魔女の契約
エキドナすごい喋るな……。
最近リゼロの妄想ばっかりしてます。
女装したスバルくんがレグルスに会ったら、とか女の人と話すスバルくんに嫉妬するエミリアの話だったりとか。
短編にしてないただの頭の中での妄想なんですけど、もう少ししたら書こうかな。
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『なんで、お前がここにいる?』
『なによ。あたしがここにこうしていたらいけないっていうの?』
『そうじゃ、ない。そうじゃないけど……だって、エキドナがそこにいるのに』
『ああ、君が何を問題としているのかわかった。――ボクがこうしてこの場にいるのに、他の魔女が顕現しているのが不思議でならないんだね』
『そ、そうだ。だって、これまでも他の魔女と顔を合わせるときは一対一で……エキドナの代わりに、この場に現れるのがお約束だったじゃねぇか。それを……』
『別に、一緒に出れないなんて言ってないでしょ。そういう、理由もない悪ふざけをするのがこの性悪な魔女のやり方なのよ』
『勘違いはしないでほしいんだけどね。ボク以外の魔女をこの場に呼び出すのは、ボクにとっては負担もリスクも大きいんだ。場合によっては他の魔女にこの場の主導権を奪われる可能性があるし、そうでなくても彼女らのような強力な存在を形作るのにはけっこうな労力を必要とするからね』
『だからって……いや、でも、お前は……』
『嘘は、一度もついていないはずだよ。それだけは、断言しよう』
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「確かに嘘はついてないけど...正直に話してないのも本当じゃない。隠し事があるのは仕方ないけど、せめて誠実であるべきだわ。こんな状態の契約なんてすごーくよくないと思うの」
「...エミリア様の言う通り、彼女との契約は宜しくないですね」
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『何を簡単に丸め込まれそうになってんのよ、あんた』
『お、あ!ちょっ、痛い痛い痛……くない?』
『あたしが直接、生物に触れたらそれはどんな行いだろうと治療行為に代わる。全力で殴っても傷口が塞がるし、絞め落とすつもりで寝技に持ち込んでも持病が治るし、関節技をこのまま続ければ肩コリが解消されるわ!』
『これはいったい、何のつもりで……』
『こうでもしておかないと、あんたほいほいとエキドナの口車に乗せられて契約しちゃいそうなんだもの。その軽率な判断と思考停止した態度、あたし、イラッとするわ!』
『口車とは、聞こえが悪いね。ボクとしては、しっかりとボクと契約した場合の利点についてを説明し、互いの合意を図ったつもりなんだが……』
『そういう、説明責任はちゃんと果たしたーみたいな態度が気に入らないって言ってるの。利点についての説明はちゃんとしてたわ。してたけど……でも、契約することで生じる不都合な点については、何も言ってないでしょうが!』
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「そう、そこなんです。強欲の魔女は、自分の都合のいい部分しか開示していない。商人の身としては分からなくもないですが...この契約は良くないと、それだけは言えますよ」
「それにはラムも同意ね。しかも、バルスは度を超えた鈍感でお人好し...契約になど向いてないわ」
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『いや、でも……デメリットって言ったって……そんな、たいそうなことには』
『ならないはずって、そう思うの?契約を、ずいぶんと甘く見てるのね。ましてや相手は魔女――大罪の名を冠した七人の魔女の中で、もっとも多くの契約を結び、もっとも多くの人間と触れ合い、もっとも強く歴史に干渉した、『強欲の魔女』なのに』
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「スバルは魔女を身近な存在だと思いすぎかしら。魔女というのは本来...そんな、甘い存在ではないのよ」
「そうよね。エキドナはすごーく頭が回るから、スバルは騙されちゃうかもしれない」
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『エキドナ。契約を交わした場合、対価が必要なはずだ』
『……うん、そうだね。契約にはそれが必要だ。君の求めに対し、ボクが知識を提供するように、ボクの求めに対して君は対価を差し出さなくてはならない』
『だよな。そうだ。――なら、お前は俺に何を求めるんだ?お前と契約した場合、俺はお前に、何を差し出す必要がある?』
『そんなに警戒することはないよ。ボクが君に求めることは、それほど難しいことじゃない。むしろ、形ある物や形のない大切な何かを対価に引き出すようなことはしない分、良心的とすら言ってもいいだろう』
『――何を、求める』
『簡単なことだよ。――君が感じたものを、君が思ったことを、君の心に残るものを、君が知る何かを、君が為す何かを、君から生まれる何かを、君という存在から派生する『未知』という果実を、ずっと味わわせてほしい』
『なんだ、そりゃ。俺から感情とか思い出とか記憶とか、そういうものを抜き取って寄越せって、そういう意味なのか?だとしたら……』
『言っただろう?そんな物騒な話じゃないと。ボクはただ、君が見る景色を、君が聞くメロディを、君が紡ぐ物語を、特等席で見ていたいだけなんだよ。それを感じていたいだけなんだよ。君から生まれる『未知』を、知れる立場にありたい。ただそれだけのことで、満足ができる』
『嘘じゃ、ないんだよな?』
『契約において、嘘をつくなんてもってのほかだ。ボクはボクであるためにも、決してこの言葉に背くようなことはしないと誓おう。命を賭けてもいい』
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「確かに、魅力的な条件ですわ。ですが...何かが、違う。」
「それにはフェリちゃんも同意。スバルきゅんの見落とした何かが、そこにあるはずなの。」
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『ミネルヴァ。エキドナは、ああ言ってくれてる。俺は、それならあいつを……』
『ぜ、全部……本当だけ、ど……全部が全部、言ったわけじゃ、ない、よ?』
『カーミラ……『色欲の魔女』!』
『そ、んなに……恐い目で、見ない、で。わた、私は……何にもし、てないって言ってるの、に……ひ、ひどい……』
『目つきの悪さは生まれつきだ。特別、キツイ面構えはしちゃいねぇよ』
『それより、お前はさっきなんて言った?今さら、別の魔女が顔を出すのに何も文句はねぇけど、何があって……』
『え、エキドナちゃんは……隠してる、こといっぱいある、よ……?嘘、は言ってないけど……いっぱい、隠して、る……』
『隠してる、こと……?』
『突然に出てきたと思えば、不名誉なことを並べてくれるものだね。そもそも、どうして君が彼に注意を喚起したりするんだい?君はミネルヴァと違って、彼に肩入れする理由そのものがないはずだ。彼を、嫌ってもいたはず』
『み、ミネルヴァちゃん、みたい、に……り、理由?ちゃんとしたのは、ん……ない、よ。でも、エキドナちゃん、は……わ、私を騙し、た……でしょ?』
『わ、たしはこの子……す、好きじゃない、けど、私を騙し、た……え、エキドナちゃんの、味方も、しな、しないよ?私を、だ、騙したり、嫌った、り……い、嫌なことをする人、を……『絶対に許さない』』
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「どうッいうことだァ!?話がややこッしすぎんだろォ!」
「つまりはこういう事ですわよ、ガーフィール。エキドナはスバル様に嘘をついていて、それをカーミラは追求している...と」
「?……なるほどなァ!」
「本当にわかってますの?」
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『必要な手段だったとはいえ、カーミラの意に沿わない行いをしたのは失敗だったというところか。君を敵に回すと、厄介なことこの上ないからね』
『み、んな、私の味方……だか、ら、私に嫌われると、ひどい……よ?あ、謝っても、許さない、から……』
『さっきから……さっきから、お前らは何の話をしてるんだ!』
『俺をそっちのけで話をするのもいい加減にしろ!俺が、俺が選ぶことだろうが!俺にわかるように話せ!エキドナは、何を隠してる!?お前たち二人は、何を知っていて俺を止めようとするんだ!』
『心が弱ってるにしても、思考停止して伸ばされた手にすぐ掴まろうなんて甘すぎ……そうさせるよう誘導してきたのが、あんたの用意周到なとこなんだろうけど!』
『人聞きが悪い。彼に誤解を与えてしまいかねないじゃないか。契約を結べば、ボクは彼と協力して必ず彼を、彼が求める最善の場所へと連れてゆく。ボクが求めるのはその過程で、彼が見るもの聞く音、知ることを知ってゆけることだ。何一つ、間違ったことを口にしてなどいない』
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「……わたし、エキドナの言葉の違和感わかっちゃったかも」
「言ってみるのよ、エミリア」
「エキドナはスバルを最善の未来に連れてくって言うけど...最速でとは言ってないわ。それに、エキドナが欲しいのはその過程...考えたくないけど、スバルに何回も死に戻りをさせる気なんじゃないかしら」
「……そんな、ことは」
ない、と言い切れなかった。
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『繰り返そう、ナツキ・スバル。君がボクを選び、ボクと契約をしてくれるというのなら――ボクは必ず、君を君の望むところまで連れてゆく』
『――最後には、って枕詞が必ずついてくる約束さね、はぁ』
『最後、には……?』
『エキドナは、ふぅ。契約を必ず履行するだろうさ、はぁ。ただ、契約を履行したという事実だけ、ふぅ。きっちりと守れば過程は、はぁ。何をしてもいいだろう、ふぅ』
『何を、しても――』
『エキドナ、お前は契約すれば……必ず、俺を最善の未来へ連れていくって、そう言ったよな』
『ああ、言ったとも。事実だ。間違いなく、ボクはその契約を果たすだろう。ボクの知識と、君の特性があればそれは必ず成し遂げられる』
『お前の協力で俺が最善の未来に辿り着くのは――最善の道を、通ってか?』
『お前は俺が望む場所へ辿り着くために、本当に全力を傾けて、くれるのか?』
『なんで、無言だ。答えろよ、エキドナ……いや、『強欲の魔女』!』
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「……エキドナは強欲の魔女。スバルが考えるよりもずっと底意地が悪かったようだ」
「スバル殿のような真っ直ぐな方と魔女は正に正反対...話し合うことなど不可能なのです」
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『――最善の未来へ辿り着けるのなら、その道のりで出る犠牲は許容する。それが、君の覚悟ではなかったのかな、ナツキ・スバル』
『君が持つ特性、『死に戻り』はすさまじい権能だ。その有用さが、君は本当の意味で理解できていない。自分の望まない終わりを許容しない、何度でもやり直す、未来へ何度でも手を伸ばせる――それは、探究者にとって究極に近い理想だ。だって、そうだろう? 本来、ある物事への結果というものは、一つの結果が出てしまったらそこから動かせないんだ。結果が出るまでの過程でならば、その結果がどうなるかについての仮説は様々なものが立てられる。こういったアプローチをすれば、あるいはこういう条件にしてみれば、様々な仮説や検証は可能だ。けれど、実際にその結果を出そうと実験に臨むとなれば、結果も試せる仮説も検証も、一つに集約されざるを得ない。まったく、本当の意味でまったく同じ条件を作り出すことは不可能なんだ。どんなに条件を整えたとしても、その時点とまったく同じ条件は絶対に作り出せない。あのとき、別のやり方をしていたらどんな結果が出ていたのか――それは、ボクたち探究者にとっては決して手を届かせることのできない、理想のその先にある夢想でしかない。『世界の記憶』を持つボクには、その答えを『知る』手段は確かにあるさ、あるとも。あるけれど、それを使うことを、用いることをボクはよしとしない。ボクは『知りたい』んであって、『知っていたい』わけじゃない。ひどく矛盾を生む、ボクにとっては忌むべき物体であるといえるね。話がそれそうだから本題に戻すけれど……そう、そんなボクたち、あるべき結果を一つのものとしか受け入れられない、観測手段を一つしか持たないボクたちからすれば、君という存在は、その権能は喉から手が出るほど欲しいものなんだ。『同じ条件』で、『違う検証』ができ、『本来の結果』とは『別の結果』を見ることができる、究極的な権能――これを、欲さずにいられるだろうか。これを目の前にして、あらゆることを試さずにいられるだろうか。もちろん、ボクとしても決して君にそれを強要するつもりなんてない。あくまで、君は君の目的のために、その『死に戻り』を大いに利用するべきだ。ボクもまた、君が求める未来へ辿り着くために最善を尽くそう。そして、その過程でできるならボク自身の好奇心を満たすことにも大いに貢献してもらいたい。これぐらいは望んでも罰は当たらないはずだ。君は答えを見られる。ボクは好奇心を満たせる。互いの利害は一致している。ボクだって答えを知っているわけではないから、わざと間違った選択肢に君を誘導して、その上で惨たらしい結末を迎えるような真似はできるはずもない。直面する問題に対して、最初から正しい答えを持たないという意味ではボクと君はあくまで対等だ。共に同じ問題に悩み、足掻き、答えを出そうともがくという意味では正しく同志であるというべきだろう。そのことについてはボクは恥じることなくはっきりと断言できる。検証する手段が増える、という意味でボクは君をとても好意的に思っているから、君を無碍にするような真似は絶対にしないと誓おう。もちろん、答えが出ない問題に直面して、ボクの協力があったとしても簡単には乗り越えられない事態も当然あり得るだろう。知識の面で力を貸すことができても、ボクは決して現実に干渉できるわけではない。立ちはだかる障害が肉体的な、物理的な力を必要とする問題だった場合、ボクは君の助けになることはできない。幾度も幾度も、あるいは数百、数千と君は心と体を砕かれるかもしれない。もしもそうなったとしても、ボクは君の心のケアを行っていきたいと本心から思っている。そこには君という有用な存在を失いたくないという探究心からなる感情が一片も混じらないとは断言できない。けれど、君という存在を好ましく思って、君の力になりたいとそう思う気持ちがあるのも本当なんだ。だから悪いようには思ってもらいたくない。繰り返しになってしまうが、ボクは君の目的に対して有用な存在だと胸を張れる。そう、ボクがボクの好奇心といった強欲を満たすために、君の存在をある意味では利用しようと考えるのと同じように、君もまたボクという存在を君の『最善の未来へ至る』という目的のために利用したらいい。そうやって都合のいい女として、君に扱われるのもボクとしては本望だ。それで君がやる気になってくれるというのなら、ボクは喜んでボクという存在を捧げよう。貧相な体ですでに死者であるこの身を、君が望んでくれるかは別としてだけどね。おっと、こんなことを言っては君の思い人に悪いかな。君の思い人――銀色のハーフエルフ、そして青い髪の鬼の少女。そう君が必ず助け出すと、守ってみせると、心で誓い行動で示している少女たちだ。二人に対して、そんな強い感情を抱く君の心のありように対するボクの考えはこの場では述べないこととして、しかし純粋に君の前に立ちはだかる壁の高さは想像を絶するものであると断言しよう。現状、すでにわかっている障害だけでどれだけ君の手に負えないものが乱立していることか。それらを一人で乗り越えようとする君の覚悟は貴く、そしてあまりにも悲愴なものだ。ボクがそんな君の道筋の力になりたい、なれればと思う気持ちにも決して偽りはない。そして、君はボクのそんな気持ちを利用するべきなんだ。君は、君が持ちえる全てを、君が利用できる全てを利用して、それだけのことをして絆を結んだ人々を助けなくてはならない。それが君が君自身に誓った誓いで、必要なことであると苦痛の道のりの上で割り切った信念じゃないか。だからボクは君に問う、君に重ねる、君を想おう。君が自分の命を使い捨てて、それで歩いてきた道のりのことは皮肉にもつい今、第二の『試練』という形で証明された。あるいはあの『試練』は、君にこれまで歩いてきた道のりを理解させるためにあったんじゃないかとすら錯覚させるほど、必要なものにすら思える。確かに必要のない、自覚することで心がすり減る類の光景であったことは事実だ。でも、知らなかった状態と知っている状態ならば、ボクはどんな悲劇的な事実であったとしても後者の方を尊く思いたい。君はこれまで、そしてこれからも、自分の命を『死に戻り』の対価として差し出し、そして未来を引き寄せる必要があるんだ。そのために犠牲になるものが、世界が、こういった形で『あるのかもしれない』と心に留め置くことは必要なことだったんだ。いずれ、自分の命を支払うことに何ら感傷を抱かなくなり、人間的な感情が希薄になって、大切な人たちの『死』にすら心を動かさなくなり、無感動で無感情で無気力な日々に沈み、最善の未来へ辿り着いたとしても、そこに君という存在が欠けた状態で辿り着く――そんな、徒労感だけが残る未来へ辿り着かないためにも、必要なことだったんだ。そう、世界の全てに無駄なことなんてものはなく、全ては必要な道行、必要なパズルのピースなんだ。それを理解するために『試練』はあった。君が今、こうして足を止めてしまっている理由に、原因にもっともらしい意味をつけて割り切ることが必要なら、こう考えるといい。そして、ボクは君のその考えを肯定する。君が前へ進むために必要な力を、ボクが言葉で与えられるのならどんな言葉でもかけよう。それが慰めでも、発破をかけるのでも、愛を囁くのでも、憎悪を掻き立てるものであっても、それが君の力になるのであればボクは躊躇うことなくそれを行使できる。君はそれを厭うかもしれないが、君のこれからの歩みには必ずボクのような存在の力が必要なんだ。君がこれから、傷付くことを避けられない孤独の道を歩んでゆくというのなら、その道のりを目を背けることなく一緒に歩ける存在が必ず必要なんだ。そしてその役割をボクならば、他の誰でもなく、このボクならば何の問題もなく一緒に歩いていくことができる。繰り返そう、重ねよう、何度だって君に届くように伝えよう。――君には、ボクが必要なはずだ。そして、ボクには君が必要なんだ。君の存在が、必要なんだ。ボクの好奇心はもはや、君という存在をなくしては決して満たされない。君という存在だけが、ボクを満たしてくれる。ボクに、ボクの決して満たされることのない『強欲』に、きっと満足を与えてくれる。君の存在はもはやボクの、この閉ざされた世界に住まうボクにとっては欠かせない。君が誰かの希望でありたいと、世界を切り開くために力を行使するのであれば、ボクという哀れな存在にそのおこぼれをいただくことはできないだろうか。ボクは君がその温情をボクに傾けてくれるというのなら、この身を、知識を、魂を、捧げることを何ら躊躇いはしない。だからお願いだ。ボクを信じてほしい。こうしてこれまで本心を伝えようとしなかったのは、決して君を騙そうとしたりだとか、隠し立てをしようとしていたわけじゃない。時期を見計らっていただけだ。今、この瞬間に本心の欠片を訴えかけていたとしたら、きっと君はボクから離れてしまったことだろう。ボクにとってそれは耐え難い損失なんだ。もちろん、それは君にとっても、求める未来を遠ざけるという意味で正しく損失というべきだろう。いずれ、君は『死に戻り』という特性上、きっと求める未来へ辿り着くことだろう。けれど、その辿り着ける未来に対し、君が支払う代償は少ない方がいいに決まっている。ボクは、ボクならばそれを軽減することが可能だ。最終的に求める結果に辿り着ければいい、などと大目的を理由に小目的を蔑ろにするような、人でなしな考えをするとは誤解しないでほしいんだ。確かに誘惑に駆られて、こうした場合の結果を見たいがために、最善の道行きに必要な要素に気付いていながら言葉にしない――というような行いを絶対にしないと断言できるほど、ボクはボクの欲望を抑制できていない。そのことは認めよう。けれど、誤魔化しはしない。もし仮にそんな信頼に背くような行いに手を染めるようなことがあれば、それを隠すようなことだけは絶対にしない。必ず打ち明ける。そして、失った信頼に応えられるよう、何度でも君のために力を尽くそう。どんなことがあっても、必ずボクは君を君が望む最善の未来へ送り出す。絶対に、絶対にだ。だからそのために必要な手段であると割り切って、ボクを選んではくれないだろうか。ボクが君に望み、君に求める要求は契約の際に述べたこと通りだ。あとは君が、君自身が、欲しいと欲する願いに対してどこまで身を切れるか、という話になってくる。ボクの覚悟は今述べた通りだ。あとは、君の覚悟を聞きたい。君の方こそ、ボクとの契約を交わし、ボクの協力を得て、その上で必ず未来へ辿り着くのだと、その気概があるのだとボクに証明してみせてほしい。それができてこそ初めて、君は第二の『試練』に打ち勝ったと胸を張って言えるんだ。第三の『試練』に進み、そしてそれを乗り越えて『聖域』の解放を果たす。今後、『聖域』と君の思い人、そして大切な人々に降りかかる災厄を思えば、これは越えなくてはならない正しく『試練』なんだ。それを乗り越える力が、覚悟が君にあるのだと、ボクに教えてほしい。そしてその上で、ボクを奪って、ボクの知識を利用して、その先にあるものを得ていこう。ボクが君に望み、君に求め、そして代わりに君に差し出せるものは以上だ。ボクは真摯に、正直に、全てを打ち明けたつもりだ。その上で、君がどういった判断をするのか――それを、ボクに教えてほしい。ボクという存在の、好奇心の一端を満たすためにも、ね』
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「…魔女、だもの。バルスの考えが甘すぎたのよ。魔女はいつだって自己中心的で独善的...そして利己的よ。魔女を信仰する奴らを見れば、そんなことは分かるでしょうに」
「……スバル、ダメよ。その手を取るのは」
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『エキドナ』
『なんだい?』
『お前は……俺を、利用するのか?』
『するよ。君も、ボクをそうするといい。契約は、互いにその理を違えないための予防線といったところだ。君という存在を手放さないために、使えるものは何でも使おうという、ボクの考えを責めるというのなら甘んじて受けよう』
『考えない、わけじゃなかったさ。極端なこといえば、利害関係ってのはそういうもんだってことぐらい、わかってる。お前が百パーセント、善意だけで俺を助けてくれるってことは……期待してても、そうじゃない現実を受け止める覚悟ぐらい。でも』
『いくらなんでも、それはねぇだろよ……』
『それ、とは?』
『ここまでのお前の行動の全部が、今の俺には色褪せて見えるんだよ。お前がこれまで、俺に対して好意的に接してくれた全部が、俺がお前のことを悪い奴じゃないんじゃないかって、そう信用し始めてた気持ちが……全部、色褪せて』
『最初から、そのつもりだったのか』
『君が何を問題にしているのかがよくわからないな。結果的に最善に辿り着けるのなら、そこまでの道程は割り切る――そう、決めたはずじゃないのかい?君自身、それを肯定し、ボクもそれでいいと背中を押したはずなんだが……』
『そうやって俺が割り切る……割り切れてねぇけど、そういう方向に仕向けたのも、お前の目論見通りなんじゃないのかって……そう、言ってんだよ』
『勘違いしないでほしいんだが、君のその結論はあくまで君が出したものだよ。ボクがしたことは、君が出す結論のほんのささやかな後押しさ。そうやって自分の出した言葉の結論を、その責任の所在を他者に求めるというのはさすがに感心しない。感心しないし、それを引き受けるほどボクもお人好しではない』
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「色、褪せる……そうね。確かに、もう信頼するのは難しいわ。一度...裏切った人を」
エミリアが言い淀んだのは、恐らく該当者が空間に多かったからだ。
スバルの死の遠因となった者たちが──
「スバル、ダメだなって思った時は一度帰って考えるの。ずーっと一人で考えてたら、すごーく悪い方に行っちゃうから。私もずっと独りだったから、分かるの」
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『お前の態度は全部、真剣味がない、上っ面なもんなんだ』
『喜ぶことも、怒ったときすら、お前の感情表現は幼稚で薄っぺらい。今だって、激昂するどころか拗ねた顔をしただけだ。懐が大きいとか、そんな問題じゃねぇ。お前のその態度は……これまでの態度は、おかしい。俺は、軽々しくて受け入れやすい、そんなお前を、付き合いやすい奴だなんて思ってたけど……』
『実際には違う。お前は――お前は、他人の感情が理解できない奴なんだ』
『ここも、怒っていい場面なんだぜ』
『……そうか、ここでボクは声を荒げて、罵声を浴びせるべきなのか。なるほど、勉強になったよ。次の機会があったとしたら、そうさせてもらうとしようか』
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「……エキドナには、分からないの?感情が...」
「それはそうでしょう、エミリア様。あれは魔女です。人間とは、違うのですよ」
脳の構造だとか、強さだとか、そんなことを言っているんじゃない。
性根が、性格の根っこの部分が違うのだ。
エミリアやラムは──どんなに計算高いやつでも、人間なら優しさがどこかにある。
それがないのだ。エキドナには。
まさしく、魔女である。
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『座ったらどうだい?契約について、細かいすり合わせがしたい』
『……この状況で、俺がまだお前との契約に前向きに臨むと思うか?』
『まさか、少しの意見のすれ違いでワタシを拒絶すると?そんなことをして、いったい何の意味があるんだい?一時の感情に押し流されて、正しい選択を見失うのは賢いとは言えないな。現実を見て、合理的な考えを選ぶことをお勧めするよ』
『一つだけ、お前に会えたら聞きたいことがあったんだ』
『――ふむ、なんだろうね』
『その答えが聞けたら、俺は選べそうな気がするんだ』
『――ベアトリスを、知っているな、エキドナ』
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エミリアがベアトリスの手を強く握る。
「そんなに心配しなくてもいいのよ」
「……でも」
「……大丈夫だと、思いたいかしら」
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『ベアトリスは契約で、『その人』がくるのをずっと待ってる。その契約は、お前と結んだものか?お前が、あいつを屋敷に縛り付けてるのか?』
『場所を指定した覚えはないが……禁書庫を守り、迎えがくるまで待つように約束をしたのは確かにワタシだね』
『だとしたら、『その人』ってのは誰だ?どうしたら、あいつを解放してやれる?』
『いったい、誰なんだろうね?』
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ベアトリスの瞳に、悲しみが再臨する。
「……分かってた、かしら。でも」
これは、あまりにも。
エミリアの瞳に、怒りが宿る。
「…こん、な……やっぱり、あなたは魔女ね。理解、してあげられないもの」
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『お前も、そのベアトリスの待ち人が、誰なのか知らないのか?』
『うん、知らないよ。ベアトリスが待つ、『その人』が誰なのか、ワタシは知らない』
『なん、でだ?ベアトリスに禁書庫で待てって、そう言ったのは、お前なんだろ?そのお前が知らない……まさか』
『ベアトリスに、『その人』を待つように指示したのはワタシだ。それは間違っていない。間違っているのは、もっと根本的なところだよ』
『ワタシがいったい、何の理由があってベアトリスにそんな契約を結んだのか。そのことを思い違いしているんだ。君は、ワタシが禁書庫の内容を『その人』に渡すために、そのためにベアトリスに守らせているんだと、そう思っているんじゃないかい?』
『ワタシのベアトリスへの指示はそうじゃない。ワタシは『その人』を待つようにあの子と契約を結んで……あの子が、誰を『その人』に選ぶのか、その結果を待っているんだ』
********************
かあさま、と掠れたソプラノが聞こえた。
ベアトリスの瞳は大きく揺らぎ、特徴的な紋様は涙に歪められる。
「……スバル」
ベアトリスがその名を呼んだことが、彼女の成長を表してはいたが。
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『禁書庫の維持と、いずれ来る『その人』へ全てを譲渡すること。制限は設けなかった。もともと、正しい答えのない条件だからね。あの子は予定通りに生かされ、そしてワタシはそれとは別の探究の答えを見ることができる。とても、合理的じゃないかい?』
『もちろん、選ばずに四百年を過ごしてきたことも一つの結果だ。日々の中で出会った誰かの中で、安易に『その人』を選ばなかったこともそう。あるいは契約を破るか否かまで悩んで、自分の『死』を望むということすらも一つの結果だ』
『お前は、それを、どう思ってるんだ?』
『――?素晴らしいと、そう思っているよ?』
『エキドナ……お前は、魔女だ』
『人知を越えた、理解のできない、怪物だ』
『俺は……俺は、お前の手は取れない。取る手は、もう決めたんだ』
『お前が無邪気に、悪意もなく、縛り付けた言葉に四百年も時間を奪われた子がいる。――決めたよ。俺は、あの子の手を取る。お前とは、行けない』
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「スバル...」
ベアトリスの泣き声に、エミリアは目を細める。
あまりにも痛々しく、激情が腹の底から溢れ出る類のものだった。
「……わたし、勘違いしてたわ。...エキドナはやっぱり、すごーく悪い人」
その紫紺の瞳には、優しい怒りが。
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『────きたわ』
『やだ、もう……わ、たしは、関係ない……か、らね』
『面倒なところで、面倒な奴が、面倒にしにきたもんさね、はぁ』
傍観していた魔女の三人が、それぞれの感慨を口にする。
そして、背後に圧迫感。
正面から、スバルの背後を見ていたエキドナの目が軽く見開かれる。
スバルはその彼女の驚きに従い、振り返って、それを見た。
そこに、首から上を漆黒の闇で覆った、『嫉妬の魔女』が立っていた。
********************
「……どうして、魔女が...!」
エミリアが声を荒らげる。
「…死に戻りについて、話したから……かしら?」
ベアトリスがたどたどしく話す。
でも、何故夢の城へ。