上の環境で、連続1時間以上か1日4時間を超える作業をする場合-となっている。
積水ハウスは昨年6月から「現場クールプロジェクト」を始め、仮設トイレの製造などを手掛ける日野屋(東京)と共同開発した「ひんやりBOX(仮称)」を建設現場で運用している。
仮設トイレの躯体を活用した省スペース型の冷房休憩施設で、1、2人の利用を想定。エアコンの冷風を首元に直接当てることができる。
積水ハウスの担当者は「昨年設置したところ、現場では『いつでもすぐに涼める』と非常に評判が良かった」と話す。設置数は昨年の10支店計10台から、今年は全91支店中52支店計約100台に拡大する予定だ。
厚生労働省は5月27日、2025年の職場での熱中症死傷者数(確定値)が前年から546人増え1803人に上ったと発表した。同省によると、24年に続き統計をとり始めた05年以降で最多を更新した。一方、死者19人は前年から12人の減少となり、厚労省は熱中症対策の義務化を踏まえ「対策が進んだことが、死者数の減少につながった可能性もある」としている。
屋外イベントに関する企業の取り組みも進んでいる。ダイキン工業は京都大などと共同で昨年7月、京都・祇園祭の会場などでWBGTを使って暑熱対策の効果を検証する実験を行った。
同社の屋外用エアコンを立ち見客が多い公開空き地などで稼働。京都市の最高気温が33・8度だった時間でも、公開空き地ではエアコンの吹き出し口から半径約1メートルでWBGTを28度以下に抑制でき、酷暑の屋外でも局所的に涼しい空間を作れることを確認した。
熱中症対策の新製品の投入も相次ぐ。屋外用仮設トイレなどを製造・販売するハマネツ(静岡県)は、約2畳サイズのエアコン付き休憩ブース「telala(テララ)」を発売。キャスター付きで移動できるため、工事現場やイベント会場でも配置を変えながら使うことができる。
日本総合研究所関西経済研究センターの藤山光雄所長は「人手不足が深刻化する中、働きやすい職場環境を提供することは、人材確保の上で企業の競争力の一つとなる」との見方を示す。
一方で、熱中症対策は企業にとってコスト増にもなるとし「コストを製品やサービスの価格に適切に転嫁していけることが必要。経営体力の乏しい中小企業でも取り組めるよう、企業間の連携や国・自治体、業界団体の支援が欠かせない」と指摘する。(桑島浩任)