light
The Works "その罪に名前はなかった" includes tags such as "Re:ゼロから始める異世界生活", "リゼロ" and more.
その罪に名前はなかった/Novel by 春風

その罪に名前はなかった

5,159 character(s)10 mins

久しぶりに別室投稿です。
書き方変になっていないでしょうか。
Twitterで菜月夫妻関連のイラスト見ると悲しい気持ちになりますね。
捜索のプリント持ってるやつとかめちゃくちゃ悲しくて。
こっちの方が書きやすいので本編が書き澱んでいる時でも書けます。
暗いからですかね。

1
white
horizontal

『お客様、お客様、苦しんでいるようだけど、大丈夫ですか?』
『お客様、お客様、お腹が痛そうだけど、漏らしちゃったの?』
『――ああ、平気だよ』

『お客様、急に動かれてはいけません。まだ安静にしていないと』
『お客様、急に動くと危ないわ。まだゆっくり休んでいないと』
『悪い――今は、無理だ』

​───────​───────​─────

「昴……?」
昴でさえも、何が起きたか理解するのに時間がかかっただろう。
菜穂子には、もっと時間がかかる。
知り合いが他人になる感覚に、その気持ち悪さに昴が顔を歪めるのを見て、菜穂子はこれ以上ない喪失感と焦燥感に心を掻き回されるのだ。
「何で……?」
理由がわからない。
分からないというのは、それだけで耐え難い恐怖になってしまう。
「昴……」

​───────​───────​─────

『どうやって『扉渡り』を破ったのかしら。……さっきといい今といい』

『今日って、何月何日だ……?今が何時だかわかるか?』

『つい三、四時間前に、不作法なお前をからかってやったばかりなのよ』

『つまり、今の俺がいるのは……ロズワールの家で二度目に目覚めたときか』

​───────​───────​─────

「どうしてそこまで戻ったんだ……?少なくとも、刺されたりとかはなかっただろ……それに、殺される理由だって……ない」
エルザのような快楽殺人を是とする輩は屋敷の面々の中にはいないように見えた。
「……なら、どうして……病気、とか」
「異世界の空気が変わってるって言うなら無くはないが……こんなに即死でか……?」
頭を巡らせても答えは出ない。
「……原因が分からねぇと、昴も動けねぇだろ……」

​───────​───────​─────

『──スバル!』
『もう、心配するじゃない。目が覚めてすぐにいなくなったって、ラムとレムが大慌てで屋敷中を走り回ってたから』

​───────​───────​─────

「病気とかなら、人によるものと違って防げるかもしれない……」
毒なら解毒もできるであろうし、悪意によるものでないならやりようはいくらでもある。
「そうだな、あとは昴が気づくかどうかだが……」
スクリーンの中で笑みを浮かべる昴を見て、賢一は顔を顰める。
「……昴……」
こういう時、無理して笑える子だと知っていた。

​───────​───────​─────

『なんでか前回と全然違うんだもんな。予習済みの俺の気分はどうしてくれんだよ……この問題、進研ゼミでやったのとおんなじだ!ってイキフンでやってく気マキシムだったのによ』

『特に今回の場合、戻った理由がわからねぇからな……』

『こんだけ違っちまうと、もう記憶は当てにならねぇのか……?』

​───────​───────​─────

「……前回と違う……?」
バタフライエフェクト、という言葉が脳裏をよぎる。
昴の行動が未来を変えたことにより、本来の道筋からズレたのだろう。
それが、いい方向に向かったのならいいが。
「悪い方に行っちゃうこともあるのよね……」

周りとの記憶の齟齬が生まれるのがまずい。
『どうして知っているのか』と疑問に思われては信頼関係が築けない。
「……まずいな、これは」

​───────​───────​─────

風呂にロズワールが入ってきて、魔法についての会話が繰り広げられる。
『熱量関係の火のマナ。生命と癒しを司る水のマナ。そして生き物の体の外の加護に関わる風のマナ。体の内の加護に関わる地のマナ。おおよそはその四つに大別されて、しぃかも常人はその内のひとつに適性があればマシといったところかなぁ。ちぃなぁみぃにぃ、私は四つの属性全てに適正があるよ?』
一方、スバルの適性は。
『もう完全にどっぷり間違いなく『陰』だねぇ。他の四つの属性とのつながりはかなぁり弱い。逆に珍しいもんだけどねぇ』
『『陰』属性の魔法だと有名なのは……相手の視界を塞いだり、音を遮断したり、動きを遅くしたりとか、それとかが使えるかな』

​───────​───────​─────

「やっぱり魔法特化の世界なんだな……聞いた感じだと水が一番使い勝手よさそうだけど」
「全部に適性があるのってすごいわねぇ……エミリアちゃんはどれなのかしら……氷を使ってたから水……?」
「熱量関係って言うなら火かもな……強い精霊を従えてたみたいだしエミリアちゃん自身が強い魔法使いって線が強そうだ」
「昴の魔法は……サポート向きって感じかしら?前線に出るより安全だから、お母さんはそれでもいいと思うけど」
「昴的にはちょっと残念ではありそうだけどな」

​───────​───────​─────

『バルス、あなたは読み書きができないでしょう。それは今日の働きを見ていてわかったわ。だから、それを教える。読み書きができなければ買い物のメモもできないし、用件の書き置きもできない』
『まずは簡単な童話集、子ども向けから始めるわ。これからは毎晩、ラムかレムが付き合うから勉強をすること』

​───────​───────​─────

「そうか、文字もそりゃ違うよなぁ……一から学び直しってことかよ」
「……文字の翻訳機能とか付いていなかったのね」
菜穂子が瞳を伏せる。
「勝手に連れて行っておいて、随分と丸投げなことを……神様がやった事なら、神様なんてもう信じられないわ」

​───────​───────​─────

『まずは基本のイ文字から。ロ文字とハ文字はイ文字が完璧になってから』
『イ文字を把握してから、童話に入るわ。勉強時間は……冥日一時までが限度でしょう。明日もあるし。ラムも眠いし』

​───────​───────​─────

「ひらがな、カタカナ、漢字……ってとこか?日本語習得に苦戦する外国人みたいだな」
「大丈夫かしら……昴は覚えるのが早い方だから心配いらないと思うけど、やらなきゃいけないことがたくさんで大変ね」
「魔法の方も鍛えた方がいいだろうしなぁ。自衛的な意味も兼ねて」
「そうねぇ……エミリアちゃんがいつも守ってくれるとは限らないから」

​───────​───────​─────

『ねえ、スバル。こんなこと聞きたくないんだけど……どうして、そうやって真面目にしてないの?』
『マジメにフマジメするというのが俺のポリシーでして……とかって答えを求めてる雰囲気じゃないな。えっと?』
『そう、真剣なお話。――ラムも少しぼやいてたわよ。スバルは仕事の、なんだろ、途中途中で手を抜いてる感じがするって』
『罪悪感なし、ってわけじゃないもんね。スバル、なんだか変なところで律儀な感じがするし。勉強もサボったりしてないし』
『まぁ、ちょっとした事情があるというか、勉強は自分のためでもあるし……言ってて気付いたけど、俺って全部俺の事情で動いてんな』

​───────​───────​─────

「自分の事情で動くのが悪い事だとは思わねぇけどなぁ……。昴の場合全部話しても信じてもらえるかどうか不安ってのもあるしな」
「そうねぇ……昴は自分の身を守るために頑張ってるだけなんだから、そんなに卑屈にならなくてもいいんじゃないかと思うけど」
一度考え出すと悪い方に転がるのは昴の悪い癖だ。

​───────​───────​─────

『こんだけ心臓が高鳴ってて、寝られる奴がいるもんかよ』
『エミリアたんとの約束が待ち遠しくてこの様か。おいおい、俺ってば遠足前に寝られなくなる小学生かよ。修学旅行で寝坊したの思い出すな』
『あと心残りがあるとすれば……』
『礼のひとつでも、言っておくべきだったか』

『ここまでやって、寝落ちとかマジ洒落になんねぇよ。オンゲやってるときとは違ぇんだから……』
目を擦り、スバルは違和感に背筋を撫でられる。
おかしい。苦しさを孕むほどの寒さに襲われている。

​───────​───────​─────

「昴……?」
菜穂子が立ち上がって胸の前で繋いだ手をぎゅうっと握りしめる。
まずい。だめだ。このままでは。
頭を支配するのは嫌な予感だった。
昴が苦しんでいる。それは、死への繋がりを示唆しているようで。
「昴!」
ひときわ大きな声で叫んだ。
菜穂子の瞳は留まることなく震え続ける。
「昴!部屋を出て誰かにっ……」
賢一がそう叫んで、口を噤む。
「......本当に、求めていいのか?」
薄く漂い続けた昴に対する警戒が、賢一はなんとなく気がかりだった。
気のせいであって欲しいと願っていたのだが。
「......助けて、もらえるのか?」
エミリアくらいしか助けてくれないのではないかと、そう、嫌な予感が。

​───────​───────​─────

『ヤバい、まさか、これ……っ!』
血の気が引き、体から力が奪われていく。
助けを求めるように廊下へと這いずり出して。
『……だ、誰か』
喉が塞がったように、声が掠れる。

​───────​───────​─────

「ぁ......あぁっ......!」
菜穂子の口から、言葉にすらならない感情が零れ落ちていく。
昴がこんなに苦しんでいるところを見たのはいつぶりだろうか。中学生の時にインフルエンザにかかった時──あの時よりもよほど苦しそうだ、と思考が現実に背を向けようとする。
これが日本であったならここまでの不安はなかった。
だが、ここは異世界だ。
治療の水準も分からない。それに、原因が分からないのだ。
これが、死に繋がる可能性の方が高い。
「どうして......?」
スクリーンに、あの子の苦しむ顔が。
どうして、こんなことを。

​───────​───────​─────

『はぁ……はぁ……っ』
吐瀉物を吐き出しながら、エミリアの部屋へ向かう。
助かりたいのでは無い。使命感のみがナツキ・スバルを突き動かしていた。
『────』
耳鳴りが煩い。
そしてその中に、鎖の音が跳ねていた。

​───────​───────​─────

「......昴」
賢一がそう口にして、スピーカーから恐らく昴の感じていたものであろう耳鳴りの音がけたたましく鳴り響く。
慌てて耳を塞ぎ、スクリーンから目を背ける。
が、音は掌を通り抜けた。
きーん、きーん、きん、きーん、きーん、と鎖の音を賢一が感じ取って。
顔を上げた時。
「......あ?」
信じられない光景に、現実を見ることが出来なかった。

​───────​───────​─────

『なに、が……』
スバルがそう口にして、現実は無情にも最悪な形で答えを教えてくれた。
左半身が、肩からちぎれていた。
『──あ?』
左脇腹にも傷は及んでおり、内臓が溢れ出ている。
痛みが、脳髄を殴り付けた。
そして次の瞬間、耳を劈くような悲鳴が空気を切り裂いた。

​───────​───────​─────

先にそれを視認したのは賢一だった。
が、あまりの光景にそれが何であるのかの理解が遅れた。
そして、それを理解した時、頭の中で感情が暴れ回る。
どうして。昴が何をしたというのか。自分に昴を助けさせてくれ。と。
そして、叫び声が喉元で座り込んでいる間に、菜穂子の悲鳴が吐き出された。
「────!」
その声は、もはや音にすらならなかった。
血が、溢れている。内臓がこぼれている。スピーカーから昴の声が、最悪な形で届けられる。昴の心の声がスピーカーから垂れ流される。『死にたい』『全てがどうでもいい』『どうでもいいから死にたい』と、それは菜穂子の心を砕くには十分すぎるものであった。
「やめて......やめてっ......!」
菜穂子が半狂乱になり髪をぐしゃりと掴む。
「菜穂子!」
賢一が止めようとするが、菜穂子には届かなかった。
「やめて……昴が何をっ……!昴が何をしたって……!」
二人しかいない空間に不釣り合いな程に並べられた椅子を殴る。
血が出ることも厭わず。
「どうしてだ……?昴がなんでこんな目に遭わなきゃいけない?こんなに、傷ついて……」
菜穂子は、癒えていく拳を見て咽び泣く。
「......昴、昴ぅっ……!ごめん、ねっ……」
それは、何に対しての謝罪だっただろう。
スクリーンに、頭蓋を潰されて目玉が飛び出る様が映される。
賢一が脱力したように椅子に座り直したあと、菜穂子は空間の気持ち悪さに嘔吐する。
その吐瀉物さえも、直ぐに消えてしまうのだが。

Comments

  • 黄昏月

    なんだろう…すごく面白いはずなのに、人としての大切な何かを失っていく気がする

    December 8, 2025
  • ゆっぴー

    このあたりで吐いていたらペテルギウスのときにはどうなることやら…。あと、ユリウスに対しての反応も気になる…。スバルにも落ち度はあったとはいえ、息子をタコ殴りにされたら怒り狂いそう。

    December 12, 2024
  • ミケ
    December 12, 2024
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
© pixiv
Popular illust tags
Popular novel tags