最悪に近い最善
久しぶりに文字数一万超えた……!!
ここら辺は読んでてずっと🤨って顔してました。
学パロって夢が詰まってますよね
曇らせも幸せも書ける
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『……その人たちは、どうしてエミリアにそんな言葉をぶつけた?今の話を聞いた限りで考えたら、その森を氷の下敷きにしたのは……エミリアってことなら筋が通る。けど、そんなとんでもない現象を引き起こす力が、幼い君にあったのか?』
『――わからない。あの頃の私は今よりもずっと世間知らずで、自分に何ができるのかもできないのかも知らないまま、みんなの好意に甘えているばっかりだったもの。でも……パックにも頼らずに一人で森を凍らせるような力は、今の私にだってないわ』
『パックがいれば、できる?』
『────』
『そんな不安そうな顔しなくても思い違いしたりしないさ。エミリアがパックと出会ったのは、大森林が凍らされてずっと後……それこそ、百年も後のことだろ?氷とパックとエミリアと、順番があべこべだ』
『う、うん……そう、なんだけど……』
『墓所の『試練』で、エミリアが見ている景色のことはわかった。……なら逆に、エミリアはどうしたらそれを乗り越えることができると思う?』
『それは……ん、と』
『それに何らかの答えを見つけないまま挑んでも、きっと同じ結果になるぜ』
『――スバルは、どう思う?』
『…………』
『今の話……『試練』と、私の過去と……それを聞いて、どう思う?どうしたらいいんじゃないかって、そんな風に何か思いつく?私は、どうしたらいいんだろう……』
『さっきエミリアは、氷を溶かしてみんなに感謝を伝えたいって言ったよな?』
『うん』
『どうして、そんな風に思う?』
『君の中に最後に残る記憶は、その人たちに否定された記憶だろ?ひどい言葉をぶつけられて、恨み言をぶつけられて……なのに、どうして助けたいって思う?』
『――スバルは、今ここで私にひどい言葉をかけられたら、もう私を助けようとは思わない?』
『確かにみんなと一緒にいて、最後に感じた思いは辛いものだったけど……でも、最後のそのことでそれまでみんなと過ごした時間が消えてなくなったわけじゃない。みんなとの間に、いい思い出もたくさんあったわ』
『それを忘れて、みんなには傷付けられた思い出しかないって、そうやって全部を否定するつもりになんてなれない。みんなを助け出して、また一緒に笑い合いたいって……欲張りだけど、そう思うの』
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「……スバルにこれを言うのって、すごーく傲慢なことかも。スバルは……レムや……色んな人と嫌な関係になっても、また助けようとしちゃうんだから」
「……そう、ですね」
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『何回も、パックに協力してもらったけど……氷は溶かせなかったの』
『溶かせなかったってのは、精神的な問題でか?それとも、物理的な問題……』
『あの氷は、特別な氷で……外から頑張っても溶けるようなものじゃなかったの。氷漬けにした術者の方をどうにかするか、もっとすごい手段がないとダメだって……だから、私はロズワールの提案に乗って……』
『提案……?』
『ロズワールは……私に約束をしたの』
『────』
『徽章を持ってきて、その徽章を私に握らせて……宝石が赤く光るのを確認してから、王選の話をして、それから……こう言ったわ』
『――あなたが玉座を得ることができたのなら、この森の氷を溶かすことも叶うでしょう』
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「つまり……エミリア様は森で眠るエルフの皆様を救うために王選を……」
クルシュが必死に表情から感情を取り除こうとするが、そこに浮かぶ一種の同情のような表情は消えない。
「……そうだったんだ……」
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『……軽蔑、するでしょ?他の人たちが……みんな、立派な目標や覚悟を決めて王選に挑んでるのに、私の持ってる理由はすごく、すごーく個人的な問題で……』
『村のみんなを助けたい、って気持ちも十分大事だと思うけどな。助かる人数の多い少ないで、やることの立派さは薄れやしねぇよ。それに……王選の広間で言ってたことだって、嘘じゃないはずだろ?』
『王選の広間で、私が言ったこと……』
『平等に見てほしい、だよ。俺はあの言葉にだって嘘はなかったって、そう思ってるぜ』
『だから、そんな不安そうな顔しなくても大丈夫だよ。俺はエミリアの味方だし、寄りかかってくれていいって気持ちは昨日の夜から変わってない。君が俺の肩を借りるのを、大丈夫だって言って固辞してもな』
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「助かる人数の数でやることの立派さは薄れない……か。そうだね、確かにその通りだ。」
ユリウスが感嘆の意を込めて顎を引く。
「国の在り方を憂うのも、平等な世界を望むのも、誰かを取り零さないように奔走するのも……全て、立派なその者の在り方だ。」
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『──手』
『うん?』
『甘やかしてくれるなら、手……握っててくれる?私が寝るまでの間だけでいいから、お願いしていい?』
『ただ、状況的に考えて……そうとしか思えねぇ』
『――お前、本当は眠ってなんかいないだろ』
『よく、気付いたね。――ボクは嬉しいよ、スバル』
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「……パック」
エミリアが、その舌に驚愕の意を載せる。
「……そっか、私と契約を切る前の夜に……」
気丈で高潔な彼女は決して取り乱さぬようにと拳を握るが、瞳に宿る感情まで制御はできなかった。
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『こうして言葉を交わすのは、ずいぶんと久しぶりな気がするね』
『お前が姿くらましてから……ああ、もう二週間近く経ってるからな。飼い主が悲しそうな顔で探し回ってて、見ちゃいらんなかったぜ』
『どうやら言葉を交わせなかった二週間の間に……かなりボクへの怒りを募らせてしまったみたいだね』
『原因は……わかってるよな?わざわざ、それを俺に言わせるなよ』
『そうだね。外に出なくなる前……あの青い髪の女の子の前で君に言ったことは、思い返すとあんまりにも無神経だったね。ボクはすごく反省したよ』
『……!そんな話、してるわけじゃねぇ!』
『わかってるさ。ただ、謝っておきたかったんだよ。本題に入る前にわだかまりを解いておかないと、色々とお互いに踏み込めないかもしれないじゃないか。……ただでさえ、ボクはこれから君にたくさんのことをお願いしなきゃいけない立場なんだからね』
『ああ、そうかい。お前の自己満足が満たされたってんなら話の続きをしようぜ。まさにお前がしたがってる、本題ってやつの話だ』
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「……にーちゃ……」
ベアトリスは悲しそうに俯く。
スバルがレムを大切に思っていることを知っている。
だからこそ、パックの発言があまりにも酷いものだと理解できてしまって。
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『とにかく、話するにもこの状況じゃ不便が多すぎる。とりあえず、表に出てこい。エミリアがいつ起きるかもわからねぇんだ。場所を変えて……』
『ごめんだけど、それはできないんだ。――それが、本題の一つなんだよ』
『嫌だ、とかの拒否の言葉じゃねぇな。できない、ってのはどういう意味だ』
『そのままの意味だよ。ボクは現状、結晶石の外……つまり、外界に実体化できない状態にあるんだ。そうでもなければ、リアをこんな悲しませてまで一人でおかせておくなんてこと、するわけないでしょ?』
『何かの事情があって、理由があって……お前は外に、出てこれないんだな』
『そうだよ。こうして、思念で言葉を投げかけることもできずにいたんだ。だからスバルが勘付いて、結晶石に呼びかけてくれたのは僥倖だったよ。他の誰であっても、このチャンスは掴めなかったと思うからね』
『他の誰でも……ってのは』
『単純な話、リアの意識がない状態で、ここまでリアに近付きたがる相手なんてスバルぐらいしかいないからね。それに運よく結晶石に触ることができても、思念が通じるかどうかは相性の問題があるから。前に王都で試したことがあったけど、スバルとボクの間で思念話のパスが繋がれることは確認できてたから』
『……そういえば、そんなこともあったな』
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「……そうか、……ふむ」
ロズワールがその表情に珍しい色を織り交ぜる。
「君は本当に、精霊との相性がいい子だね」
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『それで、どうすればいいんだ?』
『んん……?』
『わざわざ誰かが声をかけてくれるタイミングを計ってて、神がかり的な状況で俺が声をかけたんだ。そんな千載一遇のチャンス、逃さないためにお前は準備してたはずだ。短い時間と限られたチャンスで、伝えるべき言葉とヒントを』
『やっぱり、君に期待していて正解だった。ボク以外の誰かに、リアのことを任せなきゃいけないって思うと、口惜しい気持ちを隠せないのがホントのところだけどね』
『……なんなら、お前がどう思ってるのか、俺からエミリアに伝えようか』
『やめた方がいいよ。ボクの言葉が他の誰かに届くことを知ったら、最悪の場合、リアの心が壊れてしまいかねないから』
『それは……いったい、どういう意味だ?』
『そのままの意味だよ。ボクの言葉を君を介してリアに伝えるってことは、ボクが結晶石の中で眠っていないことをリアが知ってしまうっていうことだ。ボクを外に出さず、誰とも接触させないようにしているリアにとって、ボクの口が塞がれていないってことを自覚することは、今も危うい心の均衡を崩しかねない行いだから』
『ちょ、ちょっと待て――!』
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「……どういうこと?エミリア様は大精霊様とは話せないって……」
「無意識に口を塞いでいた……ということでしょうか?」
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『お前今、自分が何言ったのかわかってるのか?お前は今、他でもないエミリアがお前を外に出さないようにしてるって、そう言ったんだぞ』
『…………』
『お前の口を封じてるって……どういう意味だ。エミリアはあんなにお前を呼んで、お前に助けてって、泣き喚きながら言ってて……それをどうして、そんな風に!俺でも、他の誰でもなく、エミリアは疲れ切ったらお前の名前を呼ぶのに!お前はどうして……!』
『……ああ、そうか。君は誰より最初に、リアに頼りにされないことが悔しいんだね、スバル』
『じゃあ、何か。お前はエミリアが、『試練』に挑んでへし折れるのも、一人ぼっちで苦しんで擦り切れていくのも、悲しい過去を思い出して涙目で微笑むのも、全部が全部、嘘っぱちの演技だって言うのかよ。――そんなこと、信じられるわけねぇだろ!』
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「……悔しい……」
オットーがその表情を曇らせる。
それは、パックがスバルに向ける感情の居心地の悪さに対してのものだったのかもしれないが。
「……僕も悔しいですよ、ナツキさん。あなたの苦しみを見ても、それをどうにかすることなんて出来ないんだから」
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『そんなわけがねぇだろ……周りを嘘で誤魔化し続けるどころか、ほんの些細な嘘にだって罪悪感で押し潰される。エミリアは、そういう子じゃねぇか……』
『スバル、落ち着いて。ボクは何も、君の最悪の想像ほどにリアのことを悪しざまに言ってるわけじゃない。だから落ち着いて』
『最悪の想像……?最悪の想像ってなんだ。てめぇ、勝手に俺の頭の中を覗くんじゃねぇよ!そのことと、このことは無関係だ。たとえこの先に何があっても、俺はエミリアをあんな風には絶対に……っ』
『――ナツキ・スバル!』
『……落ち着いたかい?』
『……お前、そんな声も出せたのかよ。いつでもぽやーっとして、事態の深刻さとか無視してモフモフしてるのが、お前だと思ってたぜ』
『滅多なことじゃ、声なんか荒げないけどね。リアのことと……聞き分けのない子どもを叱りつけるときぐらいは、大きな声も出すんだよ』
『聞き分けのないガキ、かよ』
『もっとも、リアのことでそれだけ感情的になってくれる君の存在は、実はボクにはそれなりにありがたかったりするんだけどね。リアにとっても、少なくない力を君は与えてくれているはずさ』
『――え』
『これまで、リアの内心にここまで踏み込んできた人はいなかったからね。王選の関係で森からリアを連れ出したロズワールだって、リアの心根の深い部分には不干渉だ。アレの望みはリアが王座について何をするか、とは別のところにあるんだろうから、当然といえば当然のことだけど』
『――お前は、ロズワールの目的を知ってるのか?』
『福音書をなぞる、でしょ?そのあたりは、ベティーと似ているかもしれないね。書かれている立場と、書かれていない立場。似て異なる、というべきかもしれないけど』
********************
「……なんか、すごく嫌な言い方するんだネ、大精霊様。」
「……ああ、少し言い方が……」
フェリスとユリウスが眉根を寄せる。
精霊だから心の機微に疎い──などという段階ではないような。
********************
『エミリアに関係ないことだから、率先してお前は動かなかった……か』
『ベティーのことは、どうにかできるならしてあげたいとは思ってるんだよ。ロズワールのことは……リアを巻き込む以上、どうにかしなきゃいけないことだしね』
『知ってたくせに、後回しに先送りにしてたツケだな』
『ぐうの音も出ないよ。そのツケに、君を付き合わせるのは悪いと思うけどさ』
『ロズワールの目的は、俺がへし折るから今はいい。ベアトリスのことも……お前に任せるつもりはない。俺がお前と共謀してやるのは、エミリアのことだけだ』
『それでいい。ボクも今のところ、リア以外に割ける力は大きくない。本命でないところに力を尽くして、一番大事なものを見落としたら本末転倒だから』
『聞かせろ。エミリアが、お前を外に出そうとしてないってのはどういうことだ。あの子が俺や周りを騙してるだなんて、俺には到底思えねぇ』
『安心していい、というべきか難しいけどね。ボクを外に出さないのはリアの意思だけど……リアはボクを外に出すまいとして、外に出さないようにしてるわけじゃない』
『……すまん、何を言ってるのかわからない』
『説明が難しいね。リアがボクに助けを求めているのも、結晶石に呼びかけているのも、ボクの声が聞こえていないのも、全部本当のことだよ。一人でいることを恐がって、支えをなくして震えてるのは事実だ。でも』
『――――』
『無意識の部分で、リアはボクの実体化と意思疎通を拒否してる。心の表と裏で、意見が一致してないって言うべきかな』
『お前の方から、エミリアに働きかけるのはできないのか?』
『難しいね。心の表の部分より、裏の部分の強制力が強いんだよ。よっぽど、ボクが表に出てこられるとリアの心が困ったことになるってことなんだろうね』
『エミリアの心が大変なことにって、何か心当たりはあるか?お前が出てくることで、エミリアが不都合になるようなことってのは……』
『おおよそ、わかってるんじゃないかい?』
『――ただ、推測だぜ』
『うん、いいとも。聞かせてごらんよ。言ったじゃないか。ボクは君に、期待してるんだよ、スバル』
********************
「……スバル……」
エミリアの瞳が軽く揺れる。
自分でさえも気付かなかったような心の乖離を、スバルに伝えられてしまうことが少しだけ恐ろしくて。
********************
『お前がいると、エミリアは……』
『うんうん』
『自分の見てる過去の、何か都合の悪い部分を認めなきゃいけなくなる。――だからエミリアは無意識に、お前に口出しされる状況を拒絶してるんだ』
『すごいね、スバル。期待以上の答えだ』
『褒められても、正直なとこまったく嬉しくねぇよ』
『素直な賞賛だよ。あまり情報量も多いわけじゃなかっただろうに、推測だけでここまで辿り着けたのは本当に驚きだ。リアの心のありようも、よくわかってくれてる』
『過去は、本当の世界を忠実になぞるわけじゃない。挑んだ奴の心象風景や、その他色々な条件を吸い上げた上で、『試練』に適した形に組み上げるもんだ』
『墓所で目にする過去は、本物を装った偽物だ。『試練』を仕掛けた性悪が、挑戦者が自分にとって、一番気持ちのいい解答を出せる問題になるよう仕組んでやがる』
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「……私の心の、有り様……」
エミリアが胸に手を当てる。
「……スバルは、全部知ってたの……?知ってて、私に……」
エミリアの脳内で彼の声が反響する。
『でも、そんな弱いところとか、醜いって言えるところまで含めて、俺はエミリアって存在が丸ごと好きだ。だから……今も俺は君に、失望したりなんかしてない』
「……あんな風に、厳しくて……暖かい言葉を」
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『エミリアが見てる過去は、正しい部分と間違った部分がある。その違い……決定的に過去を違えちまう何かを、お前が知ってるんだ。だからエミリアは無意識で、お前のことを呼び出すことを拒否してる』
『……どうしてだろうね。ボクがいれば、リアは正しい本物の過去を見れる。それをわかっていてどうして、リアの本心はボクを拒絶するんだろうね』
『そんなのは……』
『リアが忘れたがっている本当の時間は、リアが口にした偽物の時間より、もっと救いのないものだってことだよ』
『お前は、エミリアが本当は何を見たのか、知ってるのか?』
『……残念だけど、それはボクも知らない。ボクがリアと出会ったのは、リアが森で氷漬けになったその後なんだ。だからボクには、リアがボクの存在の何を恐がっているのかがわからない。ボクの何がリアの過去を決定付けるのか、わからないんだ』
『どうすればいい』
『わからない』
『俺はエミリアを助けたい。あの子の力になりたいんだ』
『ボクも同じだ。ボクは、あの子のためだけに存在している。あの子の力になれないっていうんなら、存在している意味すらない』
『あの子のやりたいことを支えてあげたいし、その隣に立ってたいんだ』
『――――』
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「……スバル殿、あなたが真にやるべきことはただ一つ。」
スクリーンに映るスバルの顔を見つめて、低音が言い放つ。
「彼女の心と、擦り合わせをすることです」
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『スバル。――一つだけ、可能性がある』
『可能性……?』
『ボクだけなら絶対に考えなかった方法だし、今でもはっきり言えば拒否感が強い。こんな提案、思いついても絶対に言わなかったと思う』
『何を、させる気だ』
『するのはボクだよ。ただし、その後の尻拭いは君にさせるけどね』
『……とんでもねぇこと言われそうで、恐ぇんだけど』
『ボクだってこんなこと、他人に頼み込むなんて考えもしなかったよ。ただまぁ……君だけは、リアのためになら命だって賭けられそうに思えたからね』
『明日の朝、ボクはリアに契約を破らせる。――ボクとリアの関係が途絶えたとしたら、君は泣きじゃくるリアを、どう慰めてくれるんだろうね』
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「……命だって賭けられる……」
エミリアはやや無気力に俯く。
「……そっか、それで……私は」
パックとスバルの共謀によって、エミリアは腕を引かれていたのだ。
「……ほんとに、悪巧みばっかりなんだから」
その表情は、明るいものだった。
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『ボクとあの子の契約が途切れた場合、後のことは君に任せても大丈夫かな?』
『……それをする、理由によるな』
『エミリアとお前の間の契約……ようするに、精霊と契約者の間の取り決めだろ?それを破らせるってことは当然、相応のペナルティがあるってことだよな?』
『もちろん、そうだね』
『俺の想像が正しいなら、契約者は契約を守ることで精霊から力を借りてる存在のことだ。その契約者が契約を守れないってんなら、当たり前だけど精霊は契約者に力を貸すための名目がなくなる。……つまり、契約を破らせるってことは』
『ボクとリアとの間にある、繋がりというものを失わせる結果を招くだろうね』
『お前の力を借りれなくなるってことは……エミリアは戦う力をなくす。ただの一人の女の子に、あの子を追い落とすってことになるぞ』
『それは、君にとってはあんまり関係ないことなんじゃないの?たとえリアに力があろうがなかろうが、戦わせたくないって思うのが君なんだから。リア自身がどう思ってるのか、そのあたりの方針のすれ違いに凹んだりもしてたみたいだけど』
『ぐ……それは、間違いねぇよ。けど、俺の感傷とそれとはまた話が別だ。戦う力云々はこの際、お前の言う通り問題の根本じゃねぇ。この場合、重要なのは……お前が側にいなくなったら、エミリアがどんな風になるかってことだ』
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「……これは、荒療治すぎるかしら。スバルがエミリアの支えになることを加味しても……失敗するリスクが大きすぎるのよ」
「ああ、そうだねーぇ。……ただ、それをするしかないという覚悟が両者にあったと……そういうことだろうね」
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『エミリアは、その場で心の均衡を失ってもおかしくない。そんなのはお前にとっても、見たくない光景の三本指に入るだろうが。どういうつもりだよ』
『どうもこうもないよ。ボクはリアにとって、一番いい形になるだろうって後押ししかしないことにしてるんだ。あの子が望んでないことを、ボクはやらないしできないからね』
『エミリアが、お前と契約を断つことを望んでるってのか?』
『違うよ、スバル。ボクとの契約が失われることは、リアの望みが叶うための副産物に過ぎない。リアの今の望みは間違いなく、墓所の『試練』を乗り越えることだ。それだけは疑う必要はないし、信じてあげていい』
『ボクがいなくなったことを知れば、リアは確かに取り乱すと思う。それはもう、きっと子どもみたいに泣いて、喚いて、無茶苦茶になるぐらいに』
『――――』
『でもね、それでいいと思うんだ。ボクがいないと心の表側で思っていて、ボクがいることを心の裏側で知っている、そんな今の状態の方こそ不自然なんだよ。ボクがいないってことを、心の表も裏も理解して……過去を封じ込めるわかりやすい枷がなくなって初めて、リアは自分の心と向かい合えるんだ』
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「……契約も厄介なものね、相手を誰よりも助けたいと思っていながら、遠ざかることがそれに繋がるのだから」
「……ああ、それは間違いないねーぇ。契約とは、魂の約束だ。そういいものばかりじゃないさ」
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『その、自分と向き合うために……お前との繋がりをなくして、前に進ませるってのか?』
『うん、そうだね。きっと苦しいこともたくさんあると思うけど、リアならそれを我慢できる子だって信じてるんだ』
『側に、いられなくなるんだぞ。心配じゃねぇのか。あの、底なしのお人好しで、なのに自分のことはいつだって後回しにしちまって損してばっかりのお前の娘を、側でずっと守ってやりたいって、お前はそうは思わないのかよ』
『最近の君は、ボクがリアの側にいるのを快く思ってなかったと思ったけどね』
『その考えは間違ってねぇよ。……ここしばらく色々あった関係で、俺の中のお前の株価は最悪だし、そう簡単に上向きになるもんでもない。エミリアのために犠牲になるみたいな選択一つで、ここまで募った不信感が拭い去れるもんでもねぇ』
『ずいぶんな言いようで、ちょっとだけ悲しくなるよ』
『けど』
『お前がいなくなって、悲しむエミリアの姿は目に浮かぶ。お前がエミリアにとって、何より大きい存在なのは俺が一番、痛いほどわかってる。そんなお前だから俺は……』
『――――』
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「……スバル様は随分と大精霊様を嫌っておられますわね」
「当ッたり前だァ!肝心な時には何もしねェからッなァ!」
「ガーフも嫌いなんですの?」
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『俺は、俺はお前が……』
『ボクがこんな風に決断できるのは、君の存在が大きいんだよ、スバル』
『君の言う通り、ボクはリアが何より大事だ。あの子のことをずっと見守っていたいし、傍で力を貸してあげたい。こうしてボクが傍にいない方があの子のためになると、そう判断した今でもその気持ちは変わらない』
『それなら、どうして……』
『君が、いるからかな』
『――――』
『この場所で……ううん、この世界で、君だけはボクと同じようにリアのために命を懸けられる。これまで過ごした時間の中で、君はそのことを証明してきた。リアも……ボクを除けば、一番頼りにするのは君だろう。それは間違いない。信じていいよ』
『だ、としても……俺は、お前みたいにすげぇ力があるわけでも、あの子の前に立ちふさがる障害を力ずくで吹っ飛ばせるほど圧倒的なわけでもない。俺にできることはせいぜい一緒に頭抱えて悩んで、辛いの吐き出させて……そんな程度だ。そんな程度の俺に、お前は後のこと任せられるのかよ』
『勘違いしてるみたいだけど、ボクはボクの代わりを君に求めるわけじゃないよ。ボクにしかできないことはボクにしかできない。その逆も同じことで、その君にしかできない部分でリアの助けになってくれると、そこに期待してるんだ』
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「スバルにしか出来ないこと……うん、そうだね。僕もそれはそうだと思うよ」
「ああ、私もだ。スバルだけにしかできないことは多くある」
「フェリちゃん的にはラインハルトの方がそれは多い気がするけどねー」
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『仮にボクがいなくなっても、リアは君よりずっと強い。それこそ、君が言った『強さ』という意味では間違いなくね。でも、君も知っての通り、あの子は弱い。ボクが言う『弱さ』の部分では間違いなくね。だから、その弱さを君に支えてほしいんだ』
『……契約が切れて、繋がりが絶たれたらお前はどうなるんだ』
『ボクをこうして現界させているのはリアとのパスのおかげだからね。その繋がりが絶たれるなら、常にボクは実体化していないと存在を保てない。……でも、ボクが実体化し続けるってことは、無尽蔵に周囲のマナを食らい尽くすってことでもあるんだ。ボクの本当の姿を見たら、スバルはきっとビックリするんじゃないかな』
『じゃぁ、お前……消えちまうってことなのか?』
『消えるのとは違うよ。ボクはリアと契約する前の、小さな存在に戻るだけさ。ボクにとって縁の深い……たぶん、エリオール大森林になるかな。そこで依り代となる何かの中で眠って、起こされるときを待つことになると思う』
『起こされる……ってのは』
『もちろん、リアにだよ。――ここで、ボクとあの子の間の契約は終わる。でも、またあの子が新しい契約を必要とするときがきて、その相手に精霊を選ぶんだとしたら……きっとまた、ボクを選んでくれる。そう、信じているんだ』
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「……うん、絶対にパックと契約する。その為に……私、色々頑張ってるんだから。パックに話したいことも、言いたい恨み言も沢山あるんだからね」
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『それで取り乱すエミリアを慰めるのは、俺に押し付けるってんだろ』
『それだけは心苦しいと、本当に思うよ。でも……大切な娘を預けるんだから、そのぐらいのことは一緒に乗り越えてあげてほしいね』
『……それって、暗に俺のことをエミリアたんの伴侶として認めて』
『今ここで君を消し飛ばすと、色んな問題を考え直さなきゃいけなくなるなぁ』
『意趣返しがいちいちおっかねぇんだよ、このクソ猫!!』
『お前の目論見はわかった。実際に思い通りに運ぶかどうかは微妙に不安なとこがあるけど……そこは素知らぬ顔で俺も誘導を手伝えってんだろ』
『好きな女の子の意識を操るのって、どんな気分なんだろうね』
『罪悪感に押し潰されるからやめろ。それにエミリアが本心では色んなことを理解してるってんなら……終わった後で、そう仕向けられたってことにも気付くだろうぜ』
『そうなったら、ボクと君は共犯で嫌われるかもね。怖気づいたかい?』
『そりゃな。お父さんの洗濯物と一緒に洗わないでよ!って嫌われる思春期の女の子のそれとは、俺とお前じゃ嫌われるベクトルが違うんだからな』
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「私、そんなことで嫌いになったりしないわよ。私、こう見えてもすごーく寛大なんだからね。スバルとパックが共犯で私の気持ちを誘導してたとしても……そんなことで怒ったりしないんだから!」
エミリアがそう言うと同時に、フェリスが小さく零す。
「……いつか、スバルきゅんの見てきた全てが皆に知れる日が来たら……スバルきゅんはどうなっちゃうんだろうね。この力を、追い詰められた悪意に狙われたら」
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『今さら、だな。――許されないようなことなんて何度も重ねて、あの子を何回も泣かせてきた俺が、今さらそれを背負う覚悟がないなんて言えるかよ』
『――――』
『条件、呑んだぜ、パック。お前の尻拭いは俺がしてやる。明日の朝、エミリアが泣き崩れるんだとしたら……それは俺の腕の中でだ』
『――うん。それじゃ、お願いするとしようか。色々とこれ以降の大変も、いくつも押し付けることになりそうだけど』
『お前の方も、俺の提案を考慮する余地はあるな?』
『……提案』
『そう、提案だ。心配するなよ。お前と同じで俺だって、エミリアにとっていい形になる未来がくるようにって、そう思って行動するのは一緒だ』
『いくつか聞きたいことと、それを聞いた上で試したいことがあるんだ。――エミリアが起きるかもしれないから、長く時間をかけないようにしよう』
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「……やっぱり、悪巧みが上手なのね。男というものは」
「ナツキさんの悪巧みとメイザース辺境伯のを一緒にするのはどうかと思いますけどね……」
「何言ってるの、ロズワール様の事じゃないわ。バルスと大精霊様……ついでに元商人の内政官のことよ」
「商人やめてないんですけど……」
こうして見るとアニメ版と小説で大分パックに対する印象が変わりますね...。