累となり、色褪せる
暫く更新なくてすみませんでしたー!!!!
土下座!!!!!
色々やること多くて!!!
本当に!!!
すみません!!!
タイトルについて小噺をしておくと、累とは足手まといという意味なのです。
スバルにとって救いたい全ての人間は生きる上での足手まといになるという意味で付けさせてもらいました。
オットーはそれに気付いたから離れて、エミリアは最後まで累なまま──という、なんとも救われない話ですけれど。
最近タグで大罪司教って言われてて「ちっちゃい頃見たやつ!!」ってテンション上がってました。
タグつけてもらえると「これは二次創作として認められたのでは……?」と心がニヤニヤしてしまいます。
五章はスバルくん無双ターンなので更新バカ遅いかもです。
基本的にスバルくんが無双すると筆が遅くなってしまって……。
六章と七章は安心してくれていいですよ!
別室の方はスバルくんが曇らなくても両親が曇るのでそこそこ書けてます!
ただ、最近インフルやらコロナやらが流行ってて体調崩れてるので、週一更新が限界かも……?
更新されてない日は「死にかけてるんだなぁ……」と思ってください。
今日みたいにギリギリに投稿することもありますけどね!
それはそうと、手書き動画ってどこに上げるのがいいのでしょう?
Twitterですかね?
YouTubeとかニコニコは敷居が高いか……?
pixivにも書いたイラストあげていきたいですね。
ただ、「小説読みたいだけでイラストは求めてねぇんだよ!」と言われてしまうのが怖くて及び腰です。Twitterにはちょくちょく上げてるあたり承認欲求が出てしまってますが。
「見てもいいよ」って人がいたら優しいコメントお願いします(´;ω;`)
基本的に人に背中押されないと歩けない人なので……
よろしくお願いします!
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「これから上映されるのは、ナツキ・スバルが強欲の魔女──エキドナの手を取った世界です」
そう、感情の消え失せた声がスピーカーから響く。
「エキドナの……?」
エミリアが怪訝な顔をしてスクリーンを睨む。
「……スバル……」
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『ぁ、あー』
『笑え、俺。できなきゃ、死ね』
『よーし、よし、キープだ』
『そろそろ、いつもの時間になっちまうな』
───────────────────
その顔を最初に見た時、胸を占めたのは形容しがたい気持ち悪さであった。
スバルであることに違いないのに、なにか大切なところが欠落しているようなそんな気がしてならないのだ。
「スバル……!」
ベアトリスが瞳を痛ましく見開き、歯を食いしばる。
無理をして笑うその顔は、プリステラで見た顔よりもずっと辛そうだった。
「……ごめんなさい、かしら……」
エキドナの手を取ったということは、きっと。
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『本当に、君はどこまでも物怖じしない人間だ。『強欲の魔女』として、そんなところが気に入っているよ。――ナツキ・スバル』
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ロズワールが色の違う瞳を僅かに揺らし、思案する。
「……なーぁるほど、そうか」
仮面をつけたように笑うスバルの顔を見て、どこか納得した。
「……これは、私の望んだ世界なのだね」
エミリアの為だけに奔走し、やり直しを厭わない。
そんなスバルを、ロズワールは望んだのだから。
───────────────────
『今日はキスダムの月、十四日。……それは間違いないよな?』
『安心してくれていい。君は昨夜、何事もなく眠りにつき、今朝も何事もなく目覚めた。一晩の間に最悪の事態は発生していない。そう心配しなくても大丈夫だよ』
『馬鹿言えよ。そうやって何もないと思って眠って、朝起きたら死んでたことだってあるんだよ。いつどこで死ぬのかなんて、どれだけ気張っても足りるもんかよ』
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ラムが眉根を寄せて、怒りを舌に色濃く乗せる。
「……本当に、馬鹿らしい話だわ」
魔女に取り憑かれ、笑うことすら偽らなければならないなんて。
「別の世界線なら──存在しないのなら、わざわざ見せる意味も理解できないわ」
上映者の狙いも分からない。それが、酷く悪趣味であることだけは理解できるが。
「……ラム達の心を掻き乱すのが目的なら、成功と言わざるを得ないけれど」
魔力が充ちた部屋で、何かしらの魔法が使われているのだろう感覚に、ラムは舌を打つ。
「……くだらない」
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『――スバル様、起きていらっしゃいますか?』
『また、スバル様ったらそんなこと。……でも、森の向こうの空には雲がかかっていて、午後から天気が崩れるかもしれないみたいです。今日は町にお買い物にいく予定があるので、晴れたままでいてくれるといいなぁ』
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「……何も変わらないように見せかけているのが、かえって気持ち悪いかしら。……まるで、ロズワールを見ているようなのよ」
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『――こんなこと言ったらなんだけど、これでフェルトが戻ってきたら、またお前と敵味方になると思うとゾッとするぜ』
『────』
『どうした?』
『……いや、気遣ってくれるのはありがたいけど、僕はおそらくフェルト様の騎士に戻ることはできない。どうやら、僕はあの方には不相応だと判断されたようだ。そうでなかったら、僕を置いてどこかへいなくなったりしなかったはずだからね』
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ラインハルトは、その情景に顔を顰める。
「フェルト様が……?」
喪失したラインハルトに手を差し伸べたのがスバルなのだろう。
が──
「どうして、そんな事に……?」
それは、口にせずとも何となくわかった。
「……魔女の、影響か」
それは酷く、悲しい事だった。
───────────────────
『お前とラムには頭が上がらねぇよ。でなきゃ今頃、俺はガーフィールに何回ぶちのめされてるか想像もつかないからな』
『そこまで無分別なことはしないはずだよ。確かに表面上、ガーフィールはスバルに厳しく当たっているけど、それは実力を認めていることの裏返しだ。ただ、君の強さは一目でわかりにくいところがある。それがなかなか、彼には受け入れられないだけだろう』
『まぁ、あれだけ小細工の連発で煙に巻かれたら誰でもムカつくだろうからな。あれ以外の手はなかったから、後悔も反省もしてねぇけど』
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「……あァ……?」
ガーフィールが喉から掠れたような声を出す。
そうして、気がつくのだ。
この世界では、ガーフィールとスバルは分かり合えないまま、聖域の件を片付けてしまったのだと。
「……大将……!」
歯を食いしばり、悲しみを声にして吐き出す。
「なんッでだ……!なんで……!」
幸せな今があるというのに、そうでない未来を見せられなくてはならないのだ。
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『ガーフィールのことは、今しばらく僕に任せてほしい。……フェルト様の信頼も得られなかった僕に、君がまだ期待してくれるなら』
『卑屈になるなよ。お前が信じられなきゃ誰を信じられるってんだ。期待してるぜ』
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「期待してる……」
ユリウスが目を伏せて顔を顰める。
「……同じ言葉でも、これほど聞こえ方が違うなんてね」
「そうだね、あの時とは少し……」
スバルがその言葉に込める思いが、背中合わせであると、思う。
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『ガーフィールを憐れむのは君の自由だ。けど、『聖域』の問題解決についてはしっかりと話し合ったはずだよ。あれだけ試行回数を重ねて、最善を選んだはずだ。誰も傷付けず、誰も死なせず……ついには全員の命を救った。そうだろう?』
『ラインハルトのことも、罪悪感を覚える必要はないよ。そもそも、あの少女――フェルトは王選に対して乗り気じゃなかったはずだ。だから、後腐れのない逃げ道を提示してあげた。今頃、あの巨人族の老人と一緒にカララギで穏やかに暮らしているさ』
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「……やっぱり、魔女の差し金だったんだネ」
フェリスが悔しげに下唇を噛めば、クルシュが狼狽えたように瞳を揺らす。
「……そんな……信じ難いですけど」
クルシュの知るスバルは、こんなことを出来てしまう人ではなかったから。
「……自作自演、ということだね」
ラインハルトが悲しそうに瞳を伏せる。
「……このスバルは、僕の知るスバルとは少し違うのだと思うけど」
それでも、自分を友人だと、足りない部分を補うのだと快活に笑ってくれたスバルがこの決断に踏み切ったことが、ラインハルトには悲しくてならなかった。
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『命が、ある。命があれば、未来がある。未来があれば、希望がある。希望があれば、可能性がある。可能性があれば――』
『――人は救われる。君は正しい。間違っていない。ボクが保証する』
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「……そんなの、間違ってるわ」
エミリアがその瞳に絶望を宿して、そう零す。
「生きていたら、それでいいの?大切なものを、その人を構成するのに必要なものを無理やり壊すようなことをしても?」
首を振って、エミリアは震えた声で口にする。
「そんなはずないでしょう?生きていたらそれでいいなんて……そんなの、間違ってるわ」
エミリアは思案する。
「この世界の私は……一体、何をしているの?」
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『ベティーは、疲れた。もう、諦めたかしら。お母様の、言いつけにも背いて……契約も破って……それなのに、まだ生き残って……なんで』
『あのとき、お前が、見捨ててくれれば……なんで、助けにきたのよ。……誰も、お前になんか、お前なんか、『その人』じゃ、ないくせに……っ!』
『――っ!離せ!離すかしら!ベティーに、触るなぁ……っ!』
『なんで、会いにくるのかしら……!お前なんか、お前なんか……!』
『お前がそうやって、俺に八つ当たりしてくれてるうちは何度でも通うよ。今は消えないように思える後悔の火も、ずっと吐き出し続けてればいつか消えるかもしれない』
『消えるはず、ないのよ……!ベティーは!』
『俺は、お前が生きててくれて嬉しい。だから、またお前がいつか、俺の前に膨れて立ってくれるのを待ってる。――その期待も、生きててくれたからだ』
『……あのとき、嘘でも俺が『その人』だって言えればよかったのかな』
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それを見て、ベアトリスは絶望した。
「……冗談じゃ、ないのよ」
禁書庫を失い、約束を違え、自らの存在価値を──その根幹にあったものを失ったベアトリスが死を望むことなどスバルにだって分かっていたはずだ。
それから、この事態を招いたエキドナにだって。
「最悪かしら、こんな世界に……一体、なんの意味があるというのよ」
それこそ、エキドナの言う『生きてさえいれば』という類のものなのだろうか。
「……信じ難いのよ、こんなの……有り得ないのに、何かが違えばあったと確信してしまうのが……本当に嫌になるかしら」
───────────────────
『おーぉや、そこにいるのはスバル様じゃーぁありませんか。ベアトリスのところからのお帰りですか?』
『ロズワール、か』
『ですが、心配はいりませんよ。時間をかければ、あなたなら必ず突破口を見つける。如何なる方法であれ、最善を掴み取ることにご執心のあなただ。ベアトリスの心を救いたいと願うなら、きっとその方法も手中にできるはず。焦ることはありませんとーぉも』
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「……随分と簡単に言ってくれますね。ナツキさんがそんなに特別な人に見えるんですか」
オットーが独り言のようにこぼす。
ロズワールはそれに肩を竦めて何も返すことは無かったが。
「……誰も彼も、どうしてそうなんですか。ナツキさんは特別なんかじゃない……僕と同じ、血を流しすぎたら死ぬ凡人なんだって──そんなこと、言われなくてもわかるでしょうに」
最も、オットーがどれだけスバルを英雄の玉座から遠ざけたところで、彼はどこかで誰かを助けてしまう。
オットーは彼の優しさに助けられていたが、それでも。
「……友達が無理してるのなんて、見たくないですよ。僕は」
彼の根幹にあるのは、ただそれだけだった。
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『なに、悪い取引きには絶対になりませんよ。あなたはあなたの、私は私の、なんとしても叶えたい願いを叶える。そのためにお互いを利用する。それだけのことです』
『私の力は有用なはずだ。このときのために、四百年もの時を費やしたのです。私にとって、あなたの力がそうであるのと同じように、ね』
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「……嫌な空気ですわね」
フレデリカがその整った顔に怒りを僅かに滲ませ、瞳だけを動かす。
「わたくしは、スバル様がガーフに向ける暖かい顔を沢山見てきましたわ。だからこそ、こんなのは間違っているのだと、確信できるのです」
「……こんなのおかしいわ、どうして……」
誰も幸せになっていないでは無いか。
エミリアやガーフィールは疎か、スバル本人でさえも。
「……分からないわ、スバル」
一体、何のために。
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『不肖の妹のために、わざわざ足を運んでくださってありがとうございます、ナツキ・スバル様』
『いつまで経っても、お前のその態度には慣れねぇな』
『……重ね重ね、以前の無礼は申し訳ありません。ラムの無知と無自覚で、ナツキ・スバル様には大変なご迷惑をおかけしました。ですが、ロズワール様とエミリア様より、ナツキ・スバル様へは最大限の敬意を払うようにと申し付けられておりますので、今後はそのようなことは決してありません。ご安心ください』
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「……そう、そうなってしまうのね」
ラムが深く息を吐く。
「当然といえば当然ね。ラムがロズワール様を魔女の妄執から奪い去れず──その上、ロズワール様がバルスに敬意を払うとなれば、こうなるのも合点がいくわ」
ただ、ラムにはどうしてもそれが気持ち悪くてならなかった。
「……理解することと、納得することはまた別だもの。今より犠牲は少なくとも、大事なものは何一つ残っていないじゃない」
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『……レム』
『あれで神龍だ。その血に秘められた万能の力を以てすれば、眠りに囚われた少女の魂を解放するぐらいのことはできるだろうね』
『龍の血は手に入れる。エミリアを王様にすることで。――でも、それはレムを助けるついでにすることじゃない。エミリアを王様にすることが、レムを救うことに繋がる、俺の初志貫徹は変わらない。そこは、間違えない』
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ヴィルヘルムは、スバルの言葉に酷く痛ましく顔を顰める。
エミリアのこともレムのことも大切に想う、スバルの根本的な部分は何も変わらないのに、何かが決定的に違うのだから。
「……あなたにそのような顔は似合いませんな、スバル殿」
いくつにも連なる星のように、無邪気に笑う顔が、スバルには似合うと、思う。
「……たとえ存在しない世界だとしても、それは」
悲しいことだと、思う。
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『――もう、いつまでやってるの!すごーく、やきもきしちゃうじゃない。あ、なんで笑ったの?もう、スバルのオタンコナス』
『オタンコナスってきょうび聞かねぇな。っつか、先にノック返し始めたのってエミリアたんの方じゃん。俺、それに乗っかっただけだし』
『そんな風に言うんだ。ふーん、別にいいけど。それなら、スバルのこと、部屋に入れてあげないだけだから』
『あだーっ!』
『あ!スバル、大丈夫!?』
エミリアが、スバルの指を口に含む。
『え、エミリアたん!?ちょっと大胆じゃね!?』
『ん……大丈夫、かな。スバル、痛くない……って、なんで顔が真っ赤なの?』
『男の子的にどうしようもない理由というか、思わぬ展開に大混乱というか……いえ、大丈夫です。ありがとうございました。これで俺、やっていけるよ』
『――?よくわからないけど、治癒魔法かけるからね?』
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エミリアが、その美しい紫紺の瞳を鋭く細める。
「……これ、本当に私なの……?」
どうして気づかないのだ。
スバルがもう限界をとうに超えていることに。
「自分のことばっかりなのね。スバルが苦しんでるかどうかなんて、知ろうともしないんでしょう」
それは、自戒とも言える言葉だった。
「どうしてなの……?スバルは、こんな世界を望んでたの?」
そうでないことは、教わらずとも知っていた。
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『スバル、痛そう。この傷、どうしたの?』
『あ、ああ、これ?これはちょっと、途中で引っかけて……』
『嘘』
『――ベアトリスでしょう』
瞬間、エミリアの体から冷気が。
『エミリア!エミリア、落ち着け!大丈夫、大丈夫だから!』
『エミリア!俺を見ろ、ここだ!』
『──ぁ』
『あ、危うかった。もうちょいで、ラインハルトが駆け付けるところだ……』
『わ、私、今、え……?』
『大丈夫、大丈夫だ。エミリアたんはいい子、いい子、なんともないよ』
『ご、ごめんね?私、また変な風に……』
『いいから。エミリアたんにかけられる迷惑は迷惑じゃねぇから。これは、俺が望んで引き受けてる役割なの。安心してって』
『……ん、うん』
『ごめんね、スバル。私、またスバルに迷惑かけちゃって……』
『大丈夫、ノープロ、無問題。むしろ、大歓迎ってな感じで』
『……ふふっ、スバルってば。ん、ありがとう。大丈夫、落ち着きました』
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「……そん、な」
エミリアが目を見開いて力の抜けた足をばし、と叩く。
「どうして……?どうして、そんな事になるの?」
理由など聞くまでもない。
試練から逃げて過去と向き合わなかったエミリアがスバルに依存するのは必然だ。
そして、手遅れになったことに気づいて、スバルがせめてエミリアの心に傷が少なくて済むようにと苦心するのも。
「だって……だって!そんなのおかしいじゃない……!」
エミリアが叫ぶのを聞いて、ベアトリスは絶望したようにスクリーンを見つめる。
「……運が良かっただけかしら」
そう、運が良かっただけなのだ。
スバルがオットーを頼って、全てが奇跡的に上手くいったから、スバルはベアトリスに笑顔を向けてくれるだけ。
運が悪ければ──無数に分岐する最悪な世界が、それを確信させてきた。
「……ベティーたちがいなければ、スバルはこんなに苦しまずに済んだのかしら?」
そう考えることを、きっと彼は望まないだろう。
眉を下げて、少し困ったように笑って、「……それでも、俺はベア子に出会えてよかったと思うよ」と、優しく言ってくれるのだろうから。
「……どうして、ベティーはいつも役立たずで……何もかも、手遅れなのかしら」
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『見るに堪えないな』
『黙れ』
『──え?』
『あ、エミリアたんに言ったんじゃないんだ。ごめん、独り言』
『だ、黙ってた方がいい?スバルがその方がいいなら、頑張って静かにするから……』
『違うって!平気だから、いっぱい話そう?話してくれていいんだよ』
『……ホントに?』
『それじゃ、教えて、スバル。――私、今日は何をしたらいい?昨日は、ちゃんと言いつけ通りにずっと部屋で勉強してました。スバルの言うことなら間違いないもの。だから、何をしたらいいのか、教えて?』
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ロズワールはそれを見て、あの時思い描いた理想そのものだと思った。
それから、嘗て禊として殴られた頬を軽く撫でる。
「……結果的には、正解だったというわけか」
あの時、スバルがロズワールの目論見を打破したことが、世界を保つための最適だったのだろう。
エミリアが過去と向き合い、ベアトリスは禁書庫を出て、ガーフィールを聖域から連れ出して、スバルは最適解を叩き出した。
それは、この世界線のスバルには決してできないことだ。
何故なら、
「──自分を大切にできない人間に、他人を慮る心の余裕があるはずもないからねーぇ」
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『――残念ですが、ナツキさん。ここでお別れです。』
『――僕はね、ナツキさん。これでも、あなたのことを恩人だと思ってました。大恩がある人で、できるだけそれに報いたいと、そう思っていました。』
『――けど、あなたの決断を見て、わかったんです。あなたは誰の助けも求めてないし、それどころか、あなたは何もかも、一人でどうにかしようとして、できてしまう。』
『――だから、これが僕の恩の返し方ですよ。たぶん、あなたは近くにいる人、みんなまとめて守ろうと必死になるでしょうから、僕は降りることにします。』
『――では、さようなら、ナツキさん。お体に気を付けて。』
『――僕は、あなたのことを友達だと思ってましたよ。』
『――あなたは、そうじゃなかったでしょうけど。』
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「……本当に、悪趣味で嫌になりますよ」
オットーが手に力を入れ、額に青筋を立てる。
「自己犠牲精神の強くて自責思考のナツキさんが何とかする方法だけを知ってしまえば、こうなることは僕にだって分かりますよ。……だから、あの時ナツキさんに手を差し伸べられてよかったと本気で思う」
総じて不運な事ばかり起きるオットーの人生の中で、指折り数えるうちのひとつに入るほどの僅かな幸運。
それは、スバルと出会えたことと、限界だったスバルに気付き、助けられたことだろう。
「……でも、僕が助けられたと思っていたあの時だって──既にナツキさんの犠牲の上で成り立ってたんですよ」
そもそも、オットーが死なずに済んだのはスバルが死を繰り返し、あの地点までたどりついたからであり。
「嫌になりますね。助けたつもりが助けられてたなんて……僕はいつになったら、あんたに恩を返せるんでしょう」
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『――あら、ずいぶんと焦った様子で戻ってきたようだけれど』
『時間通りに戻ったはずなのに、そう睨まれては困ってしまうわね』
『――エルザか』
『ええ、その通り。『腸狩り』エルザ・グランヒルテ、ご主人様の命令に従って、こうして馳せ参じた次第。――ご迷惑だったかしら?』
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「なッ……!」
ガーフィールが驚きに目を見開く。
その隣で、フレデリカも顔を顰めていたが。
「──エルザ……!」
エミリアも思わず身構え、ベアトリスは悲しそうに顔を逸らす。
ラインハルトはそれを見て暫し瞳を泳がせてから、眉を下げて吐息を吐いた。
「……スバル……僕は」
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『あ、待て、エルザ。聞きたいことがある』
『――?何かしら、難しいことはわからないのだけれど』
『そんな大したことじゃない。お前、外からこっちにきたんなら……森の向こうの天気はどうだった?雨とか大丈夫だったか?』
『天気?ええ、別に何の問題もなかったわ。少しだけ雲が厚いのだけれど、崩れる心配はたぶんないでしょうね。それが?』
『いや……頼みたいことができた。――そのナイフで、俺の首を刎ねてくれ』
『――頭、おかしくなったわけではないのかしら』
『いたって正気で言ってるぜ?必要なことだから頼んでるだけだ』
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「……え、?」
エミリアが思わず耳を疑う。
それは、ヴィルヘルムやオットー、ロズワールですらも。
「首を、って」
エルザの発言に頷いてしまうほど、それは突拍子もなかった。
「どうして?だって、今戻る意味なんて……それ以前に、そんな簡単に」
エミリアが震えた声で言うも、ベアトリスはエミリアの服を掴んで囁く。
「天気……」
「……え?」
「この映像の最初に、ペトラが天気について話していたかしら。だからきっと……スバルは」
ベアトリスは、理解した自分をおぞましく思った。
「……スバル、どうして」
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『普通に考えると、首を刎ねられた人間は大抵は死ぬのだけれど』
『俺も、それに該当する方だと思うぜ。お前はどうか知らないけど』
『私も、首を落とされたら死ぬと思うわ。……本当にいいの?』
『最初、お前を助けたときに言ったはずだ。――依頼とは無関係に一個だけ、俺の言うことを聞いてもらう。今がそのときだ』
『言い残すことは?』
『痛くしないでね』
『あ、あと、死んだあとの俺の腸は好きにしていいから、屋敷の人間には手を出すな。まぁ、そのためにラインハルトを置いて――』
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血飛沫がスクリーンを支配し、エミリアとベアトリスが泣きそうな音を立てて呼吸をする。
「スバル……」
泣き崩れる二人を見て、オットーは本気でスクリーンを壊そうと思った。
しかし、それをすることは叶わない上、見終わらない限りスバルは解放されないのだ。
「……嗚呼、本当に……ままならない」
これを休憩などと宣うのだから、悪趣味な人間はいるものだ。
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『『死に戻り』地点の変更を理解したわけでなかったんなら、君は何のためにわざわざ『死に戻り』をしたんだい?』
『――スバル様、起きていらっしゃいますか?』
『また、スバル様ったらそんなこと。……でも、森の向こうの空には雲がかかっていて、昼過ぎから天気が崩れるかもしれないみたいです。今日は町にお買い物にいく予定があるので、晴れたままでいてくれるといいなぁ』
『でも、安心しろよ、ペトラ。今日も、一日ちゃーんと晴れたまんまだ。雲は見かけ倒しで問題なし。俺が断言するぜ』
『え?ホントですか?それはすごい助かります。……でも、なんでわかるの?』
『――そのために、命懸けで戻ったぐらいだからだよ』
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ブツ、とスクリーンが暗転し、見慣れ始めた終わりが訪れる。
「……スバル……」
エミリアが絶望したようにそう呟けば、ベアトリスが痛ましく顔を逸らす。
全員が重々しい空気を纏い、発言を控える中、無機質な声が響く。
「……続いて、第五幕へ映ります」
スピーカーからスイッチを切る音が聞こえ、スクリーンが妙な音を立てながら再起動される。
「……ごめんなさい、スバル……」
エミリアが銀髪をゆらりと揺らめかせて、俯く。
「……こうならなくて良かったって、安心しちゃった自分に、嫌になっちゃう」
エミリアが言った言葉に、ガーフィールとオットーは、無言で肯定を返した。
ロズワールは暗転したスクリーンを眺めたまま、ただ一言。
「……これは何とも、救われない話だ。私も含めて、ね」
浮かべたのが笑いだったのか否か、本人でさえも気づかないだろう。