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彼を支える自己嫌悪/Novel by 春風

彼を支える自己嫌悪

5,771 character(s)11 mins

スバルくんの考え方はちょっと分かっちゃうのが辛いところですね。
今回は上手く書けなかったのでちょっと長いです。

有識者に聞きたいんですけど、オボレルスバルくんの土下座?蹲ってる構図?って元ネタどこか知りませんか?
すごく探してて

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『レムは、スバルくんと逃げることはできません』
『未来のお話は、笑いながらじゃなきゃダメなんですよ?』
スバルが誰かを見捨てるなんてレムはそれを許さない。

「…そうね、スバル、そんな顔じゃダメよ。そんな顔で語る未来が、楽しいはずないもの」

『今、は……笑えないかもしれない、けど……ほら、いざ実行に移してみたらきっと笑えるはずで……うん、そうなんだよ。だから、あの……』
『……レムも、考えてみました』
レムは語る。
スバルとの幸せな未来を。

「…本当に、こんな未来が来たなら、どんなに幸せでしょう?」
悲しく笑う。
それが叶わないことを知っているから。

『スバルくんが笑って、その未来を望んでくれるなら……レムはそうやって死んでも良かったと本気で思います』
『スバルくんと生きていけるなら……スバルくんが、逃げようと思ったその場所にレムを連れていこうと思ってくれたことが、今は心の底から嬉しい。嬉しいです。――でも、ダメなんです』
『だってきっと、今、一緒に逃げてしまったら……レムが一番好きなスバルくんを置き去りにしてしまうような気がしますから』

「…そうね、大好きだからこそ、変わってしまっては意味が無い。ラムにはレムの気持ちがわかるわ」

『スバルくん。なにがあったのか、レムに話してください』
『話せないのなら、信じてください。きっと、レムがどうにかしてみせます』
『……でも、せめて今は戻りましょう?ゆっくり時間をかけて、落ち着いて考えればいい考えも浮かぶかもしれません』

「…信じてください、なんて……どうにかしてみせる、なんて……レムは、どこまで自分勝手なのでしょう。スバルくんがここまで追い詰められてしまったのは、レムが弱いからなのに」
レムの言葉に、エミリアが息を飲む。
「……スバル、ごめんね」
それは、優しさと、少しの後悔が滲んでいた。

『もう、悩んだんだ……考えたんだ。苦しんだんだ……だから、諦めたんだ』
何かをしても、何もしなくても、エミリアやレムは死ぬのだから。
『――諦めるのは簡単です。でも』
刹那、スバルの全身に言い表しようのない激情が宿る。
『諦めるのは……簡単……?』
『スバルくん?』
『ふざ、けるな……ッ!』
それは、魂からの叫びだった。
『諦めるのが、簡単なわけねぇだろうがぁ!!』

「…そうだね、スバル。諦めるのは、諦めないことよりも、よほど辛いことだ。」
負けるとわかっていても、負けを認められないことがあるように。

『俺がなんにもしないで、なんにも考えないで、ばっさり全部切り捨てて、あっさりとなにもかも投げ捨てて、それで諦めてるんだって、お前はそう思うのか!?』
『諦めるのだって、簡単なんかじゃなかった……!戦おうって、どうにかしてやろうって、そう思う方がずっと楽だったよ……!だけど、どうにもならないんだよ……道がどこにもないんだ!諦める道にしか、続いてないんだ……!』

「…白鯨に、怠惰……スバル1人で背負うには、大きすぎるかしら」
彼一人の背中に、運命は命を乗せすぎているのだ。

『スバルくん』
『諦めるのは簡単です』
『でも』
『――スバルくんには、似合わない』
『スバルくんがどんなに辛い思いをしたのか、なにを知ってそんなに苦しんでいるのか、レムにはわかりません。わかります、なんて軽はずみに言えることじゃないのもわかっています』
『でも、それでも、レムにだってわかっていることがあります』
『スバルくんは、途中でなにかを諦めるなんて、できない人だってことをです』
『レムは知っています』
『スバルくんは未来を望むとき、その未来を笑って話せる人だって知っています』
『レムは知っています』
『スバルくんが未来を、諦められない人だって、知っています』
『ちが……俺は、そんな人間じゃない……俺、は』
『違いません。スバルくんはみんなを……エミリア様も、姉様も、ロズワール様や他の人のことも、諦めてなんかいないはずです』
『諦めた、諦めたよ。全部拾うなんてどだい無理なことだった……俺の掌は小さくて、全部こぼれ落ちて、なにも残らない……ッ』
『いいえ、そんなことはありません。スバルくんには――』
『――お前に!俺のなにが!!お前に俺のなにがわかるって言うんだ!?』

「…スバル…」
スバルの痛いほどの自己嫌悪が、エミリアには分かる。
スバルは、自分に期待していないのだ。
自分が嫌いで、でも、同じくらい自分の命が可愛くて。
「…ごめんね」

『俺はこの程度の男なんだよ!力なんてないのに望みは高くて、知恵もないくせに夢ばっかり見てて、できることなんてないのに無駄に足掻いて……!』
『俺は……っ!俺は、俺が大嫌いだよ!!』
いつも笑顔の下に隠していた本音が、顔を出す。
『いつだって口先ばっかりで!なにができるわけでもねぇのに偉そうで!自分じゃなにもしねぇくせに、文句つけるときだけは一人前だ!何様のつもりだ!?よくもまぁ、恥ずかしげもなく生きてられるもんだよなぁ!なあ!?』
『空っぽだ。俺の中身はすかすかだ。決まってるさ……ああ、当たり前だ。当たり前に決まってる!俺がここにくるまで、こうしてお前たちに会うような事態になるまで、なにをしてきたかわかるか!?』
『――なにも、してこなかった』
『なにもしてこなかった……なにひとつ、俺はやってこなかった!あれだけ時間があって! あれだけ自由があって!なんだってできたはずなのに、なんにもやってこなかった!その結果がこれだ!その結果が今の俺だ!』
『俺の無力も、無能も、全部が全部!俺の……腐り切った性根が理由だ……ッ!なにもしてこなかったくせに、なにか成し遂げたいだなんて思い上がるにも限度があんだろうよ……怠けてきたツケが、俺の盛大な人生の浪費癖が、俺やお前を殺すんだ』
『そうさ、性根はなにも……この場所で生きてくことになったって、そう思ってもなにも変わっちゃいなかった。あのヴィルヘルムの爺さんは俺のそこんとこも、きっちり見抜いてやがった。そうだろ?』
『強くなろうとしてたわけでも、どうにかなろうと思ってたわけでもねぇ……俺はただ、なにもやっていないわけじゃないんだって、努力しているんだって……そうやって、わかりやすいポーズを取って、自分を正当化してただけだ……』
『しょうがないって言いたい!仕方がないって言われたい!ただそれだけだ!ただそれだけのために、俺はああやって体を張ってるようなふりをしてたんだ!お前を付き合わせて勉強してたのだって、そのばつの悪さを誤魔化すためのポーズだったんだよ!俺の根っこは、自分可愛さで人の目ばっかり気にしてるような、小さくて卑怯で薄汚い俺の根っこはなにも!なにも、変わらねぇ……』
『……本当は、わかってたさ。全部、俺が悪いんだってことぐらい』
『俺は、最低だ。……俺は、俺が大嫌いだよ』

スバルの、刃物を突き刺すような言葉は、紛れもなく彼の本音なのだろう。
彼は自分が嫌いで、自分を最低の生き物だと思っている。
「…違うよ、スバル。」
「…みんな、皆そうなんだよ。自分が可愛いのも、嫌われたくないから隠すのも。」
スバルは人の短所を許せるのに、自分にはそれが出来ない人なんだ。

『レムは知っています』
『スバルくんがどんなに先の見えない暗闇の中でも、手を伸ばしてくれる勇気がある人だってことを』
『スバルくんに、撫でられるのが好きです。掌と髪の毛を通して、スバルくんと通じ合っている気がするんです』
『スバルくんの声が好きです。言葉ひとつ聞くたびに、心が温かくなるのを感じるんです。スバルくんの目が好きです。普段は鋭いんですけど、誰かに優しくしようとしているとき、柔らかくなるその目が好きです』
『スバルくんの指が好きです。男の子なのに綺麗な指をしていて、でも握るとやっぱり男の子なんだって思わせる、強くて細い指なんです。スバルくんの歩き方が好きです。一緒に隣を歩いていると、たまにちゃんとついてきているか確かめるみたいに振り向いてくれる、そんな歩き方が好きです』
『スバルくんの寝顔が好きです。赤ん坊みたいに無防備で、まつ毛なんかちょっと長くて。頬に触れると穏やかになって、悪戯で唇に触れても気付かなくって……すごく胸が痛くなって、好きです』
『スバルくんが自分のことを嫌いだって、そう言うなら、スバルくんのいいところがこんなにあるって、レムが知ってるってことを知ってほしくなったんです』
『お前はわかってないだけだ!自分のことは、自分が一番よくわかってる!』
『スバルくんは、自分のことしか知らない!レムが見ているスバルくんのことを、スバルくんがどれだけ知っているんですか!?』
『どうして……そんなに、俺を……。俺は弱くて、ちっぽけで……逃げて……ッ。前のときも同じで、逃げて、それでもどうして……』
『――だって、スバルくんはレムの英雄なんです』
『あの薄暗い森で、自我さえ曖昧になった世界で、ただただ暴れ回ること以外が考えられなかったレムを、助けにきてくれたこと』
『目を覚まして動けないレムを、魔法を使いすぎて疲れ切った姉様を、逃がすために囮になって魔獣に立ち向かっていってくれたこと』
『勝ち目なんてなくて、命だって本当に危なくて、それでも生き残って……温かいままで、レムの腕の中に戻ってきてくれたこと』
『目覚めて、微笑んで、レムが一番欲しかった言葉を、一番言ってほしかったときに、一番言ってほしかった人が言ってくれたこと』
『ずっと、レムの時間は止まっていたんです。あの炎の夜に、姉様以外の全てを失ったあの夜から、レムの時間はずっと止まっていたんです』
『止まっていた時間を、凍りついていた心を、スバルくんが甘やかに溶かして、優しく動かしてくれたんです。あの瞬間に、あの朝に、レムがどれだけ救われたのか。レムがどんなに嬉しかったのか、きっとスバルくんにだってわかりません』
『――レムは信じています。どんなに辛い苦しいことがあって、スバルくんが負けそうになってしまっても。世界中の誰もスバルくんを信じなくなって、スバルくん自身も自分のことが信じられなくなったとしても――レムは、信じています』
『レムを救ってくれたスバルくんが、本物の英雄なんだって』

「…そう、スバルくんはいつだって、レムの英雄でした。今だって」
レムが久しく見せなかった笑顔を見せる。
少し、哀しそうに。

『どれだけ頑張っても、誰も救えなかった』
『レムがいます。スバルくんが救ってくれたレムが、今ここにいます』
『なにもしてこなかった空っぽの俺だ。誰も、耳を貸してなんかくれない』
『レムがいます。スバルくんの言葉なら、なんだって聞きます。聞きたいんです』
『誰にも期待されちゃいない。誰も俺を信じちゃいない。……俺は、俺が大嫌いだ』
『レムは、スバルくんを愛しています』
『俺、なんかが……いいの、か……?』
『スバルくんが、いいんです』
『スバルくんじゃなきゃ、嫌なんです』
『空っぽで、なにもなくて、そんな自分が許せないなら――今、ここから始めましょう』
『なに、を……』
『レムの止まっていた時間をスバルくんが動かしてくれたみたいに、スバルくんが止まっていると思っていた時間を、今、動かすんです』
『ここから、始めましょう。一から……いいえ、ゼロから!』

ぶわ、と全身が逆立つのを感じる。
スバルは立ち上がり、やがて英雄ナツキ・スバルが生まれてしまうのだ。
「…レム、さん、あなたは」

『ひとりで歩くのが大変なら、レムが支えます。荷物を分け合って、お互いに支え合いながら歩こう。あの朝に、そう言ってくれましたよね?』
『かっこいいところを、見せてください。スバルくん』
『……レム』
『はい』
『――俺は、エミリアが好きだ』
『――はい』
『エミリアの笑顔が見たい。エミリアの未来の手助けがしたい。邪魔だって言われても、こないでって言われても……俺は、あの子の隣にいたいよ』
『好きだから、って気持ちを免罪符にして、なんでもかんでもわかってもらおうって思うのは……傲慢だよな』
『わかって、もらえなくてもいい。今、俺はエミリアを助けたい。辛くて苦しい未来が待ってるエミリアを、みんなで笑っていられる未来に連れ出してやりたい』
『手伝って、くれるか?』
『俺ひとりじゃ、なにもできない。俺はなにもかも足りない。真っ直ぐ歩けるような自信がない。弱くて、脆くて、ちっぽけだ。だから、俺が真っ直ぐ歩けるように、手を貸してくれないか?』
『スバルくんは、ひどい人です。振ったばっかりの相手に、そんなことを頼むんですか?』
『俺だって、一世一代のプロポーズを断られた相手に、こんなこと頼みづらいよ』
『謹んで、お受けします。それでスバルくんが――レムの英雄が、笑って未来を迎えられるのなら』
『ああ、見ててくれ、特等席で』
『――お前の惚れた男が、最高にかっこいいヒーローになるんだってところを!』
〈――エミリア《きみ》を見てる。
レム《きみ》が見てる。
だから、俯かない。
借り物の勇気だけど、この胸に抱く想いは本物だと信じられるから。
ここから、ゼロから始めよう。
ナツキ・スバルの物語を。
――ゼロから始める、異世界生活を。〉

一本の映画を見たような、そんな感覚に陥る。
「…大将は、自分が嫌いッなのかァ?」
「まだそこなのよ!?そんな簡単な話じゃないのよ!スバルは……」
「まあまあ、2人とも落ち着いて?」
ガーフィールとベアトリスが言い合いそうになり、エミリアが止める。
「…スバルは、すごーく不器用なの。だから、私たちが支えてあげるのよ」
そんな3人の会話を少し離れたところでレムが聞く。
「…レムは、スバルくんがまた前を向いてくれたことが嬉しかったです。でも」
結果的に正しかった。
だが、その途中にあるスバルの気持ちはおいてけぼりにしてないだろうか。
「…レムは頭が悪いので、わかりません」
どうか、これ以上彼が傷つきませんように。

Comments

  • ふふ

    永遠にいい夢を見続けるのが、一番幸せなんじゃないか?現実で仲間が死んでいたとしても、それを自覚することなく夢を見ている時間が。

    May 17th
  • Apollo

    よし、ここで寝よう。ここで記憶して離れないようにしよう

    Apr 14th
  • 赤巻紙乳酸鰻

    タイトル回収きちゃー

    June 2, 2025
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