【後編】「視覚でひらめく」人々の驚きの思考法と、新たな才能の世界

2023/08/04

あなたは視覚思考タイプor言語思考タイプ?

「視覚空間型思考判定テスト」の以下の項目に「はい」「いいえ」で答えてみよう。

 

1 考えるときには、言葉ではなく、おもに絵を使う。
2 方法やわけを説明できなくても、物事がわかる。
3 ふつうと違う方法で問題を解決する。
4 物事をありありと想像する。
5 目で見たことはおぼえているけれど、耳で聞いたことは忘れる。
6 単語をつづるのが苦手。
7 物体をいろいろな視点から思い浮かべることができる。
8 整理整頓が苦手。
9 時間の経過がわからなくなることがよくある。
10 行く先は言葉で説明してもらうより、地図を見るほうがわかる。
11 一度しか行ったことのない場所でも道順をおぼえている。
12 字を書くのが遅く、字はほかの人に読みづらい。
13 ほかの人の気持ちがわかる。
14 音楽か美術か機械が得意。
15 周囲が思っている以上に物知り。
16 人前で話すのは苦手。
17 歳を重ねるごとに賢くなっていると思う。
18 コンピューターに熱中する。

 視覚思考者の割合はどのくらいなのかとよく尋ねられる。これについてはまだ十分な数のデータがない。リンダ・シルヴァーマンの研究グループがさまざまな家庭環境と知能指数の小学四、五、六年生の750人を対象に行なった調査では、ほぼ3分の1が明確な視覚(空間型)思考タイプで、およそ4分の1が明確な言語思考タイプ、残りの半分弱が混合タイプだった。

 私は、自分が視覚思考者だと初めて気づいたとき、さっそく科学者モードに入り、独自の調査法を編み出した。視覚記憶の取り出し方が明らかになるような質問を十分な数の人にしたら、同じような考え方をする人のデータベースができるのではないかと考えたのだ。当時は気づかなかったが、調査を通して視覚思考者を探しながら、自分の同類を探し求めてもいた。ちなみに脳神経科医で作家のオリヴァー・サックスは、徹底的に情報を収集するという私のこの性分について、著書『火星の人類学者――脳神経科医と7人の奇妙な患者』で取り上げた。本のタイトルは、いわゆるふつうの、つまり「定型発達の」人びとにまぎれ込んだ異星人の人類学者のように、人の行動や習慣を研究する私の姿を的確に描写している。

 さて、視覚記憶の調査は、回答者に自宅やペットの説明をしてもらうことから始めた。すると、ほぼ全員が目に見える特徴で説明した。トースターやアイスクリームのようなありふれた物を説明してもらったときにも、同じような結果が出た。回答者は物を思い浮かべて説明するのに何の苦労もしなかった。とすると、全員が視覚思考者なのだろうか。いや、こうした対象物はなじみがあるから詳細に思い出せるのかもしれない。

 そこで、説明の対象を変えて、知ってはいるけれど、必ずしも毎日の生活で見かけるわけではない物にした。そのころ、ちょうど町の教会のそばを通ったときに尖塔が目にとまった。尖塔はだれでも知っていて、ときたま見るだろうが、生活の中で大きな存在ではない。教会に通っている人でも、とくに気にすることはないかもしれない。聖職者でも、自分の教会の尖塔をほとんど気にかけていない人がいた。そこで、調査した人びとに教会の尖塔を思い出してもらうと、結果は大きく変わった。

 回答者は必ず三つのタイプのどれかに当てはまった。まず、特定の尖塔の説明をして、実際にある教会の名をいくつかあげるタイプ。頭の中に描かれた絵には曖昧なところや抽象的なところがまったくない。写真かリアルな絵を眺めているようなものだった。尖塔がそのくらいはっきり見えるのだ。こうした人は視覚思考者といえる。次に、Vを逆さにしたような線が2本ぼんやりと見えるタイプ。まるで木炭でざっとスケッチしたみたいで、ちっとも明確でない。一般に、こういう人は言語思考者だ。回答がこの両極端のあいだに当てはまる人もけっこういた。ニューイングランド様式のどこにでもあるような教会の尖塔が見えると答えた人は、これまでに見たことのある教会の尖塔や、本で読んだり映画で見たりした尖塔を思い浮かべているのだ。こういう人は視覚–言語思考スペクトラムの中央に当てはまり、言語思考と視覚思考の混合タイプだ。

 もう一つ、視覚思考者を見つけるために長年行なってきた非公式の実験では、私がよく講演をする二つの異質なグループを対象にした。小学生と教師だ。それぞれのグループに、牛が食肉加工工場の通路から出て行く写真を見せた。牛は床を照らす明るい日光を見つめている。写真には、「すべらない床が重要」という説明文がある。牛が日光を見つめているのを見た人は何人いるだろうか。手をあげてもらったところ、結果は一貫して同じだった。小学生では半分が手をあげた。写真をよく見ていたので、視覚思考タイプと考えられる。教師で手をあげた人はほとんどいない。教師は説明文にのみ注目したので、言語思考タイプと考えられる。

続きは『ビジュアル・シンカーの脳 「絵」で考える人々の世界』でお楽しみください。

テンプル グランディン Temple Grandin

コロラド州立大学動物科学教授。動物学博士。自閉スペクトラム症の当事者であり、同啓蒙活動において世界的に影響力のある学者のひとり。自叙伝をもとにしたテレビ映画「テンプル・グランディン~自閉症とともに」は、エミー賞7部門とゴールデングローブ主演女優賞などを受賞、大きな話題となった。著書に『自閉症感覚』『自閉症の脳を読み解く』(以上、NHK出版)、『我、自閉症に生まれて』『自閉症の才能開発』(以上、学習研究社)など。2010年にタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に、2016年にアメリカ芸術科学アカデミー会員にそれぞれ選出された。コロラド州フォートコリンズ在住。
写真:Kelly Buster

◆多彩な執筆陣による連載小説・エッセイ、教養・ノンフィクション読み物や、朝ドラ・大河ドラマの出演者や著者インタビューなどをお届けします。

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