イランは対立と対話の対価を吊り上げることに成功
ロンドンに拠点を置くペルシア語衛星放送イラン・インターナショナル(6月2日付)は、イランは米国との協議を中断したことで戦後外交の賭け金を跳ね上げ、交渉力を高めたのか、それとも墓穴を掘っているのかを分析している。
一部の専門家はイランが戦争を生き延び、予想以上の優位に立っていると確信する。イランは外交の範囲を核以外にも広げられると考えている。トランプ氏がネタニヤフ氏にベイルート空爆を思いとどまらせたことで将来イランはヒズボラをカードとして利用する可能性が膨らんだ。
イランの対話中断や海上航路への脅迫は交渉を長引かせて米国に経済的・地政学的圧力をかける「調整された遅延戦略」だ。「イランが望んでいるのは世界的な景気後退の引き金」との見方もある。
イランにとってヒズボラやミサイル、ウラン濃縮プログラムは単なる交渉カードではなく「イスラム共和国」の核心的支柱だ。イランがイスラエルによるレバノン攻撃を傍観することはヒズボラへの関与を放棄することを意味し、体制の存続に関わりかねない。
レバノンは新たな外交の焦点になってきた。イランは交渉を有利に進めるため、対立と対話の対価を吊り上げることに成功している。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。