【最新動向】線状降水帯の予測、2026年から新情報「予測マップ」導入へ
気象庁は令和7年(2025年)12月、線状降水帯の予測精度向上に向けた取り組みの進捗と今後の計画を明らかにしました。
令和8年(2026年)の出水期(6月頃)から、新たな予測情報として「線状降水帯予測マップ」や「直前予測」の提供が開始されるほか、スーパーコンピュータ「富岳」を活用した予測モデルの高解像度化などが予定されています。
1. 2026年(令和8年)から始まる「新しい予測情報」
これまでの「半日前予測」に加え、発生が迫った段階でのより具体的な情報提供が始まります 。
「線状降水帯予測マップ」の提供開始
内容: 今後3時間以内に線状降水帯による大雨のおそれがある領域を、地図上で視覚的に示す情報(メッシュ情報)です。
目的: これまでの文章情報だけでなく、危険度が高まっている場所を地図で確認できるようにし、自治体の避難情報や周辺状況とあわせて防災対応に役立ててもらう狙いがあります。
「直前予測」の発表
内容: 3時間以内に線状降水帯が発生し、非常に激しい雨が降り続く可能性が高まった場合に発表される文章情報(気象防災速報)です。
基準: 予測モデルで「3時間先までの間に、降水量や形状などの発生条件を満たす」と予測された場合に発表されます。
また、既存の「線状降水帯発生情報(顕著な大雨に関する気象情報)」の発表基準についても、令和8年から一部変更され、危険度の判定に「浸水キキクル(浸水害危険度分布)」の基準も新たに追加される予定です 。
2. 予測技術の高度化:モデル精度の向上
予測の精度を上げるため、数値予報モデルの大幅な改良が令和8年3月に予定されています 。
局地モデルの高解像度化(2km→1km)
現在2kmメッシュで計算されている「局地モデル(LFM)」が、1kmメッシュへと高解像度化されます。これにより、複雑な地形の影響や細かい雨雲の構造をより詳細に再現できるようになり、特に過剰な降水予測(強雨過多)の改善が期待されています 。
局地アンサンブル予報システム(LEPS)の導入
単一の予測だけでなく、少しずつ条件を変えた複数のシミュレーションを行う「アンサンブル予報」が局地モデルでも導入されます。これにより、「雨が降る位置のずれ」や「発生確率」を捉えやすくなり、見逃しを減らす効果が期待されます 。
3. 研究機関との連携と「富岳」の活用
線状降水帯の発生メカニズム解明のため、大学や研究機関との「学官連携」が進んでいます 。
集中観測の実施: 令和7年度も、西日本や東シナ海、黒潮続流域などで集中観測が行われました。航空機からのドロップゾンデ観測、観測船、水中グライダー、など陸・海・空からの多角的なデータ収集が行われています 。
「富岳」でのリアルタイム実験: スーパーコンピュータ「富岳」を使い、高解像度モデルやアンサンブル予報のリアルタイム検証実験が行われています。この成果が、気象庁の現業システムの改良に直結しています 。
ハビタブル日本: 科研費学術変革領域研究「ハビタブル日本」と連携し、令和8年度も東シナ海での集中観測が計画されています 。
4. 2025年の予測精度の振り返り
令和7年(2025年)の実績検証では、以下の傾向が報告されています 。
捕捉率の向上: 半日前予測の捕捉率(発生を事前に捉えられた割合)は、前年に比べ大幅に改善しました(約38%→約71%)。これは、予測しやすい大規模な前線や台風に伴う事例が多かったことや、数値予報の精度向上が寄与しています。
課題: 一方で、北日本や北陸など予測が難しい事例もあり、引き続き「空振り」を減らしつつ「見逃し」を防ぐ技術開発が求められています。
今後のロードマップ
令和8年(2026年): 直前予測・予測マップの開始、モデル高解像度化。
令和11年(2029年)頃: 半日前予測を「市町村単位」で提供開始予定。
令和12年(2030年)頃: 次期静止気象衛星(ひまわり10号等)の運用開始。赤外サウンダ(大気の3次元観測機能)による更なる予測精度向上が目指されています 。
※本記事は気象庁「線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ」第11回会合(令和7年12月19日)の公開資料に基づいています。
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