凍結した時を動かして
別室と再開させるとしたら本編ではなく幕間というか、短編でになりそうです。
賢一さんがロズワールとあったら多分ロズワール死に最も近い状態になるんで。
ぜひ4章まで見たあとに一回会わせたいですね。
大兎のシーンで菜穂子さんが正気保てるかがネックですけど。
毎日投稿途切れてすみません。
バイトでトラブル起きて昨日は風呂も入らずに寝たので。
あと、手描き動画書いてました。
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『またお前は、性懲りもなく……!』
『はぁっ!当たり前、だろうが!何度でも、俺はお前をさらいにくる。それが嫌なら今度こそ連れ出されろ!そうすりゃ、このやり取りもこれが最後だ!』
『減らず口はもうたくさんかしら!屋敷が燃えてるのは知っているのよ!今すぐに外へ逃げなくちゃ、お前も火にくるまれて焼け死ぬだけかしら!それとも……お前は屋敷やベティーと一緒に、焼け死ぬことを選ぶというの?』
『馬鹿か!これだけ言ってもまだわからねぇのか!俺はお前と一緒に死んでやるつもりなんか欠片もねぇ!俺は、お前を死なせずに連れ出しにきてんだよ!』
『――ッ!どこまでも、本当に勝手な奴かしら!とっとと、出ていけ!』
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「……本当に大丈夫なのだろうか?このままでは屋敷が全焼して……」
「契約してたんだから、ここで連れ出せたんだろうけど……今のところ何とかできそうな感じはないかもネ」
「スバル様は突飛な発想ができる方ですが……ベアトリス様を連れ出すには、少し足りないように見受けられますね」
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『本気で俺の顔が見たくないなら、禁書庫にこもれよ、ベアトリス』
『何を……お前は……っ。現に、ベティーはこうして禁書庫から一歩も出ちゃいないのよ。それなのに、お前が勝手に押し入ってくるから……!』
『いいや、違うね。お前が本気でここに一人でこもるつもりがあったら、俺が短期間でこんなに何回もここに辿り着けるもんかよ。お前の拒絶は、上っ面だけだ』
『それは!お前が……そう、お前が『扉渡り』の破り方を実践してるからかしら。それに屋敷が燃えてて、扉の数も減ってるから……』
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「本当に大将はしょうがねェやつだからなァ。でも、大将みたいな強引な誘いの方ッが誘われた側も受ける気概があるって思わねェかァ?オットー兄ィ」
「そこで急に振られても困りますけど……そうですね。ナツキさんは強引で理由なんてちゃんと無いのに手を引き出すような人で……でも、とんだ殺し文句を無自覚で吐くような人ですよ。僕としてはもう少し手の大きさを見直して欲しいもんですけどね」
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『お前は……お前は!ベティーの『その人』じゃない!お前が違うとそう言ったのよ!お前が……お前が違うって、そう言ったかしら。お前が『その人』だったら……嘘でもそうだって言ってくれたら、きっとベティーはそれを信じられた。嘘だとわかっていても、信じるしかなかったのよ』
『ベアトリス……』
『でも、お前は違うって言ったかしら。違うって、馬鹿かってそう言ったのよ。ええ、そうかしら。その通りなのよ。ベティーは馬鹿で、大馬鹿で、四百年も前に交わした口約束が今も忘れられないから……だから!何を言われてももう終わりかしら!』
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「本当に大丈夫ですの……?いや、疑うわけじゃありませんけれど……もうかなり火が回っていますわよ」
「急いでスバル!……あっ、でも私が大兎と戦うところで合流したから……もう少し時間がかかっちゃうかも!」
「それって本当にギリギリで脱出してますわね!?」
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『俺は、お前の『その人』なんかじゃない。何度だって言ってやる。お前が待ってた白馬の王子様なんてきやしない。最後の瞬間までここにいても、絶対に!』
『――ッ!それなら!ベティーはここで、朽ちるだけなのよ!』
『それはダメだ。その選択は選ばせねぇ。お前が心変わりするまで、俺が何度でも言いにきてやる。『その人』はこない。約束は、守れない。――でも、お前は死なせない』
『お前なんか……大嫌いかしら!!』
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「スバル!」
エミリアが紫紺の瞳を見開いて心配そうに立ち上がる。
「ちゃんと見守らなきゃ……でも……ううっ、見守るだけってすごーく不安よ、スバル……!」
スバルはエミリアが助けようと手を伸ばした時には既に面倒事に首を突っ込んでいることが多いから余計にそう思う。
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『俺、は……お前の……『その人』じゃ、ない……』
『…………』
『でも』
『俺は……お前と一緒にいてやりたいよ、ベアトリス』
『────!』
『優しいお前が、悲しくないように、傍にいてやりたいよ』
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ラインハルトが青い双眸を大きく開いて、その美しい顔立ちに強い驚愕を滲ませる。
「優しい……そうか、そうだね。スバルは、そういうことを言える人だった」
自分よりも強くて、なんでも出来てしまうような人の僅かな弱みを見逃さず、それを優しく包み込もうとしてしまうような人。
「……それがどんなに嬉しいか、君にはきっと……他の誰にも、分からないだろうね」
「一緒に……」
スバルは時折酷く暖かい言葉を当たり前のように吐くと、ヴィルヘルムは思う。
それは、きっと誰よりも他人を愛して、愛されて生きてきたスバルだからこそ吐ける言葉で。
「……月のような人だ、あなたは。……その輝きが、私には強すぎる」
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『――ベアトリス。お前を、信じてる』
『お前は、馬鹿なのよ……』
『開口一番にそれかよ』
『だって、そうかしら。ベティーがどうにかして逃がしてやろうって手を尽くしたのに、その機会を全部無駄にして、戻ってきやがったのよ。……もう、屋敷のどこにも扉は残ってないかしら。禁書庫にも、火が入り始めてるのよ』
『それならこのままじゃ、俺もお前も終わりか』
『……そうよ。終わりかしら。ベティーは、もう多くは望まない。『その人』へ渡すはずの知識に火が移って、約束は完全に違えてしまったかしら』
『そうか。それなら、最後の俺の話を聞いてくれ』
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「……本当に、スバルは救いようがないほどに馬鹿なのよ。でも……そんな馬鹿じゃなければ、ベティーの心は動かなかった」
酷く愛おしそうに、その瞳には慈愛と敬愛と、恐らく親愛と友愛もあった。
この世に存在する全ての愛を詰め込んだような顔で、彼女は言うのだ。
「……ベティーは、スバルを選ぶのよ」
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『ベアトリス。――俺を、助けてくれ』
『……は、ぁ?』
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それを聞いた時、様々な反応があった。
エミリアは、少しだけきょとんとして、それから酷く納得したように笑った。
ガーフィールは暫し瞳を揺らした末に、「助け……あァ、本当に大将は面白ェぜ!」と笑い飛ばした。
オットーはそれに意表を突かれたと言いたげな顔をして、それから小さな声で「……本当に、そうですね。それがいいと思いますよ」と目を細めて笑った。
ラムは溜息をつき、「助けて……ね。本当に、情けない話だわ。……それが幸いしたようで、何よりだけれどね」と吐き捨てた。
ロズワールは額を押えてひとしきり笑い、フレデリカは苦笑した。
スバルは人のやる気を引き出すのが上手いなぁとラインハルトは考える。
「助けて……か。これ以上に手を取りたくなる言葉は無いね。確かに」
そう言って笑った。
「……そうか、なるほど……流石だ、スバル」
ユリウスは相変わらずの反応であったが、フェリスとクルシュはどちらかと言うと驚きの方が強く、「どんなかっこいいセリフかと思ったら、いつものスバルきゅんで安心しちゃった」と口にした。
「……スバル殿、やはり貴方は」
ヴィルヘルムの瞳には、少しの感情が。
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『お前を孤独から連れ出してやるとか、お前を助け出してやるとか。そういう格好いいこと言ってやろうって色々考えてたんだけどさ。……どれも、その場しのぎの勢い任せにしか思えなくてよ。本音のところで考えたんだ。俺はお前を、どう思ってるんだろうって。どう思ってるから、何を伝えたいんだろうって』
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「……嘘がつけないなんて、ほんとスバルきゅんって感じ。本音で言わずに取り繕っても良かっただろうにね」
「それをしないからこそ、ベアトリス様も心を開いたのだろう。スバルがその場しのぎの嘘を言うようなら、この会話自体を拒絶されていただろうしね」
「正直に話すのはいいことだよね、僕も話す時は正直に話すことを心がけているよ」
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『助けてやるもなにも、ホントのところ、お前には俺の力なんて必要ねぇんだ。お前は強くて、賢くて、可愛くて……やろうと思えば何でもやれたし、なろうと思えば何にだってなれたはずなんだ』
『一人で生きるのに十分な力がお前にはあった。当たり前だ。じゃなきゃ四百年もやってられないもんな。だから力を貸すとか助けてやるとか、そんなこと言ったってお前には何にも届きゃしなかったんだ』
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「……土壇場でこんなに話せるなんて、ほんとにすごい……私は、こういう時焦って言葉が出なくなっちゃうから……」
「普通はみんなそうなのよ。寧ろ、演説じみたことを得意としているスバルの方が特異と言うべきかしら」
「ベアトリス……今、韻踏んだ?」
「こんな時まで余計なことに頭を使うんじゃないのよ!」
悪い意味でスバルに毒されていると、ベアトリスは頬を膨らす。
エミリアの方もスバルなら言いそうだなあと意識して言ったのだが。
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『でも、強くて賢くて色々できるお前でも、一人で生きるのは恐かった。辛かった。寂しかったよな。だから、『その人』って存在に縋るお前を、誰も責められない』
『勝手に……ベティーの気持ちを……拒絶したお前に、ベティーの何が……!』
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「一人は怖い……うん。そうね。私だって怖いもん。一人で生きるって、たくさんの人の中で恨まれて蔑まれて生きるより、きっとずっと怖くて寂しいことだって私は思うの。だって、一人だったら、そんな嫌な目を塞いでくれる誰かとも、出会えないんだもの」
一人で生きるということは、出会える可能性を奪われるということ。
それは酷く怖いことで、避けたいことだ。
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『俺は、知ってるよ。お前が優しいことを。悪夢にうなされてる奴がいたら、その手を取って安心させようとしてくれることを。どうにもならない困難にぶち当たった奴がいたら、手を差し伸べて道を開いてくれることを。嫌いで仕方ない奴でも、近しい間柄の奴が失われたら悲しんでくれることを』
『力のない俺は、お前の助けになってやれない。それでもお前を一人にしたくない俺ができることっつったら、もう縋りついて頼み込むしかない』
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「……」
ラインハルトの瞳に、微かなゆらぎが生じる。
力がなくても、その人を悲しませる孤独を取り去ろうとする。
それは、契約により孤独を強いられたベアトリスにも、強さにより孤独を強いられたラインハルトにも、何よりも嬉しいことであって。
「……スバル」
その感情の名前を、ラインハルトは知らなかったが、それは恐らく、喜びと期待の入り交じった何かであった。
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『ベアトリス。俺を助けてくれ』
『────』
『お前がいなくちゃ、寂しくて生きていけない俺を、助けてくれ』
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「スバル殿……」
『お前を助ける』ではなく『俺を助けてくれ』と言える。
それこそが、彼の放つ魔性の魅力のようなものなのだろう、とヴィルヘルムは思案する。
それは、世界でいちばん情けなかった。
でも、
「これ以上に、停滞した時を動かす言葉もないでしょうな」
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『ずる、い……ずるい、のよ』
『…………』
『そんな、言い方……そうして、そんな風に……今さら、ベティーを……だって、お前は『その人』じゃないって……ベティーを拒絶して、なのに……っ』
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空間に、すすり泣くような声が木霊する。
エミリアはその宝石の如き瞳を潤ませ、オットーも噛み締めるように歯を食いしばっている。
「……ぅっ、……だめ、ないたら……っ」
エミリアが肩を震わせて息を吸い込む。
「……ナツキさん、ずるいですよ……」
オットーもなんだかんだ言って涙脆い。
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『四百年、ずっと一人だった……!孤独の時間を過ごしてきて、今ここでお前の手を取ったところで……どうせ、お前はすぐに死んでしまう!人間の寿命なんて、ベティーにとっては瞬きみたいに一瞬で……今さら!そんなものに縋って……!』
『お前が過ごした四百年は、俺には想像することもできねぇよ。わかったような口も叩いてやれねぇ。四百年どころか、俺はまだその二十分の一も生きちゃいねぇから。お前が、俺が死んだ後の時間を恐がる気持ちも、きっと全部はわかってやれねぇ』
『それなら!それなら……お前の言葉は、何の解決にも……!』
『でも、俺はお前と明日、手を繋いでいてやれる』
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「────!」
ガーフィールが瞳を輝かせてオットーの肩を叩く。
「痛い痛い痛い!何なんですかねえ!?」
「すげェぜ大将……!本当に……!」
「分かりますけど……痛いんで叩くのやめて!」
「かっこいいじゃん、スバルきゅん」
「明日手を繋いでいてやれる……こんなこと、言われたいですね……!」
女性陣──片方は男だが──からは思わぬ高評価。
「途方もないような未来よりも、必ず来る明日を見るべきだと──流石だね、スバル」
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『明日も、明後日も、その次の日も。四百年先は無理でも、その日々を俺はお前と一緒に過ごしてやれる。永遠を一緒には無理でも、明日を、今を、お前を大事にしてやれる』
『だから、ベアトリス。――俺を、選べ』
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「────!スバル……!そうよねっ、必ず来る明日って日をスバルはベアトリスと過ごせる……!そうよ、流石スバル!」
エミリアが黄色い歓声を上げ、ガーフィールも立ち上がり咆哮する。
隣にいたオットーの鼓膜は死んだ。
「流石だッ大将ォ!」
「声でっかあ……!?急に叫ばないで……」
ラインハルトは満面の笑みで微笑み、ユリウスは感嘆の表情をうかべる。
「本当にスバルはすごいね、ユリウス……」
「そうだな、なかなかできることでは無い」
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『お、前は……『その人』じゃ……』
『ない。俺をそんな、お前が思い描いてた他の男と一緒にすんな。俺は俺だ。ナツキ・スバルだ。四百年の、顔も知らない野郎への片思いなんて全部、忘れちまえ』
『────』
『いずれくるかもしれない別れの時間を恐がるより、必ずくる明日って日々を俺と一緒に生きよう。俺は弱くて、なのに望みが高いから……俺と一緒にいれば、世話焼きのお前はきっと忙しくって、退屈だの寂しいだの考えてる暇なんてなくなっちまう』
『俺を選べ、ベアトリス』
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「いとも簡単に、ベアトリスの400年を取り払うものだねーぇ……嗚呼、君はやはり面白い。私も悠久ともいえる時を生きてきたが、退屈はしそうにないしねーぇ」
ロズワールが口元を押えて笑う。
「……情けない告白ね。ラムなら絶対に受けないけど……今回はそれが大正解だったということかしら。……本当に」
ラムの口元には、嫌味のない微笑が。
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『いなく、なるくせに……』
『永遠なんてない。お前が恐がってる未来は、いつか必ずやってくる。永遠を生きるお前を置き去りにしちまうときが、きっときちまうだろう。でも、別れの恐さばっかりを考えて、一緒にいる楽しさを捨てちまうような真似をするには、俺もお前も人生味わってない部分が多すぎだ』
『置いていく、くせに……』
『一緒にいよう。一緒に生きてみよう。一緒にやっていこう。別れの恐さを吹っ飛ばせるぐらい、楽しかったんだって胸張って笑えるぐらい、思い出を積み重ねていこう。お前がここで過ごした、寂しい四百年を取り返して、お釣りがくるぐらいに』
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エミリアの肩ががたがたと震え、それは涙を懸命にこらえているのだとわかる。
「別れの怖さを吹き飛ばせるくらいに……」
エミリアとて、スバルと別れるのは怖い。
長寿のエミリアと人間のスバルでは寿命が違うから。
でも、それでも。
「そうね、私も、スバルと離れ離れになっても泣いたりしないわ。だって、スバルとの思い出がそこら中に溢れてるから」
それは奇しくも、嘗てのスバルが眉を寄せていた類のものであった。
「……言われてみれば、そうだね。僕たちは、人生について語れるほど、生きていない。君は本当に、みんなが気づかないことに気づくね。」
ラインハルトがそう言って眉をへにゃっと下げる。
スバルがいたら『イケメンの笑顔まじ怖すぎるんですけど!爽やかすぎか!?』とか言いそうな。
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『永遠を生きるお前にとって、俺と一緒に過ごす時間なんて刹那の一瞬かもしれない。なら、お前の魂に刻み込んでやるよ。俺の一瞬を』
『――ナツキ・スバルって男が、永遠って時間の中でもセピア色にならないぐらい、鮮烈な男だったんだってことを!』
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ラムとロズワール以外のエミリア陣営とラインハルト、ユリウスが叫びながら立ち上がる。
「スバル……!」
エミリアはその瞳に全霊の信頼を認めている。
「大将ッ!やっぱり大将はすげェぜ!」
ガーフィールが叫びながらオットーに飛びつく。
「……ほんと、ナツキさんはこういうの得意ですよね。無自覚で人たらしっていうか……うわっ、ガーフィール急に来ないでバランス崩れる!」
オットーが姿勢を保てず倒れたのは言うまでもないが。
「スバル……!」
ユリウスが瞳を輝かせる。
やはり、年齢関係なくアツい展開は誰が見てもアツい。
「せぴあなるものが何かは分からないが……とてもいい演説だ」
「そうだね、スバルはすごい……すごく、鮮烈な子だよ」
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『俺を選べ!ベアトリス!!』
『──ぁ』
『誰かに外に連れ出してほしいから!お前はいつも!扉の前に座ってたんじゃないのか!!』
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空間を揺らすほどの大歓声が響く。
彼の名を呼ぶ声と、けたたましいほどの賛辞が。
「本当に、ずるいのよ。もう、絶対に離してなんてやらないかしら」
ベアトリスが愛おしそうに微笑んでそう言う。
エミリアはベアトリスの隣でずっと叫んでいる。
「スバル……!本当に、本当に……!すごい!」
語彙力がない。
「僕が苦労したかいはあった、って感じですかね。ほんと、あんな思いするのは今生で一度限りにしたいもんです」
はは、と肩を揺らして笑う。
最も、スバルが頼めばオットーは無茶するのだろうが。
「確かに……!?確かに、ずっと扉の前でしたね!?」
フェリスがテンション爆上がりしてる。
「そうですね……!?スバル様はそこまで気づいて……」
クルシュも負けじと声を張る。
「こういう経緯で契約を……流石だ、スバル」
「ユリウスそれしかいってにゃくない!?」
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『──スバル』
『ああ、そうだよ』
『──スバル、スバル』
『そうだ。俺の名前だ』
『──スバル、スバル、スバル』
『──スバル!!』
『やっと、呼んでくれたな』
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「……やはり、あなたには人を導く才能がおありです。スバル殿。あなたは決して首を縦には振ってくださらないでしょうがな」
「……そろそろ、私の方に来るわ」
エミリアがガタッと立ち上がる。
「この後、スバルはずーっとかっこいいの!見てて!私のスバルを!」
エミリアが自慢げに息を吐くものだから、オットーとフレデリカはそれを微笑ましく見つめた。
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『絶対の、絶対に……誰も、失わせたりなんてしない!!』
『誰にも……誰の終わりも決めさせない!みんながああして、手を取り合ってくれたんだもの……私は、それを守る!母様と、それを約束したんだから――!』
『母様やジュースのことと、今日の日のみんなのことと……あの人の書いてくれた言葉を忘れないでいられる限り、私は諦めたりしない』
『そんな無理しなくても大丈夫だよ、エミリアたん』
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「……本当に、間のいい男だ事」
ラムが軽く息を吐く。
最も、嘲笑ではなく、優しい笑顔を浮かべていたが。
「ふふん、スバルってすごーくたいみんぐ?がいいでしょう?本当に、すごいんだから!」
「急に元気になった……」
エミリアが腕をパタパタと振って自慢するのをオットーは微笑ましく見つめる。
スバルがいたらきっと喜んでいただろう。
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『後は任せて、下がっててもいいぜ。――初陣補正があるからね』
『ごめん。ちょっと何言ってるのかわかんない』
『もう、どうなっても知らないのよ』
『ああ、どうにかしてやろうぜ。――俺と、お前で!!』
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「うぉぉおおおォーッ!」
ガーフィールが叫び、ベアトリスが自慢げに笑う。
「流石だ、大将……!」
「まあ、ベティーの契約者なのだから当然かしら。もっと褒めるがいいのよ」
「大将ーッ!」
「ふふん、悪くないかしら」
「ほんと子供だなこの人……」
かくいうオットーも、口角を僅かに上げていたが。