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所詮は魔女/Novel by 春風

所詮は魔女

4,552 character(s)9 mins

短いですが更新頻度に免じて許してください
大兎まで何話かかるのか
もう少しセリフ省こうか迷ってます
話の流れが組めるくらいまでなら許容範囲ですかね

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『思ったよりもずいぶんと早かったね』
『ようこそ。――自分の過去と向き合う時間は、君になにをもたらしたかな?』
『まず、言っておきたいことがあるんだが』
『うん、聞こうじゃないか。君がなにを思い、なにを考え、なにを話してくれるのか。ボクはとてもそれに興味があるな』
『お前、その制服似合ってるな』
『ははっ、ありがとう。そう思ってくれると、ボクも君の記憶から再現した甲斐があるよ。君の記憶の中でもっとも鮮明で、見た回数が多かった格好だ。お気に入りだったりするのかな?』
『俺はスカートは短いのより長いのが好きだ。めくる時間が長い方が想像力を掻き立てられるからな』
『なるほど。では、次は君にめくられてもご期待に沿えるよう、長いスカートを穿いておくようにしようじゃないか』
『そんな機会ないけどな! あと、別に俺が大好きだからみんな制服着てるわけじゃねぇよ。ここではその格好する決まりなの。近衛騎士とかもそうだろが』

「なるほど…そういうものか」

『もっと、驚いてくれるものと思っていたんだけどね』
『隠す気があるんなら、背景に対してももちょっと手をかけるべきだったな。ここにくるまでの間にも、通学路にも、人っ子一人いないなんて状況そうそうあるわけねぇ』
『俺にとって都合がよすぎる世界だったよ。お前にとって望んだ姿がおがめなかったのはざまぁみろとしか言いようがないけど』
『いやいや、それもまた一興。試みて、結果を得られることこそがボクにとっての幸福なんだよ。結果の如何はこの際、あまり関係がないのさ。もちろん、その後に繋がるかどうかの点を考慮に入れればまた少し話は変わるけどね』
『それで、この世界はなんなんだ?俺は確か、『試練』とやらが行われてる最中のお前の墓に入って、それで……』
『資格を持つ君が入ったんだ。当然、『試練』が君に対しても始まっただけのことじゃないかな。聞かなかったかい?まず、過去に向き合えと』
『誰しも、過去に後悔を抱えている。日々を生きていれば、後悔を得ない存在などあるはずもない。今日は昨日のことを、昨日はさらに過去のことを、そして明日になればきっと今日のことを後悔している。――人には、後悔する機能があるからね』
『悲観的な考え方すんなよ。その後悔ってやつを反省に換えて、昨日の反省で今日をどうにかして、今日の反省を明日の突破口にするのも人間の機能じゃねぇか』
『――その通り!』
『単なる言葉遊び、所詮はちょっとした考え方の違い。だが、過去を悲観するか楽観するかで答えの出し方は大きく異なる。大抵のものは過去を悲観し、覚えている悪い記憶ばかりを振り返り、歩いてきた道のりを否定してしまう。そして否定したそれを目にすることを嫌がり、蓋をしてなかったことにしてしまう』
『仕方のないことなんだ。昨日の自分は、今日の自分より絶対に無知なのだから。今日の自分は、明日の自分より絶対的に知っている知識が少ないのだから。知識の総量、思い出の数一つであっても、過去は現在と未来に劣っている。それが事実だ!』
『故に過去と向き合ったとき、あるいは向き合うべき過去に出会ったとき、人は迷い、惑い、嘆き、苦しみ、悲嘆し、悲観し、その上で答えを出す。その上で出た答えであるのなら、ボクはどんな答えであっても肯定しよう。背を向けて出した答えでも、前のめりに手を伸ばして得た答えでも、過去を乗り越えた証には違いない』
『それが、この『試練』の目的か』
『その通り。己の過去と向かい合い、その過去に対してなにがしかの答えを出すこと。答えを出すことを恐れて、嫌がって、頭を抱えているばかりならば『試練』など永久に越えることはできない。だが、過去を肯定し、あるいは否定し切ることができるのであれば、ボクは賞賛を持って見送ろう。それが、第一の『試練』だよ』

「過去…」
「急ッに饒舌になりやがったなァ?」
「少し怖いですわ」

『お前の言ったことが『試練』を越える条件なら、俺は『試練』を乗り越えたって考えていいのかよ』
『一部始終を見させてもらったが……十分な結果を得られたとボクは思っているよ』
『過去のトラウマの象徴と、過去の罪悪感の依り代と、そのどちらにも対して君は答えを出した。そのことを、ボクは賞賛でもって送り出したい』

「賞賛…ねぇ」
ガーフィールが睨めつけるような視線を送る。
どうにも、強欲との相性は最悪だ。

『ただ惜しむらくは、過去と向き合ったことでの君の煩悶をより深く味わうことができなかったことかな』
『あぁ?』
『答えが出ることをボクは好むが、その答えを出すために悩む途上にも知識への礼賛があるとボクは考えるのでね。悩んで、足掻いて、その上で君が答えを出すのを楽しみにしていたんだが……』
『生憎と、それを楽しむためにはこの『試練』は少々、出遅れてしまったらしい。君が己の内側で、過去に対して抱えていた負感情に一つの答えを出してしまったあとだったようだからね』
『ああ……そういうことか。そういうことなら、確かにご愁傷様だったな』
『どうしようもなくダメな俺を、英雄って言ってくれた子がいた。今さら過去と向き合うまでもなく、俺は自分のダメさを受け入れてたってわけだ』
『諦観とは別の形で、だね。ボクとしては思惑を外されて面白くない限りだ。君にそうした子と外で会ったら、魔女が恨み言を言っていたと伝えてほしい』

「笑えない冗談ですわ…」
「魔女からの恨み言など、恐ろしくて叶わないよ」

『お前、さっきは俺の記憶を頼りに再現したとか言ってたけど……俺の頭の中を覗いたんなら、それを言った子だってわかってるんじゃないのか?』
『期待されているところ悪いけどね。強欲であるボクにだってやっていいことと悪いことの線引きぐらいはあるさ。この『試練』に必要な情報を吸い取りはしたけど、それ以外の部分に関しては手つかずだよ。知識だけごっそりと抜き取って盗み見てなにが面白いんだい?語り聞かせてもらう楽しみを、自ら捨てる気にはならないね』
『この『試練』に必要な部分だけ抜き出したって……じゃあ、その制服はなんのために抜き出して……』
『それはもちろん、この学校という建物を再現する上で必要な情報だったから引き出したまでだよ。異世界という未知の光景を知ってしまい、そこを生きる女の子たちがどんな格好をしていて、ボクに似合うだろうかとかそんなことを期待して抽出したりしたわけじゃ決してないんだぜ』
『聞くまでもねぇけどさ。やっぱり、この世界ってのは……』
『ああ、そうだよ。ここは君の記憶を頼りに、限りなく忠実に現実をなぞらえて再現した虚構の世界だ。だからもちろん――君の本当の両親は、君がどこでなにをしているかなんて知らないまま、行方知れずになった息子を心配しているのだろうね』
『君の知らない情報が、いくつかもたらされたかもしれないが……本当に、君はそれを知らなかったのかな?父と母の共通の知人から送られてきた手紙を、一度も目にしていないと断言できるかい?父の幼い頃を知る老人と、君は一度も顔を合わせたことがないのかい?君が思っていたのと異なる父親像を、君は本当に一度も思い描いたことがなかったのかい?』
『知られていないと思っていた心の内を、君は本当に隠し通せていると思えていたのかな?知ってもらって楽になりたいという本心を、日常の端々から漏らさずに固く封じ込められていられた確信がどこかにあったのかな?それでも愛してほしいという利己的な感情を、虚構の父に、母に求めていないと断言できるだろうか?』
『あまりにも理想的で、都合がよすぎると――そうは、思わないかい?』
『うまくいかなかった意趣返しで、俺の親を貶めるんじゃねぇよ、魔女』
『……なに?』
『俺の答えは全部伝えた。父さんもお母さんも、それを受け取ってくれた。言えなかったこと全部言って、俺は頑張れって言われたんだ。いってらっしゃいって、そう言われたんだよ』
『あのときの声も、笑顔も、全部が全部、俺の想像なんてぶっちぎってた。――俺の親は、俺の想像に収まるような器じゃねぇよ。舐めんな』
『俺は父さんとお母さんに、全部伝えられた。そうしてケリつけて戻ってきたんだ。――お前の言葉になんざ、惑わされてやらねぇよ』
『まったく……出た答えの正否に悩む姿すらも見せてくれないなんて、君はなんて魔女泣かせな人間なんだろう。まったく、素晴らしいな』

「ふふ、スバルのそういうところ、すごーく好きよ」
「ベティーもかしら」

『本当の意味で『試練』は終わりだ。君は魔女の魔の手をからくも逃れた。それを賞賛して……戻る前に、聞きたいことでもあれば答えようと思うけど?』
『そうか、じゃあとりあえず一個』
『うん、言ってごらんよ』
『お前、『試練』にゃ無関係とか言ってたはずだよな。……どこがだよ!がっつり関わってるどころの話じゃねぇじゃねぇか、首謀者じゃねぇか。なにが関与してないだ、どの面下げてそんな嘘八百並べ立てられたんだよ!』
『魔女の言葉をそのまま受け止めるだなんて、無防備で無警戒にもほどがあるんじゃないかな。別れ際にも言っただろう。ボクは悪い魔女なんだぜって』
『ああ、そうかい。じゃあ、そんな悪い魔女様の言葉なんざ一つも信用ならねぇから聞きたいことなんざねぇよ。……これで、『聖域』の封印は解けるのか?』
『後半で意見をひるがえすあたり、なりふり構わなくて実によろしい。残念だが、これで『試練』が終わるほど易しいものじゃないよ。『試練』は全部で三つだ。この第一の『試練』を乗り越えたのなら、さほど難しくないと思うけどね』

「…そうね。いちばん悲しいのは、第一の試練だったもの」

『なあ、エキドナ』
『なんだい。ひょっとして、最後に一発殴らせろとでも?まあ、それに値する所業をした自覚はあるからね。君がそれを望むのなら、甘んじてそれを受けてあげようと思う気持ちがないではないよ。ただ、ボクもこれでも女の子なものでね。できれば顔は避けてもらいたいんだが……』
『ありがとな』
『たとえ本物じゃなかったにしても、本当の二人に伝わってなかったとしても、二人に伝えたいことを言えたのはお前のおかげだ。クソみたいに下世話なお前の好奇心の結果でも、もう会えないと思ってたはずの人たちに会って、別れが言えた』
『それだけは、感謝してる。だから、ありがとうだ』
『……君という人間が理解できなくて、とても興味深いよ。恐いぐらいだ』
『俺みたいにちっぽけな男捕まえて、魔女様がずいぶんと弱気なこった。まぁいいさ。そんで、出口はどこだよ』
『難しいことはない。もうすでに、この世界の消失も始まっている。この建物以外はまともに構築されてもいない。――建物を出れば、そのまま君は元の墓所の中に戻っているはずさ』
『そりゃずいぶんと便利なもんだ。――んじゃ、また次の『試練』のあとでな』
『……大事なもんは全部、もう教えてもらったもんな』

「スバル…」
エミリアの瞳が陰る。
この後も、エミリアはスバルに随分と迷惑をかけてしまったから。

Comments

  • シン
    November 27, 2024
  • 世界よ、金髪ロリを愛せ
    November 7, 2024
  • 小説好き
    November 7, 2024
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