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確信した現実/Novel by 春風

確信した現実

4,891 character(s)9 mins

いつもよりも少しだけ長く書きました。
死に戻りバレまでの過程が少し雑だったかな〜と後悔してます。
細かい描写が多いと原作コピペしただけの作品になるので違和感ない程度に削らせてもらってます。
あくまで上映会ですので、原作既読の方なら違和感なく見れる程度の描写しかないです。
なので、見てない範囲は見ない方がいいかもです。
スバルがここからたくさん死ぬので、筆がのりそうです。
スバルの絶望した顔が好きなので

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スバルとエミリアが貧民街に入り、やがて盗品蔵へと近づく。
『サテラも俺が声かけるまで入っちゃダメだぜ』
スバルの言葉にエミリアが少し黙り、申し訳なさそうな顔で口を開く。
『...徽章を取り戻せたら、ちゃんと謝るから』

「...そうよね、ちゃんと本当の名前を言わなきゃ」
エミリアが真剣な顔で画面を見る。
たとえ流れているのが偽物の自分でも、スバルに本当の名前も伝えずに終わるなんてダメだと思ったからだ。

スバルが扉を開け、中を光で照らしながら歩く。
『誰かいますか〜...?』
刹那、ぐちゃりと嫌な音を立ててスバルの足は止まる。
『なんだ、これ』
本能的な不快感を煽るような嗅いだことの無い匂いと、気持ちの悪い感覚。
視線を少し下に落とすと、淡い光に照らされて、不快感の正体がそこにいた。
無惨に腕を切り落とされた、老人の死体。

「……っ!」
その衝撃的な映像に、エミリアたちは言葉を失う。
「こ...んなこと、やっぱり、この映像は作られたもの...よね?そうじゃないと...」
エミリアは、この映像を偽物だと信じている。
勿論、エミリア以外の面々も。
ただ、ロズワールだけはそれが本物であると思っていたが。

スバルの口から意味の無い空気がこぼれ、思考が奪われる。
『――ああ、見つけてしまったのね。それじゃ仕方ない。ええ、仕方ないのよ』
まるで死刑宣告をするかのような、甘く冷たい声が響く。
スバルが短く悲鳴をあげ、床へ倒れ込む。
スバルが全身の熱さに混乱し、口からは血が吐き出される。
誰が見てもわかる、死の姿だった。

「スバル!...ダメよ、そんなのっ……!」
偽物だと思っている。
それでも、大切な人の死ぬ姿など見たくは無い。
ナツキ・スバルが何度も見てきた地獄を、エミリアは耐えることが出来ない。

『スバル?』
エミリアが闇夜に足を踏み入れる。
『……っ!』
小さな悲鳴を上げて、エミリアの死体がスバルの横へ並ぶ。
『待、っていろ……俺が必ず……』

『お前を救ってみせる』

ぷつり、と音が途切れ、画面が暗くなる。
「……終わったの?こんな悪趣味な映像、一体誰が……」
エミリアが口を開き、皆が集中を解く。
​──ナツキ・スバルの物語は、ここから始まるというのに。

『――どうしたよ、兄ちゃん。急に呆けた面して』
『……は?』

再び流れ始めた映像に、エミリア達は振り向く。
「まだ、終わってないの?スバルが死んじゃう嫌な映像を私たちに見せるのが目的なんじゃ……」
そこまで言って、エミリアは気づく。
この場面は、見たことがある。
「…どういうこと?」

そこから、見た事のある景色と、少しだけ変わった会話が連なっていく。
スバルは先程の記憶がある。
でも、傷は消えている。
「……スバルはさっきのことを覚えてて……夢でも見てた、ってことなの?」
同じチンピラと路地裏で相対し、今度はスバルが勝った。
全く同じ映像なわけじゃない。
でも、スバル以外の人間が同じ言動をしている。
「…まるでループしてるようなのよ」
ベアトリスがそうこぼし、ロズワールが口角を上げる。

『や、やっと見つけた。……手間取っちまったぜ、チキショウ』
盗品蔵に再びたどり着いたスバルがそう零す。
盗品蔵の扉を叩き、中から老人が出てくる。
それは、先程無惨に転がっていた死体と、同じ顔をしていた。

「…どういうことなんですか」
レムが眉を顰め、目を少し開く。
先程からある違和感。
だが確信は持てないそれに、あまり多くの言葉は紡げない。

しばらく老人…ロム爺と会話を重ねたスバルは、バカにされるのを覚悟で疑問を口にする。
『馬鹿げた話なんだが……爺さん、最近、死んだことないか?』
ロム爺は目を見開き、快活に笑いとばす。
『がははは、何を言い出すかと思えば。確かに死にかけのジジイなのは認めるが、あいにくと死んだ経験はまだないな。この歳になればもう遠い話じゃないと思うがの』
『そう、だよな。悪い』
スバルはだんだん自分の頭を信用出来なくなっていく。
『あの感覚の全部が、夢だってのか……?だったらどっからどこまでが夢で、俺はどうしてこんな世界にいるんだよ』

「…夢にしては、リアルすぎますけど…もし夢なら、エミリア様が知らない場所でエミリア様とナツキさんが会っていたのも不思議では無いですよね」
「…確かに、それはそうかも。でも、ルグニカに来たところから夢だったの?どこからが夢で、どこからが……」
エミリアは思考を巡らせ、この非現実的な映像を咀嚼する。
​──簡単に出来れば、苦労はしないのだが。

スバルはロム爺と会話を重ね、徽章を探していること、フェルトを知っていることを話す。
やがてケータイを魔器と呼び、物々交換として交渉に使おうとする。

「ケータイ…見たことの無い道具だね。時間を切り取る…そんなことが可能なのか?」
ユリウスがそう口に出す。
「仮に可能なら、徽章と交換するに値する価値の高いものかしら。まあ、スバルなら上手く交渉してるだけ、という線も無くはないのよ」
ベアトリスがそう核心を着く。

『こいつの価値は確かに計り知れん。儂も長いことこの商売しとるが……魔法器を扱うのは初めてじゃからの。じゃが……これまでにない値がつくのは間違いない。物々交換にこれを出すのは、少しお前さんに損が大きすぎる。その探しとる徽章の価値はわからんが、この魔法器以上ということはあるまい。単純に金額だけで比べるなら、この魔法器自体を売りに出した方がよっぽど得じゃぞ?』
『ああ、それでいい。この魔法器は、フェルトって子が持ち込む徽章と交換する』
『なんでそこまでする?この魔法器より値が張るのか?それとも、金に代えられん価値があるとでも言うのか?』
『いいや、ぶっちゃけ、俺はその現物を見たこともない。金に換えても正直、この魔法器より高いってことはないだろうし、俺は丸損間違いなしだぜ』
『そこまでわかっとるなら、なんでそんなことする?』
『決まってんだろ。――俺は損がしてぇんだよ。俺は恩返しがしたい。貸し借りはきっちり返す。そうでなきゃ気持ちよく寝られねぇ。俺は神経質なんだよ、現代っ子だから。――だから、大損してでも徽章を手に入れる』

一連の会話を聞き、皆が呆れたような顔で笑う。
「いや〜、スバルきゅんの義理堅さには笑えるね〜。徽章の価値も知らないのに、エミリア様が探してるから、ってただそれだけでここまで出来るんだもん」
「……ほんと、スバルってすごーく不器用で、損する性格だと思う。……だからこそ、早くスバルを助けなきゃ」
こんな悪趣味な映像を見てるのは、あくまでスバルを救うためだ。
そうでなければ、エミリアはこんなもの進んでみようと思わない。

やがて、フェルトが蔵へ現れる。
スバルはケータイを片手に交渉し、フェルトに『アタシの交渉相手は兄さんだけじゃない』と言われ、先約の交渉相手を待つことにする。

「交渉相手…徽章を欲しがる人がいるんですね」
レムがそう呟き、ロズワールが顔を伏せて答える。
「……まぁ、希少価値が高いからね〜えぇ。」

『部外者が多い気がするのだけれど』
甘くて冷たい声が優しく響く。
『そちらのご老体はわかるのだけれど、こちらのお兄さんは?』
『この兄さんはアンタのライバル。アタシのもうひとりの交渉相手さ』

その声を聞いて、レムは眉を顰める。
「……この声、さっき聞いた声ですよ。」
さっき、というのはスバルが初めて死んだ時のことだろう。
レムはスバルの気づかなかったそれに気づく。
「……この人」
言いかけて、レムは口を閉じる。

『なるほど、事情は飲み込めたわ』
『ま、そんなわけで値段の釣り上げ交渉ってわけだ。別にアタシはどっちが徽章を持ってくんでも構わねーし、高い方に高く売りつけるさ』
『いい性格だわ、嫌いじゃない。――それで、そちらのお兄さんはいくら付けたの?』
『俺が出すのはこの魔法器だ。たぶん、世界に一個しかないレアアイテム。そこの筋肉爺さんの話じゃ、聖金貨で二十枚は下らないってお墨付きだぜ』
『実は私も、依頼主からある程度、余分なお金を渡されているの。もしもあなたが渋るようであれば、少しの上乗せも考える意味でね』
『依頼主……ってことは、エルザさんもフェルトと一緒で徽章を受け取るように頼まれただけってことか?』
『そうなるわね。欲しがってるのは依頼主の方。……あなた、ひょっとしてご同業?』

エルザのその言葉に、レムは嫌な予感を募らせていた。
(...下手なことを言えば、命を奪われる。...スバルくん、頑張ってください!)

エルザが袋から金貨を出し、口を開く。
『二十枚、ジャスト。私が雇い主から渡されている聖金貨はそれが全て。上はそれで払い切れるとあなたを値踏みしていたようだけど……少し厳しいかしら』
『儂の見立てじゃ、この交渉はスバルに傾く。お前さんと雇い主には悪いが、この金貨は袋に戻して帰ることじゃな』
交渉は、スバルの勝ち。
そういう結果となった。

「良かった...!スバル、何とか交渉に勝てたみたい!」
エミリアが明るく笑い、ベアトリスは少し不安そうな顔で見る。
「...交渉は……なのよ」


『あー、悪いな、エルザさん。たぶん、怒られたりしちまうよな』
『仕方のない話よ。私に落ち度があるならともかく、この場合は雇い主が支出を少なく済まそうなんて考えたのが悪いのだし』
そう言い、エルザは立ち上がる。
『それじゃ、交渉は残念な結果だったけれど、私はこれで失礼するわね』
ふと思い出したようにエルザはスバルを見つめる。
『――そういえば、あなたはその徽章を手に入れて、どうするの?』
『……ああ、元の持ち主に返すんだよ』
それは、明らかな失言だった。
『――なんだ、関係者なのね』

「……スバルくん、それは、悪手です……!」
レムはその言葉が招いた殺意に気づく。
レムが疑っていた嫌な予感は命中し、エルザはスバル達を殺そうと襲い掛かる。

ロム爺の抵抗、それを嘲笑うかのようなエルザの一閃。
フェルトの加護、それを妬ましく撫で斬りにするエルザ。
2人の人間があっさりと死ぬ。
それでもスバルは動けない。

「フェルト様!」
ラインハルトが叫ぶ。
生きている主の死体。
エミリアが感じた気持ち悪さと同じものを、ラインハルトは味わう。

遅すぎる怒りがスバルを突き動かすが、そんなもので勝てるはずもなかった。
骨をいくつか持っていかれ、エルザに傷一つ付けられない。
『終わりにしましょう。天使に会わせてあげるわ』
部屋中を飛びまわり、腹に一撃を入れようとしてくるエルザにスバルは回し蹴りをする。

「スバルくん!」
「スバル!」
ナツキ・スバルを信じる少女たちは、スバルのその一撃に淡い希望を見る。
そんなもの、ありはしないというのに。

『ああ、今のはとても、感じたわ』
『――あ?』
スバルの腹からは、血と内臓が溢れ出していた。
『驚いた?すれ違いざまにお腹を開いたのよ。これだけは私、得意なの』
まるで死神のように美しい笑顔をうかべ、スバルの傍らに立つ。
『ああ、やっぱり――あなたの腸は、とてもきれいな色をしていると思ったの』
耳を塞ぎたくなるような悲鳴と、吐き気を催すほどの悍ましい血飛沫が、スバルを死へと誘う。

ナツキ・スバルは、2度目の死を迎えた。

その衝撃的な映像に、一同は言葉を失う。
「スバル……?」
「こんな事って……」
スバルは生きている。
でも、目の前のスクリーンでナツキ・スバルは死んでいく。
偽造された映像?それしか有り得ない。誰が?何のために?
意味の無い思考がエミリア達の頭へ宿る。

『――兄ちゃん、ボーっとしてんなよ。リンガ、食うのか?』

繰り返された言葉。
故にエミリア達はいい加減気づく。
ナツキ・スバルは、繰り返している。

Comments

  • kazu

    うわぁ好き✨

    February 5, 2025
  • シン
    November 9, 2024
  • 小説好き

    スバルくんは笑顔と絶望顔が似合うからねぇ… そしてロズっちは能力を把握できた嬉しさとエルザを差し向けた罪悪感のありそうな反応がイイッ!!

    October 29, 2024
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