【後編】「視覚でひらめく」人々の驚きの思考法と、新たな才能の世界

2023/08/04

 『自閉症の脳を読み解く』など数々のベストセラーで知られるテンプル・グランディンの最新作『ビジュアル・シンカーの脳~「絵」で考える人々の世界』刊行を記念して、本文の一部を特別公開します。
(※NHK出版公式note「本がひらく」より、一部編集して転載)

(前編はこちら

思考タイプの判定テスト

 子どもが視覚思考タイプかどうか、どうやって判断するのかとよく尋ねられる。その兆候は早ければ3歳で現れるかもしれないが、6歳から8歳のあいだで見られることが多い。視覚思考の傾向は、子どもが興味をもつ活動に現れる。よく目にするのは、きわめて精密で写実的な、みごとな絵を描くこと。こういう子は、積み木やレゴなどのブロックおもちゃを組み立てるのも好きで、段ボールや材木など身のまわりの物で何かを作る。千ピースのジグソーパズルを見て目を輝かせ、あるいは地下室やガレージで何時間も工具や電子機器をいじくりまわし、分解しては元に戻す。

 理論物理学者のスティーヴン・ホーキングは模型の電車や飛行機を分解するのが好きで、その後、中古の時計や電話器の部品から簡単なコンピューターを作った。数学者のグレース・マレー・ホッパーはコンピューター科学者の草分けで、家にあった置き時計7個を全部分解した。もし、十代のわが子がノートパソコンを分解してしまったら、たぶんうれしくないだろうが、その子が第二のスティーブ・ウォズニアックになったら、きっとうれしいだろう。

 おとななら、私が考えたイケア・テストをしてみると、視覚–言語スペクトラムのどのへんに当てはまるかわかる。厳密には科学的と言えないが、思考のタイプを見分けるのにかなり信頼できる手軽な方法だ。テストでは、家具を買ってきて、これから組み立てると仮定する。さて、説明書の文を読むか、イラストを見るか、どちらだろう。私なら、言葉で書かれた説明文を読んでも、ちんぷんかんぷん。連続した手順についていけないのだ。でもイラストを見れば一目瞭然。これまでに組み立ててきた家具などを全部思い浮かべて、この家具ができあがったときの姿がわかる。

 家具量販店イケアの説明書は一連のイラストで示されていて、言葉で書かれていない。すでに気づいている人もいるだろう。創業者が言葉より絵を優先するディスレクシア〔学習障害の一つで、文字の読み書きに困難がある〕だったと知って、なるほどと思った。言語思考タイプの人がイケアの説明書を見て何がなんだかさっぱりわからなくなり、いらいらしたと話すのをたびたび聞く。視覚思考タイプの人にとって完璧な手引きが、逆に混乱を招くのだ。

 家具の組み立てはさておき、視覚思考かどうかを調べる脳画像検査は今のところないが、リンダ・シルヴァーマンの研究グループが数年かけて開発した「視覚空間型思考判定テスト」は「聴覚連続型」思考者(言語で考える人)と「視覚空間型」思考者(絵で考える人)を見分けるのにとても役に立つ。自分がこのスペクトラムのどこに当てはまるのか関心がある人は、次にある「視覚空間型思考判定テスト」の18の質問に「はい」か「いいえ」で答えてみよう。

「はい」が10以上なら視覚(空間型)思考タイプの可能性がかなり高い。忘れていけないのは、視覚(空間型)思考タイプか言語思考タイプかは、どちらか一方に当てはまるのでなく、だれもが言語優位から視覚優位までの連続するスペクトラムのどこかに当てはまるということ。全問「はい」の人はめったにいないだろう。著述家や編集者、弁護士はたいてい「はい」が10よりずっと少ないだろう。私は「はい」が16で、視覚思考スペクトラムの端のほうに当てはまる。きわめて創造力のある人や数学の好きな人なら、「はい」が多いだろう。本書の執筆も手伝ってくれた編集者はかなりの言葉人間で、「はい」は4つだけだった。たいていの人はそのあいだのどこかに当てはまり、二種類の思考の混合タイプになる。