【タフカテ注意】“超次元サッカーW”をやります episode.2「手に入れろ!世界への切符!!」

  • 1吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:18:40
  • 2吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:26:22

    ドーム会場の空気は張り詰めていた。だが絶望しているだけでは代表枠も未来も奪われるだけだ。各寮から名乗りを上げたトップクラスの実力者たちが一堂に会し、即席の円陣を組んで作戦会議が始まった。


    その中心で真っ先に口を開いて指揮を執り始めたのは2年生の物間寧人だった。


    「聞いたかい?わざわざ2人少ない状態で『一点取れば勝ち』だなんて。僕たちをどこまで見下せば気が済むんだろうね!……だがその驕りこそが彼らの最大の弱点だ。僕が完璧な布陣を考えてあげるよ」


    物間の自信に満ちた言葉は極限状態にあった生徒たちの心に不思議な闘志を呼び起こした。

  • 3吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:26:34

    「良い覚悟だ」

    大正浪漫を感じさせる着物姿の女性、3年生の与謝野晶子が力強く頷いた。

    「あのような得体の知れない者たちの前で君たちの命を散らしたもうことなかれ。この与謝野晶子がお前たちを支えよう。私の力、存分に頼るがいい」

  • 4吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:26:57

    「みんな、怖い思いをしてるよね……。でも大丈夫だよ」

    怯える人々を安心させるような柔らかい声。生前の鹿目まどかとしての記憶を取り戻した救済の魔女、Kriemhild Gretchenが純度100%の慈愛に満ちた笑顔を浮かべた。

    「私がいれば悲しいことなんて全部なくなるの。だから一緒に点を取って、みんなで私の天国に行こうね。そうすればもう、誰も傷つかなくて済むんだから……」

    底なしの善意から発せられるその言葉はどこか狂気を孕んでいたが彼女の慈愛は間違いなくチームに向けられていた。

  • 5吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:30:05

    「……天国、ですか……」

    漆黒の髪を揺らしながら小柄なマンハッタンカフェがポツリと呟いた。

    「どこでもいいですけれど……私のこの飢えと退屈を……少しでも満たしてくれるなら……何でも……走りますよ……。あの化け物たちなら……少しは楽しめるかもしれませんし……」

  • 6吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:30:24

    「鏡の向こうに映りし無数の未来……」

    詩的な言葉を紡ぐのは天才科学者イサン。

    「敵は強大なりとて、我らが一矢報い、一点をもぎ取る可能性もまた確かに存在すめり。そなたたちの勝利への道標となりや……」

  • 7吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:32:02

    「……どいつもこいつもイカれてやがる」

    粗暴に頭を掻きむしったのは伏黒甚爾だ。

    「金にならない戦いはやらねぇ主義なんだがな。……だが、あの偉そうに見下してる神だかの顔面、どうにも気に食わねぇ。サクッと一点取って黙らせてやる」

    無関心を装いながらも瞳の奥には捨てきれない自尊心と闘争本能がギラギラと燃えていた。

  • 8吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:33:11

    サイコロステーキ先輩が日輪刀の柄を握りしめて熱く叫んだ。

    「あいつらからスズミを守り抜く!そのためならなんだってやってやる!」

    「先輩……。無茶だけはしないでくださいね」と控えているスズミが控えめに声をかける。

  • 9二次元好きの匿名さん26/06/02(火) 07:33:41

    朝更新あざーす(ガシッ)

  • 10吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:35:24

    「守備は私たちに任せて」

    優雅に微笑んだのは巴マミだった。

    「みんなの背中は私が守るから」

  • 11吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:37:13

    「僕たちも忘れないでね」

    吹雪士郎が穏やかに笑うと瞬時に瞳が鋭く獰猛なものに変わった。

    「いざとなったら後ろからぶち抜いてやるよ!」

    彼の中に同居する人格たちもこの試合に向けて臨戦態勢に入っていた。

  • 12吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:38:17

    「うおおおっ!みんな、すっげえ気合い入ってるな!」

    ゴールキーパーのポジションに就く桐藤ナギサが純白の翼をパタパタと動かしながら両拳を突き上げた。

    「俺がゴールにいる限り、絶対に点は入れさせない!どんなシュートが来ても止めてみせるから安心して攻めてくれ!」

  • 13吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:39:22

    笹波雲明が全体を見渡した。

    「物間さんの指揮による人員配置は極めて妥当です。相手のハンデを逆手に取った短期決戦特化の超攻撃的シフト。僕も持てるすべての力で彼らのゴールをこじ開けます」

  • 14吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:39:46

    こうして各寮の実力者たちによる話し合いの末、試合に挑む「代表候補選抜チーム」のフォーメーションが決定した。


    ネオ・アカデミア

    GK ユーハバッハ

    DF コモドドラゴン ネビル・シュート ピンヘッド ベルモッ豊姫

    MF エブラナ・ダブリン

    FW 佐久間次郎 野原ひろし バダップ・スリード


    FW 笹波雲明 Kriemhild Gretchen 物間寧人

    MF 与謝野晶子 伏黒甚爾 マンハッタンカフェ イサン

    DF 巴マミ 吹雪士郎 サイコロステーキ先輩

    GK ナギサ(第7寮)

    代表候補選抜チーム

  • 15吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:42:28

    張り詰めた空気の中、試合開始を告げるホイッスルがドーム会場に鳴り響いた。


    キックオフのボールを足元に収めたのは笹波雲明だった。

    「まずは先制攻撃です。一瞬の隙を突いて……」


    雲明がトップスピードに乗り、ドリブルを開始しようと右足を踏み出したその瞬間だった。


    【山と海を繋ぐ程度の能力】


    音もなく雲明の足元にあったはずのサッカーボールが「消失」した。

  • 16吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:43:57

    「……なっ!?」

    雲明の表情が驚愕に凍りついた。奪われたわけではない。彼の動体視力や予測の範疇を完全に無視して物理的にボールが消え去ったのだ。


    その直後、ピッチの最後尾でゴールを守っていた桐藤ナギサの後方からネットが揺れる音が響いた。


    「え……?」

    ナギサが純白の翼をビクッと震わせて振り返る。そこには先ほどまで雲明の足元にあったはずのボールが、静かにゴールネットの中で回転していた。


    無慈悲なホイッスルの音が鳴り響き、会場の電光掲示板のスコアが切り替わる。


    代表候補選抜チーム 0 - 1 ネオ・アカデミア

  • 17吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:45:39

    「お、おいおい……冗談だろ……?」

    サイコロステーキ先輩が日輪刀の柄を握る手を震わせ、信じられないものを見る目で電光掲示板を見上げた。


    「な、なんだい今のは!ボールが瞬間移動したとでも言うのかい!?」

    物間寧人が額に冷や汗を浮かべ、余裕を完全に失って声を荒らげる。

  • 18二次元好きの匿名さん26/06/02(火) 07:46:38

    あかんやん あかんやんあかんやん

  • 19吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:48:03

    「なっ……なんだ今のは!?全然見えなかったぞ!どうやってシュートを打ったんだ!?」

    ナギサがゴールの中のボールを拾い上げてパニックに陥る。


    「……空間転移ですか」

    雲明は自らの足元を見つめ、ギリッと奥歯を噛み締めた。

    「ベルモッ豊姫……彼女の能力。キックオフと同時にボールそのものをゴール内へと直接転移させた……。これではサッカーという競技の根底が覆る。戦術もディフェンスも無意味だ」


    どんなに強固な守備陣を敷こうが速く走ろうが関係ない。相手はボールに触れることすらなくゴールへ直接ボールを送り込むことができるのだ。

  • 20吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:51:22

    会場全体が沈黙して選抜チームのメンバーたちが為す術もなく立ち尽くす中。


    「……ふふっ」


    ただ一人、吹雪士郎だけが穏やかな笑みをこぼしていた。


    「なるほどね。反則みたいな能力だけど……どうやれば破れるか分かった気がするよ」


    絶望的な状況下で吹雪の瞳の奥に鋭い光が宿っていた。

  • 21吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:54:13

    代表候補選抜チームのキックオフ。先ほどの不可解な失点により重苦しい空気が漂う中でボールの前に立つ笹波雲明の瞳には一切の諦めや絶望は宿っていなかった。


    「……相手がどれほどの能力を持っていようとボールがここにある以上、僕たちは前へ進むしかありません」


    ホイッスルが鳴り響いて雲明がボールを蹴り出す。


    「フン、無駄な足掻きを。何度やっても結果は同じだ」

    ベルモッ豊姫が傲慢に言い放ち、再び空間転移の力を用いようと右手を天へとかざした。

  • 22二次元好きの匿名さん26/06/02(火) 07:54:23

    >あのような得体の知れない者たちの前で

    確かにベルモッ豊姫は魑魅魍魎の類だが…お前も充分得体が知らない奴の側なのは大丈夫か?

  • 23吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:55:34

    空間が歪むかのような圧力がピッチを包み込む。


    【山と海を繋

  • 24吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:57:11

    「……何っ!?」

    豊姫が驚愕に目を見開く。空間の歪みは一瞬で霧散して何も起きなかったのだ。


    その瞬間、選抜チームの後方から圧倒的で凶悪なプレッシャーが放たれた。

    吹雪士郎の顔つきが穏やかな少年から冷酷で威圧的な男へと変貌していた。その額には不気味な紋様が浮かび上がっているかのような錯覚すら覚えさせる。

  • 25吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:58:18

    「無意味な行為だったな……!」

    ディアボロの人格がドス黒いオーラを放ちながら豊姫を指差して見下した。


    「この世には結果だけが残る!貴様の能力が発動する過程は俺が消し飛ばしてやった……!帝王はこのディアボロだッ!依然変わりなくッ!!」

  • 26吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 07:59:30

    「なるほど、時間を削り取って能力の発動を無効化したのですね!見事です、吹雪さん!」

    雲明が瞬時に分析し、一気にトップスピードへ加速する。

    「今です!全員で攻め上がります!」


    「一気に叩き潰すよぉ!!」

    物間寧人が高笑いを上げ、伏黒甚爾や与謝野晶子たちも猛然と敵陣へと駆け上がっていく。

  • 27吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:01:23

    しかし、ネオ・アカデミアの陣形は全く揺らいでいなかった。

    DFラインに立つコモドドラゴンが優雅に微笑みを浮かべて一歩前へ出る。


    「わたくしの研究の成果をお見せしますわ!」


    【ポイズンミスト】


    コモドドラゴンの口から次元すらも侵す致死性の劇物『8年駄菓子』の猛毒がピッチへと吐き出された。

  • 28吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:03:09

    「させるか!俺がスズミを守るんだ!!」

    最後尾からオーバーラップしてきたサイコロステーキ先輩が身を挺して猛毒の霧の前に立ちはだかった。


    「先輩ッ!!ダメです、下がって!!」

    ベンチからスズミが悲鳴のような警告を上げる。それでも先輩は日輪刀を構えたまま一歩も引かなかった。

  • 29吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:03:51

    だが、8年駄菓子の毒は常軌を逸していた。

    「がッ……!?あ、あぎゃあああああああッ!!」


    毒の霧に触れた瞬間、サイコロステーキ先輩の体が激しく痙攣した。

    呼吸器から体内に侵入した猛毒は一瞬にして彼の内臓を破壊し尽くして下半身からおびただしい量の真っ赤な血便が滝のように噴き出したのだ。


    「あ……ああ……スズ、ミ……」

    血と汚物に塗れながら先輩は虚ろな目でベンチのスズミへ手を伸ばそうとし――そのまま力尽き絶命した。

  • 30吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:05:05

    「あああああッ!!先輩ぃぃぃぃぃッ!!」

    ベンチでスズミがショットガンを取り落として崩れ落ちる。

  • 31吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:07:27

    「そう傷心するな、命は元より不完全なものだ」

    その凄惨な死体を見下ろしながらエブラナ・ダブリンが紫色の炎を指先で弄び、不敵に笑った。


    【再燃】


    エブラナが炎を投げ放つとそれは先輩の死体に吸い込まれた。

    次の瞬間、死んだはずのサイコロステーキ先輩が虚ろな目をしたままゾンビのように立ち上がった。悲嘆する下僕と化した彼はこぼれ球を拾い上げると、かつての味方である選抜チームに背を向けて前線のバダップへと正確なパスを送ってしまった。

  • 32二次元好きの匿名さん26/06/02(火) 08:07:32

    サイコロステーキ先輩が死んだあっ

  • 33吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:09:16

    「……未来の平和の為にも、ここで消去する」

    パスを受けたバダップ・スリードが冷徹な瞳でゴールを見据えた。

    彼はボールを高く蹴り上げて自身も空高くへと舞い上がる。


    【スターゲイザー】


    バダップがボールを蹴り抜いた瞬間、上空の空間が歪み、夜のピッチに満天の星空が広がった。煌めく無数の星々が流星群へと姿を変え、ボールと共に選抜チームを蹴散らしながらゴールへと降り注ぐ。

  • 34吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:11:08

    「皆さんの思い、私が必ず形にしてみせます!」

    更にネビル・シュートが狂気を孕んだ微笑みを浮かべて飛び込んできた。


    【とある紳士の決戦兵器】


    彼女の姿が巨大な車輪に爆薬を敷き詰めた兵器「パンジャンドラム」へと変貌する。流星となって迫るボールに対して自らの身を粉々に吹き飛ばす大爆発を伴いながらシュートチェインを行った。

  • 35二次元好きの匿名さん26/06/02(火) 08:11:28

    8年駄菓子の毒で確殺した後ゾンビ化して僕にするとかそんなんあり?
    相性が凶悪すぎるんとちゃう?

  • 36吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:12:24

    二つのシュートが融合した破滅的な一撃。

    それがゴールを守る桐藤ナギサへと襲い掛かる。


    「うおおおおおおッ!!俺がゴールにいる限り、絶対に点は入れさせないッ!!」

  • 37吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:14:28

    ナギサは純白の翼を羽ばたかせアラヤから教わった新たなる力を解放する。


    【マジン・ザ・ハンド】

  • 38吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:15:42

    ナギサの背後に透き通るような青い魔神の幻影が具現化する。彼女は体を捻り、右手の一点に全ての気迫を込めて圧倒的な破壊の流星群を正面から受け止めようとした。


    「ぐ、あああああッ!?」


    しかし、未来の完全兵器と過去の自爆兵器の融合シュートの前に青い魔神の右腕は一瞬で粉砕された。

    圧倒的な威力がナギサの体を軽々と吹き飛ばしてボールはゴールネットを突き破らんばかりに突き刺さった。


    代表候補選抜チーム 0 - 2 ネオ・アカデミア

  • 39吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:20:56

    代表候補選抜チームからのキックオフで再び試合が再開される。

    0-2という点差。それでも雲明の瞳に宿る思考は止まっていなかった。


    「相手の能力は常軌を逸していますが、ボールに触れさえすれば攻め上がることは可能です。与謝野さん、お願いします!」


    雲明はキックオフのボールを素早く後方の与謝野晶子へと繋いだ。

  • 40吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:21:24

    「ああ、任せておき給え!外道どもに、この与謝野晶子が鉄槌を下そう!」


    パスを受けた与謝野は着物の袖をまくり上げると風貌に似つかわしくない、無骨で巨大な四連装ミサイルランチャーを虚空から構えた。


    【ギガント】

  • 41吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:24:10

    鼓膜を破るような発射音と共に四発のミサイルがピッチを抉りながら真っ直ぐに突き進む。前線でプレッシャーをかけようとしていた野原ひろし、佐久間次郎、バダップ・スリードらネオ・アカデミアのフォワード陣は爆発と質量の前に為す術もなく吹き飛ばされ、強引に道をこじ開けられた。


    「命を弄ぶなど言語道断!さあ、道をあけたまえ!」


    爆煙を突き抜けて与謝野が勇ましくドリブルで駆け上がる。

    その行く手に立ち塞がったのはエブラナ・ダブリンと操られたサイコロステーキ先輩だった。

  • 42吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:27:18

    「ずいぶんと物騒だな。だが私の炎の前では……」

    エブラナが優雅に笑ってゾンビ化した先輩を盾にしようとしたその瞬間、与謝野は先程のランチャーを放り捨てて今度は身の丈ほどもある超大型の核バズーカを肩に担ぎ上げた。


    【アトミックバズーカ】


    「君たち、死にたもうことなかれ!」


    閃光。ピッチの一部を完全に蒸発させるかのような超絶的な光の奔流が放たれた。エブラナごと先輩の体をまとめて吹き飛ばし、与謝野は力業のみで中盤を突破してみせた。

  • 43吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:29:34

    「見事です、与謝野さん!」

    雲明が確かな手応えを感じて駆け上がろうとした時。


    「お前は箱を開いてはいない……」


    突如与謝野の周囲の虚空が裂け、そこからフックの付いた禍々しい鎖が無数に飛び出してきた。

    厳格な司祭のような出で立ちのピンヘッドが冷徹な威圧感を放ちながら宣告する。


    「故に異界にて永遠の苦痛を与える対象には値しない。対価として奪うのは、その球体のみだ」

  • 44吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:31:00

    無数の鎖が与謝野の肉体をすり抜けて彼女の足元にあったサッカーボールだけにフックを絡みつかせた。そのままボールはピンヘッドの元へと乱暴に引き寄せられ、与謝野の強行突破は阻まれてしまう。


    「くっ、ボールが……!」

    与謝野が舌打ちをした直後、ピンヘッドの死角から凄まじいスピードで飛び込んできた影があった。


    「偉そうに御託並べてんじゃねぇよ……!」

  • 45吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:33:30

    伏黒甚爾だ。

    彼は一切の必殺技を使わず、ただ純粋な超人的フィジカルのみでピンヘッドの懐に潜り込んで鎖から強引にボールを蹴り奪った。


    「もらった。さっさと決めて終わらせようぜ」

    伏黒がボールをキープしたのを見て、前線を走っていた物間寧人が芝居がかった足取りでKriemhild Gretchenの隣へと滑り込んだ。


    「さあ反撃の時間だ!君の慈愛の力、僕にも貸してくれよ!」


    【コピー】

  • 46吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:35:27

    物間が彼女の肩に触れると、Kriemhild Gretchenはふわりと純度100%の笑顔を浮かべた。


    「うんっ、いいよ!みんなで一緒に点を取って、誰も傷つかない天国へ行こうね。みんなを救済してあげる!」


    伏黒のパスを受けた彼女は魔法少女時代に使っていたものを模倣した、光り輝く弓を虚空から呼び出し、それを天に向けて大きく引き絞った。


    【プルウィア☆マギカ】


    上空に巨大な魔法陣が出現し、そこから無数のピンク色をした魔法のサッカーボールが救済の雨のようにネオ・アカデミアのゴールへと降り注ぐ。

  • 47吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:36:16

    「アハハハハ!天から降り注ぐ絶望に溺れるがいい!」


    更に能力をコピーした物間も全く同じ動作で弓を引き絞り、天へと放った。


    【プルウィア☆マギカ】


    二人の放った魔法陣が空で重なり合ってサッカーボールの雨が倍増する。ピッチの全てを覆い尽くすほどの凄まじいツインシュートがゴールマウスへと向かう。

  • 48吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:37:32

    いかにネオ・アカデミアといえど、このシュートの雨は防ぎきれない。

    選抜チームの誰もがそう確信した。


    しかし。

    ネオ・アカデミアのゴールキーパーとして立つユーハバッハは無数のボールの雨を見上げても威厳を微塵も崩さなかった。

  • 49吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:37:58

    「無意味だ」


    【全知全能】

  • 50吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:39:10

    ユーハバッハの瞳に複数の瞳孔が浮かび上がる。

    彼がただ静かに右手をかざした瞬間、未来そのものが改変された。


    降り注ぐはずだった無数のピンクのボールは見えない壁に衝突したかのように、あるいは最初からそこには無かったかのように、空中でピタリと静止して次々と光の粒子となって消滅していった。


    そして一つ残った本物のサッカーボールが吸い込まれるようにユーハバッハの掌の中へと収まる。


    「お前たちが足掻き、点を奪おうとする未来は全て視えている。それを叩き潰すことも容易い」

    ユーハバッハは嘘偽りのない、絶対的な事実として宣告した。

    「抗う必要はない。お前たちはここで敗北し、私が与える世界へと至るのだ」

  • 51吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:41:28

    ユーハバッハの掌から前線で待ち構える野原ひろしの足元へと正確なボールが送られた。


    「さあて……極上のメインディッシュを喰らいに午後一番の営業と行くか」


    ひろしはネクタイを締め直すような仕草をするとボールを足元にキープしたまま悠然と前進を開始した。

  • 52吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:41:56

    【サラリーマン・タイム】


    その瞬間、ひろしの靴の底から常軌を逸した強烈な足の臭いが致死性のガスのようにピッチへと撒き散らされた。

    選抜チームの面々が悪臭にたまらず顔を覆って悶絶する中、ひろしはまるで得意先へ向かう優秀なサラリーマンのように優雅な足取りで相手選手の横をすり抜けていく。

  • 53吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:43:20

    その強烈な悪臭は敵味方を区別しない。ひろしの周囲を走っていた味方のネオ・アカデミアのフォワード陣すらも巻き添えを食らっていた。


    「……ッ」

    完全なる軍の兵器として育てられたバダップ・スリードでさえ臭いに顔をしかめて静かに殺意と怒りを募らせて拳を握りしめる。

  • 54吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:44:19

    「落ち着け、バダップ」

    その横で鼻をつまみながら参謀である佐久間次郎が冷静な声で彼を宥めた。

    「結果として敵の守備陣は完全に機能停止している。これも圧倒的な勝利を掴むための布陣だ。耐えろ」

  • 55吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:46:44

    ひろしが悪臭のバリアを纏いながらペナルティエリアに侵入しようとした、その時だった。


    「……随分と、刺激の強い香りですけれど……」


    ひろしの背後から黒髪の少女がゆっくりと歩み寄ってきた。マンハッタンカフェだ。

  • 56吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:47:37

    彼女はひろしの悪臭に顔をしかめるどころか飢えと退屈に苛まれた暗い瞳で彼をじっと見つめていた。


    【バニシングカット】

  • 57吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:48:17

    カフェがゆっくりと一歩を踏み出した瞬間、彼女の姿がフッと空間からブレたように消失してひろしの真正面、鼻先が触れ合うほどの至近距離に瞬間移動していた。


    「……私のこの飢え、少しは満たして……くれますか?」


    カフェが虚ろな笑みを浮かべた直後、ひろしの足元にあったボールは彼女の足へと鮮やかに奪い去られていた。

  • 58吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:49:22

    「なっ!?俺のランチが……ッ!?」

    驚愕するひろしを置き去りにしてカフェはゆっくりとした足取りで前線へとボールを運び始める。


    「やりました!カフェさん、そのまま前線へ……!」

    雲明がパスを受けようと走り出した瞬間。

  • 59吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:50:14

    「ぐ、おおおおおおッ!?」

    ピッチの後方でディアボロの人格を維持していた吹雪士郎が突如として頭を抱え苦悶の叫びを上げた。


    「な……馬鹿なッ!俺の、俺のキング・クリムゾンが……押し返されているだと!?」

  • 60吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:51:34

    ディアボロの驚愕の視線の先にはベルモッ豊姫が立っていた。

    彼女の体から立ち昇るオーラが先程とは比較にならないほど爆発的に膨れ上がっている。本能にのみ突き動かされることで上限無しに強くなっていく、破壊神の絶技「我儘の極意」。

    その果てしない闘争本能と力のインフレが遂にディアボロの時間消去という概念すらも純粋な力で凌駕し始めたのだ。


    「俺を誰だと思っている。破壊神、ベルモッ豊姫だ」

  • 61吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:52:31

    豊姫は傲慢に言い放つと再び右手を天へとかざした。

    キング・クリムゾンによる時間の消去が破られた今、彼女の能力を止める術は存在しない。


    【山と海を繋ぐ程度の能力】


    空間が歪む。

    カフェの足元にあったボールが音もなく消失した。


    そしてゴールを守るナギサが反応する暇すら与えず、彼女の背後のネットが乱暴に揺らされた。


    代表候補選抜チーム 0 - 3 ネオ・アカデミア

  • 62吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:53:33

    「……なんて理不尽な」

    雲明は立ち尽くし、冷や汗を流しながら電光掲示板を見上げた。


    だがその時、ピッチに響き渡ったのはネオ・アカデミアの監督兼キャプテンであるベルモッ豊姫の酷くつまらなそうな溜め息だった。


    「……おい、もうやめだ。試合は中止だ」

  • 63吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:55:20

    「えっ……?」

    ナギサがポカンと口を開け、物間や与謝野たちも困惑して豊姫を見る。


    「あまりにも手応えがない」

    豊姫は冷徹な視線で選抜チームを一瞥した。

    「俺たちは頂点に立つチームだ。こんな試合をして枠を奪っても、何も面白くない。お前らがもう少しマシに戦えるようになるまで数日待ってやる」


    その言葉にネオ・アカデミアの化け物たちも一様に頷くか、興味を失ったように踵を返した。

  • 64吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:55:39

    そもそも彼らネオ・アカデミアは本気で代表枠を強奪しに来たわけではない。アカデミア運営側が代表候補である雲明たちの真の実力を見極めて篩にかけるために用意した「試練」なのだから、彼らがここで全滅させないのは当然の帰結であった。


    「せいぜい足掻くんだな。次に会う時もこのザマなら、その時は俺たちがあの枠を全てもらう」


    ベルモッ豊姫の宣告と共にネオ・アカデミアの面々は空間転移によってピッチから音もなく姿を消した。

    残されたドーム会場には0-3というスコアとサイコロステーキ先輩の血痕、そして途方もない無力感だけが漂っていた。

  • 65吹雪士郎◆Uyb09LitdeWt26/06/02(火) 08:56:37



  • 66円堂力ノン◆EGVkE9lPWI26/06/02(火) 09:02:43

    どうやって勝つんだよえーっ!

スレッドは6/2 19:02頃に落ちます

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