北海道江別市の公園で2024年10月、大学生の男性(当時20)・Xさんが集団暴行を受け、死亡した事件。強盗致死などの罪で起訴された男女は、以下の6名だ。
Xさんの交際相手だった八木原亜麻被告(21)、その友人の川村葉音被告(21)、川村被告の彼氏である少年A(当時17)、Aの高校友人である瀧澤海裕被告(当時18)、瀧澤被告の中学同級生であり暴行を主導した川口侑斗被告(当時18)、川口の中学の後輩である少年B(当時16)。
事件当時、川村被告、八木原被告以外の4人は20歳未満だった。札幌地検が改正少年法に基づき、起訴時に瀧澤被告、川口被告の実名を公表している。
5月25日からは、川村被告、瀧澤被告、少年Bの計3人の裁判員裁判が札幌地裁(高杉昌希裁判長)で開かれている。交際関係のもつれ、多人数での暴行、遺体は全裸で放置されていたことなど、多方面での関心と憶測を呼んだこの事件。裁判で明らかになったのは、若い被告らが引き起こした残忍な犯行態様と浅はかな動機だった。裁判を傍聴したライターの普通氏がレポートする。【全3回の第1回】
「血ィついたべや、弁償しろ」
5月25日は、旭川地裁でも殺人の罪に問われている内田梨瑚被告(23)の初公判が開かれるという"異常事態"でもあった北海道内の裁判所。そんな中、本公判が行われた札幌地裁には傍聴席を求め、300名以上が列をなしたとされている。
昨今の裁判所の運用により、身柄拘束されている被告人らはパーテーションの裏で手錠が開錠され、手錠姿を見せない措置がなされている。また少年Bについては、氏名の秘匿のみでなく公判中も傍聴席からパーテーションで、その姿も遮られる中での審理となった。
この日、川村被告は黒のスーツを着用し、黒髪を後頭部でまとめ、その髪の先にはやや茶色が残っていた。公判を通じて表情はさほど変わらず、受け答えには、はっきりと端的に答える様子が見られた。
瀧澤被告も黒のスーツを着用し入廷。身長が高く、黒髪の短髪であった。時折、口元が緩むように見えた。ただ公判内の情報を含めると、それは緊張感のなさというよりも、緊張や混乱すると少し緩んでしまう彼自身の特徴のように感じられた。表情や話し口調は穏やかであった。
起訴状によると、被告人ら6名は江別市内の公園で、Xさんの腹、顔面などを手拳、蹴りなどで多数回の暴行を加え、その反抗を抑圧した上で、「血ィついただろ、弁償しろやコラ」、「全部出せ」などの文言を用い、現金約2000円、クレジットカード、キャッシュカードが入った財布などを強取した。
暴行は中断されることもあったが、2時間以上にも及んだ。その結果、Xさんを外傷性ショックにより死亡させた。
そして、そのXさんのクレジットカードを使ってコンビニエンスストアでタバコ32箱など約1万9000円相当分を詐取。別のコンビニで、キャッシュカードを用いて12万7000円を引き出したとされている。3名の被告人はいずれも「間違いありません」とその内容を認めた。
検察官の冒頭陳述などにより、事件の経緯が明らかにされる。本事件は、八木原被告(初公判日程は未定)とXさんの交際トラブルが端緒だ。
八木原被告はXさんと交際していたが、Xさんから「大学卒業したら東京で就職する。遠距離恋愛は難しいので1年で別れたい」と告げられ、川村被告に相談をしていた。川村被告は交際解消を提案するも、気持ちが残る八木原被告と、素っ気ない言動を示し始めたXさんの関係はこじれていく。
事件の日の夜、八木原被告は預けていた荷物をXさんから返してもらうため会っていた。
同じころ、川村被告は共犯となる川口被告、瀧澤被告、A、Bと遊んでいた。2人がきちんと会えるか不安に思っていた川村被告は八木原被告に電話をし、3人で通話することになる。そのときの様子などから身の危険を感じたか、Xさんは密かに録音を行う。それが後の悲惨な事件の大きな証拠となる。
無免許の川口被告が現場まで運転
川村被告の苛立った通話の様子を見ていた川口被告は、川村被告と電話を変わる。
川口被告「お前、何したのか説明してくんねぇ? 早くしろよ」
Xさん「1年後に彼女と別れるという話をして」
川口被告「1年後別れるつもりって何? 1年経てばもういいってこと? お前のこと好きって言ってる子に酷くない?」
そしてなぜか川口被告ら5名も合流し、話し合うことになる。なお瀧澤被告、B、そして年上のXさんに傲慢な口調で話す川口被告も、Xさん、八木原被告と初対面であった。
また、これは当裁判と直接関係がないが、川村被告の車で遠方に出かけていた5人は、無免許である川口の被告が信号無視、時速140km(時速50km制限)の猛スピードで運転し現場に駆けつけていたことが明かされた。
このころ八木原被告はXさんに「お前どうすんだ。別れたらハオ(川村被告)に何されるかわかんないぞ」といった発言が録音されているなど、徐々に不穏さを帯びてくる。
第2回記事では、主犯格となる川口被告の供述などを中心に、その後の事件の流れを解説していく。徐々に事態が悪化していく様子と、関係者それぞれの若年さだけでは言い表せられない行動に言葉を失わざるを得なかった。
(第2回記事につづく)
◆取材・文/普通(裁判ライター)
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