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がんのAI相談 4割にリスク?“致命的な誤情報”を避ける注意点

医療・健康

みなさんはAIに悩み相談しますか?

がんの治療を続ける84歳の男性は、スマホでAIに次のように質問しました。
「がん患者が食べてはいけないものを教えて」

AIは「生魚、生野菜は避けて」と回答。
しかしこの答え、医師の見解とは異なりました。

24時間なんでも相談できて便利な生成AI。その落とし穴と上手なつきあい方を探ります。

(首都圏局記者 和田杏菜/ディレクター 申奎鎬、機動展開プロジェクトディレクター 藤松翔太郎/記者 斉藤直哉)

乳がんの患者 「情報多すぎてパニックに」

ことし4月下旬に横浜市内で開かれた、AIを使った医療情報の勉強会。
参加したのは、がんの患者たちです。

1か月前に乳がんと告げられた40代の女性は、関連する情報をネットで調べ続けていると明かしました。

乳がんと診断 40代女性
「1人だけの空間で画面に向かって自分が眠りに落ちるまで延々と調べていて、頭の中がおかしくなりそうでした。情報過多すぎて、『どれをチョイスすればいいのか』というのでも、またパニックになってしまって」

大手通信会社の研究機関の調査によると、生成AIを利用する人は去年27%でしたが、ことしは51%まで上昇。

さらに民間の調査会社のアンケートでは、生成AIに悩みの相談をしていると答えた人のうち、半数以上が「体の健康」について相談していました。(アスマーク 調べ)

患者会でも増える 「AIで治療法調べた」

いま、がんの患者の間でも治療法などについてAIに聞く人が増えているといいます。

都内に住む福智木蘭さん(74)は、希少がんの1つ「頭頸部がん」になった経験があり、当事者が相談できる場が少ないことから、10年前に患者会を立ち上げて毎月、お茶会を開いています。

活動を続けるなかで、最近増えてきたのが 「AIで治療法や手術後の生活について調べた」 という患者たちの声です。

患者会代表 福智木蘭さん
「患者たちは、本当にわらにもすがる思いで治療法などをついつい調べます。それでAIがいろんなことを回答してくると信じてしまう。医療の知識が少ないので、AIの情報が本当に正確なのかどうか見極めるのは難しいんです」

AIによる“誤情報” 医師も直面

生成AIを利用する際にどんな点に注意したらいいのか。

国立がん研究センター中央病院で、薬物療法にあたる後藤悌医師が指摘するのは、検索すると画面の1番上に表示されることが多いAIの回答についてです。

例えば、肺がんの再発を防ぐ薬をAIに聞くと…。

後藤医師が実際に使っている薬と現在はあまり使わないという薬が一緒に表示されました。

この「AI概要」は、検索ワードを入力すると、AIがインターネット上の情報を集めて瞬時に回答する仕組みです。
国や学会、論文などに基づいて正しい情報も多く表示される一方で、個人のブログやSNSの投稿などからも引用しているため、中には、科学的根拠が乏しかったり、情報が古かったりすることがあるということです。

実際、後藤医師が半年ほど前に経験したケースでは、がんを取り除いた肺がんの患者が経過観察に入るタイミングで、「AIで調べた薬を使いたい」 と訴えてきました。

しかしそれは、この患者の状態に適した薬ではなかったといいます。

国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科 後藤悌 医師
「『この薬が使えますか?』と相談を受けましたが、その薬は再発して転移のある患者かつ、抗がん剤が効かなくなった人に限定して使える薬なので、そのタイミングで使うことは医学的には正しくないという状況でした。

患者さんが調べた内容が、必ずしも患者さんにとってベストの内容ではないことはしばしばあって、私たちが知っていて説明できるものもあれば、聞いたこともないものを(患者が)見つけてくることもあります。
AIの回答は一般論だけが書かれている場合があるので、例えば10書いてある薬のうち、患者に合う適切な治療につながるものは、1つか2つくらいしかないというケースもあります」

がんに関するAI概要を調査 「リスクあり」が約4割?

では、AIが表示する医療情報には、どれくらい注意が必要なのか。

NHKでは、がん治療に詳しい医師とウェブ検索の専門家の協力を得て、「がんの種類」や「治療」「予防」など、がんに関連して検索される多くの言葉を検索サイトに入力して、実際に表示された「AI概要」を記録。
専門家の監修を経て、その正確性を分析しました。

その結果、1683の検索パターンで表示された「AI概要」のうち、182件が「問題あり」、486件が「要注意」となり、全体のおよそ40%に「リスクがある」ことがわかりました。

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調査結果などをまとめた関連記事「医療 健康相談もAIで? がん情報では誤回答も どうつきあう?」

グーグルはNHKの取材に対し、次のようにコメントしています。

グーグル
「特に健康のような分野において、AIによる概要の品質向上に多大な投資を行っており、その大部分で正確な情報を提供しています。AIによる概要において一部の文脈が欠けている場合は、包括的な改善に努めるとともに、必要に応じてポリシーに基づいて適切な措置を講じています」

AIの回答を医療者と一緒に確認

AIによる医療情報とどうつき合っていけばいいのか。
在宅医療の現場で始まっているのが、AIの回答を患者と医師、看護師が一緒に見て確認する取り組みです。

横山太郎 医師(左)と鈴木啓さん(右)

総務省の調査によると、スマホを保有する世帯の割合は60代後半が92.6%、70代前半が88.8%、75歳以上が69.8%と高齢者でも高い割合となっていて、自身でインターネットやSNSで情報を調べるようになっています。

横浜市内のクリニックの横山太郎医師が訪れたのは、鈴木啓さん(84)の自宅です。

進行したがんの治療を続けながら、在宅で療養している鈴木さんは、数日前に病気の影響で食が細くなり、急激に体重が減少したばかり。
刺身などの好物であれば食が進むと感じ、食べられそうな料理についてスマホで検索するようになっていました。

横山医師と看護師が見守るなか、鈴木さんはAIにこう質問しました。
「がん患者が食べてはいけないものを教えてください」

すると、表示された回答は…

AIの回答
「生魚、生野菜などのものを避け、加熱したものを食べるといいです」

いずれも鈴木さんの好物でしたが、横山医師は次のように指摘しました。
「“なま物”は食べてもいいと思います。現在は治療中であっても『避けなくてもいい』とされています」

実はこのときAIが示したのは、古い情報をもとにした回答でした。

以前は、なま物の摂取について、「治療中は慎重にすべき」とされていました。
しかし研究が進んだことで、いまは医師が制限する場合を除き、「食べてもいい」という指針に変わったのです。

去年、専門の学会が患者向けに示したガイドラインには、「栄養状態の維持が治療を乗り切るための重要な要素であり、食べたいときに、食べられるものを食べたいだけが基本です。症状がなければ、食事は神経質にならなくて大丈夫です」と記されています。

横山医師からそのことを聞いた鈴木さんは、「ひとりでAIの回答を先に見ていたら、なま物を食べるのをやめていたかもしれない」と振り返りました。

横山太郎 医師
「『AIでこんなふうに書いてあるんだけど、どうかな?』と周りに聞けるコミュニティー、関係性みたいなものを多様に持つ必要があると思います。誰かと一緒に情報を見ることができる仕組みを社会につくっていくことが、すごく大事になるのではないでしょうか」

独自のAIで信頼できる情報を届ける

信頼できるAIをつくる取り組みも始まっています。
横浜市が去年12月に導入したのは、「よこはまランタン」というがん情報に特化した無料のAI相談サービスです。

在宅がん療養財団が開発したAI相談サービス「ランタン」をベースにつくられたもので、患者の質問に答える形でAIが回答を示しますが、そのもとになる情報が、ほかとは異なります。

公的機関の情報や学会のガイドラインなどに限定して学習させ、科学的根拠のある情報が表示されるようにしているといいます。

この「よこはまランタン」は、市内で行われる検診や助成制度についても回答できるように設計されていて、横浜市は今後も定期的に情報を更新するなど、機能や利便性の向上につなげていきたいとしています。

横浜市がん・疾病対策課 三室直樹 課長
「人生の選択をするときに誤った治療に向かうような情報が出てくることを非常に心配しています。医学的な根拠や行政としての公平性などがしっかりと確保できるものを今後も提供していきたいと考えています」

AIとどうつきあえば? 3つの心構え

医療現場でのAI活用に詳しい医師の大塚篤司さんは、「AIによる医療情報の正確性は向上しているものの、患者にとっての致命的な誤情報には注意が必要」だとしたうえで、生成AIと上手に付き合っていくための心構えがあると話します。

近畿大学医学部 大塚篤司 医師

正確性向上も薬の名前や数字には注意
「生成AIの回答は正確性が上がってきている一方で、注意が必要なのは、例えば薬の名前。高血圧の薬を糖尿病の薬と答えるケースもある。数字や割合をでたらめに答えることもあるので、すべての回答が正しいと思わないほうがいい」

頭の整理に使うのは有効
「AIの得意分野は、気持ちや頭の整理で壁打ち相手になること。外来で言われたことについて、気持ちの整理をするために使ったり、次の外来の前に主治医に何を聞くか質問リストをつくったりするときには有効」

責任はAIを利用する人間
「なんでも答えてくれるAIですが、忘れてはいけないのが責任は取ってくれないこと。引用元が信頼できるものなのかどうか、古い情報に基づいたものではないのかを確認したり、実際に医療者に聞いたりすること。AIの情報をうのみにせず、治療法はあくまで参考にしながら自分の責任で決めることが大切」

AIは現時点では、セカンドオピニオンのレベルには達していないと考えられるため、特に治療法や薬の処方については、主治医に確認する必要があるということです。

『がんの話をしよう』メッセージをください

ことし、日本のがん対策の根幹である「がん対策基本法」の成立から20年となります。

医療提供体制の整備など、進んだ面がある一方で、まだまだ社会に足りないことは多くあります。

ぜひ、皆さんの話を聞かせてください。

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「がん」に関する体験談・情報など 皆さんの声を聞かせてください

首都圏局記者
和田杏菜
2016年入局
甲府局、山形局を経て現所属
医師不足対策、医療DX、がん患者などを取材

首都圏局ディレクター
申奎鎬
2017年入局
大阪局を経て現所属

機動展開プロジェクトディレクター
藤松翔太郎
2012年入局
仙台局、福島局、クローズアップ現代など経て現職
フェイク対策やがんに関する取材を続ける

機動展開プロジェクト記者
斉藤直哉
2010年入局
岡山局、福岡局、科学文化部、ネットワーク報道部などをへて現所属
データやデジタル技術に関して取材

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