続いていく世界
最近短編書いても原作ではありえない時間軸の話ばっかり書いちゃうのでこれを出していいものかと悩んでます
二次創作なんで多少の無茶は許したい気持ちと二次創作とはいえ遠慮はいるかなの気持ちが
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『ちっとばかし、面ァ貸してもらうぜ』
『てめェ……』
『お前、墓所の中で何を見た……か?』
『薄ッ気味悪ィが、わかってるってんなら話ァ早ェ。包み隠さず、正直に話せや。痛い思いしたくなかったらよォ』
『そうだな。俺も確かめたいこととか色々あるし、忙しい身なんでな。――お前の質問に答えるのはいいんだが、代わりに俺からの質問にも答えてもらえるか?』
『交換条件なんざ突きつけられる立場だっと思うのかよ。俺様が一方的にてめェを食らう立場で、てめェは食われないために自分以外の肉を差し出す立場っだろが。『メージェーは兄の後、弟を差し出した』ってやつだ』
**************
「...スバル……」
エミリアの紫紺の瞳が微かに濁る。
死にかけのスバルに身勝手な愛を押し付ける様が、忌み嫌ったそれと似ていたから。
「...無事でいて……」
**************
『中で『試練』を受けた。過去を、見てきたよ』
『――!やっぱり、資格を持ってやがったか……ッ。それで、結果は……』
『失敗だ。そうそう簡単に、過去を否定したり受け入れたり、できるもんじゃねぇだろ。……エミリアだって、おんなじはずだ』
『ずいぶん、ホッとしたみたいな顔をしやがるんだな』
『あんだァ……?』
『エミリアの失敗を、『聖域』が解放されないことを、嬉しそうな顔で受け入れやがるんだなって、そう思ったんだよ』
『てめェ、過去で何を……いや、『試練』で何を聞いてきやがった……?』
『この『聖域』の成り立ち、軽い裏事情。それと、お前とリューズさん、かな』
『――ッ!まさ、か……てめェ、俺様の……』
『お前が過去に何を見たのか、そこまでは知らねぇよ。お前が『試練』を受けたことをなんで黙ってるのか、それには見当がついてるけどな』
『……そんなっことまで』
『推測もあるけどな。邪推が過ぎるって、怒ってもいいぜ』
***************
「...スバル、大丈夫、なのかしら」
ベアトリスは不安そうにスクリーンを見つめる。
ベアトリスは聖域のごたごたがある間、ずっと禁書庫にいたから、細かい部分まで知りきれていないのだ。
***************
『――なぁ、お前はどうして、『試練』に再挑戦しないんだ?』
『俺は、俺にはお前の行動に一貫性がないように感じられてならないんだよ。『聖域』を解放させようって、エミリアを押し出すわりには失敗にホッとした顔しやがる。かといって、本気で『聖域』の解放を阻もうってつもりにしちゃやり方が中途半端だ』
『俺は、お前の力も借りれたらと思うんだよ』
『――ば、か言ってんじゃァねェよ』
『てめェの言った通り、俺様とてめェの利害は一致しねェんだ。俺様ァ、積極的に邪魔こそしねェが、積極的に手伝いもしねェ。中立だ。中立で、いいんだよォ』
『あの半魔が、『試練』を越えるってんならそれァそれだ。中に取り込まれた以上、外に出てくために『試練』を越える必要があんなァ俺様だって理解してる。――だが、開いた『聖域』の外についてくかどうかは、また別なんだぜ』
『出ていきたきゃ、勝手に出てけ。だけどなァ、中に何もしようとするんじゃァねェよ。てめェもそれ以上、こっち側に踏みっ込んできやがるんじゃねェ。そうすりゃァ俺様も、何もしやしねェ』
『外に、お前の力が必要だって、そう言ってもか?』
『……俺様が欲しがるもんを、てめェらは絶対に用意できねェ。俺様の話ァ、これで終わりだ。余計な真似だけァ、すんな』
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「...この、会話は...」
記憶に、あった。
「エミリア様、多分ッ大将は...」
「...今回で突破できるの?」
エミリアの仁美が明るく揺らぐ。
「俺ッ様の記憶が正しけりゃァ、多分、そうだ」
一年も前の会話を全部覚えてる自信はないが。
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『知りたいって……そう願えば……』
『今の俺なら……条件は、満たしてるはずだ』
『頼むぜ、エキドナ……!』
『どこで、どんな儀式が必要かは出たとこ勝負だが……』
『――ありうべからざる今を見ろ』
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「...この言葉は……スバル...!」
エミリアがその聞き覚えのある単語に立ち上がる。
あるかもしれない未来の話、だったはずだ。
「嫌な未来じゃないと、いいんだけど」
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『嘘つき……嘘つき、嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき……っ』
『嘘つき、嘘つき!スバルの……嘘つきぃっ! 嘘つ、きぃ――!!』
『知ら、ない。……こんな光景、俺は知らない。知らない……知るはずがない!』
『やめろ。やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめてくれ!』
『エミリア様、これは――!』
『いったい、何が……いや、今は……スバル殿!』
『スバル……スバルぅ……うそ、つきぃ……一緒にって、言ったの、に……』
『エミリア様、申し訳ありません――!』
『フェリス!フェリックス!早くこい!!火急だ!急げ!!』
『ヴィル爺、大声で何を……ッ』
『フェリックス、急げ!刃物で喉を突いている!一刻を争うぞ!』
『もう、やめろよ……無駄だ。無駄だよ。そいつはもう、助からない……』
『逝かせぬ!決して、逝かせはせぬ!恩人をこのような形で失うというのなら、私は恥にかけて生きてなどおれぬ……!』
『こんなときになんでこんな馬鹿な真似……ッ』
『フェリックス!なぜだ!なぜ、治療を止める!このままでは……』
『もう、おしまいだよ、ヴィル爺。――もう、魂がどこにも、残ってない』
『なぜ……なぜなのだ!なぜ、こうも容易く……スバル殿、あなたは……!』
『……弱虫の、腰抜け。大切な人、みーんな置き去りじゃにゃい。……辛いのも、苦しいのも全部、みんなに押し付けて……それで、満足にゃんだ?』
***************
「...なに、これ……」
エミリアが、激しく動揺したような顔をする。
「だって、スバルは一緒に聖域に、戻って……」
あったかもしれない未来。
その底意地の悪さを、エミリアは再び痛感することとなる。
「スバルきゅんが...自害……?」
フェリスは疑問に頭を支配される。
それは、ヴィルヘルムも同じことだった。
「エミリア様、これは……」
「...これは、聖域の試練で、あったかもしれない未来を見させられる...みたいな感じだったと思う」
エミリアの拙い語彙力では全てを語ることは叶わなかったが、ヴィルヘルムは悟ったようだった。
「スバル殿、あなたは……」
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『――エミリア様?』
『先ほどは申し訳ありませんでした、エミリア様。ですが、そのままではお体にも障ります。どうぞ、ご自愛を……』
『――って、言ったのに』
『エミリア様?』
『私を好きって、言ってくれたのに……っ』
横倒しになったまま膝を抱えて、エミリアが小さく丸まって泣き叫ぶ。
その姿を子どものようだ、と叱ることができるものはこの場にはいない。
ヴィルヘルムは痛みに耐えるように眉を寄せ、そしてフェリスすらもエミリアの傷心する姿を見ていられないと顔を背ける。
そして――、
『え?』
――二人の目の前で、完全に朽ち果てたはずのスバルが体を起こしていた。
その理解を越えた光景に、意識だけのスバルもまた驚愕する。
起き上った肉体、まるでゼンマイ仕掛けの人形のようなぎこちない動きで手足を伸ばして立ち上がり、首だけが九十度傾いたままゆっくりと目が開かれる。
焦点の合わない瞳が、光を失った眼が、部屋の中を睥睨した。
**************
「...え?」
フェリスが、驚愕を色濃く舌に乗せ、その目を大きく見開く。
「スバル……?」
その異質さに、エミリアも気がついた。
「どういうことだ?フェリス、これは...」
「...分からないけど、フェリちゃんが治療に手を抜くなんて有り得ない。だから、これは...」
フェリスの瞳が揺れる。
**************
『ふぇり……』
『あり得ない!肉体は間違いなく死んでた!蘇生は、失敗した!』
『スバル殿、御免――!』
帯剣していなくとも剣鬼の技の冴えには一切の陰りがない。
ヴィルヘルムは床に脱ぎ捨てられていた上着を屈む動作で拾い上げ、スバルの鮮血で湿ったそれをねじりながら全身の動きで槍のように射出する。
速度に乗り、血という重りを加え、先端をひねりながら空気を穿つそれは布の槍だ。
布槍術とでもいうべき技術で、立ち上がるスバルに先制を打ち込む。
狙い違わず、上着の先端は吸い込まれるようにスバルの顔面を穿ち――、足下から湧き上がる影の滝が布を飲み干し、ヴィルヘルムの打突を消滅させる。
予備動作のないそれを目にし、ヴィルヘルムはとっさに腕を引いたが――被害は免れない。
右手の指が三本、布ごと第一関節を根こそぎ持っていかれる。
**************
「...こ、れは……スバル殿...」
ヴィルヘルムが己の目を疑う。
スバルのその姿は、あの忌まわしき──
「...あったかもしれない未来とか、そんな次元じゃないよ。これ」
フェリスも強く狼狽する。
だってスバルのその姿はまるで──
「嫉妬の、」
**************
『フェリックス!エミリア様を連れて即座に離れろ!私がここで足止めする!』
『剣の一本も……短剣しか、持ち合わせがにゃいの!』
『屋敷を脱し、クルシュ様に指示を――いや、今は駄目なのだったな。フェリックス、お前の判断でいい。騎士団を引っ張ってこい』
『ヴィル爺一人じゃ、キツイ雰囲気?』
『白鯨と同等の、あるいは……スバル殿は、内に何を飼っておられたのだ』
相手の戦力を推し量り、ヴィルヘルムが脂汗を浮かべながら息を呑む。
警戒を露わにする剣鬼の前で、スバルはだらりと両腕を下げたまま、何を見るでもない視線をさまよわせ、ふらふらと上体を左右に揺らしていた。
理性は、ない。おそらくは意識もまばらだ。
問題はそんな状態にありながらも、自己防衛の意識はあるということか。
じりじりと、得体の知れない存在と化したスバルと睨み合いを続けるヴィルヘルム。
一方で、その様子を俯瞰しながら、疑問符の嵐にもまれているのはスバルの意識だ。
先ほどまでと、明らかに風向きが変わっている。
罪と見せつけられて、心を折り砕かれたスバルは、その上にさらにわけのわからない死後の世界を見せつけられている。
この光景はいったい何なのか。
本当にあったことだとでもいうのか。ないのだとしたら、この光景に何の意味があるのか。どうして、自分の意識は今、こんなところにあるのか。
何もかもわからない。何もかもがわからないが――。
*************
「...こーぉれは、予想外...と言わざるを得ないね」
ロズワールが、今までに見た事がないほどに感情を表情に乗せる。
その顔を見て、ベアトリスでさえも驚き、ラムも大きく目を見開いた。
それほどに、有り得なかったのだ。
「...どういう事なの、バルス」
状況を理解することすらならなかった。
「...スバルは、嫉妬の魔女に一方的な契約を結ばされているかしら。...だから、もしかしたら……」
スバルの中に、嫉妬の魔女が眠っているのかもしれない、とその仮説を口に出せるほど、ベアトリスは酷くなかった。
「大将...!?どういう、ことッだ……」
理解ができない。
スバルはたしかに死んだのに、どうしてこんな事に?
「スバル……!」
ラインハルトが、思わず構える。
「スバル、僕は……」
ラインハルトは苦悩する。
もしも、これが真であるなら。
ラインハルトは、いつかスバルと──
「...それは、いやだな」
英雄のこぼした、本音が。
空間を、静かに揺らした。
***************
『フェリックス!エミリア様を――!』
『わかってるってば!エミリア様、こっちに……!?』
『――リアを、よくも泣かせてくれたな』
『その体の持ち主の蛮行も含めて、万死に値するぞ――魔女め』
『精霊……エミリア様が、まさか』
『リアは今、意識がない。契約に基づき、ボクはボクの判断で動く。魔女は許さない。リアは守る。――リアを泣かせた、その男も許さない』
『今!ここで争ったら被害が――』
『誓いは破られ、ボクのリアは心を凍らせた。――もう、終わりにするよ』
*************
「スバル……?」
エミリアが、酷く痛ましい表情でスクリーンを見つめる。
「ナツキさん、あなたは...一体、なにを」
内に閉じ込めているのか。
**************
『ぼ、墓所の、中……』
『白昼夢……なんて、都合のいいもんなわけがねぇ。けど、あれは……』
『まさか、『試練』か……過去じゃなく、二つ目の……!?』
『過去と、向き合うほど辛い『試練』じゃないって、言ってたが……』
『ありうべからざる今を見ろ』
**************
「まだあるの……?もう」
エミリアは理解する。
スバルが飛び立った世界の、その後なのだと。
そして、そこには高確率で──
「ごめんね、スバル」
***************
『エミリア様、彼を……スバルの、顔を拭ってやってください』
『私ではなく、あなたがされることを彼は望むでしょう。せめて、あなたの手で』
『すば……る』
『どうして……?なんでスバルは、こんな、ことを……』
『スバル殿……申し訳、ありませぬ……っ』
『なんで……スバルはこんなになっても、私のことを……ね、どうしてだったの?』
『世界を長きにわたって苦しめ続けた魔女教、その尖兵である怠惰は退けられた。そのことは、世界にとって非常に大きな功績だ。――だが』
『そのための犠牲の全てが、許容できるわけではない。――私はもっと、君と言葉を交わしたかったよ。ナツキ・スバル』
『私は君を、友と呼びたかった』
***************
「怠惰……」
ユリウスは思い出す。
スバルだけが覚えていた、犠牲の未来を。
「...どうして、こんな……」
自分でさえも覚えていない未来の話をされても。
そう言うであろうとわかってしまうことが嫌で。
「スバル……」
エミリアが瞳を大きく揺らす。
今のエミリアには何故スバルが自分を助けてくれるのかわかる。
でも、この頃のエミリアには。
「...ごめんね」
謝ることしか出来ない。
**************
『見ないふりして、目を背けてきたツケが……これ、だってのかよ……?』
『――嘘、だろ』
『ありうべからざる今を見ろ』
耳元で、またしても誰のものかわからない声が囁かれた。
誰のものなのか、曖昧になる意識で追い求め――気付いた。
――それはまぎれもなく、自分自身の声だということに。
**************
「見ないふり、なんて...だって、スバルはいつだって……」
エミリア達のために傷ついていたのに。
「どうして、いつも...」
スバルだけがこんな思いをするのだろう。
「エミリア様……」
オットーがエミリアを心配そうに見る。
「...ナツキさん……」
苦々しく、スクリーンを睨んで。
*************
『最後の最後まで、わけのわからないことを言って……もう、何も……』
『これも全て、あなたの予定通りですか、ベアトリス様?こうして、ラムの行く手を阻むことがあなたの……っ』
『ベアトリス様……』
『――どうして』
『お前が、その人じゃないことぐらい……わかって……でも……』
『何が、大好き――本当に、救えない話だわ』
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ラムが、微かに目を伏せる。
「...下らない」
そう吐き捨てることしか、しなかったが。
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『ありうべからざる今を見ろ』
『――やはり、君か』
『口惜しい……こうなるとわかっていても、変えられないか』
『――何があったのか、おおよそは把握しています。だからこそ、残念です』
『エミリア様もスバルも、もうどこにもいないのですか』
『リアは眠った、永久に。あの子のいない世界になど、存在する価値もない。あの子を守れないこの身も、あの男も、同罪だ――』
『それを理由に、世界を滅ぼそうとするのですか』
『阻まれるのは、わかっていた。だが、そうすることがこの身の誓いだ』
『無念はわかります。僕も同じ気持ちだ。ですが、だからといってその無念の感情を、無闇に当たり散らしていいということにはならない。あなたの行いは、その誓いの結果は世界に波乱をもたらす。――僕はそれを決して、許容できない』
『正しく、ないからか』
『そう、正しくないからです。――僕は正しさの規範だ。過ちを正す、剣である。そのために、ここであなたを斬らせていただきます。大精霊様』
***************
「パック...」
エミリアが、悔しそうに下唇を噛む。
「私が、死んだりしたから...スバルは傷ついて……なのに私は...」
どうすることも出来ない過去を悔やむ。
それを、無駄というのだろう。
****************
『――何が、おかしいのですか?』
『何が、おかしい?おかしいとも、おかしいに決まってる。ラインハルト、君は……いや、お前は何もわかっていない』
『思い出したよ。どうあるべきなのかを。遅すぎる理解だ。それがわかって、そしてそれをお前がまだわかってないから、おかしくてたまらないんだ』
『……これ以上の被害は防がせていただきます。恨むなら、この僕を』
『恨みはしないさ、ラインハルト。お前は英雄だ。英雄には、英雄にしかできない役割が、行いがある。それに準じるお前を、恨みも責めもしない』
『お前は英雄だよ、ラインハルト。――英雄にしか、なれない』
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「英雄、にしか...」
その悪意に満ちた声に、ラインハルトは微かに眉を寄せる。
そして、その脳裏に声が過ぎる。
『頼ってばっかでホントに悪ぃ。お前が強いってことに頼りすぎな局面だけど……お前の足りない部分はどうにか補うから、期待しててくれよ』
「スバル……」
英雄を人間に戻した陽光は、未だに差し込みそうになかった。
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『ありうべからざる今を見ろ』
『ありうべからざる今を見ろ』
『ありうべからざる今を見ろ』
『ありうべからざる今を見ろ』
『ありうべからざる今を見ろ』
『ありうべからざる今を見ろ』
『ありうべからざる今を見ろ』
『ありうべからざる今を――
――何度心をへし折られれば、俺は許されるのだろうか。
『これでもう、おしまい……ずいぶんと、やりがいのないお仕事だったわ』
『依頼の結果としては最低の状態だけれど……どうしたものかしら』
『──あら』
『これは……』
『よくも――やってくれたな』
『リアの命を奪ったことを、後悔させてやる――』
『ああ、その子……精霊使いだったの。素敵だわ、精霊のお腹はまだ、開いてみたことがなかったから。――でも』
『どうして、その子が死んでしまう前に出てこなかったの?精霊使いは術者と精霊が二人で一組――十全に、楽しめないのなら損だわ』
『ほざいていろ、殺人鬼め。――ボクだって、契約に縛られてこそいなければ』
『言葉を交わすつもりはない。お前を氷漬けにして、せめてリアの魂の安寧に捧げる。お前の後は国も、世界も、龍も魔女も、全てだ』
『ああ、素敵――楽しませてちょうだい、ね!』
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「...契約……」
ベアトリスが眉を顰める。
「...にーちゃは、不自由かしら」
その有り様を貶めるつもりは無いが、エミリアを守る上で、契約があまりにも邪魔をする。
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――何度、世界に裏切られれば俺は報われるのだろうか。
『レムは未然に状況の悪化を防いだだけです。見つけたとき、スバルくんはすでに救える見込みのない状態でした。――一刻も早く、トドメが欲しかったはずです』
『その、結果が……あんなにひどい、最期だってレムは言うの?スバルは私の恩人で、これからきっとたくさん、話したいこともあって……それを』
『まーぁまぁ、エミリア様もそう血気逸らずに。まーぁずは、レムの言い分にもちゃーぁんと耳を傾けてあげようじゃーぁないですか』
『ロズワール……あなたこそ、わかってるの? レムは……あなたの使用人は、私の恩人で、あなたにとっての客人でもあるスバルを……死な、死なせてしまったのよ』
『わーぁかっていますとも。だからこーぉそ……しっかりと、話し合いの場を持たなくてはなりません。――互いの感情が、すれ違わないためにもねーぇ』
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「レム...」
エミリアが手をぎゅっと握る。
「どうして、こんな...」
ラムは、それを片目でちらりと見、前髪で隠れた方の瞳を閉じる。
「...れむ」
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『昨夜、遅くに東棟の……エミリア様の居室がある階層に、侵入者がありました。警戒石でそれを知ったレムはすぐその場に向かい、這いずり回るスバルくんを見つけました』
『そのときには、バルスはすでに呪いの影響下にあったわけね』
『はい、姉様の言う通りです。衰弱して、スバルくんは瀕死の状態でした。呪いの効果で生命力を極限まで減衰させられて、もう救い出すことはできないと判断して……』
『それで、鉄球で撲殺したのね。――あんなに、執拗に体を痛めつけて』
『エミリア様――』
『事実は事実だもの。……スバルの体は、胴体と頭がひどい状態だった。ただ介錯してあげるのだけが目的なら、もっと楽な方法があったはずでしょう。なのに、どうして』
『それ、は……』
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「...スバルを、殺すことが目的だったから、よね」
エミリアが、静かに口にする。
ラムはそれに眉を寄せるが、誰もそれに反論はできなかった。
「スバルはどうして...こんなことをされても、レムを助けようと思えるの?」
エミリアの瞳から、静かに悲しみが伝った。
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『――手元が狂ったとか、躊躇ったからとか……そういう答えが、私は聞きたかったな』
『エミリア様、どちらへ?』
『――出ていくわ。短い間だったけど、お世話になりました。あなたたちの後ろ盾がなければ、私は王選には参加できない。でも……私はもう、あなたたちを信じられない』
『信じなくても、互いに利用し合う関係としてはまだ有用なのではありませんか?ここで癇癪を起こして席を立つのは、あまり賢い選択とは言えませんよ』
『癇癪……?』
乾いた音が弾けるのを、誰も止めることができなかった。
振り切られた白い指先が、ロズワールの青白い頬を強かに叩いていた。
赤く腫れ始める頬に、たった一度の平手で息を切らすエミリア。
叩かれた側のロズワールは何のアクションも起こさないが、代わりにラムが血相を変えて立ち上がりかけるのを、
『ラム』
『ですが、ロズワール様――』
『いいんだ。君は座っていていい。エミリア様、ラムが失礼を』
『私にばかりそうやって……スバルに対しては、何も言わないのに……っ』
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ラムが、エミリアの方を気まずそうに見る。
エミリアの表情に怒りはなかった。
ただ、
「どうして……」
なにかに失望しているような、そんな顔をしていた。
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『屋敷を出て、森に戻り――何が、あなたの中に残るというのですか』
『あなたの口車に乗った私が間違ってたんだわ。償いは……贖い方は、もっと他にもやりようがあった。私がそれを間違えたから、スバルは死んでしまった』
『彼の魂は私が連れて、森で安らかに眠らせるわ。――スバルのことも、他の人のことも、どれだけ時間がかかっても私の時間を鎮魂に捧げる。それで、話はおしまい』
『スバルのところに、案内して』
『エミリア様、それは……』
『ひどい状態なの、わかってる。できるだけ元通りにしてあげて……一緒に、森へ連れていくから』
『ごめんね、スバル――私は、何にもできなかった』
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「...なるほど」
ロズワールが口元を抑える。
恐らく、スバルが死んだ全ての世界線で、ロズワールの計画は頓挫している。
ロズワールがエミリアを王にして悲願を叶えるためには、スバルの命が必要なのだと、察する。
「...君も私も、厄介な運命を背負い込んだものだーぁね」
その瞳には、少しの同情が。
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――何度、自分の愚かさを突きつけられれば、俺は理解できるのだろうか。
『デス、デス!デスデスデスデス、デス!!』
『愛に!愛を!愛で!愛こそ!愛に報いることこそ!全てなのデス!あァ!魔女よ!寵愛の魔女よ!我が愛の行く先よ!』
『ワタシの勤勉さが!怠惰であるものたちを下したことを、愛の所業と言わずしてなんと呼ぶべきデスか!あァ!我が信愛を、信仰を、揺るぎない愛を!受け入れ!受け止め!包んでいただきたいのデス――!!』
『――何が、あったの』
『すば、る?』
『どう、して……スバルが、そこに寝て……え?』
『リア――!マズイ、魔女教だ!大罪が……こんなタイミングで、なんで!』
『リア!今すぐ、今すぐだ!今すぐにここを離れるんだ!あれと……大罪司教と出会っちゃいけなかった!試練が始まる!それが課されたら、恐ろしいことになるんだ!』
『思い出した、今、やっと!あれと……あいつと会って、ようやく思い出せた!なんで、こんなことを忘れて……まだ、思い出せないこともたくさんあって……こうならない限り、思い出せないようにして……だとしたら!』
『話が違うぞ――エキドナッ!!』
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「...エキドナ……」
エミリアが、銀髪を微かに揺らす。
「...冗談じゃ、ない……」
スバルがスクリーンの中で苦しむ度、それはエミリアの心をギシギシと縛り付けていく。
スバルの苦しみはもはや、スバル一人のものでは無いのだから。
「...ごめんなさい……」
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『素晴らしいデス!なんと器にふさわしき姿か!なんと、生前の魔女の姿を思わせる容姿か!これほど、瑞々しい器が用意できているというのなら是非もなしデス!試練を!魔女因子が根付くか、それを確かめる試練を!』
『黙れ、狂人!一歩でもそこからこの子に近づいてみろ!生まれてきたことを、後悔させてやる――!絶対にだ!』
『なんで、だ。なんで、こんなときにボクは……いや、違う。思い出してきた。違う。そうだ、違う、違う!違う!ボクは……お、れは』
『パック!ど、どうしたら……どうしたらいい!?わ、たしは……スバルが、だってあんなところで……!』
『試練を!勤勉なる魂の終着点を、ここに選ぶのデス!器が満たされていては、注がれる魂に影響が出てしまうのデス!中身は、いらない――デス!』
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「...もう、めちゃくちゃかしら」
パックもエミリアも、もはやまともに戦闘などできなかった。
「...エミリアが健全に生きていくには、スバルがいないといけない...そういう、ことなのよ」
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『やっと、一番大事なことを思い出した……。これを守るためなら、契約もしがらみも何もかもどうでもいい。くだらないことに縛られてたって、今、思い出した』
『俺が何のために、こうなったのかが思い出せた。娘を守るためだって、ようやく――そのための制約がこうだっていうなら、あの性悪め』
『そんな……ど、どうして……!』
『ボクが……俺が制約を破ったから、取り立てが始まった。最初からこうなることまで織り込み済みだったのか……だとしても』
『リア、お別れだ――』
『制約を破って、もうこの体は繋ぎ止めておけない。君の傍にいることも、対価を奪われてしまって無理だ。――ごめんね』
『いや、嫌だよ、パック……だって、みんな、みんないなくなっちゃう……スバルだって、そこで……みんないないの。いないの!これで、パックがいなくなったら……わ、私、ずっと一人で……そんなの、やだぁ』
『聞きわけのないことを言っちゃダメだよ。屋敷にはまだラムがいる。ベティーが残ってる。いざとなったら、ベティーに頼るんだ。あの子は、きっとこの頼みは断れない。そう知っていて、お願いするのは卑怯だと思うけどね』
『私は!パック以外の、誰かとなんて……』
『――お行き。ボクの世界で一番大切で、可愛い、愛しいエミリア』
『無理をさせて悪かった、ベアトリス』
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「...どうして、こんな...!こんなの見たって、どうしようも、ないのに……!」
エミリアの瞳が宝石のように煌めく。
そこから悲しみが雫に姿を変え、宝石から滴る。
それは、もうどうすることも出来ない後悔の姿であった。
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『もう、立てなくなってしまいましたか?スバルくん』
『――起きてください、スバルくん。顔を見せてくれると、嬉しいです』
『……嘘だ』
『いいえ、嘘じゃありません』
『いるはずない』
『スバルくんが望んでくれるなら、いつだって傍にいます』
『俺が一番どうにかしてほしいって、そう思うときに限って……いつも、お前がいてくれるなんてこと、あるもんかよ……そんな、都合のいいこと……っ』
『スバルくんにとって、一番都合のいい女でありたいと、常に思っていますから』
『──レム』
『はい。スバルくんの、レムです』
『れむぅ……』
『はい、レムです。スバルくんが傍にいてほしいとき、手の届く位置にいるお役立ちメイドですよ』
『おま、え……』
『レムは、すげぇな……』
『ありがとうございます。スバルくんも素敵ですよ』
『大丈夫ですか?疲れて、しまいましたか?』
『どう、だろ……俺は、疲れてんのかな……まだ何も、やり遂げてないのに』
『俺が弱いからだ』
『俺の力が足りないからだ』
『俺がもっと強くて、もっと賢くて、もっともっとやれる男なら……みんな、あんな風に苦しんだり、悲しんだり、辛い思いをしなくて済んだんだ……』
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「どうして、いつもひとりで背負い込んでしまうんですか。賢さも強さも、いくらでも手を貸してくれる誰かがいるでしょうに。苦しみも悲しみも辛さも、誰よりもあなたが一番味わってるでしょう」
オットーが悲しそうに唸る。
「...スバル様、その子は……」
フレデリカが、かすかに瞳を細める。
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『俺は、誰も救えてなんて……いなかったのか?』
『俺が死んだ後にも世界が続いていたってんなら、俺は何度、何回、何人……みんなを、見殺しにしてきたんだ?』
『俺は何回、お前を死なせた?俺は何回、お前を……殺せばいいんだ?』
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「...それは違うよ、スバル。スバルが皆を見殺しにしたんじゃない。私たちが、スバルを見殺しにしちゃったの。いつだって、手の届かない場所で誰かを救ってしまうから」
それだけではないのだ。
それだけでは──
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『大丈夫です。大丈夫ですよ、スバルくん』
『なに、が……何も、大丈夫じゃ……ないだろ……っ』
『お前は……俺を……っ!』
『――愛しています』
『愛しています、スバルくん。――だから、全部、大丈夫なんですよ』
『こ、たえに……なってねぇよ……』
『なってますよ。どうして、レムがここにいるのか。どうして、レムがスバルくんを許すのか。どうして、レムがスバルくんを抱きしめるのか――全部、それだけです』
『大変だったんですね、スバルくん』
『一人で、こんなに傷付いて……辛かったですよね、スバルくん』
『もう、こんな悲しい思いばかりしなくて、大丈夫ですよ』
『スバルくんの辛いところ、苦しいところ、弱いところ、全部、レムが代わります』
『スバルくんが守ろうって、戦おうって、やり抜こうって……そう思っていたこと全部、レムに預けてください』
『何もかも全て、スバルくんが背負う必要なんてどこにもないんです。――全部、レムに任せて、今はゆっくり休んで、眠ってしまっていいんです』
『レムの大好きなスバルくんを、もう一度、見せてください』
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「...これは、レムじゃないわね」
「えっ、どうして分かるの?」
「分かりますよ、エミリア様。レムは、ラムの妹ですから」
姿かたちを似せたとしても、心に疼く感覚が違うと言っている。
「...あの時見たレムは、もっとしっかりしてた」
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『――お前、誰だ』
『え──?』
『お前は誰だって、そう、聞いてんだよ』
『スバルくん、何を……誰って、そんな……』
『俺が……どうしようもないどん詰まりにいて、誰かにどうにかしてほしいって本気で思って、もうダメかもしれないって諦めそうになって……そんなときに、お前がいてくれたらって、本気で思ったよ』
『お前ならきっと、こうやって行き詰まって、膝を抱えて、過ぎたことにウジウジと悩み続ける俺に寄り添って、優しくしてくれるって、そう思ったよ』
『そうして、お前は俺の弱音を聞いて、泣き言を吐き出させて、涙も何もかも涸れるぐらいまで絞り出させて……』
『――さあ、立ってくださいって、そう言うんだ』
『もう休んでくださいなんて、言わない』
『諦めて、全部レムに任せてくださいなんて、言わない』
『俺を好きで、俺も好きで、俺に優しくて、俺を愛してくれて――世界で誰より、俺に厳しくて、俺に甘くない女が、レムだからだ!』
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「...バルスにしては分かってるじゃない、及第点よ」
「...好き……」
晴れやかな顔をしたラムと、対照的に頬を膨らすエミリアがスクリーンを見る。
そこに光が差し込んだ気がしたから。
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『違います。聞いてください、スバルくん!レムは、レムは違うんです。ただ、レムはスバルくんが苦しんでいるのを見ていられなくて……だから、今はただ、辛いことを忘れて休んでほしいって、それだけで!』
『弱いところも見せる。脆いところだって見せる。どうしようもなく、ちっぽけな野郎なんだってところだって見せてやるさ。――でも、諦めるとこだけは見せねぇ』
『だから、俺の弱さはレムのものだ。レムが俺の弱さを根こそぎ包み隠してくれるから、俺は代わりに諦めだけはしがみついてでも外に出さない』
『出ていけよ、紛い物。――俺のレムの顔で、声で、俺を甘やかすんじゃねぇ!』
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「さすがスバルだ、偽物だと気づけるとは...」
「本当にスバルは凄いね、僕は加護があるから頑張れば気付けると思うけど...」
さらっと言うあたり、ラインハルトは中々に空気が読めない。
空気を読む加護も授かった方がいいだろう。
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『き、聞いて……た、話と、ち、違う……よ?』
『お前は……誰だ?』
『し、『色欲の魔女』……カーミラ、だよ?はじ、はじめまして……ん』
『この、わけのわからない空間は……エキドナの夢の中、か』
『合ってる、けど違う……かも。エキドナちゃんは、『試練』を見て、るから……『試練』はいつでも、夢、みたいな、うん……なの』
『イマイチ要領を得ないっつーか、いや、それ以前に……』
『やめ、ぶ……ぶたない、で……』
『そんなことしねぇよ。そんなことはしねぇけど……さっきのは、何のつもりだ』
『さっき……の?』
『レムの格好を真似て、俺の前に立ったことだよ!あれが、お前の能力か!』
『変身とは、他の魔女たちに比べたらずいぶんとオーソドックスな力だったな』
『へ、変身なんて、し、してない……よ?わ、私が、別の誰か、に見えたんなら……そ、れは……あ、あなたが、そう、見たがってたから、だよ?』
『なに?』
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「色欲...カペラと似た能力ね」
「...それにしても、こんな真似冒涜かしら。到底許せる事じゃないのよ」
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『だか、ら……私、は、あなたに、会いたくなか……なかったのに。え、エキドナちゃんが行ってって、そう言うから……嘘も、つかれたし……』
『お前……お前、自分が何をしたのかわかってやがるのか……?』
『エキドナちゃん、が……あ、甘やかせばいいって、言ったの、に……そしたら、うまくいくって……なのに、こんな風に……や、やだって、言ったのに』
『聞けよ……!!』
『み、みんなで……よってたかって、わ、私を、いじ、いじめるんだ……そう、なんだ。エキドナちゃんも、そ、そうなんだ。そうやって、ひどい……ひど、い』
『聞けって言ってんのが、わからねぇのか――!!』
『――それ以上は、命に関わるよ』
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スバルの罵声に、エミリアが肩を揺らす。
「びっくりした……」
「カーミラの能力に飲まれかけているのよ...!」
「能力に……」
エミリアが不安げに胸の前で手を繋ぐ。
「大丈夫、よね」
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『荒療治だが、舞い戻ってこれてなによりだ。――カーミラと、色欲の『無貌の女神』と向き合っていると、人は呼吸を忘れる。究極的には、心臓の鼓動さえ』
『何を、何を企んでやがったんだ――エキドナ』
『決まっているだろ? ――魔女なんだ。悪巧みだよ』
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「...エキドナって、もしかしたらすごーく素直じゃないのかもしれない」
「...その感想は些か幼稚すぎる気もするかしら」
「私と話した時はもっと優しかったと思うけど...」
「...エミリアの鈍感さには時々驚かされるのよ」