見えないと始まらない
頭に血が上ってる時には見えない景色ってありますよね。
冷静になって考えたら開ける道ってあるので。
なので、感情が昂った時は深呼吸をするのがいいと思います。
それでもムカつくなーと思ったら拳に込めるしかないです。
春風は全身病気みたいな人間なので殴り合いなんてしたら一瞬で気絶すると思いますけど。
バイト先が当日ドタキャンしてくるんですけどこれっていいんですかねぇ……🤔
ちょっと複雑な気持ち
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『ものわッかりの悪ィ野郎だなァ、オイ!勝ち目なんざ、端っからねェんだよ!へっぴり腰ッ!無駄な大振りッ!体の軸もブレブレでお話にならねェ!』
『……そりゃ、悪いな』
『ああ、クソッたれだ!何の意味もねェてめェの意固地とお遊びに、嫌々付き合わされてる気持ちがわかッかよォ。っざっけんな、っざっけんじゃァねェ』
『何の意味があるッ!勝ち目があるから挑んできたんじゃァねェのかよ!ボロボロのガタガタで見るに堪えねェ無様ばっかりさらッしやがって……寝てろってんだよォ!』
地面を弾み、固い土に全身を打ち据えられてスバルは大の字になる。
白目を剥き、空気の抜けるような息を吐いて、今度こそ動かなくなる体――やっと意識を奪ったと、ガーフィールは長い息を吐き、
『なに、終わった顔、してやがる……』
『じょう、だんじゃァねェ……』
『ああ……冗談じゃ、ねぇさ。こんだけ殴られ、て……笑い話じゃ、浮かばれねぇ……』
『そういうッ意味じゃ……』
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「っ……!スバルの根気強いところは好きなのよ、でもそれはどれだけ傷ついても目を瞑るって言っているわけじゃないかしら」
「……ナツキさん……」
そこに、そうすることでしか開かない道が彼には見えているのだろう。
そんなこと、信じたくもないし考えたくもないが。
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『何もかも、てめぇで勝手に決めてんじゃねぇぞ、ガーフィール……!』
『なァにを、言って……』
『てめぇが、エミリアの限界勝手に決めんな。あの子はそんな、弱くねぇ』
『てめぇが勝手に、俺の限界決めて見限んな。膝を折るのも、全部投げ出して蹲るのも、誰に言われるでもねぇ。俺が諦めるまでは、絶対にならねぇ』
『てめぇ、何を勝手にてめぇのこと諦めてやがる。まだやれんだろうが。もっといけんだろうが。……ガキの頃の、手足も伸びきってねぇ。下の毛も生え揃ってねぇようなときに出した頭の固い結論に、いつまで縋ってやがるんだ……!』
『はぁ……はァ……わかった……ッ』
『てめェを、止めなきゃならねェ。てめェの言うことは、何もかも意味がわからねェ。なのに、気持ちが悪くてしょうがねェ。だァから、止めてやる』
止めなくては、ならない。
そして、止めるための手段はきっと、この男の言った通りの手段しかない。――息の根を止めない限り、この男は止まらない。
『なら……殺して、やる……ッ』
『できるのかよ』
『っざっけんな。――やる方法なら、最初からあるんだよォ』
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「見え見えの煽りに乗る……短絡的なところは変わらないままね。……ここで獣化するのも、間違いとしか言えないわ」
「……君は、ここからどう動くんだい?スバルくん」
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『でも、それは間違ってるぜ、ガーフィール』
『頼むぜ、俺の体。こんなことで、潰れてくれるなよ!』
『――シャマァァァァク!!』
使うな、と言われたゲートの酷使。
王都最高の治癒魔法の使い手から、二度と魔法を使えなくなるかもしれないとまで念押しされた言葉を裏切り、スバルは再びそれを行使する。
目には見えないゲートの焼き付く感覚。体の中心にあった門、その根本が大きく揺らぎ、スバルの肉体とは別の遠いところで何かが千切れる。
『ぅ、あ……っ』
『ありがとうよ』
これまで何度も、頼りに頼ってきた線が切れる。
構わない。もともとなかったはずの選択肢が、本当の意味で潰えただけのこと。
ただそれでも、ここまでこれたのはその力のおかげで、そのことに感謝はしている。
だから、これでさようならだ。
『俺の土俵まで降りてこい。――ガーフィール』
その太い右肩に、スバルは懐から抜いた青く輝く結晶を押し込み――突き刺した。
光が、溢れ出した。
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「使っちゃダメって言ったのに……!」
フェリスが怒り心頭と言いたげな顔をする。
「だが、フェリス……」
「仕方ないとか言わないでよ、それは……分かってるんだから……!」
そう、これ以上の解決策などなかった。
が、スバルがゲートを壊すことがフェリスには到底許せず──他の方法がなかったのかと思わずを得ないのだ。
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『エミリアとの契約が切れた後、お前はフリーの精霊に戻る……そうだよな?』
『まぁ、そういうことになるね。ただし、フリーといってもボク自身の力はスゴイ大きいからね。そんじょそこらの子じゃ維持するマナを賄えない。それに誰が相手であっても、リア以外と契約する気はボクにはないからね』
『そのお前を維持するマナってのは……よっぽどじゃないと足りない?』
『そうだね。たとえば仮にスバルがボクを従えようとした場合、大気中のマナの力を借りたとしても……うん、一日ぐらいで干からびるんじゃないかな』
『ん……?思ったよりもつみたいに聞こえるな。じゃ、戦うぐらいできんの?』
『今の一日は、実体化してないボクを連れてる場合だよ?ボクが実体化したら、うん十秒ぐらいで干上がるんじゃないかな。試してみる?』
『お断りだよ。しかしなんだ、精霊との親和性が云々って俺の話はどうなった』
『そこいらの精霊となら、って但し書きが必要かもね。それにそういう意味じゃなくても……ボクの場合は事情が特別なんだよ。ボクは本当の意味で、リアのための精霊だから』
『――――』
『契約が切れたボクを使役して、リアをビックリさせようって計画は頓挫したね』
『ビックリさせようみたいなドッキリ企画のために話持ち掛けたわけじゃねぇよ。ただ……そうかよ。当てが外れたな』
『ごめんね。それに仮にうまくやれそうでも、依り代の問題が……は、ここならどうにでもなるんだったね』
『依り代っていうと……エミリアが首からぶら下げてる結晶石みたいな?』
『アレはアレで特殊なものなんだけどね。幸い、この場所には同じ材質のものがあるはずだから、それをちょこっと拝借すればどうとでもなるよ。どちらにせよ、ボクを結晶石に閉じ込めても、その中に閉じ込めておくだけのマナはとても……』
『――なぁ、聞きたいんだけどさ』
『うん?なに?』
『未契約だろうとなんだろうと、お前の協力があれば結晶石の中にお前を入れておくこと自体は可能なのか?その、マナさえ供給できれば』
『そうなるね。ただ、そのマナの供給が難事なんだよ。文字通り吸い上げるからね、ボクの場合。行動不能になるまで、ぐいぐいと……』
『――――』
『……スバル?』
『なぁ、パック』
『うん?』
『お前が言った、結晶石の代わりって、どこにあるんだ?』
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「……精霊との親和性……」
その言葉にラインハルトは頷く。
スバルは精霊との親和性が高いと、それに妙な確信があった。
魔法云々ではなく、精霊という存在についての確信で。
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『ば、かな……これァ、いったい、何が……』
『俺は言ったぞ、ガーフィール。――勝ち目のない喧嘩は、俺はやらねぇってな』
『こりゃァ……なん、だ?いや、こいつは……』
『その光に見覚えはあるだろ。俺も、お前も、それに関しちゃ知ってるはずだ』
『どこッから、こいつを……てめェ……!』
『もちろん。――リューズ・メイエルのクリスタル。その機能維持のためだかに、溜め込まれてた結晶石の一つだよ』
『けッど、それぐらいでこんな……俺様に突き刺したぐらいで、こんな風に力ァ、抜けてッくわけがねェ……何の、からくりを仕込んで……』
『さてな。……その結晶石の中に、とんでもなく腹ペコな怪物でも入ってるんじゃないか?』
『────』
『俺を見ろ、ガーフィール』
『あァ……?』
『俺を止めたきゃ、お前の手で止めろ。わけわかんなくなっちまうような、そんな体の中の血になんか任せるんじゃねぇ。お前の方こそ、どれだけ人を馬鹿にしてんだ』
『俺たちを止めようとするお前を、俺は止める。――エミリアは墓所に挑む。『聖域』は解放される。足踏みしてる暇は、俺たちにはない』
『勝手ばっかり、抜かしッやがるんじゃァねェ!誰が頼んだ!誰が許した!?ここはこのまま、こうして、変わらないままでいいッ!』
『変わらないまま、停滞したまま、ずっとこのままなんてあるわけねぇだろ。そんなこと……何百年もこのままになる前に、誰かが気付いてるべきだったんだ』
『変わらないことを!望む!望み続ける奴だっているだろうがァ!』
『そうやって、何もかもが変わらないように守り続けるお前が、ずっと永遠にこの場所の守り手として君臨できるんならそれもいいんだろうよ。……けどな、お前一人がどれだけ気張っても届かないことがある』
『俺たち総がかりでお前が追い込まれてるみたいに、一人じゃどうにもならないときが必ずくるぜ。今、このときにも』
『ぶっ倒されろ、ガーフィール。数の力を、思い知れ』
『もっと他に、言い方がァ、あんだろうがァ!』
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「数の、力……」
クルシュが呆気にとられたような顔をする。
「それは……その、すごく」
「……14歳相手にその言葉って……すごくかっこ悪い……」
フェリスがため息混じりに口にした。
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『外に出ろ、ガーフィール。お前が怖がってるような壁なんざ、どこにもない』
『壁はある!俺様がそうだ!俺様が、中と外とを切り分ける絶対の壁だ!俺様も、婆ちゃんや他の連中も!立ち止まった!それでもう、終わりだ!』
『ならその壁は砕いてやる……今ここで、俺たちが!』
『あの兄ちゃんも!ラムもおねんねだ!てめェもすぐに楽にしてやる!てめェの言う、俺たちなんざもうどこにもいねェ!俺様もてめェらも、終わりだ!』
『諦めるのが賢いとでも思ってやがるのか。諦めねぇ方が格好いいに決まってんだろうが! いっぺん諦めて立ち止まったら、もう歩くのはそれでしまいか!ちょっと休んだら歩き出せ!そのための風なら、とっくの昔にお前にも吹いただろうが!』
『フレデリカが外の世界に出ていって、お前を置いていったって言ったな。でもな、違う。間違ってんだよ、ガーフィール。お前は、結界に縛られてなんかなかった。追いかけようと思えば、いつだって走り出せたんだ。そうしなかったのは、お前だろうが!』
『……俺様はッ』
『先に手を離したのはお前の方だ、ガーフィール!それをいつまでも姉貴のせいにしてグチグチグチグチ言いやがって!情けないとは思わねぇのか!』
『いつだって!どんなときだって!やりたい! 変わりたいと!そう思ったときがスタートラインだろうが!!』
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「……すたーと、らいん」
その言葉の意味は分からなかった。
ただ、ユリウスにはその言葉が酷く輝かしく思えて。
「やりたいと、変わりたいと……そう思った時に」
そう思う瞬間は幾度もあった。
友人が剣の高みにいると気づいた時。
大切なものを落としてしまった時。
それを、そうあるべきだと背中を押してくれる人が、隣にはいなかったが。
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『また顔を上げて、前にある道を歩き出すのを、誰がどうして諦めろなんて言えるんだ!』
『そうだろ、ガーフィール……!』
『そうだろ、エミリア……!』
『なぁ――そうだろ、レム!!』
『俺様はァ――ッ!』
叫び、ガーフィールの体が飛び出す。爪を振り上げ、牙を剥き出しにし、ガーフィールはもはや言葉ではなく、行動の全てでスバルの主張を否定しにかかる。
言葉を継げず、想いを形にできず、彼にはそれしか方法が浮かばない。それ以外の方法を知らないのだ。故にガーフィールは、スバルへとその爪を伸ばす。
その眼前に、流血するスバルから溢れ出す熱が集まるのに、彼は気付いていない。自分が飛び込もうとするスバルの目の前に、歪な空間の揺らぎが、あるはずのない世界の罅割れが生じていることに、彼は気付いていない。――そこから伸びる、圧倒的な力の存在に気付いていない。
当然だ。彼にはそれは見えていない。否、スバル以外には誰にも見えない。なぜならそれは、スバルだけが干渉することのできる、『見えざる手』なのだから。
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「これ、は」
スバルの記憶であるから、スバルが見たものと同じものを疑似体験しているのだ。
つまり、見えざる手が可視化されて。
「君は……」
ラインハルトの首筋に汗が伝う。
魔女因子を取り込んでいる。
スバルは──
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『おいおい……嘘だろ』
『――ァ、舐めん、なァ』
『お前、ホントにどんだけタフなんだよ……』
『俺様がァ、折れなきゃ……終わ、終わら、終わらねェ……』
『てめェは、こォれで……ッ』
『悪く……思うなよ、ガーフィール。壁は俺たちが砕いてやるって、そう言ったぜ』
『もう、誰もォ……』
『しまいィ……だッ!?』
叫びを上塗りする、細く高い地竜の嘶き。
地響きを立てて頭から突っ込む漆黒の地竜が、無防備に立つガーフィールを思い切りに横合いから跳ね飛ばした。
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「えっ……!?」
ベアトリスとクルシュが同時に声を上げる。
そして、フェリスとユリウスは唖然としている。
「……まァ、大将らしい……か」
ガーフィールが捻り出したその答えに、オットーは苦笑していた。
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『どうだ、ガーフィール……』
『これが――数の、力だ』
『もっと他に……言い方がァ、あんだろうがァ……ッ』
『じゃぁ、みんなの想いを束ねた、絆の勝利だ』
『は、ァ……『クウェインの石は一人じゃ上がらない』って、ことかよォ……ォ』
『やっとこ、それらしい格言が聞けたな……』
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「……しまらないところも、スバルきゅんらしいけどね」
フェリスが珍しくふわりと緩んだ笑みを見せる。
それはクルシュにだけ向ける類のものと心得ていたが。
「……そうですね、スバル様らしい、です」
とうのクルシュは少しだけ身を強ばらせていたが。